サッカーのマッチレポートなどを中心に。その他サッカーのうんちく系ブログ。

書評「Jリーグ再建計画」とJリーグの経営の今について

本日は割と堅い話になるが、Jリーグのチームの経営については扱いたいと思う。


これについては、先日読了した、



Jリーグ再建計画 (日経プレミアシリーズ)

Jリーグ再建計画 (日経プレミアシリーズ)



の書評もかねて行いたいと思う。


実は、Jリーグの経営の話については、先日、


Jクラブ個別経営情報開示資料(平成26年度)


で、J1のクラブの経営情報が開示され、2014年のJクラブの経営状態が明らかになった。


結論からいっちまうと、幾つかのチームは色々ヤバイ。


「Jリーグ再建計画」について


まず、本の話からになるけど、先に紹介した「Jリーグ再建計画」については、サッカーライターの秋元大輔さんが、大東和美前チェアマン、村井満チェアマンなどといったJリーグの要人にインタビューして書かれた本となっている。内容としては、「何故2ステージ制を採用しなければならなかたのか?」という話や、「現在のJリーグの窮状」についての話などがメインになっている。


この本でも扱われているけれど、2ステージ制への移行をせねばならなかった理由として、「2014年からJリーグ本体に最大13億円の減収予測がたった」というものがある。これは主に放映権料の減額を提示された事が原因だったと言われる。この本にもあるが、もともとJリーグは地上波では視聴率が3~4%しか取れず、スカパーのJリーグ部門も赤字みたいなんで、放映権料ビジネスという点で、Jリーグは全く採算が取れない状態に陥っていた。


一方で、野球の夏の甲子園もそうだが、一発勝負のトーナメントはプロ野球の視聴率が全然取れない時代においても、相変わらず視聴率が良い。具体的には決勝になると視聴率が20%くらい取れる。


そして、これはサッカーもそうなんだが、高校サッカー選手権の決勝のほうがよっぽど数字が取れるというのが現状だったりする。去年、高校サッカー選手権決勝「富山第一×星稜」が、富山県内で瞬間最高視聴率62.6%を記録したそうだが、トーナメント形式の一発勝負を一般人は好むみたいな所があったりするのだ。


なので、Jリーグ上層部と、メディア関係者が「プレーオフやってほしい」と願うのも、しょうがない部分があると思っている。サッカーファンとしては、一発勝負のプレーオフでリーグ戦の王者を決めるなど、とてもじゃないが納得は出来ない。サッカーってのは運の要素が強いスポーツであり、一発勝負では、何が起きるかなんて予測がつかないからだ。リーグ戦38試合もやれば、かなり実力が順位に反映されるが、一発勝負のトーナメントってのは、実力が順位に反映されるとは言い難い。だから、僕も、プレーオフで年間王者を決めるというのは納得しがたい部分がある。だが、リーグ戦では優勝がかかった試合ですら視聴率が取れない以上、視聴率とれそうなプレーオフやらないと、ダメなんかなとは思う。(プレーオフですら視聴率とれなかったら、本格的にJリーグやばい)



さて、Jリーグ本体の年間予算は120億で、配分金はJ1は年間2億~2億5000万、J2は一億となっている。この本でも扱われているが、13億円の減収が生じた場合、減額幅はJ1の1クラブあたり4000万、J2の場合2000万と試算された。


この状態で、2014年のJリーグ経営情報開示と照らしあわせてみよう。


Jクラブ個別経営情報開示資料(平成26年度)


こちらになるが、明らかにヤバイクラブがある。プロサッカークラブは企業であり、当たり前だが、「借金返せないとデフォルトする」存在である。この観点からいうと、2014年の柏、横浜FC、福岡なんかは、ちょっと危ない。2013年に福岡の経営危機が表面化したけれど、2014年の財務状態を見る限り、福岡は流動資産(現金なんか)が1億3700万円にたいして、流動負債(一年以内に返さないといけない借金)が2億6800万円となっており、この状態で2000万円の減益が発生すると、資金ショート起こしかねない状態だった。福岡は依然として危機的な状態にある事は変わっていない。J2のクラブで、持ってる現金にたいして、短期の借金が大きいクラブってのが、去年の横浜FC、福岡なんかで、こーいうクラブは配分金減額されると資金ショートおこしかねない。J2は特に深刻なのだ。




ただ、J1でもやばいクラブってのはある。一番は柏さんで、光り輝く流動負債10億4100万円。一方で、流動資産は2億2900万円となっており、親会社から資金補填してもらわないとこれ無理じゃね?という状況にある。親会社がいなかったら、柏さんは2014年に選手とスタジアムを売り払わないと無理になってただろう。はっきり申し上げておくけれど、柏さんの財務状態は悪い。もの凄く悪い。入場料収入もグッズ収入も細い。そしてスタジアムは拡張が難しいので入場料収入を伸ばすのは難しい。さらに、チーム人件費が営業収入の6割をこえており、サッカークラブの適正水準と言われる5割を大きく上回っている。この赤字を広告収入という形で親に補填してもらってる格好だ。親が元気だからいいけれど、親が倒れたら、間違いなく柏さんトコは潰れる。そういう風に出来ている。




次に、やばいというか、もうどうやってやりくりしてんだかよくわからないのが神戸である。神戸も親がミッキーなんで、すぐにつぶれたりはしないのだが、毎年のように赤字をだす万年赤字クラブだった。ちなみに、神戸の数字の中で面白いのは、神戸が赤字をだすと、固定負債がその分増えるという構造である。ま、ミッキーだしね。ただ、クラブライセンス制度の問題で、2014年は流石に赤字をだす事は出来なくなった(3年連続赤字だとクラブライセンスがもらえない)。で、神戸は何したかっていうと、光り輝く特別利益22億5000万円計上である。これによって、神戸の固定負債は2013年の19億9100万円→2014年3億1800万円へと圧縮されたのでした。めでたしめでたし。親がミッキーじゃなかったら、ここもとっくの昔に死んでるクラブである。ミッキーについては、現場に口だすって事で嫌ってるサポもいるみたいだけれど、ミッキーいなかったら、とっくの昔にぶっつぶれているクラブなんで、まあ、大目にみてあげたほうがいいじゃないですかな、と。ミッキーがいなかったら2014年で神戸は潰れてましたyo。




もうひとつ、横浜FMについても扱っておく。「Jリーグ再建計画」では横浜FMの話に、かなりのページが割かれている。この本でのマリノスの嘉悦朗のインタビューはなかなか面白くて、僕は興味深く読ませて頂いた。なかなかのやり手だなあ、というのが僕の印象である。実際に、2010年に嘉悦さんが社長に就任してから、マリノスは入場者数を順調に伸ばしており、入場料収入も伸びている。これは、嘉悦社長が就任してから、地道に取り組んできた成果であり、評価できる。また、就任直後から、マリノスの改革のために、「マリノスは実は赤字です。親の補填をうけないと成り立たないクラブなんです。」って事を内外に公表したこともプラスだった。これによって、クラブ内部で「このままじゃダメなんだ」っていうコンセンサスが出来、改革のための意思統一ができたからだ。ただ、一方で、赤字体質の改善は上手くいっていない部分がある。マリノスは2010~2012までは赤字のままで、流動負債がどんどん膨らんでいった。2012年には、マリノスの流動負債は20億1700万円まで膨らんでおり、一方で流動資産は4億8000万円。ここも、いつ突然死してもおかしくない状況となってしまった。手持ちの現金4億に対して、一年以内に返さないといけない借金20億は多すぎる。フツーの中小企業なら資金ショートでぶっつぶれてもおかしくない。マリノスが2013年に10億の特別利益を計上したのは、クラブライセンス制度の問題もあるが、財務構造上、非常に悪い状態になっていたという背景があった。マリノスは2014年の広告収入が20億5900万円となっており、2013年度の15億1300万円より5億以上多くなっているのだけれど、これも親からの補填と見るのが無難だろう。嘉悦社長は、就任以降で、マリノスの営業収入を10億近く増やすことに成功したやり手だが、借金経営、そして親からの補填を受けての2014年の営業収入45億という形である。まあ、それを内外に隠すことなく発表してくれたおかげで、Jリーグのサッカークラブの実情ってが白日の目に晒されたのだけれど。



最後に湘南の話もしておこう。湘南ベルマーレというチームを「Jリーグ経営情報開示」で見ていくと、「ファッ!?」となる部分がある。どこが変かというと、アカデミー運営経費がゼロなのだ。なんで、アカデミー運営経費がゼロかっつーと、ここにはちょっとしたカラクリが存在していて、湘南は、アカデミーを本体から切り離しており、「NPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブ」として運営しているんだ。なんでNPO法人にしてるかってーと、NPO法人なら、TOTOの助成を受けられるんだな。プロサッカークラブ直属のアカデミーだとTOTOの助成がおりないんだけれど、こうすればTOTOの助成がおりるって訳。そんな理由で、ベルマーレのアカデミー運営経費がゼロな訳さ。


Jリーグの理念、「脱企業スポーツ」


今回の話の〆としては、この話になるのだけれど、Jリーグは発足当時から、「脱企業スポーツ」を理念として掲げてきた。ただ、現実的には、Jリーグの創生期に参加したクラブの多くは親会社をもっていた「企業型スポーツクラブ」であり、「市民クラブ」ってのは、その後に参入していったクラブとなっている。



いわゆる親会社がバックについているチームはJ1に多く、親がいない市民クラブタイプは、大概J2ってのが現状だ。市民クラブの予算は5~10億がせいぜいで、J1を戦うような戦力を揃えることは出来ない。出来たとしても、毎年のようにふくれあがるチーム人件費という問題に直面することになる、つまり今のサガン鳥栖だ。鳥栖さんは、営業収入18億にたいして、チーム人件費11億となており、人件費が60%を超えてしまっている。サッカーにおける選手人件費の適正水準は50%以下とされているから、鳥栖さんは非常に危険なゲームをしている事になる。実際、ここ2年赤字なのだ。クラブライセンス制度の問題から、来年は赤字を出せない。



結局の所、市民クラブのままだと、J1で戦うのは難しいし、戦い続けるのはさらに難しい。現実的には、親がついてないと、という奴だ。脱企業スポーツというJリーグの理念は、達成されたのかというと、残念だが、強いクラブは親もってる企業型クラブである以上、理念と現実の間にギャップがあると言わざるをえない。



今回の話はJリーグのクラブ経営の難しさばかり強調してしまったが、期待がもてるクラブもある。「Jリーグ再生計画」の中でも触れられているが、川崎なんかは、割と期待がもてる。現状は入場料収入が細く、広告収入依存の典型的な親会社依存のクラブだけれど、等々力の改修が終わり、2020年までに3万5000人入るようになれば、川崎は浦和並に金のあるクラブになれるからだ。


ただ、やっぱり市民クラブは厳しい。ほとんとの市民クラブは良いスタジアムを持っていないので入場料収入には限界があり、広告収入は親がないので集めにくい。放映権料はTVでJ1ですら視聴率を取れないので頭打ちとなっており、ここから成り上がるのは非常に難しい状況なのだ。さらにクラブライセンス制度のせいで、赤字出せない状況なので、「身の丈経営」だとチームの強化なんてままならない状況となっている。



湘南の叫び「Jリーグが規制緩和しないと市民クラブはしんどい」



こないだ、湘南の社長が色々と言っているけれど、「脱企業スポーツ」というJリーグの理念は大事な事なんだけれど、現行のルールだと、親がついてるクラブが有利すぎるってのがあるし、何とかならんもんですかね、とは思う。結局の所、クラブライセンス制度がある限り、赤字だしても親が補填してくれるチームが有利になっていく一方だ。湘南サポとしての妬み嫉みが入っているけれど、赤字だしても親が補填してくれるクラブと、赤字だしたらそのままクラブライセンス取りあげられちゃうクラブ、どっちが強くなるかなんて明白じゃないですか。



この話になると、「チーム名に企業名いれてもいいですか?」という話になるので、難しいのは分かっているのだけれど、そろそろ、ちょっと考えてくれてもいいんじゃねぇかなと。


ま、今日はそんな話なんでしたとさ。

2015 ロシアワールドカップ二次予選 「日本対カンボジア」のレビュー

さて皆さん、こんにちは。本日は先日行われた2015年ロシアワールドカップ二次予選「日本対カンボジア」でお送り致します。



今回の試合なんですが、先日にプレビューやった時に言及しましたが、最初の見所が「カンボジアがスカウティングの予想通りの入り方をしてくれるかどうか?」でした。具体的には、相手が5311で試合してくれるかどうかにかかってました。結果はどうだったかというと、カンボジアは日本が想定していた通りの布陣できてくれました。つまり、5311でした。日本のフォメも、前日にメディアにすっぱ抜かれたのと全く同じ。4231でしたんで、



f:id:pal-9999:20150902011143j:plain



こうなってました。


これ、プレビューで書いたことですが、4231と5311がやりあった場合、



f:id:pal-9999:20150902223122j:plain



この白で○で囲ったスペースが問題になります。あそこはデフォで空いてます。このサイドがデフォで空いてる問題は、日本代表の選手も事前に知らされていたらしく、モリゲが



森重真人(FC東京)

「集中力が一番大切な試合」

 ビルドアップのところが今回の試合はできると思うし、サイドのスペースが空くので、サイドからどういう形で中にうまく入り込んでいくのか。そういった形を今回の合宿で練習していましたし、最初から中、中ではなくて、引いてくる相手に対してサイドから始めて、うまく中を使いながらというのができると思う。基本的にはサイドや相手の裏というのを狙っていくと思います。



長谷部誠「しっかり勝ち点3を取る」 カンボジア戦前日 選手コメント

こんな事を前日に言ってるんですね。モリゲらしいというか、メディアにチームの基本戦術を喋ってくれてるわけで有り難い事この上ないですホントに。モリゲのコメント見る限り、サイドのスペース使った攻撃を練習してたらしいので、それメインになるだろうなあとは思っていた訳なんですけどね。


(ちょっと心配なのは、CBがこんなにチーム戦術をべらべら喋っていいのだろうか・・・って事位です。)



まあ、それはチームの問題なんで、本題に入りましょう、今回の試合のレビューを開始します。今回はホントにレビューやるのは楽な試合で助かります。


日本対カンボジア、前半のレビュー

さて、この試合の場合、カンボジアは日本のスカウティング通り、5311で入ってきてくれました。日本はいつも通りの4231。さて、この試合で最初に見られたカンボジアの守備方法ですが、




f:id:pal-9999:20150904203811j:plain



こーなってました。プレビューでも扱いましたけど、これはほぼ予想通りの動き方です。図にすると、


f:id:pal-9999:20150904204330j:plain


こうなるんですけど、ここで大事なのはカンボジアのトップ下が日本のボランチを必ず捕まえる事。インサイドハーフはSBのマークに出るし、中央のアンカーはトップ下をマークしとく必要があるので、トップ下が必ずボランチ捕まえないといけない。とまあ、このシーンはカンボジアに問題ねぇんです。



ただ、問題はここからで。


これね、前半3分あたりから、主にカンボジアの左WBがおかしな事はじめるんですけど(左WBの16番は前半で交代させられちゃうんですが)


f:id:pal-9999:20150904205512j:plainf:id:pal-9999:20150904205515j:plainf:id:pal-9999:20150904205517j:plainf:id:pal-9999:20150904205520j:plain



ここでのカンボジアの守備陣の動きは特に間違って無くて、本田がDFを背負う状況でボール受けざるを得ない状況に追い込んでます。これ、DFにとっては非常に対処しやすい状態で、「ボールも人も視界にいれた状態」で、「相手はゴールを背にしてボールを受けてる」訳で、DFが圧倒的に有利な状態なんです。ところが、ここでカンボジアのインサイドハーフ(以下、IH)とWBは本田がターンして前にパス出せる状態にしちゃうんです。


これは絶対にやってはいけない守備で、途中まではカンボジア有利だった状況が、本田をターンさせちゃったことで、カンボジア超不利って状況に変わっちゃったんです。この後、酒井はサイドを抉ってクロス。得点はできませんでしたけど、抉ってクロスで終われたんで、日本にとってはグッドな攻撃でした。



この日の前半に目立ったのは、日本の右サイドで、本田がちょっと引いてくれば、簡単にボールうけて前むけるんで、もうひたすら右サイド攻めてれば良いみたいな状態でした。これ、プレビューでも言いましたが、


f:id:pal-9999:20150902224403j:plain


あの位置でWGがボール受けて前向けたら、あとはWGが好きにやれば良いだけなんです。具体的には、



1,SBのオーバーラップ使う
2、トップ下とのワンツー
3、カットインしてミドル、あるいはファーへのクロス
4、縦突破クロス
5、中央に斜めにパスいれてCFとトップ下がスルーをつかったコンビネーション


って選択肢のうち、WGが好きな事をやれば良い。



普通、あそこで簡単に前向かれてしまうと、上記のような攻撃を雨あられとやられる事になる為、簡単にWGに前向かせたりはしないんですけど、この試合の前半の場合、カンボジアの16番のWBのマークが異常に緩くて、これ、確認した限りだと、


f:id:pal-9999:20150904211048j:plainf:id:pal-9999:20150904211051j:plainf:id:pal-9999:20150904211054j:plainf:id:pal-9999:20150904211101j:plainf:id:pal-9999:20150904211105j:plainf:id:pal-9999:20150904211108j:plain



もう、延々とこのリプレーなんですが、日本が先制するまで、同じパターンでやられてんですよね、カンボジア。この試合に関して言えば、サイドのスペースガラ空きな上に、本田がちょっと引いてくれば、簡単にボール受けて前むけるので、サイドの本田にボール出して、あとは本田が好きにやればいいって試合でした。で、26分に本田のミドルで日本が先制。



試合のプレビューで「5311ならスペースあるからやりやすい、541だと面倒」って話しましたけど、なんできついかってーと、図で説明しますけど


f:id:pal-9999:20150904211702j:plain


こうなるんですが、541だと本田が引いてきてボールうけるスペースがまず無いんです。サイドに一人選手いますからね。それに、サイドにボール出しても、


f:id:pal-9999:20150904211841j:plain


こんな感じで対応されるので、サイドで守備側が数的有利作れるんですわ。CFがボランチ捕まてくれる事が条件ですけど、これやられると本当に面倒くさくなる。正直な話、前半は「なんで541にでドン引きしないんだろ?」と不思議でした。



この日の前半ですけど、問題があったとすれば、


1,武藤が左サイドでもっとやれただろって所
2,香川が二回も決定機外した所。29分と41分の奴
3、岡崎に楔いれるの少なすぎ


って感じでした。この日、左サイドの武藤については、もうちょっとやってくれないと困る試合でした。ちょっと引いてくればフリーで前むけるというWGにとっては夢のような試合だったわけで、この試合の前半の武藤には不満があります。香川については言わずもがな。あの決定機を二回も外すのはありえない。岡崎への楔については、キャプでちょっと説明しときますが、


f:id:pal-9999:20150904214838j:plainf:id:pal-9999:20150904214842j:plainf:id:pal-9999:20150904214846j:plainf:id:pal-9999:20150904214849j:plainf:id:pal-9999:20150904214852j:plain


こーいうシーンだったんですが、この試合、カンボジアのアンカーはわりと香川にぴったりついてました。アンカーがトップ下にぴったりとついてるなら、トップ下の動きでアンカー動かして、CFに楔いれてきゃ良い訳です。ところが、この日、岡崎になかなか楔入らなくて、イラッと来るシーン多かったです。岡崎はボール要求してるんだけど、ボールでてこねぇんですね。山口と長谷部のダブルボランチなんでしょうがないのかもしれませんけども。



とまあ、前半の感想はそんな所です。前半44分にカンボジアは16番を懲罰交代。守備が軽すぎましたし、当然です。これ、そもそも論なんですが、16番の選手、FW登録なんですよ。代わりに入った18番はDF登録。なんでFW登録の選手を本田とマッチアップさせてたの?と、普通に聞いてみたい。




日本対カンボジア、後半のレビュー

さて、こっからは後半です。前半と後半で、何が違ったかというと、カンボジアの左サイドにD登録の選手Fが入ったって所です。新しく入った18番の選手は、本田をわりとタイトにマークしてたので、本田が前半みたいに簡単に前むけるって事は無くなりました。



でもって、後半4分に吉田のミドルで日本は二点目。あれはビックリしました。


この後、後半8分あたりで、香川と武藤が位置を入れ替えてます。本田のいる右サイドはマークがタイトになってたんで、左サイドで起点作りたかったんでしょう。後半8分以降は、前半の右サイドのリプレー状態で、


f:id:pal-9999:20150904221105j:plainf:id:pal-9999:20150904221108j:plainf:id:pal-9999:20150904221111j:plain



こんな感じで、香川が簡単に前向けるんで、あそこから攻めてりゃいいだけでした。中央の場合、アンカーとCBにタイトにマークされて中々前向かせてもらないですけど、あそこだと、ホント簡単に前向けるんです。この後、15分に香川がごっつぁんゴール決めて3点目。この日は香川が二回トーレスしてたんで、3回目やったらピクシーばりに「次やったらコロヌ」状態だったんですが、3回目が来なくてよかったです。いやホントに。



この日の試合なんですけど、試合中、延々と「宇佐美と原口いれろーー」ってtwitterで喚いていたんですけど、なんで原口と宇佐美かっていうと、この日の試合は、サイドでWGが前向き放題だったからです。この日のカンボジアなんですが、中央は凄くタイトにマークするしスペースも無い反面、サイドのスペースは放置、WBのマークがゆるゆるって試合だったので、WGにとってのパラダイスみたいな状況がサイドに出来てました。試合中、宇佐美と原口の映像が出たとき、「試合でたくてしょうがないだろうなあ」と思って眺めてましたが、あんだけサイドにスペースあるなら、のっけから原口と宇佐美でも良かった位なんです、いやマジで。二人とも、この試合ではチャンスをそれぞれ貰えた訳ですけど、この試合なら最初からも良かったかなと。



この日のハリルホジッチなんですけど、交代策も妥当でしたし、戦術面でも上手くいってました。香川と武藤の位置を取り替えたのもいい判断でしたし、僕の中でハリルホジッチの株が上がった試合でしとさ。


3点じゃ物足りないって論調もありますが、香川が二回トーレスしてなきゃ、5点とって終わってた訳ですよ。なんで、3点しか取れなかったのは選手の最後の部分としか。


そろそろまとめに入りますが・・・


この試合の後半はあまり書くことがありませんので、そろそろまとめにはいります。



この日の試合なんですけど、率直に言って、勝てて良かったです。いや、本当に。ここで負けたりしたら、ハリルホジッチの進退問題に発展しかねない試合だった為です。流石にここで監督交代は不味い。二次予選の真っ最中ですから。



この試合に関してはプレビューやってしまった分、書くことが少ない試合です。長谷部が「ダイレクトプレーが少なかった」って反省してましたけど、岡崎にもうちょい楔入れる事を意識して欲しいってんは有ります。岡崎が要求してるのに出てこないシーンを結構みかけたんで。もっとも、サイドに開けばWGが簡単に前むける試合だったので、サイドサイドになっちゃうのはしょうがないのですけれども。


ダイレクトプレーする必要があるのは、WGがタイトにマークされて、サイドでなかなか前向けない時ですけど、この日の場合、サイドで簡単にWGが前向けてた訳で、WGが前むいて好きにやればよいだけの試合だった事もあり、あんまし、ボランチを攻める気はないんですけどね。結局、この試合のまとめは、「WGがサイドで簡単に前向けるなら、WGが好きにやれ、以上」で終わってしまうので、書くことがホントにないんです。サイドはマークがタイトでWGがなかなか前向けない、中央もしっかり固められてる、みたいな試合の場合、工夫が必要になってくるんですけど、この試合の場合は、そうじゃなかったので。




次はアフガニスタン戦なんですけど、またハリルホジッチがドジッ子やって、風のいたずらで、日本のスタメンとアフガニスタンのフォメが流出したら、プレビューやります。流石にないでしょうけど。



今日はこのあたりで。それでは。

2015ロシアワールドカップ二次予選 日本対カンボジアのプレビュー

みなさん、こんにちは。本当は今日はJリーグの話でもしようかと思ってたんだけど(いい加減、J1も佳境なので盛り上げていかないといけない)、ハリルホジッチがドジッ子かまして、



カンボジア戦のスタメンと戦術が漏洩…ハリル、急いで隠すも間に合わず




こんな感じで、3日のカンボジア戦のスタメンと戦術を漏洩して下さったので、本日はプレビューやっとこうと思う。風で戦術ボードがめくれて、試合のスタメン漏洩とか、どんだけ不用意なんだと思うけど、ハリルホジッチは体脂肪ネタの時にも前科があるので、あれはあれでワザとやってるのかもしれない。



ちなみに、スタメンのほうなんだけど、


その戦術ボードからカンボジア戦のスタメンと見られるメンバーが判明した。それによるとGKは西川周作(浦和レッズ)、最終ラインは右から酒井宏樹(ハノーファー/ドイツ)、吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)、森重真人(FC東京)、長友佑都(インテル/イタリア)、ダブルボランチは山口蛍(セレッソ大阪)と長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)、トップ下に香川真司(ドルトムント/ドイツ)、ウイングは右が本田圭佑(ミラン/イタリア)、左が武藤嘉紀(マインツ/ドイツ)で、1トップに岡崎慎司(レスター/イングランド)。対するカンボジア代表はメンバー発表会見でハリルホジッチ監督が口にしていたように5バックで、中盤は3ボランチ+トップ下に1トップを配した布陣を想定している模様で、人やボールの動きを想起させる矢印も記入されていた。これがカンボジア戦の狙いということなのだろう。

こーなっているので、図にすると



f:id:pal-9999:20150902011143j:plain



こうなる。ポイントとしては、やはりボランチだ。山口蛍と長谷部のダブルボランチ。どちらもゲームメーカータイプではない。攻撃に関しては、前へ走り込む、追い越す動きに特徴のある選手なので、中盤でボールを動かす気はあまり無いようだ(長谷部も山口もアシストは多くない)。これまでの試合もそうだったけど、中盤でボール動かしてたのは、山口がサイドチェンジ連発してた中国戦くらいなんで、ポゼッションにはそんなに拘ってるスタメンに見えない。


正直いって、カンボジア相手なら、ボランチには柴崎使いなよ、と思う。山口か長谷部、どっちか片方でよくて、もう一人はもっと捌ける選手つかないよと思う訳だ。




もっともスタメン選考は代表監督の特権だし、それについてグダグダいってもしょうがないので、プレビューに移ろう・・・・とその前に、前回のシンガポール戦の時にでた問題と、本来やるべきだった攻撃の話をしておく。


前回のシンガポール戦で出た問題と、本来やるべきだった攻撃の話


まず、この話から。シンガポール戦はレビューやったので、


2015ロシアワールドカップ二次予選、日本対シンガポールのレビュー



こっちのエントリにまとめてあるけど、あの試合の場合、


1,右サイドで大渋滞が起こっている
2、左サイドで縦パスが入らない


って問題が起きていた。この話は以前のエントリでまとめたので、今回は詳しくは触れない。今回のエントリでは、前回のような試合では、どういう攻撃をすべきだったかという話をしておく。



前回、シンガポールが日本にやった守備方法というのは、


f:id:pal-9999:20150618010909j:plain



こうなるのだけれど、サイドではシンガポールのSBとSHがマンツーマン気味に日本のWGとSBを捕まえる。中央はボランチ3枚がスペースを消すのを優先し、中央の岡崎に楔がはいらないように守っていた。その代償として、日本のボランチがシンガポール陣内でフリーでボールを捌けるという状態になった。



相手がこういう守り方をしている場合、どういう風に攻めれば良いのかって話になるんだけど、これ、実は簡単で、


f:id:pal-9999:20150902222049j:plain


こんだけやってればよかった。「え、これだけ?」と思われるかもしれないけど、こんだけ。このやり方なんだけど、レーブのドイツ代表が好むやり方だ。ドイツ代表はWGとSBを目一杯サイドに張らせる。狙いとしては、相手チームを横に広げることで、SBとCBの間、SHとボランチの間のギャップを作り、そこをボランチ、トップ下に使わせるっていうもの。ドイツ代表を見ているとケディラがやたらとSBとCBの間に走り込んでくるのを見かけると思うんだけど、あれはチーム戦術として必須の動きで、サイドにWGとSB張らせるチームの場合、SBとCBの間のギャップに走り込む動きをボランチが担うことが大事になってくるんだ。





実は、これ、試合中、1度上手く行ったことがある。キャプでやると、


f:id:pal-9999:20150902222839j:plain


シンガポール戦の前半11分、この状態ができた。この時は、攻守の切り替えの場面からのスタートだったんだけど、本田がサイドに張ってる状態だったので、シンガポールのSBとCBの間にギャップが出来ていた。で、そのスペースを香川が使ってシュート打ったシーン。


シンガポール戦の場合、アンカーはスペース潰すのを優先し、香川にマンツー気味にはついていなかった。この場合、ボールを左右に動かしてSBとCBの間にギャップを作り、そのスペースをトップ下に使わせてしまえば良いだけなんだ。あそこに走り込んでもシンガポールのアンカーはついてこないので、本来であればトップ下はあそこのスペース使ってやりたい放題できる。



ところが、あの試合の場合、それは出来なかった。理由は、右サイドの場合、本田が常時中に入ってきていたので、SBとCBの間にスペースがなかった事。左サイドの場合、SBとCBの間にギャップが出来ていて、香川が走り込んでいるんだけれど、ボールが出てこなかった事。この二つだ。



あの試合の場合、根本的に攻撃の順番を間違っていた。本田は相手のアンカーが香川についてきてない時点で、サイドに張ってるべきだった。そして、SBとCBの間にスペースを作り、そこを香川、あるいは走り込むボランチに使わせるべきだった。この動きを続ければ、そのうち、アンカーが香川にマンツー気味でつきだす。そうなったら、香川の動きでアンカー動かして、空いたスペースを使うために中に入ってもいいんだ。ところが、それが起きてないのに本田は中に入りっぱなしだった為、右サイドでの大渋滞が引きおこされてしまった訳だ。




ここからがカンボジア戦のプレビューになるんだけど。

さて、こっからは3日のカンボジア戦のプレビューになる。スタメンとカンボジアのフォメは、ハリルホジッチがドジッ子してくれたので、すでにわかってるわけだ。日本は4231、カンボジアは5311だ。基本的に、5311ってのは、守備面で問題があるフォメであり、デフォで3の両脇が空いており、日本のSBが浮いてしまう。


f:id:pal-9999:20150902223122j:plain


こうだな。なので、あの○で囲ったスペースを上手く使う事、浮いてるSBを使った攻撃が大事になってくる。


ただし、単純にSBの足下にボールが出しても、



f:id:pal-9999:20150902223150j:plain


この形での対応されて終わる。インサイドハーフがサイドに出てSBに対応。ボランチのマークはトップ下に受け渡し、CFがCBのマークについて作り直しをするのを防ぐという形だ。



勿論、532でドン引きしてくる可能性もある。つまり、噛み合わせとしては、



f:id:pal-9999:20150902020229j:plain


こうなる。デフォだと、これ、やっぱり日本のSBが浮いてるんだけど、SBにボールが出たら、

f:id:pal-9999:20150902020454j:plain


この形で対応してくる可能性が高い。中盤3枚のスライドでSBには対応。日本のCBは放置でボランチを2トップに捕まえさせて、ボランチ経由のビルドアップを封じる。CBに戻してビルドアップをやり直させるのはオッケーくらいの形だな。



さて、こういったフォメの相手と対戦する場合、どうやって攻めたら良いの?って話になるんだけど、この手のフォメに対する定石としては、


f:id:pal-9999:20150902223601j:plain
f:id:pal-9999:20150902223904j:plain
f:id:pal-9999:20150902224140j:plain


この三つになる。


繰り返しになるが、デフォだとSBが浮いてるんだけどSBの足下にボール出すと、ほぼ確実に相手のプレスに捕まるって所だ。なので、単純にSBにボールつけるのは悪手。これやっちゃうと、相手の思うつぼになる。



戦術については、順をおって説明すると、5311の泣き所は3の両脇で、あそこがデフォで空いている。なので、あそこで起点を作りたいのだけれど、SBに単純にボールつけても、


f:id:pal-9999:20150902223150j:plain



こんな感じで相手のプレスに捕まって詰まる。だから、基本は降り来てたWGを利用する。3の両脇のところにWGを下ろす。ここでフリーでボールうけて前むけるなら、

f:id:pal-9999:20150902224403j:plain



あとはあそこからWGが好きにやればいい。



ただ、普通はWBが出てくる。そうしたら


f:id:pal-9999:20150902223601j:plain


この形でWBの裏にSBを走り込ませ、トップ下はフリックでSBにボールをあわせるって形を取る。もしくは、



f:id:pal-9999:20150902224616j:plain


この形でWGがフリックしてトップ下をWBの裏に走り込ませる形でもよい。




これが2~3回成功すると、相手のCBかアンカーがトップ下にぴったりマークにつくようになる。CBがトップ下についてくる場合、


f:id:pal-9999:20150902223904j:plain



この形を狙う。相手のCBがトップ下やCFにぴったりついてくる事を利用して、相手の3バックを中央に寄せて、サイド深くへのパスコースを作り出す。その上で、そこにSBとボールを送りこむって形だ。あるいは、


f:id:pal-9999:20150902224140j:plain


この形でもよい。これは相手のCBがトップ下やCFにぴったりついてくる事を利用して、相手の3バックの間隔を広げて、ボランチが走り込むスペースを作るってやり方になる。



ちなみに、アンカーがトップ下にマンツーマンでついてくる場合、これは一番簡単で


f:id:pal-9999:20150902224938j:plain


こうなる。トップ下の動きで相手のアンカーを動かして、空いた中央のスペースを岡崎に使わせる。つまり、岡崎に楔打ち込んで、本田が岡崎の落としを受けて、あとは本田が好きにやればいい。



ただし、これらのやり方は、相手が541で守ってくる場合には意味がなくなる。541相手だと、SBがオーバーラップしても相手がついてきて対応されてしまうので、SBのオーバーラップはさほど有効ではないし、中央がダブルボランチなので、かなり面倒な事になる。個人的には報道通り、カンボジアが5311なら、かなり嬉しい。スペースがあるからだ。一方で、541でドン引きされるとかなり面倒くさくなる。



ここで大事なのが、相手の出方だ。相手チームがどういう守り方をするのか、それで攻め方は当然変わってくる。今回のエントリで、シンガポール戦の話を絡めたのは、シンガポール戦の場合、相手のDFの動きをみて、攻撃方法を変えるって事が出来ていなかったからなんだ。本田は最初っから中に入りっぱなしでDFの守備方法に関わらず、常に中に入っていった。


当たり前の話なんだけど、WGが中に入ったほうが良い局面と外に張ってたほうが良い局面がある。その判断が本田は出来てなかった。



次の試合もそうなんだけど、5311相手の場合、相手のWBがどこまでWGについてくるか、インサイドハーフがSBについてくるのか、アンカーはトップ下についてくるのか、トップ下とCFが交錯する動きをした時に、CBはどう対応するのか、それによって攻め方は変えなきゃいけない。




前回のシンガポール戦なんだけど、前4人の動きがちぐはぐでチームとして動けてなかった。なので、カンボジア戦ではしっかりやって欲しい。きちんとチームとしてサッカーしてくれって事。





とまあ、ここまで色々書いたけど、実はカンボジア相手なら、戦術云々でなく個人技でねじ伏せて欲しいってのもある。実力差がある相手とやるときは、戦術でなくて純粋な個人の能力差で押し切って欲しいし、「格下のこざかしい戦術なんぞ力でねじ伏せろ」という脳筋思考、嫌いじゃないのだ。



プレビューで、あまり多くかいてもアレなんで、この辺りで。


ではでは。