2018国際親善試合、日本代表対ウクライナ代表のレビュー「ハリルホジッチのサッカー」
さて皆様こんにちは。
大変お久しぶりですが、本日は先日行われた日本対ウクライナの試合のレビューをお届けします。
ここの所、サッカーのA代表は、全然勝ててないのでハリルホジッチに対する風当たりが強いです。なんで、あまり気乗りはしませんが、今回のエントリはハリルを擁護気味で書いてみることにしました。どうせ、俺が叩かないでもハリルホジッチは袋叩きにされるでしょうからね。この後、ガーナ、スイス、パラグアイとやってW杯本戦ですが、勝てる気しませんし、勝てなけりゃ袋だたきにされるのが代表監督の仕事です。
しかし、内容的に周回遅れ気味のエントリですし、今回の話はどうしたって、
こっちの記事の二番煎じになってしまうのですが。
今回の記事の内容的にはハリルサッカーの特徴です。主なポイントとしては
1,ハリルホジッチは中盤でボール動かす気がない。よく言えば縦に早いサッカー、悪く言えば中盤省略サッカー。
2,守備は中盤においてマンツーマン気味のゾーンを敷いている
の2本立てでお送りします。
試合のレビューの前にハリルホジッチのチーム作りの方向性について
さて、今回の試合の話に入る前にハリルホジッチが作っているチームの話から入ろうと思います。ハリルホジッチは就任以来、攻撃においては「縦に早く」、守備においては「デュエル」という言葉を頻繁に使ってきました。ハリルは非常に明快なコンセプトに基づいてチーム作りを進めており、試合を見ていればほぼコンセプト通りの攻撃、守備が行われているのが見て取れます。
現在の日本代表なんですけど、前回のブラジルW杯で「俺達のサッカー」で惨敗した事の反省があったせいなんでしょうが、本当に全く正反対のチームになってます。前回のチームは攻撃ではポゼッション、守備ではゾーンのチームでしたが、今回のチームは攻撃は速攻とロングボール、守備はマンツーマン気味のゾーンです。
本当に全く正反対のチームになっていて、試合見ながら「これ、韓国とかオージーがやるサッカーだよねえ・・・・」と思う事が多いです。
ここからは図を使って説明しますが、ハリルホジッチは攻撃において
このように相手が最終ラインまでプレスをかけてきたら、ロングボール蹴らせます。ショートパス繋いでプレスを外していくなんてシステムはチームに落とし込んでません。マリ戦で「中島のサイドに蹴れ」って何度もピッチサイドで叫んでたそうですが、あの試合、マリは最終ラインを高い位置に設定して前からプレスにきてました。相手が前からプレスかけてきたらロングボールで対応する。それがハリルホジッチの基本的なチーム作りです。
基本的にハリルホジッチは守備重視の監督です。前プレ喰らってショートカウンター食らう位ならロングボール蹴った方が良いと考えてる感じですし、カウンター食らわないように攻撃に人数もかけないタイプです。
ここ二試合で、代表選手から「もうちょっとボールもったほうがいいんじゃ~」みたいなコメント、「ゴール前の人数足りてないんじゃ~」みたいなコメントが散見されますけど、W杯は間違いなく守備的に戦う事になるので、ハリルは取り合ってくれないと思います。
さらにいえばハリルは中盤でボール動かす気がありません。
これも図を使って説明しますが、ハリルホジッチの基本的なビルドアップは「縦に早く」です。それを図を使って説明すると
こんな感じなります。基本的にパス回しは最終ラインの4人によるU字型のパス回し。ここで4人のうち一人がフリーで前向けたら、そこから前の4人の誰かに縦パスかサイドチェンジを入れて、一気に裏のスペースを攻略するというコンセプトです。縦パスが入ってからのバリエーションとしてはポストプレー、ワンツー、スルーを使ったコンビネーション、ドリブル突破などを主軸にしています。
このU字型のパス回しなんですが、ポゼッションサッカーのご本尊、現マンCのグアルディオラ監督が非常に嫌う形です。グアルディオラはU字型のパス回しを「無意味」と切り捨てるタイプです。グアルディオラは必ず中央のルートを使ってビルドアップします。つまり、ボランチがビルドアップに深く関わります。一方で、ハリル・サッカーではボランチはビルドアップに関わりません。
マリ戦では大島がそれなりに頑張ってましたが、大島がいなくなってからはボランチを経由したクリーンなビルドアップは殆ど見られませんでした。
ここまで、日本のビルドアップについて説明してきましたが、最初にハリルのサッカーを「ハリルホジッチは中盤でボール動かす気がない。よく言えば縦に早いサッカー、悪く言えば中盤省略サッカー」と定義した理由は、これでわかって頂けたかと思います。基本的にMFがビルドアップに関わらなくて良いサッカーなんです。「ボランチが下がってくることを監督は嫌う」って代表の誰だかが言ってましたが、ハリルのチームではボランチはビルドアップに関わらんでも良いのです。最終ラインから直で前線にボール入れて、そこから一気に裏を狙うビルドアップしかしませんからね。
んじゃあ、ボランチの仕事は何よ?って話になるんですが、ほぼ守備です。ロングボール入れた後にセカンドボール拾う事、最終ラインから前線にボールが入った後、ボールロストからカウンター食らわないように準備しておく事。ボール奪った後に素早く前線にボールつけた後に自身がバイタルエリアに走って行くこと。この3つが重要で、井手口、山口、長谷部、今野みたいなフィジカルバトルで戦える選手がハリルのお気に入りになってるのは当然の話なんです。そして柴崎、大島みたいなタイプが基本的に冷遇されちまうのも同じ理由です。香川や清武もそれほど大事じゃありません。あのサッカーだとね。中盤はボール狩りができてフィジカルバトルが強い選手が必要なサッカーなんです。
中盤では創造性やテクニックよりフィジカル。それがハリルホジッチのサッカーです。だからそういう選手が重用されてます。韓国やオージーが好みそうなサッカーなんですよね。もっとも最近のオージーや韓国はポゼッションに目覚めてますが、日本はフィジカルバトルサッカーに舵を切ってます。アハハー。
次に話を守備にうつしましょう。ハリルホジッチのサッカーは守備でも非常に特徴的なサッカーです。どういう事かと言いますと、「中盤の守備において人につく割合が非常に高い」サッカーやります。基本、中盤は一対一のサッカーでマッチアップの相手を明確に決めて守るタイプです。「デュエル!デュエル!」と連呼するのも当然です。マンツーマン気味に守るんだから。
このタイプの守備には良い所と悪い所があります。中盤をマンツーマン気味に守る以上、中盤で相手チームにスペースを与えてしまう事は避けられません。マンツーマンという守備方法は「相手チームのFWのポジショニングにDFのポジションが支配される」という構造上の欠点を抱えています。まあ、この辺りは実際の試合で何が起こったのか、それを振り返りながらチェックしてみましょう。
日本対ウクライナ、前半戦で起きた出来事
こっからは試合のレビューになります。前振りが長くなりましたので手短に。
まずスタメンですが
こうなってました。日本は杉本がCF、本田が右WG、ゴートクが右SB、CBのコンビは槇野と植田。植田は高さ対策でしょう。ゴートクはゴリのかわりでしたが・・・・まあ・・・
マリ戦との違いですが、マリがラインを高く上げてハイプレスにきたのとは違い、ウクライナは前から来ませんでした。日本のほうもハイプレスはそんなにしなかったので、双方のチームはボールを持てる試合でした。図にすると
こうなりますが、日本もウクライナもCBのどっちか一方はノープレッシャーでボール持てる試合でした。なのでボール保持は難しくない試合でした。双方共に。ただ、ウクライナと日本は全く違う攻撃を組み立てる事になります。
試合内容のほうなんですが、これ開始1分から動きました。
ここ、開始一分で裏取られました。アホかと思いましたが、この試合、日本の右サイドは守備に整合性が無く、マンツーマンなのかゾーンなのかよくわからない守備をくり返し、ゴートクと本田がユニットとして守れていませんでした。その結果がこの日の右サイドズタズタサッカーです。
さて、中盤マンツーマン気味って話をしましたが、それが顕著に出るのが、この後の前半3分のシーンです。
同じ日本の右サイドの攻防になってますが、このシーン、ゴートク、本田は共にマッチアップに張り付く守備をやってます。ウクライナのほうは、本田が左SBに食いついたので左WGが空いたスペースに降りてきてます。この動きにはゴートクがついてきてますが、空いたSBの裏にCFが走り込む動きを見せてます。人を基準にして守ると、どうしたってバイタルやSBの裏のスペースが空いてしまいます。このシーンはその典型例です。
そして、このマンツーマン気味の守備の欠点がモロに出たのが前半21分の最初の失点シーンなんですが、
これですね。動画みてもらえばわかりますけど、本田が自分の担当のゾーンから離れてウクライナのSBのほうに動いた結果として、あそこのスペースガラ空きになりました。そこからシュート喰らってゴール。そしてCBのマークにいったのは杉本でした。本来、あのゾーンは本田が守ってないといけないんです。ただ、ハリル方式だと「人を基準にして守る」サッカーなのでこういう状況が絶対生まれます。
つまりね、そういうチームだって事です。フットボリスタでレナート・バルディは日本の守備を「2CB+フリーマンの1アンカー、その他6人は1対1」って評してますが、僕も全く同意見です。ゾーンで守るのはCBとボランチ一人。あとは一対一で守ろうとしてんです。だからハリルは「デュエル!デュエル!」と連呼するんです。ただし、人に基準をおく守備をやる場合、この手のミスが頻繁に起こります。このシーンでいえば、CBがシュートを打ったスペース。あそこは頻繁にスペースガラ空きになります。そこを使って崩せるチーム相手だと問題を抱える事になります。この失点以降は本田も右サイドでスペースのケアやるようになってましたが、右サイドのザルっぷりは変わりませんでした。
ちなみに2失点目は守備のやり方云々でなく、単純にゴートクのやらかしです。あれはもう弁解の余地無くゴートクが悪い。この試合、ゴートクは軽く3回はやらかしをやってるので次呼ばれるかというと・・・・それは本人が一番わかってるでしょう・・・・
あともう一つ、前半31分、「これはひどい」と画面の前で頭抱えたシーンですが
これな。
マッチアップ気にしすぎて中央開けてCFに縦パスいれられたあげく、その後、簡単にターンされるとか割と救いようがないシーンでした。日本の右サイドは完全な穴、さらに中央使われて簡単にビルドアップされてしまうという二重苦。これで二失点で済んでよかったですよ、本当に。
守備の話はこれくらいにして、攻撃の話をしてみましょうか。ウクライナ戦。この試合で「うわあ・・・・」と思ったパス回しがあったんですが、それが前半27~8分のところ。
・・・・・もうね。
左SBから左WGに当てて詰まる→左CBにボールが戻って来る→左CBから右CBへ→右CBから右SBへ→右SBから右WGへ。
なんという完璧な各駅停車のU字型ビルドアップ。これ本当に日本のA代表なんですか?
流石に目眩がしました。こんな酷いビルドアップをA代表が見せちゃダメだろ。グアルディオラだったら切れてる。まあ、このシーンではハリルもピッチサイドで切れてましたがね。このビルドアップじゃ何も起きません。起きるわけありません。
恐ろしい事に、この試合ではこの形のビルドアップが何度かくり返されてました。各駅停車でDFがボール回していき、SBがWGに縦パス入れて、何も起きない。この連続。
この試合、TVの解説でも、この手のビルドアップには苦言が出てましたが、各駅停車のU字型のパス回しからSBがWGに縦にボールつけるのは本当に悪手です。ボール取ってくださいと言ってるようなモンです。
U字型の各駅停車パス回しダメ絶対
ちなみに、ウクライナはきちんと中央経由のビルドアップが出来てました。各駅停車でなく大きなサイドチェンジも上手でした。
一方で日本はサイド経由の各駅停車。攻撃面では差を見せつけられる結果になりましたとさ。
なんというか凄い否定的な意見を書いてしまいましたが、別にね、必ずボランチ経由をしろとはいいません。そういうサッカーする監督じゃないのはわかってます。ただDFによる各駅停車のU字型パスだけはマジでやめろ。DFから直接前3枚にあてて、そこから突破かコンビネーションで崩すサッカーだというなら、それはそれで良いのです。ただし、サイドチェンジ混ぜろ。各駅停車のU字型パス回しやめれ。あれはポゼッションでも速攻でもない。言いたいのはそれだけです。
まあ、前半39分、左サイドの攻めで原口が前向いてFK取ったパス回しは良かったです。そこから柴崎のFKで同点にできましたね。
しかし、その後の43分、44分と立て続けに右サイド破られたときはどうしようかと思いましたよ。ゴートクのやらかしと本田の守備が化学反応を起こしており、本番前に本田、ゴートクの並びはNGだとわかったことだけが収穫です。絶望的に守備が酷い。前半だけで4回は右サイドで裏取られてます。
日本対ウクライナ、後半戦で起きた事
さて後半の話にいきましょうか。
前半でウクライナのほうは日本の守り方がわかってきてます。日本も大分、ウクライナの攻撃方法がわかってきてました。後半はそんなチーム同士の対戦になりました。
前半47分のウクライナのパス回しとか日本の守備の欠点をついた上手いやり方です。
なかなか良いパス回しですよね。サイドへの展開から、中央の選手の動きで日本のボランチを最終ラインに吸収させ、空いたバイタルのスペースを利用。見事なビルドアップです。
一方で日本としては人に基準をおく守備やってるんだから、どうしたってあーなります。ただ、人に基準をおいてる分、メリットもあります。このシーンの場合、サイドチェンジされてもゾーンほど大火傷にはなりません。人についてる守備ですからね。ここの場面でも本田が相手SBについてたので大火傷せずに済みました。
ある意味じゃ、ウクライナはサイドチェンジに拘りすぎた部分があります。人につく守備やってるチームにはサイドチェンジはゾーン相手ほど有効ではないです。
そして、後半開始から10分くらいまではウクライナペースで進んだんですが、後半10分の時、日本は珍しく良い攻撃みせました。ゴートクから中央への斜めのパス。このパスでスルーを使ったコンビネーションから逆サイドにはたいて長友のクロス。これは良い組み立てでしたね。こういうの増やしてくれたら良いんですけどね。
さて、後半60分あたりから、本当に日本代表の守備が「嗚呼、人につく守備だ・・・」という状況になってきます。どういう事かというと、
わあ・・・・バイタルガラガラなり・・・・・・・・・・
なんでこんな状況が生まれるかっていうと、人につく守備やってるからです。どーやってもバイタル使われる守備方法です。具体的には
1、サイドに展開した後にオフザボールの動きで日本のボランチを最終ラインに吸収させ
2、空いたバイタルにカットイン、もしくはバイタルに入ってきた選手にパス
3、バイタルからのコンビネーション、ミドルシュート、サイドへの展開からのクロスでフィニッシュ
という展開にもちこまれやすくなります。
このままバイタルスカスカになっていたので中央割られそうだなーと思ってた所だったんですが、後半68分。ゴートクのやらかし発生から日本は失点。バイタルスカスカで失点でなく、DFのやらかしで失点。
まあこれがサッカーですよね。組織の構造上の問題よりDFのやらかしのほうが失点に結びつく可能性が高いスポーツです。
一点ビハインドとなった日本は、ここから攻めの形を変えます。中島が投入された後の83分あたりから日本は攻撃の形を変化させて、
この日、初めてといっていい形ですが、長友を高い位置に張り出させてWGを中に絞らせてます。これによって中央の人口密度があがりました。ウクライナは中央3名、一方で日本は中央4名。こうなった事で日本は数的有利を活かして中央を経由してビルドアップできるようになります。ここから、日本は中央使えるようなり、サイド経由の各駅停車サッカーが終わります。
その結果として、中央経由のビルドアップが機能しはじめました。これの恩恵を最大に受けたのが途中出場の中島です。前半のサッカーだったら中島は空気だったでしょうけど、このサッカーなら水を得た魚みたいなモンです。
ここから日本は終了まで怒濤の攻めを見せます。ウクライナにカウンターを浴びることはありましたが、中央の数的有利を活かして日本はゴールの臭いがする攻撃が出来てました。追いつけませんでしたけどね。
最後の10分くらいは良い攻撃できてました。ただ、ハリルホジッチがこの手のサッカーやるのはリードされて追いつかないといけない最後の10~15分くらいのもんだと思われます。そうでない限り、あのサッカーをやるでしょう。理由はというと、なんだかんだで、あのサッカーは点取られにくいからです。
日本対ウクライナ総評
では、まとめに入ります。
見返してみたら、ハリルのフォローどころか、全然フォローになってないエントリ書いてしまいました。大草原不可避。特に中央経由しないU字型のパス回しについては厳しい事書きましたが、利点もあるんです。ハリルのサッカーだと、ボールを失った後、ショートカウンター食らう危険性は非常に低いです。最終ラインから前3枚にボールつけた瞬間が一番ボール奪われやすいのですが、そこでボール失ってもボランチ2名とDF4名で即座に守備に移れるんですね。これは結構なメリットです。
ま、自分としては、あのサッカーでW杯戦って良いと思います。ザックがW杯で戦ったスタイルとは真逆といっていいスタイルですが、実験としては悪くありません。日本がフィジカルを前面に押し出すスタイルのサッカーでどこまで戦えるのか、一発やってみるのも悪くないです。
ハリルのサッカーと相性悪い選手は諦めましょう。長友なんかは攻め上がってこその選手なんですが、ハリルサッカーは左右のSBにビルドアップを求めている為、低い位置に留まらざるを得ません。だから長友はあんまり良さでてません。香川とか柴崎みたいなタイプも中盤で居場所を見つけにくいです。中央はパス回しよりフィジカルバトルが優先されるサッカーですしね。岡崎みたいにボール収めるのが苦手なFWはCFでは使いずらいし、WGは最低でも単独突破ができる選手じゃないとダメです。
そういうハリル流「俺のサッカー」に合う選手がW杯にいけるでしょうし、合ってない選手は落選になるでしょう。
俺達のサッカーが終わってハリルのサッカーになりましたが、戦術レベルで柔軟性のあるサッカーではなく、割とガッチガチの逆コンセプトのサッカーでしたとさ。
こういうサッカーでW杯戦ってみるのも良いと思いますよ。どうなるか見てみようじゃないですか。前回はポゼッションでダメだった訳だし。
ではでは。
2017/8/31ロシアW杯最終予選、日本対オーストラリアのレビュー
はい、皆様、お久しぶりです。
一年以上放置してた訳で、こんなブログはもう忘れ去られているでしょーが、日本代表がロシアW杯への出場を決めたので、本当に久しぶりに試合のレビューをしてみたいと思います。当然ですが、扱う試合は先日の日本対オーストラリアの試合です。ちなみに放置していた理由は単にサボっていたのと(金にもならんし忙しいし)、試合自体レビューする内容がない試合が何試合か続いたりしたからです・・・・・。
ただし、今回の試合については、w杯最終予選の関ヶ原と言って良い試合で、内容的にレビューするだけの価値のある試合でした。非常に興味深い試合だったので、レビューしながら試合の内容を振り返ってみたいと思います。
日本対オーストラリアのマッチアップについて
さて、今回の試合ですが、スタメンは、
こうなっておりました。日本は433。オージーは3421。日本は中盤のスタメンを大幅にいじっており、井手口、山口、長谷部という中盤3枚を守備的MFで固める陣容になっていました。両サイドも左乾、右浅野となっており、イラク戦とはまるで違うスタメンとなっていました。
元々、ハリルホジッチっていう監督は、アタッカーは海外組を使い、ボランチは守備MFを二枚で固めるのを好む監督だったんですけど、この試合では守備MF三枚というガチ守備スタメンを組んで来てました。
なんで中央に三枚の守備MFが必要だったのか?それは、この試合のマッチアップを理解する必要があります。
433のチームが3421のチームと対戦する場合、問題となるのが、
この白で囲ったエリアになります。433は3421と対戦する場合、中盤中央で数的不利に陥ります。これがどのような問題を引き起こすかというと、
こうなるのですが、日本のボランチ二人が相手のボランチを捕まえに前にでてしまうと、アンカーの両脇のスペースを相手チームのシャドーに利用されてしまうんですね。もっとも、ここで「CBが前に出て対応すればいいじゃん?」と思う人もいるでしょうが、それには3421のチームは簡単に対応できる方法があって
こーなるんですが、CBが前に出てくるなら、CBの後ろのスペースをCFが利用できます。この動きにはもう片方のCBがついてくるでしょうが、そしたら逆サイドのシャドーが斜めに裏に走り込む動きをすればいい。
ようするにですけど、このマッチアップだと、中央突破をされやすいんですね。
それからもう一つ。実はロングボール蹴られても問題を抱えます。
こーなるんですけど、3バックの両サイドから斜めにCFにロングボール蹴り込みます。そうなると、どーなるかというと、中央の四角で囲ったエリアにボールがこぼれる可能性が高いわけです。そして、そのエリアでは433のチームは数的不利に陥ってるわけです。当然、セカンドボールを拾われる可能性が高い。そしてセカンドボールを拾われたらロングボールが機能してしまう。
つまるところ、マッチアップ的に非常に面倒な組み合わせなんです。繋がれるにしても、蹴られるにしても中盤中央で数的不利に陥っている事が守備上の問題を引き起こすわけです。
この問題に対処するために、ハリルホジッチはいくつかの策をチームに施してます。その一つが中央に3人の守備MFの配置になります。香川や柴崎、小林については3対4のマッチアップに対処できる守備力を持ち合わせてません。だから先発から外される結果になりました。これについては妥当な判断だと思います。元々守備的なサッカーする監督ですからね。井手口、山口、長谷部はカバーできる範囲が広く、二度追い、三度追いが出来る選手です。こういうボランチでないと数的不利の状況では守りきれません。
さて、マッチアップの話はこの辺りにしておいて、実際の試合で何が起きたのか、それを経過を追いつつレビューしていきましょう。
日本対オーストラリア、前半戦のレビュー
ここからは前半戦のレビューです。この試合の入りなんですが、日本代表が最初にやったのはハイプレスでした。試合の入りでハイプレスをやるのはよくある事なんですが、433と3421だと、433のチームがハイプレスやるのは比較的簡単だったりします。つまり、
こーなるのですがね。相手の3バックに対して3トップをぶつけてしまえば、相手はボールを後ろで落ち着けることが出来ません。ここで相手のパスコースを限定していってサイドに追いこんでスペース圧縮して、そこで取ってしまえばいい。
これは最初、結構上手く行きました。具体的にいえば、前半2分くらいのシーンですが、
こういう流れでしたが、うまーく前からの守備でボールを取り返す事に成功してます。
日本は大体前半5分くらいまではこれで上手く守れていたんですが、前半6分あたりから怪しい所が出始めてオージーがペースを握り始めます。具体的には、
これは前半6分の所のシーンですけど、まさに日本が一番避けたい状況がここで生まれてます。ただ、このシーンですが、オージーのシャドーがボールコントロールにもたついてくれたおかげで助かりました。強豪国のシャドーだったら、あそこでフリーでボール受けたら決定機作ります。
さらにこの後すぐに又同じ攻めでやられる事になります。具体的には、
こうなるんですけどね。これも山口と井手口をボランチに食いつかせて、その裏を狙う狙う攻撃です。日本はシャドーに対してCBの昌子が対応してるんですが、潰しきれずにボランチにボール落とされてしまいました。長友は昌子の裏のスペースをカバーするために中に絞らざるをえず、サイドでオージーのWBがフリーになってます。これも強豪国なら、ここからシュートまで持ち込めるシチュエーションが出来てるんですが・・・オージーがこの後やった攻撃が・・・・
何故かバックパスしちゃうっていう・・・・何で走り込んで来た逆サイドのWB使わなかったのか、よくわかりません。ちなみに浅野が糞真面目にWBについてきており本当に偉い。
この二つのシーンは、この日のオージーを象徴するシーンなんです。この試合の後、オージーのFWが
「ポゼッションでは我々が上回っていたと思うが、ボールをスピーディーに回せなかったんだ。本来のゲームプランは少ないタッチ数でどんどん回して相手の守備を崩すところが、4回も5回もボールに触っていた。ああなると意図する攻撃はできない。エリア内になかなか侵入できなくて、チャンスを掴めなかった。日本にとっては守るのがイージーだったはずだ」
さらに、終盤はもっとロングボールを多用すべきだったと述懐する。
「ゲーム終盤、日本は自陣深くに籠っていた。選手交代を活かしながら我々はポゼッションからロングボールを使う攻めに転じるべきだったが、意思の疎通ができていなかったように思う。それが残念でならないよ。そして、不意打ち(2点目)を食らった。フットボールとはそういうものさ」
こんな風に振り返ってますけどね。この二つのシーン、どっちのシーンもそうですがオージーの選手、アタッキングサードに入ってからボールタッチが多すぎます。シンプルにやればいいのに。日本代表が1タッチ、2タッチでボール回していくのに対して、オージーは3タッチ以上しちゃってるので攻撃でリズムがでないんですね。
ついでに言えば、中盤中央は数的有利なエリアなんだから、ロングボール放り込んでセカンドボールの奪い合い勝負でも良かったんです。中盤中央でのフィジカルバトルに持ち込んだほうが日本にとっては嫌だったでしょう。もっとも、これにはハリルホジッチは対策講じてたのですが・・・・・
試合に話を戻しますが、前半6分~12分あたりまで日本は前からの守備が上手くはまらず、自陣に撤退しての守備を強いられます。この時間帯、日本はちょいと混乱してました。
前半12分のシーンを取りあげますが、
これなんですけども、日本の右サイドでは比較的守備の役割分担が上手く行っていて、このシーンだとシャドーをSBが捕まえて、WBをWGが捕まえる形で対応できてます。これだとオージーは有効なビルドアップできませんから、一回ボールを後ろに戻してます。ここからが問題なんですが、
ここ、こうなった後、グランダーのクロスをGKとCBの間に入れられました。これはオージーのFWが走り込めてなかったので助かりましたが、逆サイドでオージーのWBにボール拾われてそこから又クロス上げられました。冷やっとしたシーンでした。
ここを取りあげた理由は、これが後半に乾が最初に交代させられた原因だからです。攻撃において乾は間違いなく機能していたんですが、一方で左サイドにおいて、乾の守備はチームに問題を引きおこしていました。この他にも、前向いた選手につっかけてかわされて左サイドを突破される原因になったり、切り替えの時に軽率にスライディングしてかわされてオージーのカウンターのスイッチをいれてしまいったりと。最終的に後半23分、25分と立て続けにオージーに左サイドを突破されると乾が最初に交代させられる事になりました。
この試合なんですが、
最終的にはこんな感じで圧倒的にオージーがポゼッションする一方で、まーるでPA内に進入できずシュート打てない試合でした。一方で日本代表はポゼッションはできてませんが、オージーのPA内に簡単に進入し、シュートうったりクロスあげたり、CK取れた試合でした。ついでに言えば、日本のサイドはオージーのサイドに一対一で勝てるけど、オージーは日本のサイドに一対一で勝てない試合でもありました。
話を試合に戻しますが、大体前半20分くらいまで日本は我慢の試合でした。押し込まれる展開でしたが我慢強く守れてました。当然、日本も段々とオージーの攻めに慣れてきます。そうなると反撃タイムになります。前半21分に山口のパスカットからショートカウンター。さらに前半22分には大迫が相手のバックパスかっさらって単独でシュートまで持ち込みました。(これ決めてれば大迫がスパーヒーローだったんですが・・・・井手口に全部もってがれてしまいましたね)
この後、前半20~30分あたりまでは日本は守備で落ち着きを取り戻してたんですが、前半31分に不用意に乾が前向いてるオージーのWBに飛び込んで交わされて左サイドを突破されたり、前半36分には長谷部がバックパスかっさらわれてピンチを招いたり、前半38分には吉田に当たって軌道がそれたシュートがポスト直撃したりと、日本もなんだかなあ・・・という時間帯に突入し・・・
前半40分、突然、試合が動きます。
【W杯最終予選】浅野琢磨ゴール - 日本1-0オーストラリア 31/8/2017
長友のクロスから浅野の裏への抜けだしが決まって日本が先制です。この先制点については長友のクロスと浅野の飛び出しだけで点とったのでビックリしました。
もっともゴールのアレについては、オージーのDFも愚痴ってますが、
浅野の殊勲弾は「安っぽいゴール」 ミスから生まれた1失点目に豪州DFが悔しさ爆発
完全に相手の左WBのミスです。日本代表で同じ事やったら当然、糞味噌に叩かれますよねえ。長友のクロスはゴールに向かってくる軌道のクロスで、オージーのDFのスミスは浅野とボールを同時に視界内に収める事は難しくないハズでした。である以上、マーク外すとかありえないシーンなんですが、何故か浅野のマークを外してしまい、日本に先制点をプレゼントしてくれました。
これで非常に日本は楽になりました。一方でオージーはW杯への切符が一気に遠のく事になります。たった一つのミスでとんでもない代償を支払わされる事になるのがサッカーの恐ろしい所です。日本も結構ミスはしてるんですけどね。ただ今回はDFが致命的なミスはしませんでした。オージーはDFがやらかしました。DFやGKのチョンボでの失点ってのは一定確立で起きてしまうので、そこはどうしようもない部分があります。
この後、オージーは前半終了まで、同じような攻撃をくり返し、最後までロングボール使ってきませんでした。なんというか、非常に不思議なオージー戦で、何で蹴ってこないんだろ?ポゼッションではシュートまで持ち込めてないんだから、ロングボール蹴って中盤中央でのセカンドボールの奪い合いのフィジカルバトルにすればいいのにと思ったのは僕だけじゃないと思います。
日本対オーストラリア、後半のレビュー
ここからは後半戦のレビューになります。後半は双方、交代はなし。
キャプではやりませんけど、後半3分、オージーは前半とまるで一緒の攻撃を日本にしかけてきてます。日本の山口と井手口を引っ張りだしてから、シャドーに当ててサイドに展開。この後、サイドからグランダーのクロスがDFとGKの間に入って吉田と川島のお見合いが発生し、あわやイラク戦の再現か!?というシーンが発生しましたが、この日は川島がポロリをせずにセーフでした。日本のサッカーファンの脳内でイラク戦の失点シーンが走馬燈のように再現されたシーンでした。惜しかったですね!(何がだ
さらに後半4分では右サイドの守備で酒井ゴリが「オージーのWBに背中を見せてターンする」というアマチュア全開なミスを披露してサッカーファンを楽しませてくれます。しかし、日本のSBが割と致命的なミスをしてるのにオージーの左WBは違いを作れません。オージーの監督にお悔やみを申し上げます。良い左WBなら日本は失点しててもおかしくなかったシーンでした。後半開始10分くらいの浅野の裏取りまで日本は良い所があんまりないです。面白いシーンはてんこもりなんですけども。
さてオージーの左WB君、後半10分には再び浅野に裏をとられるわけです。本日2回目。このWB、オージーのメディアでは糞味噌に叩かれてるみたいですが、攻守に全く役に立ってません。このWB、代えてない所をみると、そんなに左WBは手薄なんでしょうかオージー。
これで終われば良いのですが、オージーの左WB君のやらかしは続きます。後半10分のシーンですが、
驚いた事に何とダブルボランチが固めている中央にカットインドリブルを試みるスミス君。メッシやクリロナだって無理目なプレーです。CFとのワンツーを試みますが、ダブルボランチが固めてるんです。日本の守備陣にひっかかってロスト。そこから日本のカウンターが発動し、日本はシュート打ってCK取りました。
この選手のおかげで日本は後半始まってから二回もチャンス作れてるわけで感謝しなきゃいけませんよ皆さん。こんなサービス精神溢れるWBはそういません。普通は前半で交代です。
さらに続きます。後半12分、この左WB君は酒井ゴリのマークを振り切って(単に酒井がマーク外しただけですが)、裏に飛び出すことに成功します。ここでゴールをお膳立てできれば・・・というシーンでしたが、なんだかよくわからないクロスを逆サイドに出して終了でした。
左WBネタはこの辺りにして、後半15分、オージーが動きます。FWのユーリッチを投入。日本のサッカーファンは当然、「放り込み来るぞーーー」と思ったんですが、
そ れ で も 愚 直 に 繋 い で 来 る オ ー ス ト ラ リ ア 代 表
に変わりはありませんでした。本当にどうしちゃったんでしょうねオージーは。
というわけで、日本はやる事変わらず。ショートパス引っかけたら大迫に預けて全体を押し上げて攻撃ってのを続けます。大迫は化け物じみてボール収まるため、後半16分、20分とカウンターの起点になってます。まー、大迫がいる限り、ボール取る場所が低くても問題ないです。大迫にボールが納まる訳だから、大迫にボール預けて全体押し上げれば良い。
さて、試合が動くのは後半23分からです。この日、オージーが初めて決定機らしい決定機を作りました。キャプではやりませんが、日本の左サイドの2対2の状況からオージーが左サイド突破してグランダーのクロスを中央に折り返します。失点ものシーンでしたが、ここは酒井のビッグプレー。ボールをクリアーして事無きを得ました。
さらに日本のピンチが続きます。左サイドで今度は長友が裏取られて突破され、中央にグラウンダーのクロスを折り返されることになりました。ここも再び酒井が体を張って事無きを得ました。
後半になってから、酒井については背中見せてターンしてみたり、裏取られてみたりと自分の担当ゾーンでは良い所がなかったのですが、左サイドが突破された時には本当に良いプレーをしてくれました。日本の失点を二つ防いでます。ここはきちんと評価してあげないといけません。
ここからは後半27~29分の間、オージーは徹底的に日本の左サイドを狙ってきます。そして、二回連続で左サイドが突破されたのを見て、ハリルホジッチは交代を決断。左サイドの守備を安定させる為、後半29分、乾に代えて原口を投入。
後半31分、中盤中央でのセカンドボールの拾い合いになります。最初の所で、ロングボールにはハリルホジッチ対策してたみたいな話しましたが、セカンドボールの拾い合いな状況になると、日本は必ず一枚、WGが中に絞ってセカンドボールの奪い合いに備えてました。日本はここでセカンドボール拾うと、大迫に預けてからカウンターというハリルのお家芸を発動。オージーのお馬鹿なミスもあり、井手口の決定的なシュートがあったんですが、これはオージーのDFに阻まれました。
さて、日本のほうなんですが、この時間あたりから守備ではもうなりふり構わなくなり、
もう6バックみたいな守備になってました。サイドが突破されはじめたのを見て、WGを最終ラインまで下ろしての守備に切り替えたわけです。ハリルホジッチも逃げ切る為に手段選ばなくなってきてました。
あとは守備でどれだけ耐えられるかだなーと思ってたんですが、後半37分、ここで再びオージーのやらかし。
08/31ワールドカップ予選 日本vsオーストラリア 井手口陽介、2点目追加点ゴールシーン
オージーのバックパスを原口がかっさらって、そこから井手口に繋ぎ、井手口がスーパーミドル突き刺して日本のW杯出場を決定づけたわけです。
この試合、日本も3本ほどバックパスをオージーにカットされてショートカウンター食らってます。しかし、そこでオージーのアタッカーは違いを作れなかった。一方で、日本がオージーのバックパスカットできたのは2本なんですが、その内、1本をモノにした。この差は大きいです。
この後は特に書くことはありませんね。後半37分に2点目とったわけですからね。逆転される恐れは残ってませんでした。
試合を振り返ってみて。
さて、久々にサッカーの試合のレビューをやってみましたが、こうやって試合を振り返ってみると、本当に日本は我慢強く守ったなあと思います。中盤中央の数的不利問題を抱え、サイドを突破される事はあってもシュートまで行かせることはほとんどありませんでした。ハリルホジッチの起用も大当たりでしたし、豪州に完勝できたので、これはチームの自信になります。
レビューでも扱いましたが、この試合の守備上の肝である中盤中央の数的不利問題については、守備MF3枚の起用、シャドーへのCBのチェック、シャドーに裏を取られた場合、諦めずについていくといった形で対応できていました。上手くいってない時間帯もありましたが、サッカーってのはそういうモンです。攻撃面では非常にシンプルでしたが効果的でした。
オージーについては・・・まあ左WBのスミス君は次の試合は外されるでしょう、間違いなく。本当にどうしようもないプレーしてたので。彼だけは本当に場違いでした。一人だけとんでもなく不真面目なプレーをしてました。
今回の試合では本田と香川を使わずにオージーに勝てました。もともと、最終予選になってから、この二人は役にたってなかったのでスタメンから外し、試合で使わなかったたのは妥当です。むしろ遅すぎた位です。
岡崎、本田、香川は選手としてピークを過ぎ、一方で下の世代はピークを迎えました。力関係は逆転し、下の世代が実力でスタメン取ったに過ぎません。サッカーの世界で起こる当たり前の世代交代の時期だったんです。
今回、日本が最終予選を勝ち抜けたのは、下の世代の力です。北京五輪世代のアタッカーはこれっぽっちも役に立ってません。というわけで本田と香川と岡崎については、ロシアまでひっぱる必要は無いと思いますよマジで。まあ、マヤと長友はまだ使えるので残すべきですけど。
久しぶりに長い記事書いて疲れました。今日はこの辺りで。
あとサウジ戦は消化試合なんでレビューはやりませんからねー。
ではでは。
日本代表におけるバイタルの守備のやり方についての話
はい、皆様、こんにちは。超お久しぶりです。またもや間隔空いてしまいましたが、ちょっと気になった事がありまして、本日は現在の日本代表における守備のやり方について取りあげたいと思います。
すでに前回のボスニア・ヘルツェゴビナ戦から一週間以上経ってるので、周回遅れ気味なんですが、2016/6/11 に行われたガンバ対湘南戦や、6/15に行われたガンバ対浦和戦を見て、「バイタルの守備のやり方」について思う事があったので、ちょっと一筆書いておこうと思った次第です。
日本代表対ボスニア・ヘルツェゴビナ代表における失点シーンの話
さて、まずは前回の日本代表の試合の話になります。あの試合、日本は1-2で負けてる訳なんですが、日本の2失点のシーンをキャプで解説しときます。どっちも日本のバイタルでの守備のやり方に問題があります。
https://www.youtube.com/watch?v=UYaF9gRyQtQwww.youtube.com
こっちに動画を張っときますが、キャプでやると、
こうなんですけどね。
この試合なんですが、はっきり言って日本のCB二人がボスニアのCFに一対一で負けまくっていたので失点はしょうがない部分があります。ただし、日本のバイタルの守備方法は正直感心しないので言わしてもらいますが、このやり方は問題があります。
どう問題があるというと、ボランチの柏木です。あそこでCBがボールもった時、引いてくるボスニアのボランチを柏木が捕まえて前にでてしまってるんです。その結果として、バイタルが1ボランチになり、その後のプレーで1ボランチの両脇を使われて、CBを前に引っ張り出され、最終ラインに出来たギャップを使われて失点してます。
このシーンだと、柏木にも勿論問題があります。ボールが頭上を越えた時点で、ボランチは最終ラインとの距離をすぐに詰めないといけないんですが、ハッキリ言って遅いです。ただ、柏木みたいな守備専ボランチじゃない選手にそこまで求めるのは酷かもしれません。
実は、これ2失点目も全く同じ形で失点してます。
こーでしたがね。
これね、2失点ともそうなんですが、ボールが出る前から、ボランチがチェックに出るもんだから、日本のバイタルが1ボランチになってるんです。その結果として、1ボラの両脇がガラ空きになって、そこを使われて失点してます。
前回の試合で、僕が気になったのはココで、全く同じ形で2失点してるんですわ。バイタルの守備方法に明らかに問題がある。この試合、柏木は前半で交代させられて、後半から遠藤航が入ってきましたが、ぶっちゃけバイタル1ボラ問題は後半も継続してました。その結果が後半の2失点目に繋がる訳です。ボランチの対人の強さの問題じゃねぇんですよ。ボランチがボールが出る前からチェックに出て、バイタルが1ボランチになった所をやられている訳ですからね。
後半でもしょちゅう同じ問題が生まれていたんで、チームとして、2列目の守備のやり方に問題があるといわざるを得ません。
今の日本代表なんですが、2列目に浅野とか宇佐美みたいな実質FWといっていい選手を使う傾向があります。こういった選手は守備面では、対面の選手をみるのに精一杯でバイタルのケアまでは頼めません。そういう選手を使っている以上、バイタルからボランチが引っ張り出されないようにトップ下とCFがボランチの前のスペースを消し続ける必要があるんですが、この辺、今の日本代表の守備は適当と言わざるを得ません。
この試合の前半の場合、ボスニアの方はCFとセカンドトップがボランチの前のスペースをきちんと消して引いてくる日本のボランチはFWが捕まえてました。結果としてダブルボランチが常にバイタルを固めてましたから、ボスニアのバイタルはかなり硬かったです。一方、相手が中央固めていたので、サイドにはスペースがあり、それが前半の宇佐美無双に繋がったわけですけどね。
正直いって、同じボスニア出身監督でも守り方は随分違うなと思った試合だった訳です。
ガンバ大阪のバイタル問題について
次にガンバ大阪の話をしときましゅ。今回、周回遅れでボスニア戦の話題を取りあげたのが、最近見たガンバ大阪の2試合が非常に面白かったからです。
6月11日に行われたガンバ大阪対湘南の試合の方ですが、
動画張っときますけど、コレです。
この試合なんですが、湘南の3得点は全部スーパーミドルでした。ただし、全部そうでしたが、この試合のガンバの守備方法って、基本的にバイタルが空くんですね。
どういう事かというと、ガンバってチームはサイドを攻められて4バックにギャップが出来た場合、ガンバのボランチが一人、必ず最終ラインのカバーに入るって形を取ってます。そうなると、必然的に、バイタルが1ボラになりますから、1ボラの両脇にはスペースが生まれます。
ガンバの1失点ですが、湘南にサイドを攻められた時、4バックの中央、CBの間にギャップが生まれました。そのギャップを埋める為にボランチがカバーに入ってます。その結果、バイタルがガラ空きになりました。そして、空いたバイタルから湘南のミドルが決まって失点。
2失点目は、これはアデミウソンの怠慢守備です。このシーンの場合、ガンバの守備ブロックは整っており、これといってスペースは生まれてません。ただ、あの位置に持ち上がった下田にアデミウソンがしっかり寄せてればミドル打たれなかったのに、怠慢な寄せしかしなかったので、スーパーミドル突き刺されました。
そして三失点目。これは興奮しましたが、湘南のサイド攻撃の結果、ガンバのCBがサイドに引っ張り出されたので、ボランチが最終ラインのカバーに入りました。このプレーは特に問題はなかったのですが、クリアしたボールが運悪くバイタルに転がりました。ボランチが最終ラインのカバーに入った訳ですから、バイタルにはスペースが出来ます。このこぼれたボールを湘南の下田が再びスーパーミドル突き刺しました。
現在のガンバさんなんですが、前目の選手の守備意識にちょっと問題があります。ボランチが最終ラインのカバーに入る以上、バイタルのカバーをセカンドトップとWGがやらないといけないのですが、ぶっちゃけ、そこが上手く行ってません。第一節の鹿島戦、第四節の神戸戦なんかでも、その辺が上手く行ってなくて失点してます。
でもって、面白いナーと思ったのが、実はこないだのガンバ大阪対浦和の試合んですよね。
前回の湘南戦でバイタルミドルを三発食らい、僕は「同じ守備のやり方してたら浦和に絶対狙われるぞー」とか思ってた訳ですよ。どういう事かってーと、これは湘南戦でのキャプでやりますが、
これですけど、こういう守備やってたらガンバは絶対浦和にボコられんだろ・・・って守備でした。あそこで3421の2シャドーをフリーで前向かせちゃうような守備やってたら浦和相手はダメです。
さて、ガンバの長谷川監督。対浦和で何したのかっていうと、スタメンをガラッと変えてきてまして、フットボールラボさんからのキャプですいませんが、
湘南戦
↓
浦和戦
となってました。このビッグマッチで井手口使ってきたのには驚きましたが、結果的に、これは当たりでした。後半66分に井手口がミドルシュートのブロックに行ったシーンとか、素晴らしい判断の良さでした。湘南戦で散々やられてた形でしたが、きっちりと対応してましたからね。
浦和戦なんですが、ガンバの方は、442でがっちりブロックを組み、ボランチの前のスペースは遠藤とアデミウソンで完全に潰してました。湘南戦では前の守備が適当でボランチが引っ張り出されるシーンがよくありましたが、浦和戦では遠藤とアデミウソンでがっちり鍵かけてましたので、ボランチが前に釣り出されない。結果、ガンバのバイタルにスペースがないって状況でした。
となると浦和としてはサイドなんですが、ガンバの右サイドは阿部と丹羽ががっちり固めてて難しい。ガンバの左サイドは宇佐美なんで、狙い目になるんですが・・・・今の浦和さんって、右サイドの高い位置で違いを作れる選手ってのが・・・いない。
そんなこんなで、ガンバが前半の1点守りきって勝利という結果でした。ガンバは湘南戦からはスタメンも守備のやり方も随分と変えて、非常に守備的に戦ってました。結果はしっかりついてきた訳ですから、あれはあれで良いと思います。
今回の話はバイタルの守備のお話なんですけど、442でバイタルを完全に封鎖したい場合、両サイドの選手の守備、そしてFW二枚がバイタルのケアを行う事が必要不可欠になります。今の日本代表ですが、その部分で上手く行ってません。ガンバさんもスタメンによってムラがあります。今日はそんなお話でしたとさ。