サッカーのマッチレポートなどを中心に。その他サッカーのうんちく系ブログ。

スポーツにおけるジャイアントキリング~スポーツ別での大番狂わせのお話~

さて皆さん、こんにちは。本日はサッカーの話じゃなくて、タイトルの通りに「ジャイアントキリング」の話でもしようかと思います。この話をしようと思ったのは、皆さんご存じでしょうが、ラグビーW杯で、日本代表が南アフリカ代表を破るという快挙を成し遂げたからです。この試合については、すでに各所で話題になってますし、試合内容については触れません。日本代表対南アフリカ代表の試合の内容については、他所の記事を当たってみてくださいな。



あらかじめ言っておきますが、ラグビー日本代表が成し遂げた事は、サッカーを喩えに使って説明するのは困難です。というのも、ラグビーはあらゆるスポーツの中で、最もジャイアントキリングが起きにくいスポーツだからで、ラグビー日本代表の五郎丸が「ラグビーに奇跡はない」って話をしてますが、ラグビーで強いチームは格下には負けません。そーゆースポーツの為に、劇的な試合展開と相まって「スポーツ史上最大の番狂わせ」とまで言われている訳です。


うちのブログは、サッカーブログなんで、ジャイキリの話をする場合には、まずサッカーの話から始めるのが筋でしょう。というわけで、日本サッカー史上に輝く最初の大金星、「ベルリンの奇跡」の話から入りますけど、


www.youtube.com


youtubeにこんなのが上がってましたが、1936年、ベルリンのヘルタ・プラッツ・スタジアムにおいて、日本代表がスウェーデン代表を3-2で打ち破った試合です。当時、アジアから踏み出した事がなかった日本代表だったんですが、ベルリンオリンピックに参加することになったわけです。この時は「ベルリンへ!ベルリンへ!」を派遣費用のための合い言葉に寄付金が募られたんですが、始まってみると、なんと一回戦で優勝候補の一角スウェーデンと当たることになり、「とんだものと当たったとがっかりし」状態になってました。スウェーデンは日本ではサッカーやってるの?といぶかしんで状態でした。惨敗は覚悟の上での戦いとなったわけです。


試合は前半はスウェーデンが二点リードで折り返したのですが、後半から日本が巻き返し、後半だけで3点を取り返して逆転勝ち。この時の日本の逆転時のスウェーデンラジオの実況、



「Japaner, Japaner, Japaner(日本人だ、日本人だ、日本人が!)」


はスウェーデンにおいて、最も有名な実況の一つとなっています。もっとも日本代表はその後のイタリア戦で0-8で負けて敗退しちゃうんですけどね。



サッカーにおいては、この手のジャイキリは珍しい話ではなくて、W杯の有名所だと、


1,W杯史上最大の番狂わせとも呼ばれる、第四回ブラジルW杯におけるアメリカ代表(アマチュアの寄せ集めだった)のイングランド代表に対する勝利
2,第八回イングランドW杯における北朝鮮のイタリア代表に対する勝利
3、第11回アルゼンチン大会におけるチュニジアのメキシコ戦での3-1での勝利


なんかが上げられます。ちなみに、この三つが有名なのは、1に関しては、映画にまでなってますし、主将のライトは敗戦のスケープゴートにされました。2に関しては、「コレア」が第一次大戦でイタリアが惨敗した戦場、「カポレット」と並ぶ不名誉な敗北の代名詞にまでなったからです。ちなみに、イタリア代表は空港で怒り狂ったサポに出迎えられ、トマトと卵を投げつけられ、代表監督は即刻解任されるというオチがついてます。3の被害者はメキシコで、選手は空港でトマトと石の出迎えを受け、選手の自宅には脅迫状が届く始末でした。


この三つを取りあげたのは、有名所だという事の他に、ノンプロのアマチュア集団にプロ混じりのチームが負けたという、しょーもない敗戦だったからです。


サッカーってスポーツは、今回取りあげるスポーツの中で、もっとも番狂わせが起きやすいスポーツです。最近では、マンチェスターシティがウェストハムに負け、バルサがセルタに負けてますけど、この手のジャイキリはサッカーでは割と頻繁に起きます。


サッカーにおいては、「ジャイキリ」が頻繁に起きるって事を一番よく知ってるのが、オンラインのブックメーカーです。



ブックメーカーのオッズを使って説明すると、基本的にコイントスが賭の対象なら、どちらかが出る確率は1対1です。この場合、オッズは2.0(デシマル値)という形で表示されます。サッカーにおいては、bet365の最新のオッズで説明すると、次の「FCバルセロナ対ラス・パルマス」では、バルサの勝利が1.07、「レアル対マラガ」ではレアルの勝利が1.12となってます。「うわ、低っ!」と思われるかもしれませんね。でもね、このオッズだと、ラス・パルマスだろうと、マラガだろうと、100試合やれば7~8試合はバルサやレアルに勝てるって位のオッズなんです。


サッカーにおいては地球上最強のチームであっても、格下に負ける可能性ってのが常に有るんです。それがサッカーってスポーツなんですわ。だからブックメーカーは、サッカーでは圧倒的な本命チームに対しても賭けを受けてくれます。




さて、ここまでサッカーってスポーツはジャイキリが起こりやすいスポーツだって話をしてきました。じゃあ、他のスポーツは?という話になるんですが、ここで



サッカー データ革命 ロングボールは時代遅れか

サッカー データ革命 ロングボールは時代遅れか




この本紹介しときますけど、この本にサッカー、ハンドボール、バスケットボール、アメリカンフットボール、野球のオッズの中央値と分布の話があります。それによると、スポーツ別の本命チームのオッズの中央値は


f:id:pal-9999:20150925015336j:plain



ハンドボール1.28、NBA1.42、NFL1.49、サッカー1.95


こうなってるそうです。ちなみにラグビーW杯の場合、オッズの中央値が1.06とかです。


各スポーツの本命オッズを調べていけば一目瞭然なんですが、ハンドボールとラグビーは、笑っちゃうほどジャイキリが起きません。だから、ブックメーカーは本命のオッズをもの凄く低く設定します。ラグビーに関しては、本命のオッズが1.00とかザラです。ウィリアムヒルでオッズ見て貰えば良いのですが、本命のオッズが異常に低いのがラグビーです。日本がニュージーランド代表とやったら、100回やって100回負けるオッズがつくのがラグビーです。


なんでラグビーではジャイキリが少ないのか。それは、他の人が扱ってるのでググって下さい。


次にジャイキリが少ないのがハンドボール。これもジャイキリが少ないスポーツで、ホントに実力差が結果に反映されます。




2014-2015星取表 ジャパンラグビー公式サイト



ここで、ジャパンラグビー公式サイトの星取表貼っときますけど、ラグビーってスポーツは上位と下位で笑える程、差が出ます。星取り表みてもらえばわかると思うんですが、下位チームは身も蓋も無く、上位チームに全敗してます。これは、ハンドボールも同じで、



星取表 | 日本ハンドボールリーグ


こっちに日本ハンドボールリーグの星取表貼っときますが、ハンドの世界はラグビーほどじゃないですが、下位は上位に勝てません。



1~3位のチームが、8位以下にチームが負けるなんてありえない。それがラグビー、ハンドボールの世界です。実力差が結果にはっきりと反映されるスポーツなんです。この二つに共通するのは、とにかくコンタクトプレーが多いって所でして、フィジカル差がはっきり結果に反映されるせいだとも言われます。(もっとも同じフルコンタクトのアメフトは以外とジャイキリ多いんですが)



一方で、サッカーの世界では、


J. League Data Site



こうなるんですけどね。これは2014のJ1の話ですが、ラグビーやハンドと違って、サッカーは7~9位のチームであっても、上位3チームに勝てちゃうんです。それどころか、15位以下のチームでも、上位3チームに勝つことすらある。



この「ラグビー、ハンド」のジャイキリ起きない勢と「野球、サッカー」のジャイキリ上等勢の中間に位置するのが、NBAとNFLになります。ただ、ここはちょっと説明が必要ですね。NBAにしろ、NFLにしろ、ここは戦力均衡に力をいれてるプロスポーツでして、野球やサッカーほど戦力が特定のチームに集中するって事が起きてません。NFLなんかは、野球やサッカーみたいに戦力集中させたら、ひょっとしたらラグビー化するのかもしれません。




一口にスポーツといっても、このように、大番狂わせが多いスポーツと、大番狂わせが全く起きないスポーツってのが存在する訳です。「勝負はやってみるまでわからない」とは、よく言われますが、現実的には、やる前から結果がわかってしまうスポーツもあるって事です。そういうスポーツは、プロ化する場合、ある程度の戦力均衡策が必要と言われます。逆に、サッカーや野球の場合、大番狂わせが多い為、一試合に限っては、結果の予測が困難を極めます。なので、戦力均衡をやらず、不平等そのものなリーグ運営をしても、試合そのものの魅力は損なわれないという見方も出来ます。



勿論「ジャイキリが起きないからラグビーやハンドはつまらない」という人もいます。サッカーとか野球好きな人は、そういう人多いと思います。一方で、アメリカではMay the best team winなんて言葉がありますが、「最高のチームが勝ちますように」って意味ですが、「勝利に相応しくないチームが勝ってしまう」 事があるのがサッカーと野球だったりします。ラグビーやハンドは、基本的に強いチームがかつスポーツなんで、練習や努力は選手を裏切りません。それがラグビーやハンドの良い所だという人もいます。



今回はジャイキリの話だったんですが、スポーツの中には、「やる前から結果がわかりきってるスポーツ」と「結果は誰にもわからないスポーツ」というのがあります。ただ、それぞれのスポーツにはそれぞれの楽しみ方があり、結果の予測性ってのは、必ずしも大きな問題ではなかったります。今日はそんなお話でしたとさ。



それでは。

2015 ロシアワールドカップ二次予選 「日本対アフガニスタン」のレビュー

さて皆さん、こんにちは。本日は先日行われました「日本対アフガニスタン」のレビューをお届けします。試合自体は6-0で日本が勝ちました。久々の大勝でしたので、最近、日本代表の試合みてモヤモヤしてた方は、スカッとしたのではないかと思います。


今回の試合なんですが、有り難い事に割と書くことはあります。なので、この日のハリルホジッチが取った戦術と、アフガニスタンの守り方の話から入りたいと思います。



日本対アフガニスタン、スタメンとアフガニスタンの守り方


まず、両チームのスタメンから入ります。ただ、アフガニスタンの選手は誰も知らないので、そっちは勘弁してください。



f:id:pal-9999:20150910014842j:plain


スタメンはこうなってました。日本は左WGに原口が入った4231、アフガニスタンは442となってました。この日の相手のアフガニスタンなんですけど、守り方が極端な事やってまして、


f:id:pal-9999:20150910015422j:plain


これ試合開始直後から、ずーっとこうだったんですけど、アフガニスタンはホームで11人ドン引きという身も蓋も無い事やってきました。試合中、「これ許されるのか?」という感じで呆れて見てましたが、ホームで11人ドン引きとか普通無いです。アウェーならともかく、ホームで11人ドン引き442ブロック、FW二人が日本のボランチを見るとか、日本をリスペクトしすぎだろという感じです。ぶっちゃけ、天皇杯なんかでJ3のチームがJ1のチームをジャイキリする事が時々ありますが(昨日、名古屋と清水がやらかしてますけど)、何が起こるかわからないのがサッカーなんだし、あそこまで日本をリスペクトする必要ないだろうと。この日、恥も外聞もなくドン引きしてるアフガニスタン代表にブーイングが飛ばないのは不思議でした。アフガニスタン人はアレで良いのでしょうかね?前にFW残してないので、カウンターすらロクにできない布陣です、コレ。この日の試合なんですけど、前日コメントで長谷部なんかが「アフガニスタンは前にでてくるかも云々」言っていたので、僕は前に出てきてくれるのかな、と思っていたのですが、予想は完全に裏切られる形となりました。コレはハリルホジッチも同じだったと思います。アウェーで11人ドン引きされるとは思ってなかったでしょう。ハリルホジッチもそろそろアジアに慣れてきた頃なんで言っときますが、アジア相手には速攻できません。どこも日本相手にはドン引き、少人数のカウンターというゲームプランで来るからです。前にでてきてくれるの、オージー、韓国、ウズベキスタン位です。



とまあ、そういう訳で、この試合もゴール前固める相手をどうやって崩して点とるかという、典型的なアジア相手の試合となった訳です。


この試合におけるハリルホジッチのゲームプラン

さて、アフガニスタンはホームで442ドン引き、11人でゴール前にバス停戦術を敷いてきた訳ですが、こっからはハリルホジッチのターン。さて、こーいう相手をどうやって崩しまショーという話になるんですが、この日のキーマンは二人。原口と山口蛍でした。これ、この日の一点目に、この日のハリルホジッチの戦術の全てが凝縮されているので、動画貼っておきますね。





アフガニスタンvs日本代表 ゴールハイライト Afghanistan Japan Goals - YouTube



これの香川の一点目です。動画だけだとわかりにくいので、図でこの時の攻めの流れを説明しますが、


f:id:pal-9999:20150910022222j:plainf:id:pal-9999:20150910022230j:plainf:id:pal-9999:20150910022235j:plain


こういう流れでした。ずーっと前に、うちのブログで「サッカーにおける代表的なコンビネーションプレーのお話」って記事を書いて説明した事ですけれど、これは「カットインからのコンビネーション」で、サッカーの代表的なコンビネーションプレーの一種です。WGを使ったサッカーのもっとも代表的なプレーでして、サイドに張ってるWGを使って、相手のSBとCBの間にスペースを作り、そのスペースにトップ下かボランチを走り込ませる事で、相手チームのボランチを最終ラインに吸収させ、空いたスペースにWGがカットインしていくって形になります。


この日、アフガニスタン相手に日本が延々とやっていたのが、この攻撃でして、前半5分にはすでにやってるんですけど、


f:id:pal-9999:20150910023721j:plainf:id:pal-9999:20150910023725j:plain


こうですね。


この日のハリルホジッチの序盤の戦術は、WGをサイドに開かせ、ピッチを広く使い、トップ下かボランチがSBとCBの間に走り込むって形です。これは先日、カンボジア戦のプレビューやった時にも話した事ですけれど、以前のドイツ代表が得意にしてた形です。この日の試合なんですが、これでいきなり点とれたのはホントに良かったです。相手が11人ドン引きの試合なので、早い時間帯で先制したかったのですけれど、理想的な時間に先制点が取れました。


この日の試合なんですが、山口蛍と原口がやたらと目立っていましたが、それはこーいう理由です。この後、前半33分にはCKからの流れでモリゲがゴールして二点目。上手くいくときは上手くいくもんです。CKからさっぱり点がとれなかったのに、あっさり点とれちゃいました。


ただ、あまりに上手くいってるモンだから、はっちゃけすぎたシーンもありました。前半35分ですけど、


f:id:pal-9999:20150910025543j:plainf:id:pal-9999:20150910025547j:plainf:id:pal-9999:20150910025551j:plainf:id:pal-9999:20150910025555j:plainf:id:pal-9999:20150910025602j:plainf:id:pal-9999:20150910025607j:plainf:id:pal-9999:20150910025612j:plain



このシーンなんですけど、香川と山口がSBとCBの間に走り込む事で、原口が中央にカットインするコースを作るのは良いんです。ただ、両SBが高い位置とったまま、ボランチまでゴール前に突っ込んでる為、「後ろも誰もINEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!」って状況が出来てます。この攻撃はクレージーです。当然、この後、カウンター食らいかけました。そういや、ハリルホジッチが、W杯における日本対コロンビアの試合見て、「(試合の最後)後ろに誰もいなかった。ああいう試合は二度と見たくない」とか仰っていましたが、まあ、日本代表のカミカゼ・アタックは風土病みたいなモンでして、「両SBが上がって両ボランチまでゴール前に走り込む万歳サッカー病」は岡田ジャパンでもザックジャパンでもハリルジャパンでも発症しました。代表監督がどうやっても完治しないので、諦めてください。




まあ、この試合は、アフガニスタンが11人ドン引きしており、前半は前にFWを一人も残してたなかったのでカウンター気にする必要はあんまりなかったんですけどね。正直、日本が両SB上げて、ボランチをガンガン攻め上がらせる攻撃やってきた時点で、アフガニスタンは前に一人FW残せよって思ってみてましたが、それでも11人ドン引きを続けてました。日本はカミカゼ・アタック大好きですが、アフガニスタンは塹壕戦が大好きなんでしょう、多分。



この試合なんですけど、左サイドの攻撃はホントに上手くいってました。でもって、サイド攻撃が上手くいってると、当然、中央も上手く使えるようになってました。前半13分には、一度、左サイドにボールを当てて、相手のSBを引っ張り出し、そのスペースに香川が走り込んでボランチを中央から動かし、空いた中央のスペースに降りてきた岡崎に楔を打ち込むって流れで攻撃出来てます。あれは非常に良い流れでした。


この日の前半は、ほぼ理想的な展開で終えることができてます。相手のチャンスは、日本がアホみたいに両SB上げ上げ、両ボランチがゴール前に殺到なんて馬鹿みたいな事やらかした時位で、バランス取って攻めてる時は、相手はほぼノーチャンスでした。



ただ、問題もあって、この日の右サイドなんですけど、本田が例の病気をこじらせてしまい、なんかよく分からない事になってました。この話は試合後半のキャプ使って説明しましょう。



日本対アフガニスタン、後半における問題


この試合なんですが、後半で4点取ってるわけで、前半より点とれてたんだから、あんまりグチグチ言うのは良くねぇんですが、後半で「うーん・・・」というシーンがいくつか見られたので、本田がらみの右サイドの話をしときます。



シンガポール戦の後、レビューで「日本の右サイドの渋滞」の話をしましたけど、後半開始直後、またやらかしてまして、



f:id:pal-9999:20150910032959j:plain



このシーンなんですけど、長谷部と本田と岡崎がみんな同じスペース使おうとしてるんですわ。図でやると、


f:id:pal-9999:20150910033306j:plain


こうなるんですけど、このシーンだと、相手のSHが酒井ゴリのマークにサイドにでてるので、ボランチとSHの間にギャップが出来てる訳です。そこに長谷部、岡崎、本田が殺到してるシーンで、3人が同じスペース使おうとしてどうするの?という話です。シンガポール戦で、それやっても何も起きないってわかったでしょ・・・・


さらに呆れたのは、この後の2:58のシーンで

f:id:pal-9999:20150910033958j:plainf:id:pal-9999:20150910034005j:plain


f:id:pal-9999:20150910034252j:plain



思わず安西先生登場。


この日の試合、右サイドが昨日不全だったんですけども、結局の話、本田が中に入るべき所とサイドに張るべき所の使い分けがビタイチできてねぇんです。本田がやりたいプレーってのは、岡崎の5点目の時みたいなプレーで、ボランチとSHの間のギャップでボール受けてターンして、CFかトップ下とのパス交換から一気にゴール前へって感じなんでしょうけど、ほとんど常時中に入って来ちゃってて、SBとCBの間に長谷部や香川が走り込むスペースがないんですね。ちょっと本田がやりたい事と、香川・長谷部がやりたい事、岡崎がやって欲しい事を図でやりますけど、


f:id:pal-9999:20150910040306j:plain


これは中にはいってきてる本田がやりたい事で、あそこの白で囲ったスペースでボール受けてターンしたい訳です。あそこでターンして違いを作るってのはレフティの仕事といって良いです。


一方で、他の連中が本田にやって欲しい事は、



f:id:pal-9999:20150910040407j:plainf:id:pal-9999:20150910040413j:plain


こっちなんですよね。右サイドではイメージの齟齬が起きてるんです。



この試合の後半なんですけど、途中から原口を右SBにいれてるんですが(このチームにおける原口の便利屋のごとき扱いには涙が出そうですが)、本田の中に入りたがる病がそこからさらにひどくなり、最終的には本田をトップ下にして、両サイドを宇佐美と武藤にするってトコにハリルホジッチは落ち着いてました。



この辺り、ハリルホジッチの考え方が、ちょっとよくわからないのですけど、就任当初から本田が中に入ってくるのを放置してるんです。一方で、香川とか長谷部に、右サイドのSBとCBの間に走り込む動きをさせてる訳で、右サイドのビルドアップがチームとして混乱してんですよね。明らかに。




この試合の後半は4点取れてるわけで、あんまグダグダ言ってもしゃーない事なんですが、右サイドのアレははっきりいって感心しません。早い所、何とかしてほしいです。


ちょっと言わせて貰うと、本田がどうしても中に入るのやめられないっていうなら、日本代表は攻撃時に、



f:id:pal-9999:20150910041849j:plain


こういうポジションチェンジやったほうがいいです。これ、ドルトムントがやってるやり方ですけどね。これなら、本田が中にはいってきても問題ありません。ただ、今回の試合みたいに、ボランチやトップ下のSBとCBの間への走り込みをメインにした攻撃するなら、本田、サイドにきちんと張ってなさいって話です。じゃないと右サイドで組み立てできないので。


ちなみにですが、どういうやり方しても、これらのサッカーはカウンターに弱いです。前がかりになりやすい布陣なので、カウンター一発で失点しかねません。


今日はこのあたりで。ではでは。

書評「Jリーグ再建計画」とJリーグの経営の今について

本日は割と堅い話になるが、Jリーグのチームの経営については扱いたいと思う。


これについては、先日読了した、



Jリーグ再建計画 (日経プレミアシリーズ)

Jリーグ再建計画 (日経プレミアシリーズ)



の書評もかねて行いたいと思う。


実は、Jリーグの経営の話については、先日、


Jクラブ個別経営情報開示資料(平成26年度)


で、J1のクラブの経営情報が開示され、2014年のJクラブの経営状態が明らかになった。


結論からいっちまうと、幾つかのチームは色々ヤバイ。


「Jリーグ再建計画」について


まず、本の話からになるけど、先に紹介した「Jリーグ再建計画」については、サッカーライターの秋元大輔さんが、大東和美前チェアマン、村井満チェアマンなどといったJリーグの要人にインタビューして書かれた本となっている。内容としては、「何故2ステージ制を採用しなければならなかたのか?」という話や、「現在のJリーグの窮状」についての話などがメインになっている。


この本でも扱われているけれど、2ステージ制への移行をせねばならなかった理由として、「2014年からJリーグ本体に最大13億円の減収予測がたった」というものがある。これは主に放映権料の減額を提示された事が原因だったと言われる。この本にもあるが、もともとJリーグは地上波では視聴率が3~4%しか取れず、スカパーのJリーグ部門も赤字みたいなんで、放映権料ビジネスという点で、Jリーグは全く採算が取れない状態に陥っていた。


一方で、野球の夏の甲子園もそうだが、一発勝負のトーナメントはプロ野球の視聴率が全然取れない時代においても、相変わらず視聴率が良い。具体的には決勝になると視聴率が20%くらい取れる。


そして、これはサッカーもそうなんだが、高校サッカー選手権の決勝のほうがよっぽど数字が取れるというのが現状だったりする。去年、高校サッカー選手権決勝「富山第一×星稜」が、富山県内で瞬間最高視聴率62.6%を記録したそうだが、トーナメント形式の一発勝負を一般人は好むみたいな所があったりするのだ。


なので、Jリーグ上層部と、メディア関係者が「プレーオフやってほしい」と願うのも、しょうがない部分があると思っている。サッカーファンとしては、一発勝負のプレーオフでリーグ戦の王者を決めるなど、とてもじゃないが納得は出来ない。サッカーってのは運の要素が強いスポーツであり、一発勝負では、何が起きるかなんて予測がつかないからだ。リーグ戦38試合もやれば、かなり実力が順位に反映されるが、一発勝負のトーナメントってのは、実力が順位に反映されるとは言い難い。だから、僕も、プレーオフで年間王者を決めるというのは納得しがたい部分がある。だが、リーグ戦では優勝がかかった試合ですら視聴率が取れない以上、視聴率とれそうなプレーオフやらないと、ダメなんかなとは思う。(プレーオフですら視聴率とれなかったら、本格的にJリーグやばい)



さて、Jリーグ本体の年間予算は120億で、配分金はJ1は年間2億~2億5000万、J2は一億となっている。この本でも扱われているが、13億円の減収が生じた場合、減額幅はJ1の1クラブあたり4000万、J2の場合2000万と試算された。


この状態で、2014年のJリーグ経営情報開示と照らしあわせてみよう。


Jクラブ個別経営情報開示資料(平成26年度)


こちらになるが、明らかにヤバイクラブがある。プロサッカークラブは企業であり、当たり前だが、「借金返せないとデフォルトする」存在である。この観点からいうと、2014年の柏、横浜FC、福岡なんかは、ちょっと危ない。2013年に福岡の経営危機が表面化したけれど、2014年の財務状態を見る限り、福岡は流動資産(現金なんか)が1億3700万円にたいして、流動負債(一年以内に返さないといけない借金)が2億6800万円となっており、この状態で2000万円の減益が発生すると、資金ショート起こしかねない状態だった。福岡は依然として危機的な状態にある事は変わっていない。J2のクラブで、持ってる現金にたいして、短期の借金が大きいクラブってのが、去年の横浜FC、福岡なんかで、こーいうクラブは配分金減額されると資金ショートおこしかねない。J2は特に深刻なのだ。




ただ、J1でもやばいクラブってのはある。一番は柏さんで、光り輝く流動負債10億4100万円。一方で、流動資産は2億2900万円となっており、親会社から資金補填してもらわないとこれ無理じゃね?という状況にある。親会社がいなかったら、柏さんは2014年に選手とスタジアムを売り払わないと無理になってただろう。はっきり申し上げておくけれど、柏さんの財務状態は悪い。もの凄く悪い。入場料収入もグッズ収入も細い。そしてスタジアムは拡張が難しいので入場料収入を伸ばすのは難しい。さらに、チーム人件費が営業収入の6割をこえており、サッカークラブの適正水準と言われる5割を大きく上回っている。この赤字を広告収入という形で親に補填してもらってる格好だ。親が元気だからいいけれど、親が倒れたら、間違いなく柏さんトコは潰れる。そういう風に出来ている。




次に、やばいというか、もうどうやってやりくりしてんだかよくわからないのが神戸である。神戸も親がミッキーなんで、すぐにつぶれたりはしないのだが、毎年のように赤字をだす万年赤字クラブだった。ちなみに、神戸の数字の中で面白いのは、神戸が赤字をだすと、固定負債がその分増えるという構造である。ま、ミッキーだしね。ただ、クラブライセンス制度の問題で、2014年は流石に赤字をだす事は出来なくなった(3年連続赤字だとクラブライセンスがもらえない)。で、神戸は何したかっていうと、光り輝く特別利益22億5000万円計上である。これによって、神戸の固定負債は2013年の19億9100万円→2014年3億1800万円へと圧縮されたのでした。めでたしめでたし。親がミッキーじゃなかったら、ここもとっくの昔に死んでるクラブである。ミッキーについては、現場に口だすって事で嫌ってるサポもいるみたいだけれど、ミッキーいなかったら、とっくの昔にぶっつぶれているクラブなんで、まあ、大目にみてあげたほうがいいじゃないですかな、と。ミッキーがいなかったら2014年で神戸は潰れてましたyo。




もうひとつ、横浜FMについても扱っておく。「Jリーグ再建計画」では横浜FMの話に、かなりのページが割かれている。この本でのマリノスの嘉悦朗のインタビューはなかなか面白くて、僕は興味深く読ませて頂いた。なかなかのやり手だなあ、というのが僕の印象である。実際に、2010年に嘉悦さんが社長に就任してから、マリノスは入場者数を順調に伸ばしており、入場料収入も伸びている。これは、嘉悦社長が就任してから、地道に取り組んできた成果であり、評価できる。また、就任直後から、マリノスの改革のために、「マリノスは実は赤字です。親の補填をうけないと成り立たないクラブなんです。」って事を内外に公表したこともプラスだった。これによって、クラブ内部で「このままじゃダメなんだ」っていうコンセンサスが出来、改革のための意思統一ができたからだ。ただ、一方で、赤字体質の改善は上手くいっていない部分がある。マリノスは2010~2012までは赤字のままで、流動負債がどんどん膨らんでいった。2012年には、マリノスの流動負債は20億1700万円まで膨らんでおり、一方で流動資産は4億8000万円。ここも、いつ突然死してもおかしくない状況となってしまった。手持ちの現金4億に対して、一年以内に返さないといけない借金20億は多すぎる。フツーの中小企業なら資金ショートでぶっつぶれてもおかしくない。マリノスが2013年に10億の特別利益を計上したのは、クラブライセンス制度の問題もあるが、財務構造上、非常に悪い状態になっていたという背景があった。マリノスは2014年の広告収入が20億5900万円となっており、2013年度の15億1300万円より5億以上多くなっているのだけれど、これも親からの補填と見るのが無難だろう。嘉悦社長は、就任以降で、マリノスの営業収入を10億近く増やすことに成功したやり手だが、借金経営、そして親からの補填を受けての2014年の営業収入45億という形である。まあ、それを内外に隠すことなく発表してくれたおかげで、Jリーグのサッカークラブの実情ってが白日の目に晒されたのだけれど。



最後に湘南の話もしておこう。湘南ベルマーレというチームを「Jリーグ経営情報開示」で見ていくと、「ファッ!?」となる部分がある。どこが変かというと、アカデミー運営経費がゼロなのだ。なんで、アカデミー運営経費がゼロかっつーと、ここにはちょっとしたカラクリが存在していて、湘南は、アカデミーを本体から切り離しており、「NPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブ」として運営しているんだ。なんでNPO法人にしてるかってーと、NPO法人なら、TOTOの助成を受けられるんだな。プロサッカークラブ直属のアカデミーだとTOTOの助成がおりないんだけれど、こうすればTOTOの助成がおりるって訳。そんな理由で、ベルマーレのアカデミー運営経費がゼロな訳さ。


Jリーグの理念、「脱企業スポーツ」


今回の話の〆としては、この話になるのだけれど、Jリーグは発足当時から、「脱企業スポーツ」を理念として掲げてきた。ただ、現実的には、Jリーグの創生期に参加したクラブの多くは親会社をもっていた「企業型スポーツクラブ」であり、「市民クラブ」ってのは、その後に参入していったクラブとなっている。



いわゆる親会社がバックについているチームはJ1に多く、親がいない市民クラブタイプは、大概J2ってのが現状だ。市民クラブの予算は5~10億がせいぜいで、J1を戦うような戦力を揃えることは出来ない。出来たとしても、毎年のようにふくれあがるチーム人件費という問題に直面することになる、つまり今のサガン鳥栖だ。鳥栖さんは、営業収入18億にたいして、チーム人件費11億となており、人件費が60%を超えてしまっている。サッカーにおける選手人件費の適正水準は50%以下とされているから、鳥栖さんは非常に危険なゲームをしている事になる。実際、ここ2年赤字なのだ。クラブライセンス制度の問題から、来年は赤字を出せない。



結局の所、市民クラブのままだと、J1で戦うのは難しいし、戦い続けるのはさらに難しい。現実的には、親がついてないと、という奴だ。脱企業スポーツというJリーグの理念は、達成されたのかというと、残念だが、強いクラブは親もってる企業型クラブである以上、理念と現実の間にギャップがあると言わざるをえない。



今回の話はJリーグのクラブ経営の難しさばかり強調してしまったが、期待がもてるクラブもある。「Jリーグ再生計画」の中でも触れられているが、川崎なんかは、割と期待がもてる。現状は入場料収入が細く、広告収入依存の典型的な親会社依存のクラブだけれど、等々力の改修が終わり、2020年までに3万5000人入るようになれば、川崎は浦和並に金のあるクラブになれるからだ。


ただ、やっぱり市民クラブは厳しい。ほとんとの市民クラブは良いスタジアムを持っていないので入場料収入には限界があり、広告収入は親がないので集めにくい。放映権料はTVでJ1ですら視聴率を取れないので頭打ちとなっており、ここから成り上がるのは非常に難しい状況なのだ。さらにクラブライセンス制度のせいで、赤字出せない状況なので、「身の丈経営」だとチームの強化なんてままならない状況となっている。



湘南の叫び「Jリーグが規制緩和しないと市民クラブはしんどい」



こないだ、湘南の社長が色々と言っているけれど、「脱企業スポーツ」というJリーグの理念は大事な事なんだけれど、現行のルールだと、親がついてるクラブが有利すぎるってのがあるし、何とかならんもんですかね、とは思う。結局の所、クラブライセンス制度がある限り、赤字だしても親が補填してくれるチームが有利になっていく一方だ。湘南サポとしての妬み嫉みが入っているけれど、赤字だしても親が補填してくれるクラブと、赤字だしたらそのままクラブライセンス取りあげられちゃうクラブ、どっちが強くなるかなんて明白じゃないですか。



この話になると、「チーム名に企業名いれてもいいですか?」という話になるので、難しいのは分かっているのだけれど、そろそろ、ちょっと考えてくれてもいいんじゃねぇかなと。


ま、今日はそんな話なんでしたとさ。