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2015ロシアワールドカップ二次予選 日本対カンボジアのプレビュー

みなさん、こんにちは。本当は今日はJリーグの話でもしようかと思ってたんだけど(いい加減、J1も佳境なので盛り上げていかないといけない)、ハリルホジッチがドジッ子かまして、



カンボジア戦のスタメンと戦術が漏洩…ハリル、急いで隠すも間に合わず




こんな感じで、3日のカンボジア戦のスタメンと戦術を漏洩して下さったので、本日はプレビューやっとこうと思う。風で戦術ボードがめくれて、試合のスタメン漏洩とか、どんだけ不用意なんだと思うけど、ハリルホジッチは体脂肪ネタの時にも前科があるので、あれはあれでワザとやってるのかもしれない。



ちなみに、スタメンのほうなんだけど、


その戦術ボードからカンボジア戦のスタメンと見られるメンバーが判明した。それによるとGKは西川周作(浦和レッズ)、最終ラインは右から酒井宏樹(ハノーファー/ドイツ)、吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)、森重真人(FC東京)、長友佑都(インテル/イタリア)、ダブルボランチは山口蛍(セレッソ大阪)と長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)、トップ下に香川真司(ドルトムント/ドイツ)、ウイングは右が本田圭佑(ミラン/イタリア)、左が武藤嘉紀(マインツ/ドイツ)で、1トップに岡崎慎司(レスター/イングランド)。対するカンボジア代表はメンバー発表会見でハリルホジッチ監督が口にしていたように5バックで、中盤は3ボランチ+トップ下に1トップを配した布陣を想定している模様で、人やボールの動きを想起させる矢印も記入されていた。これがカンボジア戦の狙いということなのだろう。

こーなっているので、図にすると



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こうなる。ポイントとしては、やはりボランチだ。山口蛍と長谷部のダブルボランチ。どちらもゲームメーカータイプではない。攻撃に関しては、前へ走り込む、追い越す動きに特徴のある選手なので、中盤でボールを動かす気はあまり無いようだ(長谷部も山口もアシストは多くない)。これまでの試合もそうだったけど、中盤でボール動かしてたのは、山口がサイドチェンジ連発してた中国戦くらいなんで、ポゼッションにはそんなに拘ってるスタメンに見えない。


正直いって、カンボジア相手なら、ボランチには柴崎使いなよ、と思う。山口か長谷部、どっちか片方でよくて、もう一人はもっと捌ける選手つかないよと思う訳だ。




もっともスタメン選考は代表監督の特権だし、それについてグダグダいってもしょうがないので、プレビューに移ろう・・・・とその前に、前回のシンガポール戦の時にでた問題と、本来やるべきだった攻撃の話をしておく。


前回のシンガポール戦で出た問題と、本来やるべきだった攻撃の話


まず、この話から。シンガポール戦はレビューやったので、


2015ロシアワールドカップ二次予選、日本対シンガポールのレビュー



こっちのエントリにまとめてあるけど、あの試合の場合、


1,右サイドで大渋滞が起こっている
2、左サイドで縦パスが入らない


って問題が起きていた。この話は以前のエントリでまとめたので、今回は詳しくは触れない。今回のエントリでは、前回のような試合では、どういう攻撃をすべきだったかという話をしておく。



前回、シンガポールが日本にやった守備方法というのは、


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こうなるのだけれど、サイドではシンガポールのSBとSHがマンツーマン気味に日本のWGとSBを捕まえる。中央はボランチ3枚がスペースを消すのを優先し、中央の岡崎に楔がはいらないように守っていた。その代償として、日本のボランチがシンガポール陣内でフリーでボールを捌けるという状態になった。



相手がこういう守り方をしている場合、どういう風に攻めれば良いのかって話になるんだけど、これ、実は簡単で、


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こんだけやってればよかった。「え、これだけ?」と思われるかもしれないけど、こんだけ。このやり方なんだけど、レーブのドイツ代表が好むやり方だ。ドイツ代表はWGとSBを目一杯サイドに張らせる。狙いとしては、相手チームを横に広げることで、SBとCBの間、SHとボランチの間のギャップを作り、そこをボランチ、トップ下に使わせるっていうもの。ドイツ代表を見ているとケディラがやたらとSBとCBの間に走り込んでくるのを見かけると思うんだけど、あれはチーム戦術として必須の動きで、サイドにWGとSB張らせるチームの場合、SBとCBの間のギャップに走り込む動きをボランチが担うことが大事になってくるんだ。





実は、これ、試合中、1度上手く行ったことがある。キャプでやると、


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シンガポール戦の前半11分、この状態ができた。この時は、攻守の切り替えの場面からのスタートだったんだけど、本田がサイドに張ってる状態だったので、シンガポールのSBとCBの間にギャップが出来ていた。で、そのスペースを香川が使ってシュート打ったシーン。


シンガポール戦の場合、アンカーはスペース潰すのを優先し、香川にマンツー気味にはついていなかった。この場合、ボールを左右に動かしてSBとCBの間にギャップを作り、そのスペースをトップ下に使わせてしまえば良いだけなんだ。あそこに走り込んでもシンガポールのアンカーはついてこないので、本来であればトップ下はあそこのスペース使ってやりたい放題できる。



ところが、あの試合の場合、それは出来なかった。理由は、右サイドの場合、本田が常時中に入ってきていたので、SBとCBの間にスペースがなかった事。左サイドの場合、SBとCBの間にギャップが出来ていて、香川が走り込んでいるんだけれど、ボールが出てこなかった事。この二つだ。



あの試合の場合、根本的に攻撃の順番を間違っていた。本田は相手のアンカーが香川についてきてない時点で、サイドに張ってるべきだった。そして、SBとCBの間にスペースを作り、そこを香川、あるいは走り込むボランチに使わせるべきだった。この動きを続ければ、そのうち、アンカーが香川にマンツー気味でつきだす。そうなったら、香川の動きでアンカー動かして、空いたスペースを使うために中に入ってもいいんだ。ところが、それが起きてないのに本田は中に入りっぱなしだった為、右サイドでの大渋滞が引きおこされてしまった訳だ。




ここからがカンボジア戦のプレビューになるんだけど。

さて、こっからは3日のカンボジア戦のプレビューになる。スタメンとカンボジアのフォメは、ハリルホジッチがドジッ子してくれたので、すでにわかってるわけだ。日本は4231、カンボジアは5311だ。基本的に、5311ってのは、守備面で問題があるフォメであり、デフォで3の両脇が空いており、日本のSBが浮いてしまう。


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こうだな。なので、あの○で囲ったスペースを上手く使う事、浮いてるSBを使った攻撃が大事になってくる。


ただし、単純にSBの足下にボールが出しても、



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この形での対応されて終わる。インサイドハーフがサイドに出てSBに対応。ボランチのマークはトップ下に受け渡し、CFがCBのマークについて作り直しをするのを防ぐという形だ。



勿論、532でドン引きしてくる可能性もある。つまり、噛み合わせとしては、



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こうなる。デフォだと、これ、やっぱり日本のSBが浮いてるんだけど、SBにボールが出たら、

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この形で対応してくる可能性が高い。中盤3枚のスライドでSBには対応。日本のCBは放置でボランチを2トップに捕まえさせて、ボランチ経由のビルドアップを封じる。CBに戻してビルドアップをやり直させるのはオッケーくらいの形だな。



さて、こういったフォメの相手と対戦する場合、どうやって攻めたら良いの?って話になるんだけど、この手のフォメに対する定石としては、


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この三つになる。


繰り返しになるが、デフォだとSBが浮いてるんだけどSBの足下にボール出すと、ほぼ確実に相手のプレスに捕まるって所だ。なので、単純にSBにボールつけるのは悪手。これやっちゃうと、相手の思うつぼになる。



戦術については、順をおって説明すると、5311の泣き所は3の両脇で、あそこがデフォで空いている。なので、あそこで起点を作りたいのだけれど、SBに単純にボールつけても、


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こんな感じで相手のプレスに捕まって詰まる。だから、基本は降り来てたWGを利用する。3の両脇のところにWGを下ろす。ここでフリーでボールうけて前むけるなら、

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あとはあそこからWGが好きにやればいい。



ただ、普通はWBが出てくる。そうしたら


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この形でWBの裏にSBを走り込ませ、トップ下はフリックでSBにボールをあわせるって形を取る。もしくは、



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この形でWGがフリックしてトップ下をWBの裏に走り込ませる形でもよい。




これが2~3回成功すると、相手のCBかアンカーがトップ下にぴったりマークにつくようになる。CBがトップ下についてくる場合、


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この形を狙う。相手のCBがトップ下やCFにぴったりついてくる事を利用して、相手の3バックを中央に寄せて、サイド深くへのパスコースを作り出す。その上で、そこにSBとボールを送りこむって形だ。あるいは、


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この形でもよい。これは相手のCBがトップ下やCFにぴったりついてくる事を利用して、相手の3バックの間隔を広げて、ボランチが走り込むスペースを作るってやり方になる。



ちなみに、アンカーがトップ下にマンツーマンでついてくる場合、これは一番簡単で


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こうなる。トップ下の動きで相手のアンカーを動かして、空いた中央のスペースを岡崎に使わせる。つまり、岡崎に楔打ち込んで、本田が岡崎の落としを受けて、あとは本田が好きにやればいい。



ただし、これらのやり方は、相手が541で守ってくる場合には意味がなくなる。541相手だと、SBがオーバーラップしても相手がついてきて対応されてしまうので、SBのオーバーラップはさほど有効ではないし、中央がダブルボランチなので、かなり面倒な事になる。個人的には報道通り、カンボジアが5311なら、かなり嬉しい。スペースがあるからだ。一方で、541でドン引きされるとかなり面倒くさくなる。



ここで大事なのが、相手の出方だ。相手チームがどういう守り方をするのか、それで攻め方は当然変わってくる。今回のエントリで、シンガポール戦の話を絡めたのは、シンガポール戦の場合、相手のDFの動きをみて、攻撃方法を変えるって事が出来ていなかったからなんだ。本田は最初っから中に入りっぱなしでDFの守備方法に関わらず、常に中に入っていった。


当たり前の話なんだけど、WGが中に入ったほうが良い局面と外に張ってたほうが良い局面がある。その判断が本田は出来てなかった。



次の試合もそうなんだけど、5311相手の場合、相手のWBがどこまでWGについてくるか、インサイドハーフがSBについてくるのか、アンカーはトップ下についてくるのか、トップ下とCFが交錯する動きをした時に、CBはどう対応するのか、それによって攻め方は変えなきゃいけない。




前回のシンガポール戦なんだけど、前4人の動きがちぐはぐでチームとして動けてなかった。なので、カンボジア戦ではしっかりやって欲しい。きちんとチームとしてサッカーしてくれって事。





とまあ、ここまで色々書いたけど、実はカンボジア相手なら、戦術云々でなく個人技でねじ伏せて欲しいってのもある。実力差がある相手とやるときは、戦術でなくて純粋な個人の能力差で押し切って欲しいし、「格下のこざかしい戦術なんぞ力でねじ伏せろ」という脳筋思考、嫌いじゃないのだ。



プレビューで、あまり多くかいてもアレなんで、この辺りで。


ではでは。

2015年ブンデスリーガ第2節 ドルトムント対インゴルシュタットのレビュー 「4141ブロックの崩し方」

さて、本日は、久々にドルトムントのレビューである。前にドルトムントのレビューやったのいつだったか思い出せない程度に久々のドルトムントのレビューである。ブンデスリーガはすでに開幕しているのだけれど、ドルは第一節でBMGを4-0で、第2節ではインゴルシュタットを4-0で屠っており、PSMで虐殺された川崎はそろそろ許されてもいいのではないかと思う。最近の公式戦では3試合で12点取ってるチームである。川崎は悪くないと思う。(こないだ湘南が川崎に勝った事とは、これは無関係である)



この試合では、香川がブンデスリーガ公式戦初ゴールを決めているんだけれど、それ以外にも香川の出来は良かった。中2日だったので、ドルの選手はみんな動きが鈍く、いつものスピーディーなサッカーが出来ていたとは言い難い所があったんだけれど、それでも圧勝してしまったのだから本当に今のドルは強いと思う。



この試合の場合、単にドルと昇格組のインゴルシュタットの実力の差というだけでなく、チームとしての攻撃の組織度、攻撃の選択肢の選び方に大きな差があって、今日はその辺りについて、試合のレビューを進めてみようと思う。


ドルトムント対インゴルシュタット、前半戦のお話


まず、スタメンの紹介から。


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スタメンはこうなっていた。ドルトムントは4231、インゴルシュタットは4141。この組み合わせは、完全にフォメが噛み合っている為、ミスマッチが起きない対戦である。ただ、これはフォメ上の話であり、相手チームがどういう守り方をしてくるか、自チームがどういう攻め方をするのかで、話は全く変わってくる。



具体的に説明すると、4231対4141の対戦の場合、中央の3枚のマッチアップにおいて、マンツーマン気味に守るか、ゾーン気味で守るかによって、攻め方というのが変わってくる。


こっからはキャプでやる。インゴルシュタットの守備とドルの攻撃を例にして説明するけれど、


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これは前半7分のシーンのドルトムントのビルドアップ。このシーンの場合、中央の3枚が香川、ギュンドガン、ヴァイグルを捕まえている。マンツー気味の守備なんだけど、相手がこういう風にマンツー気味に捕まえようとするなら、その裏のスペースが空くという事でもある。具体的にいえば、このシーンだと、香川が引いてボールを受ける動きをしてアンカーを釣り出して、そして空いたスペースをロイスが使おうとしている。このシーンの場合、ロイスが下がってきたので、インサイドハーフがロイスのマークについた。その結果として、ギュンドガンがフリーになってしまい、そこに起点をつくられてインゴルシュタットはラインの裏を取られかけた。(この攻撃は巡り巡って香川のゴールの伏線なんだが、それは最後にやる)




このシーンは、4231対4141の対戦では、中央の3枚をマンツーマン気味にしてしまうと、中央3枚のポジショニングにアンカーとインサイドハーフのポジショニングが支配されてしまい、そこから崩される危険性があるって事を示している。ここでドルが使ってる形なんだが、「トップ下+ボランチのポジショニングで、相手のインサイドハーフとアンカーを動かして、空いたスペースをCFとWGに使わせる」って戦術だ。



んじゃあ、アンカーが香川をマンツーマン気味で捕まえるのやめて、中央のスペース潰すの優先でやったら、どうなるかってーと、これはこの後、すぐやるんだけど



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これは11分のシーンだけど、アンカーが中央にいるため、香川にギャップ受けされちゃってサイドチェンジされたんだ。アンカーが香川にマンツーマンでついてこないなら、相手のインサイドハーフを前に釣り出してから、アンカーの脇のスペースを香川に使わせれば良いだけって話になる。



実は、この日の前半、インゴルシュタットの守備上の穴になっていたのが、このシーンで香川がボールをうけた場所だった。右インサイドハーフの10番とアンカーの間のスペース。完全に守備上の穴となっていて、あそこのスペースを香川に使われまくることになった。



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これは21分。ここもそうなんだけど、インゴルシュタットのアンカーの右脇の所、誰もいないエアポケットになってるんだ。で、そこを香川に使われてしまっている。


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さらに23分、またあそこで香川に前を向かれてしまう。あそこのスペースが空くって事がわかってから、ドルは楽に攻める事ができるようになった。26分にもアンカーの右脇で香川に前向かれてしまっている。




ここ、アンカーが香川にマンツーマン気味でつけばいいんじゃ?というのがあるんだけれど、それやっちゃうと前半27分にあったみたいに


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香川の動きでアンカー動かされて中央に楔入れられて、そこからコンビネーションで崩される危険性ってのが出てくるんだな。



ここで、インゴルシュタットも動く。連続で香川にアンカーの右のスペースを使われた事から、30分あたりから香川にマンツーマン気味で10番のインサイドハーフがつくようになる。サイドに流れても、相手のWGがきっちり捕まえるようになり、香川が良い形で中盤で前をむけるって事は段々なくなっていった。インサイドハーフに香川を捕まえさせたことで、一旦はインゴルの守備は落ち着いた。


ただ、前半33分みたいに、の高速コンビネーションやられると流石についていけなかったけれど。前半33分のコンビネーションは流石に凄かった。



www.nicovideo.jp



33分のは、動画張っとくのでそっちでどうぞ。やり方はロイスのと一緒で、右サイドから斜めにパスいれて、スルーをつかったコンビネーションから裏を取るって形。動画見て貰えばわかると思うんだけど、このシーン、相手の10番が香川についてきてるのね。もっとも、スルーを使ったコンビネーションされるとマーク外してしまってるんだけど。



このインゴルシュタットの守り方、前半はそこそこ上手くいっていたんだが、後半、トゥヘルとドルの選手が修正を行ってくると、この守り方そのものがインゴルシュタットに致命傷を与えてしまう事になった。



ドルトムント対インゴルシュタット、後半戦で起きた事、トゥヘルとドルの修正


さて前半は0-0、インゴルとしてはこれでオッケーだった。ドルは、なんとかして勝ち点3が欲しい。だから、インゴルは耐えて、ドルが前がかりになった所をカウンター、そんなゲームプランでよかった。ただ、問題はドルの選手達がインゴルの守備方法になれてきてしまった事である。どーいう事かというと、相手のインサイドハーフが香川をマンツーマン気味で捕まえている訳だから、必然的に、ドルトムントのボランチの片方がフリーになれる。


結果として、何が起きたか、それはキャプで説明するけど、



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これは後半45分のシーン。ボランチのヴァイグル君が完全に空いちゃってるのね。次に



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これは後半47分のシーンだけど、香川が気になってるのか、ここでも空いてるんだ。あそこでボランチに前向かれて捌かせてしまうの非常に不味い。こうなってしまう原因が、インサイドハーフに香川を見させてしまうからだ。


1,アンカーに香川を見させると、香川のオフザボールでアンカー動かされて中央に楔打ち込まれる
2,じゃあインサイドハーフに香川見させると、ドルのボランチの片方がフリーになる。



後半開始直後から、インゴルシュタットは、こういう悪循環になっていた。一旦、ボランチが空くって事がわかりはじめると、ドルトムントはボランチを起点にして攻めに出ることが出来るようなる。ボランチが高い位置でボールを捌けるようになった事が、この後のドルの先制に繋がってくる。




次に54分のドルの先制シーンになるが



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これだが、香川をインサイドハーフがマンツーマン気味で捕まえているせいで、ドルのボランチのヴァイグル君(19才!)がフリーになって、そこを起点としてやられてしまった。前半の最後のほうは、ドルの選手が慣れてなかったから、この守り方でも良かったんだけど、一旦、ボランチが空くって事がバレたら、このやり方は非常にリスクが高い。






その後のドルの二点目の時もそうなんだが、


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後半58分、あそこでヴァイグル君が又フリーになってる訳だ。正直な所、インサイドハーフに香川を見させるのは悪手。ヴァイグル君を空けるのは不味い。彼、19才で今年からドルに来た子だが、凄い良い選手でドルトムントのビルドアップが前シーズンとは比較にならないほど安定してる原因になっている。この後、ギュンドガンとのパス交換から、ギュンドガンに縦パス入れられて、シュメルツァーがPKもらってロイスが決めてドルトムントは二点目となった。




ここでインゴルシュタットのほうも、ヴァイグル君フリーにしてるとやられるとわかったみたいで、69分あたりになると


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こんな感じで10番がヴァイグル君捕まえに出てくるようになった。ここでインゴルシュタットは、インサイドハーフがドルのボランチ捕まえて、アンカーが香川捕まえるみたいな形に変更。ところがそれはじめると、今度は降りてきたロイスにSBから楔入れられてしまうんだな。インサイドハーフが前にでてしまう事になるから、どうしたってアンカーの両脇が空いてしまう。そして、その両脇をWGやCFに使われてしまうと、前半のリプレーになってくる。



最後の香川の得点シーンが、まさにそれなんだけど、まず


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という流れから、


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こうなった。これは典型的な4141における、アンカーの両脇を使われて失点の仕方。綺麗にホフマンと香川にアンカーの両脇を使われて失点。ヴァイグル君とギュンドガンをフリーにしたくないので、インサイドハーフをヴァイグルとギュンにつけたら、インゴルシュタットは空いたアンカーの両脇を使われて失点してしまった。




この後、オバメヤンのゴールもあるんだけど、あれは、文脈のないゴールだったので割愛する。



新生ドルトムントとトゥヘルのまとめ


ここまでこの試合の流れを見てきたわけだけど、トゥヘルのドルトムントに関しては、かなりポゼッション寄りのカラーを持ってる。相手チームに対して、合理的な攻め方をするチームになっていて、かなり驚いている。クロップの頃からスピーディーなパスワークをもっているチームだったんだけれど、トゥヘルのチームの場合、相手チームの守り方に応じて攻め方を柔軟に変える事が出来ていたので、正直言って驚いた。



BMG戦では、BMGの442ブロックをいともたやすく引き裂いていたので、びっくりしたモンだが、この試合ではインゴルシュタットの4141ブロックを中2日にも関わらず、簡単に引き裂いてしまった。


この試合の流れをまとめておくと、


1,前半開始直後はインゴルシュタットの前プレが強く、ドルトムントはあまり良い所なし
2,前半10分過ぎあたりから、香川がインゴルシュタットのアンカーの右脇を使えるようになり、ドルトムントペースに。
3、前半27分あたりでインゴルシュタットは守備方法を変更。相手の右インサイドハーフの10番が香川にマンツーマン気味でつくようになる。
4、前半はその後は静かな展開に。ドルはアンカーの右脇を使えなくなり、ちょっと攻めあぐむ。
5、後半開始直後から、ドルのボランチがフリー。ドルトムントは、フリーのボランチ、特にヴァイグル君を使うようになる。
6、後半54分、ドルトムント、ヴァイグル君の縦パスから先制。さらにそのあと、ギュンの縦パスからシュメがPKもらってで追加点。
7,70分あたりからインゴルシュタットはまた守備変更。ヴァイグル君フリーは不味いと気付く。インサイドハーフがギュンとヴァイグル君をきちんとマークするように。
8、インサイドハーフが、ドルのボランチ捕まえる為に両方前に出るようになり、アンカーの両脇にスペースが生まれる。
9、そのスペースをドルに使われて3点目。勝負あり。
10 最後のドルのゴールは、インゴルがもう集中切らしてた。



こうなる。



この試合のレビューをしようとおもったのは、非常に良い対4141オフェンスのモデルケースだったからだ。インゴルシュタットが試合中、何度か守備方法をいじってくれた事もあって、4141に対して、どういう風に攻めればいいのかってのの、教科書的な試合となった。



トゥヘルのドルトムントは、クロップのカラーを引き継いで、前プレのチームなのはそのままなんだけど、ポゼッション面やコンビネーションの面で、クロップ時代より質が高いチームに仕上がっており、今年一年は楽しめそうな感じである。去年と比較して、コンビネーションプレーの質が断然高い。



で、最後になるんだけど、この試合でやたらと目立ったドルのヴァイグル君。記事の中でも彼のことを何度か扱ったけど、この子、本当に良い選手。19才とは思えない位落ち着いてる。この日、一番関心したのは、前半26分のシーンのプレーで、インターセプトしたボールをダイレクトで香川につけたのね。これは動画にあるから、見て欲しいのだけれど、あれをみて「うわ、これで19才か・・・・」と感心してしまった。あれはなかなか出来ないぞ・・・というプレーだった。19才でドルトムントのプレースピードについていけるどころか、加速させることすら出来てる訳で、末恐ろしい。



そんな訳ですので、ドルトムントの新星、19才のヴァイグル君はホントに良い選手なので、ドルトムントの試合みる時は彼に注目してみてみてね。



今日はこのあたりで。ではでは。

2015年 J1 1stにおける傾向のお話

さて皆さん、こんにちは。本日はブログ書きのリハビリもかねて、2015年のJ1における傾向なんかの話をしたいと思う。内容は戦術分析というより、J1におけるトレンドの話になる。J1の各チームの話は、そのうち、それぞれやる。


本日はJ1が再開して、清水の大榎監督が成績不振から辞任、鹿島のセレーゾ監督が成績不振で解任となった事をうけて、Jリーグの最近の傾向の話でもしておこうと思う訳だ。


J1においては、外人選手、外人監督が以前ほど活躍できなくなってきた。特にブラジル人。


まず、この話から入るのだけれど、昨今、ブラジル人監督、ブラジル人選手はJ1では以前ほど活躍できなくなってきている。


Jリーグというリーグは、これまでブラジル人の成績が際立って良いリーグだった。実際、過去22シーズンで、ブラジル人監督が優勝したのは9回。ブラジル人の得点王は7人となっており、ブラジル人助っ人といのはチームが成功する為に絶対に必要なピースと言って良いくらい重要な存在だった。



Jリーグ 歴代のMVP・新人王・ベストイレブン・得点ランキング



こっちのサイトで、Jリーグの歴代得点ランキングがまとめられているけれど、2000年代はまさにブラジル人FWの時代といっていい位だった。2001~2008年までは得点ランキング上位をブラジル人FWが独占している状態であり、得点王に至っては、


2003 ウェズレイ 
2004 エメルソン
2005 アラウージョ
2006 ワシントン、マグノ
2007 ジュニーニョ
2008 マルキーニョス


と、ブラジル人が6年連続で取っているような状態だった。ブラジル人FWというのは点を取るためには必須と言って良い位重要な存在だった。



また、2007~2009のオリヴェイラの鹿島の三連覇、2011の柏でのネルシーニョの優勝は、ブラジル人監督の評価を際立たせるものでもあった。



ところが、状況が変わりはじめたのが2012年あたりからになる。2012,2013のポイチの広島の2連覇、2014の長谷川健太のガンバの三冠と日本人監督が立て続けに成功を収め、得点ランキングの上位は日本人FWがほぼ独占というトレンドが出現するのである。



これがJリーグだけの話なら、ブラジルの凋落なんて話にはならないのだけれど、ブラジルの凋落を決定づける出来事が最近立て続けに二つ起こってしまった。つまり、ブラジルW杯におけるセレソンの7-1での敗北、コパアメリカでのベスト8敗退という結果だ。正直な話、最近、J1にやってくるブラジル人助っ人のプレーを見ても、あまりワクワクしない。ブラジル経済が好調なので、良い選手がブラジル国内に留まるようになったせいもあるんだろうと、以前は思っていた。ただ、W杯、コパアメリカにおけるブラジルの失態、ネイマール以外のFWのレベルの低さを見て、「王様は裸だ・・・・」という思いに駈られている部分もある。



この手の出来事で思い起こすのは、1953年にウェンブレーにおいて、イングランドが「マジック・マジャール」ことハンガリーに6-3で敗れた試合だ。イングランドは試合前まで、「ハンガリーのボールジャグラーなど強いタックルで阻止できる」と高をくくっていた。しかし、6失点したのは1881年のスコットランド戦以来という大敗をホームで喫してしまった。それまで、イングランドは、英国内のチームとの対戦を除けばホーム不敗の伝統を誇っていたのだが、それを粉々に砕かれたのである。さらにいえば、翌年のブダペストでのリベンジの試合も7-1でフルボコにされ、「ドナウの災厄」と呼ばれる事態にまで陥った。1950年のブラジルW杯におけるアメリカ戦での敗北、そしてハンガリーに対する2度の大敗によって、「イングランド最強論」は地に墜ちた。そして、イングランドのW杯での恥辱の歴史が始まるのである。


ロンドン五輪の時、ブラジル代表をみて「うわ、ひでえ、こんな糞みたいなチームに優勝されたらどうしよう・・・」とか思ったモンであるが、流石に自国開催のW杯なら勝てるだろうと思ってはいた。なんだかんだで、サッカーってのはホームアドバンテージが非常に強いスポーツだからだ。ところが、7-1でドイツにフルボッコにされてしまい、うごご・・・状態である。



話がそれてきたので、元に戻す。




2012年以降、ブラジル人監督、ブラジル人選手の成績は、はっきりいって良くない。ネルシーニョもぱっとしないし、鹿島のセレーゾもそう。結果と給料が全く釣り合っていない状態だった。ブラジル人選手もそうだが、2014年、得点ランキング上位であるマルキーニョス、ペトロ・ジュニオール、レアンドロ、エドゥーは点は取ってはいるが、給料が非常に高額なので、コスパが悪かった。日本人FWと大して成績は変わらないのに、給料は倍くらい貰っているので、これだと何の為に高い給料払っているのかわからない。


これは、2015年シーズンも続いており、



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これは、2015年J1 2ndステージ 第5節までのJ1の外人監督の年俸、勝ち点数、勝ち点1取るのに必要とした額の表だけれど、ネルシーニョとセレーゾの両ブラジル人監督の数字の酷さが際だっている。高い給料貰ってる割に勝ててないのだ。セレーゾが解任されたのは「給料高い割に勝てなかったから」としか言えない。ネルシーニョも、このままの成績だと、あと一年持たないと思う。根本的に給料が高すぎるんだ。



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一方で、こちらが日本人監督のモノになる。日本人監督は全体的に安い。安かろう悪かろう理論でいえば、鳥栖の森下さん、柏の吉田さんはしょうがない部分もある。清水の大榎さんもそうだが、給料低い訳だから、そんなに多くの事を期待してもしょうがない部分はある。ちなみに湘南のチョウさんは韓国人なんだが、ここでは日本人枠にいれた。基本的に、この人は海外でのキャリアがゼロで日本のサッカーシステムで育った人だからだ。



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こっちは恒例のFWのコスパ表である。自分で作ってみて思った事だが、FWのコスパを計算していくと、清水と神戸のコスパの悪さが目についてしまう。神戸にいったっては、高額なペトロ・ジュニオール、マルキーニョス、レアンドロ、ネルシーニョを抱えているが、結果がついてきていない。最近のJ1でのブラジル人FWのコスパの悪さ、ブラジル人監督のコスパの悪さを考えると、神戸は払った金額に見合わない順位で終わることになると思われる。清水に関しては、大榎監督は年俸が超安いので多くを期待すべきではなかった。ただ、年俸が高いウタカと大前はもうちょい頑張ってくれないと困る。大前には厳しく言うけれど、5500万というのは日本人得点王クラスの給料なので、年間20点は取って欲しい所である。そこまでやらないと、清水は降格してしまう。



余談になるが、ちょっと元湘南ベルマーレのウェリントンの話もしておこうと思う。昨年、J2の得点王であり、湘南にとっての不動のCFだった。ただ、オフに色々あって、契約を更新できず、湘南はウェリントンを手放すことになってしまった。ウェリントンについては、僕はそれほど惜しいとは思わなかった。理由が昨今のブラジル人FWのJ1でのパフォーマンス低さであり、高い給料払っても、それに見合うだけの成績は収めてくれないだろうなあ、と思っていたからだ。


最近のJ1で、ブラジル人選手で、日本人選手より明らかにパフォーマンスが良いと言える選手は二人しかいないかった。川崎のレナトの半分、そして新潟のレオ・シルバだ。レナトの半分ってのは、レナトは守備でJ1最低の選手だからだ。攻撃ではJ1最高の選手の一人だったが、守備ではJ1最低の選手だった。ただ、レナトにしても、ジュニーニョほどのすごさは無かった。


何故、ブラジル人選手、ブラジル人監督がJ1で結果を残せなくなったのか。それはホントによく分からない。2011年までは、J1でブラジル人選手、ブラジル人監督は結果を出しまくっていたんだ。ところが、2012年以降、ブラジル人選手・監督がJ1で結果をだせなくなり、代わりに日本人監督がタイトルを取り始め、日本人FWが得点ランキング上位を独占しはじめた。



現在のJ1のトレンドは、「純国産のFW・監督のほうが結果を出すようになってきた」、「ブラジル人監督・FWのコスパが極端に悪くなってきた」これに尽きる。なんで、こんな事になってしまったのかは知らない。ブラジルのレベルの低下か、日本のレベルの上昇によるものなのか。議論はあるだろうけど、とりあえす結果の世界なので、最近のJ1はブラジル人監督より、日本人監督、ブラジル人FWより日本人FWのが結果だしてるのは事実なんだ。




ACLに出たチームはどのくらいのハンデを背負うのか

次の話題はコレ。2015年のACLについては、浦和さんと鹿島さんがGLで敗退。ガンバさんと柏さんはGL突破と明暗が分かれた。浦和さんは、ACLで一勝も出来なかったが、リーグ戦では前期負け無しで優勝してしまった。言いたい事は色々あるが、まあ、浦和さんは良い。問題は鹿島さんと柏さんである。ACLでもダメで、リーグ戦でもダメ、セレーゾ監督は遂に、松本に負けた試合の後で解任されてしまった。柏さんは、前任者のネルシーニョが柏最高の監督という評価なので、その後を継いだ吉田さんへの風辺りが非常に厳しい。何が良くないって、ネルシーニョで十分勝ってたのに、やり方を全部変えてしまった事である。これをやってしまうと、ネルシーニョ時代より負けが増えたら全部監督の責任になるわけで覚悟がいる。そんな訳で、吉田さんは、茨の道を歩んでる状態である。



とまあ、ここまではJリーグ見てる人なら誰でも知ってる話なんだろうけど。



ACLに出た場合、翌年の成績にどのくらい影響を及ぼすのか?というのは、しばしばネタになるんだけど、実際に勝ち点の増減を表にしてまとめると、次のような形になる。



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こんな具合なんだけど、ACLに出たクラブの勝ち点の増減で調べた場合、ACLにでたクラブは勝ち点を平均で8ポイント失っている。酷い年、つまり2012年に関しては、柏、名古屋、ガンバはリーグ戦でボロボロになってしまった。


ACLとリーグ戦の並行はとても難しい。過密日程で勝ち点を落とすのが珍しくも何ともないし、怪我人だって増える可能性が高い。リーグ戦ではACLがないライバルが有利になるだけで、観客動員も良くないと来ているので、正直いって、非常にビミョ~なコンペティションと化してしまっている。



表の最後に、ガンバ、浦和、鹿島、柏さんの今年の予想勝ち点も載せといたけど、ACLにでるクラブは、前年度と比較して平均8ポイントを失う事から、これらのクラブは、今年は勝ち点51~54前後になる可能性が非常に高い・・・・と言いたい所だけど、ここまでの勝ち点ペースを見る限り、浦和は大きく上ブレし、柏は下ブレすることになる。具体的には浦和は年間勝ち点60強とるだろーし、柏は年間勝ち点40弱位にはなりそうだ。


浦和は最初からACL捨ててるような感じだし、柏はACLにあまりに真剣に望みすぎている部分がある。真面目にやりすぎればリーグ戦が犠牲になり、リーグ戦重視だとACLを捨てざるを得ない、そんな部分もある。



さらに難しい話をすると、ACLという大会は日本では完全にブランディングに失敗してしまった。欧州CLはブランディングに成功し、平日開催だろうと人は入るし、視聴率も取れている。一方で、ACLは平日開催なので人が入らないし、視聴率も取れない。もっとも、J1のリーグ戦だろうと平日開催だと人が入らず、地上波でTV放送しても視聴率3~4%だから、大した違いはないのだけれど。


残念な話だけれど、J1のリーグ戦では、現状、スカパーですら採算が取れておらず赤字だと聞くし、一部のチームを除いて、電通・博報堂が頑張っても広告が全部売りきれないという状態のようだ。国内でも厳しい訳なんだから、海外は尚更厳しい・・・


海外チームと試合するなら、欧州強豪となら、平日でも人が入る。この前の川崎対ドルトムントの試合は、ただの親善試合+平日開催なのに24000人入ったし。ただ、アジアの強豪とじゃ、人は入らないのである。


この、「人が入らない平日開催のコンペティションは、一番大切なリーグ戦の足枷にしかならない」というのがJリーグの現状でもある。J1で連覇したチームがアジアでさっぱりなのは、アレな部分もある。



昇格組の行方

最後に、昇格組の行方の話もしておこう。湘南ベルマーレの話にもなるし。


これは以前も話をした事なんだけれど、僕はJ1で通用するかどうかの目安を、「J2で年間得失点差+40以上」と定義している。なんで+40以上かというと、近年、得失点差+40以上で昇格したチームで、一年でJ2に出戻りしたチームはないからだ。


J2に関していえば、得失点差+20~+30稼げば、J1昇格の切符を手に入れることは出来る。ただ、その切符は往々にして片道切符なのだ。2013年の湘南がそうだったが、2012年、得失点差+23で昇格したもの、一年で降格してしまった。確実に残留できるチームを作るなら、J2で得失点差+40以上で昇格できるチームを作らないといけない。そのくらい圧倒的なチームでないとJ1では厳しい。


今年に関して言えば、松本さんと山形さんは、非常に厳しい状態にある。J1が24試合終了した時点で、松本さんは勝ち点21,山形さんは勝ち点18となっており、降格ペースとなっている。新潟と清水が盛大にコケているので、まだ残留の目はあるんだけれど、清水や新潟みたいに補強資金があるチームではないので、正直難しいと言わざるを得ない。


湘南に関しては、すでに勝ち点33を稼いでいるので残留できそうだぜヒャッハー!(これが言いたかっただけ。)


サッカーとtilt


今回の話は、これで〆ておこう。


tiltっていうのは、本来ポーカー用語なんだが、これ、実はスポーツの世界でもしばしば見られる現象である。この話をしようと思ったのは、先日の柏対広島の試合後の監督コメントで、


[ 吉田 達磨監督 ]
サンフレッチェは今、日本で一番強いチームだけど、向かっていこうと選手と話をしていました。彼らのカウンターはとても鋭いし、ボールを回しはじめたらおそらく簡単には取れないでしょう。そういったところに対して準備をしていたのですが、(3分に)点を取ったことでカウンターからチャンスを迎えるシーンが増えました。ちょっと想像とは違う展開で、前半から過ごすことになりました。この相手に対してアウェイの地で、最後まで集中力を切らさずコンパクトな陣形を保ち、戦い続けたことは評価していいなと。ただわれわれは前期(1stステージ)にたくさんの落とし物といいますか、忘れ物といいますか、たくさんのモノを置いてきました。それを1日でも早く、1分でも1秒でも早く取り返したいという思いでやっています。連勝はしましたけれど、次から次に試合はやってきます。しっかりと引き締めて、これからのゲームに臨んでいきたいです。

こんな事を柏の吉田監督が言っていたからだ。僕が問題にしたいのは、黒字で強調した部分になる。正直な所、柏の吉田監督は、勝負師として見た場合、ちょっと致命的な欠点がある。J1の前半戦で、非常に苦しんで、なかなかそこから抜け出せなかったけれど、メンタルの部分にちょっと問題がある。このコメントを見る限り。



まあ、柏さんは、2ndステージに入ってからは好調で勝ててる訳だから、余計なお世話的な部分があるんだけど、今回は、「勝負事で負けを取り戻そうとした場合に何が起きるのか?」ってのを絡めて、ちょっと説明しておく。



tiltというポーカー用語がある。これは、



ティルト



こっちのポーカーのページでまとまっているが、

定義

一番広い意味でティルトとは、「プレイヤーが合理的な判断ができなくなり、感情にかられた行動をとるようになってしまった状態」、のことを指します。例えば、プレイヤーが大きな損失を出してそれをできるだけ早く埋め直すために、アグレッシブな賭けをしたり、弱いハンドでビッグ ポットを勝ち取ろうとすることは、彼がティルトになっていることを意味します。

ティルトの定義とは、こういう状態である。簡単に言えば「負けた分を取り戻そうとして、アグレッシブな賭けに出てしまう」状態になる。


ティルトの種類


ティルトが一番はっきりわかるのはアグレッシブな態度です。プレイヤーは、アグレッシブな動きでビッグ ポットを勝ち取ろうとします。彼はブラフをかけて多額の賭けをしてきます。彼は非常にアグレッシブになり、勝ち目の薄いハンドで大きなポットを勝ち取ろうとする傾向があります。そして絶望的な「ダブル オア ナッシング (チップが倍になるか、それともゼロか)」の状況に追い込まれます。それはまるでルーレットで赤にすべてのお金を賭けるようなものです。
この種のティルトでは、プレイヤーはバンクロール (手持ち資金) の管理を無視して、自分のバンクロールに合わないような大きすぎるリミットのベットをします。


よりやっかいな種類のティルトはパッシブなティルトです。プレイヤーはあまりに内気で臆病になり、十分なアグレッシブさがあるプレーがもはやできません。彼は強いハンドでもアグレッシブにプレーができず、いつも「またバッド ビートがどこかから来るのではないか」とびくびくしています。

これはティルトの種類なんだけど、負けを取り戻そうとして、躍起になるあまり、弱い手で「ダブル オア ナッシング」をしてしまうのが典型的なケース。もう一つが、自信を失って強いハンドでも強気に掛け金をつり上げられない状態になる。




今回は、柏の話になるんだけど、これは僕個人の感想なんだが、今の柏ってチームは、時々、ひどく冷静さを欠いてしまう。特に勝てなかった時期の前半戦で目立ったが、異常なまでに前に人数かけて攻撃に出てきたり、異様にライン上げてボールを奪いにくる時がある。その結果として何がおきたかっていうと、あっさりカウンターでやられたり(1stの鹿島戦)、一本のパスで裏取られて失点したりしていた(1stの新潟戦)。身も蓋もないけれど、勝てなかった時期の柏さんってのは、リスクを取りすぎていた。


なんであんな不必要なリスクを取るんだろうと思っていたのだけれど、柏さんの監督さんのコメント読んで、「ああ、この人、tiltに陥りやすい性格なんだ」と思ったのである。というのも、コメントで、

「ただわれわれは前期(1stステージ)にたくさんの落とし物といいますか、忘れ物といいますか、たくさんのモノを置いてきました。それを1日でも早く、1分でも1秒でも早く取り返したいという思いでやっています。」


と言ってるんだけど、これ典型的なティルトに陥った人間の心理だからだ。勝負事の世界でやってはいけない事の一つに「負けた分を取り戻そうと考えてはいけない」ってのがある。なんでダメかというと負けた分を取り戻そうとするあまり、まったく割に合わないリスキーな行動をしてしまうからだ。サッカーでは、これの典型状態は大きく分けて二つで、



1,攻撃時に前に人数をかけすぎてカウンター食らって憤死
2,守備では前でボール取ろうとする余り、ライン上げすぎて裏取られて憤死



となる。これね、上手くいってないチームで本当に頻繁に見られる傾向なんだ。チームが連敗していて、こういう状態が起きていたら、チーム全体がtiltに陥っている兆候だ。ぶっちゃけ、清水さんとこも似たような状態だった。



サッカーでもポーカーでもそうだし、他のゲーム全般でそうなんだけれど、勝負事では「負けた分を取り戻そう」という心理状態になったら、その時点で負けだ。この心理状態になったら、すぐにゲームをやめて頭が切り替わるまで待つしかない。その状態でゲームに臨むと、不必要なレベルでリスクを取るようになり、結果として自滅してしまう。



僕は柏さんの今のサッカーが結構気に入ってるんだけど、監督さんの心理状態は非常に危険と言わざるを得ない。「負けた分を取り戻そう」としてはいけない。これだけは絶対にダメだ。サッカーでは全部の試合には勝てない。だから1シーズンで何試合かは必ず負けるスポーツなんだ。だから、「負けた分を取り戻そう」なんて考えてはダメだ。そういう心理状態に指揮官が陥りやすいのは本当に危ない。連敗した時に本当に危険な状態になる。


今日は、そういう話で〆とく。ではでは。