サッカーのマッチレポートなどを中心に。その他サッカーのうんちく系ブログ。

CWC決勝などから考えるサッカーにおけるモダン戦術の潮流について 

えー、皆様、空けましておめでとうございます。本当に更新が空いちゃいましたが、久々のブログ更新でございます。内容は、バルサ対サントスの話になります。


内容的には試合後するやろうと思っていたんですが、やたらと空いちゃいました。理由はブログさぼってたからです。うはは。


で、なんですけど、今回の試合は、バルサの圧勝であった上に、もうそこいらで、レビューの記事も出てるので、もう二番煎じどころか222番煎じくらいなんですが、個人的に気になった事があったんで、そこを重点的にお話します。

その前にバルサというチームの特殊性と得意のプレス回避について

で、サントス戦の前に、バルサというチームについて。以前の記事でも触れましたが、バルサというチームの特徴は、最終ラインからボールを細かく繋いでいくビルドアップしかやらないって所です。ロングボール蹴ってセカンドボール拾う戦術は使いません。


通常、こういったサッカーをやるチームは、組織されたハイラインプレスに弱いと考えられています。自陣内のパス回しでミスがあった場合には、そこから一気にピンチになるからです。なんで、相手が組織だったハイラインプレスをかけてきたら、普通はロングボールを使ってプレス回避をするチームが多い訳です。(それが普通なんで、FWには、ボールを収められる長身選手が使われる傾向があるんですな。ロングボールの的として。)


この間のバルサ対レアル、通称エル・クラシコでは、開始数分で、まさに、ここにミスが出ました。バルサのGKのビクトル・バルデスのパスミスから、バルサがレアルに先制を許してしまったんですね。


普通のチームは、こういうミスがでると、怖がってGKがロングボールを蹴ってしまうようになります。ただ、やっぱりバルサはバルサだったわけで。最初のミス以降も、バルサは、ひたすら繋いでレアルのプレス回避をし続けました。


エル・クラシコにおける、バルサのハイラインプレスの回避方法は以下のような形になります。



こんな形です。まず、レアルはラインを上げ、バルサの最終ラインまで執拗にプレスをかけてきました。それに対して、バルサが行ったプレス回避がこの形です。つまり、ピケとアビダルゴールラインぎりぎりまで下げ、アビダル、ピケ、バルデスの三人で数的優位を形成。この三人で、ディマリアとベンゼマのプレスを回避し、円で囲った数的優位が生じている中盤中央のエリアにボールを入れて行く形です。


これが今回のバルサのハイラインプレス回避の手法です。レアルは、CB二人が最終ラインから出てこなかったので、この形で中盤と最終ラインで数的有利を形成し、レアルのプレスを無効化させていました。


ちょいとキャプでやりますが、


このシーンが象徴的ですが、レアルがハイラインプレスをかけた来た場合のピケのポジショニングに注目してください。ゴールラインぎりぎりの所まで下がってボールを受けています。あそこまで下がるのは、ベンゼマを前に釣り出す為です。まず、ベンゼマを前に釣りだし、レアルの陣形を出来るだけ間延びさせようとしているわけです。


レアルが、これに乗ってしまうとレアルの陣形は間延びさせられ、バルサの中盤には攻略すべきスペースが生まれます。


そして、これが次のシーン。ベンゼマのプレスを外された事によって、レアルの守備陣が次々と崩れ始めます。まず、エジルが自分のマークであるブスケツを捨ててピケに当たりに出てます。また、シャビがボールを受けに下がって来たので、それのマークでアロンソが前に引っ張りだされています。結果として、ブスケツがフリーになり、アロンソのポジションがガラ空きになってしまうわけですね。



で、ここでピケが選択したのは、前に張っていたダニ・アウベスへのフィード。アウベスはボールを受けると、シャビにボールを落とします。この時、アウベスをマルセロとアロンソで挟み込めればボール取れたのですが、アロンソは、シャビに釣られて前に出て行ってしまっていたので、それが出来ませんでした。





で、その後の流れはこうなりました。シャビ、セスク、サンチェスへとパスが繋がり、プレスを完全に外されてしまったわけです。この時、レアルの守備の問題点が幾つか。つまり、左SBのマルセロの戻りが遅いのと、右SBのコエントランとCBの間に広大なスペースが生じていること。

この時は、マルセロの戻りが遅かったので、メッシがフリーになっており、そこにクロスをだされたのですが、長すぎたので、カシージャスにキャッチされました。


このようにバルサってチームは、どんな時でも、最終ラインから繋いでいくスタイルだけは崩しません。この部分はCWC決勝でも、何もかわりませんでした。

ちょっと寄り道しますが、レアルの守備の問題点の話

この試合というか、その前のスーパーカップでのバルサ対レアルや、去年のクラシコから、気になってるんですけど、レアルの守備方法は、かなりバルサに研究されてる感じです。モウリーニョがバルサを研究しているのと同じくらい、グアルディオラとバルサは、レアルを研究していて、お互いに相手の穴を突いてきてます。


で、モウリーニョのレアルの守備上の問題点なんですが、SBとCBの間のスペースが、しばしば空いてしまうんですね。特に狙われているのが左SBのマルセロで、マルセロって、カバーに若干、難がある選手です。


4バックのSBは対面の相手に抜かれないのは当然として、その上で、中央のカバーもしないといけません。けど、マルセロは、中央へのカバーが若干ですが遅い。そのため、SBとCBの間にスペースが頻繁に生じてるんです。バルサじゃなきゃ、問題ないかもしれない穴ですが、バルサは見逃してくれません。キャプでやりますが、






スーパーカップの時のレアルの失点シーンですけど、ピケからサイドに張ってたセスクにロングパスを飛ばされ、左SBのマルセロをサイドに引っ張り出されてます。この時のポジショニングは、まさに、SBとCBの間のスペース狙いで、ダニ・アウベスが、そこを狙ってポジショニングしてます。そして、セスクは、中央のメッシに一度入れます。これで、CBを引っ張り出し、SBとCBの間のスペースを更に広げ、メッシはワンタッチで裏へのスルーパス。ダニアウベスが飛び出して、それを受け、中央のメッシにクロスを入れて、メッシが三点目をたたき込み、勝負を決めました。


これ、去年のクラシコからそうだったんですが、バルサは執拗に、左SBと左CBの間を狙っていて、あそこにスペースが出来るってことを研究されてるんですね。マルセロのカバーが遅い所が狙われてるです。もっとも、マルセロのカバーが遅い理由は、クリロナがサイドのフィルターになってないってが原因のひとつでもあるんで、マルセロだけを攻めるわけにもいかんのですけど。


それからもう一つ。エジルの守備の悪さ。これも見逃せません。去年のクラシコの時に、エジルがスタメンから外されていたのを覚えている人も多いでしょう。これ、エジルを使う限り、相手の中盤の底のブスケッツかシャビをエジルが見ることになるんですけど、バルサの心臓部であるブスケッツとシャビをエジルが見るとか、かなりリスキーなんです。去年のクラシコの前に、モウリーニョがエジルを外すだろうって意見がWSDなんかで良く出てたのは、当然だと思ってます。あそこでしっかり守備できないようだと、バルサのポゼッションを止めれる訳がない。


で、今回のクラシコでも、やっぱり、エジルはやらかしていて、









こんな感じで、簡単なマークの受け渡しを失敗してしまうんですね。で、エジルとアロンソがマークの受け渡しに失敗したので、下がって来たシャビにフリーで前を向かれてしまい、そこから崩されてしまう。それから、もう一つ見逃せない点、この試合のコエントランです。この試合、右SBのコエントランなんですけど、完全に穴になっていて、バルサに執拗に狙われていました。この試合みていて思ったんですが、コエントランは、中央のカバーがマルセロと同じくらい遅い。あれだと、SBとCBの間にスペースが生じてしまうので、そこをバルサに使われた終わりです。実際に、そこをセスクに付かれてまくってました。


バルサが同点にしたシーン。あそこでは、メッシの異常なドリブルがあったんで、あまり話題にはなりませんでしたが、メッシからサンチェスにスルーパスが出た際に、コエントランの中央への絞りが甘かった事からサンチェスのシュートを防げませんでした。


また、バルサの勝ち越し点は、CKからですが、そのCKを取られたシーンでも、コエントランには問題がありました。キャプでやりますが、







ここのシーンですが、モロに、レアルの守備の問題点が出ています。つまり、CBとSBの間にスペースが出来やすい。バルサの中央でのポゼッションの際、CB二人は中央に絞ってるんですけど、SB二人の絞りが甘いんですね。このシーンではサンチェスとイニエスタが、まさにそのスペースを使っていて、そこから崩されてます。というか、コエントラン、あそこはボールサイドに絞っとけよと。逆サイドは捨ててもよかったろ。


もっとも、一番、コエントランに呆れたのはバルサの三点目でしたが。







ここですね。バルサの駄目押しの3点目。まず、コエントランはイニエスタにチェックに出て交わされてしまう。ここまではしょうがない所です。イニエスタからボール取るのは本当に難しい事ですからね。ただ、問題は、その後です。悔しがってて、戻るのが遅れてしまってるです。そこで、悔しがってるコエントランを尻目にセスクは、コエントランが空けたスペースに猛ダッシュしてます。はっきりいって、セスクはスピードはない選手です。だから、コエントランと、よーいドンで勝負したら勝てません。ところが、コエントランが、悔しがってて最終ラインに戻るのが遅れてしまった。結果として、セスクと並走するハメになり、セスクにヘディングをたたき込まれるハメになりましたとさ。イニエスタにチンチンにされ、セスクにヘディングを叩きこまれと、コエントランは、この試合、良いとこ無しでした。というか、なんでモウリーニョはコエントラン使ったのか、ここだけよく分かりませんマジで。



バルサ対サントス。 4−3の守備ブロックの問題点。

――今年を通してバルセロナの試合を見ていたわけだから、今日は1人中盤の選手を増やして、少し違ったスタイルを採用することはできなかったのか?

 できなかったと思う。そうしたらネイマールかガンソかボルジェスを外さないといけなくなる。そうなったらどうなるか。可能なはずがない。MFを入れるためにはFW1人を外さないといけない。それは考えられなかった。ボルジェスはストライカーだし、ネイマールとガンソなしでは、サントスじゃないと思う。


ラマーリョ監督「恥ずかしい負け方はしていない」 (1/2) サントス監督 決勝後会見


さて、ここで、バルサ対サントスの話にうつるわけなんですけど、試合後の監督のコメント読んでて、それはどーなのと思ったんですけどね。


はっきりいって、モウリーニョでも、去年は、守備に難があるエジルをクラシコで何度か外してました。エジルは、ガンソと同じレフティですけど、ずうううううううううううううううううううっっと良い選手です。それでも、外すことがあった。試合後のコメント読んでて、世論とかからの圧力もあったのかなとか思いましたが、どう考えてもガンソ起用は、僕には正しいとは思えなかったんですよね。守備意識はエジル以下な上に、ハードワークができない。あまりに動かないし、オフザボールの動きがほとんどないクラシカルな司令塔タイプです。ブラジルで、なんであんなに騒がれているのか、理解できない所がある選手でして。。。リケルメ並のダイナソーです。ミランが追いかけてるみたいですけど、あれでは・・・・


エジルの守備の軽さや、守備の不味さから、バルサの中盤を止められないのは、モウリーニョの頭の痛い所になってます。エジルも急速に守備能力を向上させてますが、バルサとやるにはまだ不十分な所があります。簡単なマークの受け渡しを失敗してるようだとね・・・カカはさらに守備やらん訳だし・・・


レアルでも問題になるのに、サントスが、あんな事やったら、それがそのまま命取りになるでしょ・・・というね。


ただ、サントスは、守備組織自体にも問題が多すぎました。ここからは、サントスの守備の問題点にうつります。


サントスは、守備時に、ガンソとネイマール、ポルジェスの三人を残し、自陣深くで4−3のブロックを作る感じで、最初は守っていました。最終ラインの4人と中盤の3人で、深く守る形なんですけど、これが恐ろしいまでに組織されてない。柏対サントス戦の時から、酷い守備だなと思ってみてました。


ちょっと図でやりますが、4−3の守備ブロックは、以下の形に弱いです。



簡単な図ですけど、43の守備ブロックの場合、どうしても両サイドにスペースが出来ます。その為、ラインを必要以上に高く保つことは出来ません。もし、ラインが高いなら、相手はただ単に、図の形でサイドにボールを出してから、アーリークロスから裏へのスルーパスを出してるだけで得点できるからです。その為、普通は、ラインを下げて守ることになります。


ただ、ラインを下げても、やっぱり問題があります。これも図でやりますが、




こういう形に弱いです。つまり、一回、サイドに出してから、相手のボランチを一枚サイドに釣り出す。そうすると、ボランチの間にスペースが出来ます。そこにボールを入れれば、今度はCBが出てきます。CBが出てきたら、最終ラインに穴が空くので、そこにボールと人を送り込んで裏へと抜け出せばいい。それだけです。


サントスの守備の問題点

さて、ここからは、サントスの守備の問題点にうつります。まずは、柏対サントス戦のキャプからですが、


このシーン。このシーンで赤で囲ったゾーンにスペースが生じているのがわかると思います。サントスは、後ろは7枚で守るやり方で、4−3で守備ブロック作っているんですが、あれだと人数的に、スペースを埋めきれません。なので、サイドにボール出されると、必ず、あそこにスペースが生じてしまう。


柏も、それがわかっていて、レアンドロ・ドミンゲスジョルジ・ワグネル、澤が、そのスペースを上手に利用してました。

一番、決定的だったのが、このシーンで、アンカーの横のスペースでボールを受けたワグネルが、SBとCBの間にいた澤にボールを送って、澤が裏へと抜けだし、シュートがバーを叩いたシーンです。


他にも、前半から、レアンドロが




こんな形で、ボールを受けてました。


正直な話、こういったシーンを頻繁に柏が作っていたんで、柏は二点は取らなきゃ駄目な試合でした。あの試合を見たとき思ったのは、サントスのDF4人と中盤の3人は、レベルが全然低く、組織も上手くされていないって事です。サントスは、今年のリーグ戦で34試合で55失点してるみたいですが、このシーンみただけで、納得がいく出来です。普通にザルです。相手にスペースを与えすぎている。GKは相当いい選手でしたけど。


特に気になったのが、澤の抜けだしでもそうでしたが、引いた守っている時の右サイドの守備方法。右サイドにボール出されると、ボランチが一枚、右サイドに出てくるんですけど、その時に、中盤の3枚が右サイドにスライドしないんです。そのため、アンカーと左CHの間に広大なスペースが生じていて、あそこにボールだされたらどうするんだ?って何度も思いました。実際、そこから柏に崩されてましたし。


バルサの一点目と二点目は、右サイドからでしたが、最初の得点から。







これですね。やり方は、バルサ対レアルのスーパーカップの時と全く同じ。実は、WSDの347号で、セスクのコラムがあるんですが、そこで、あの時のシーンの解説があるんで、ちょいと引用します。


ゴールシーンを簡単に解説すると、まず、僕が右サイドのライン際でボールを受けて、そこからレオに横パスを出し、レオがこれをダイレクトでアドリアーノへ。メッシの素早いパスによってマドリーの最終ラインを突破したアドリアーノは、ニアサイドに正確なクロスを入れ、これをレオが左足のボレーで見事に合わせたというわけだ。


 僕が右サイドでパスコースを探していた時、アドアーノとレオが一直線に並ぶように後方から駆け上がってきてね。僕から見て、手前にアドリアーノ、奥にレオがいたんだけど、僕は近くのアドリアーノじゃなく、よいインサイドにいるレオへのパスを選択した。それは、レオのダイレクトパスからアドリアーノが縦に抜けるとこまでのイメージが、僕の中で完全に出来上がっていたから。

 レオにパスを送れば、おのずと相手のDFはレオに目を向ける。そして彼らの背後、いわゆる”死角”となる位置には、アドリアーノが使う為のスペースが生まれ、レオからのパスが通れば、確実にアドアーノへの対応は遅れるはず−。


 僕のパスから数秒でゴールが生まれたけど、僕にとってはすごく時間がゆっくり流れているように感じられたんだ。プレーがひとつ、またひとつと成功していく度に心の中で「よし!!」って言ってた気がする。


セスクがボールを受けた位置には違いがありますが、メッシはセスクへボールをはたく。ボールをうけたセスクは、一端、DFとMFの間でフリーになっていたシャビへとボールを当てる。CBがシャビへと視線を向け、当たりに出た瞬間に、CBとSBの間にできたスペースにメッシが飛び込み、シャビからボールを受けて裏へ。


正直、絶対、これでサントスはやられると思ってました。


で、二点目も、予想通りの失点の仕方でした。というか、ひどすぎた。






正直、ちょっとどうかしてるんじゃないかと。サイドのアウベスにボールが出た時に、ボランチ一枚がサイドに出て行く。それは良いとして、残りの二枚が右サイドに向かって絞らない。結果として、ボランチの間にバカでかいスペースが出来て、そこで完全にシャビがフリーになってしまっている。で、ダニ・アウベスは、そこにいたシャビにパスだして、シャビは、PAで一人交わしてシュート。バルサが2点目。


正直、バルサを舐めすぎじゃないかと。バルサ相手に、あんなスペースを与えてくれる相手、普通はいません。マジで。アンカーはマジで何やってんだと。シャビをあそこでフリーにするとか、お前、守備放棄モンだぞと。


でもって、三点目も酷かった・・・・



サイドのダニアウベスからなんですが、ここでラインが高すぎる。これだけラインが高いなら、そりゃ、裏へのパス一発でやられるよと。プレスがろくにかかってない状態で、あの高さはないでしょう。


こういっちゃなんですけど、後ろで4−3で守るときの欠点を全くといっていいほど、チームでカバーできてなくて、正直呆れました。バルサのワンサイドゲームになったのは当然で、サントスの守備だと、ヨーロッパの中堅所にも勝つのは難しんじゃなかと感じた次第です。



4−3の七枚で守るのは正直、モダンなチーム相手じゃ無理なんじゃないでしょうか・・・・


実は、ブラジル代表も同じ守備方法でやってるんですけど、ここの部分を突かれて、ドイツにやられてました。この間のブラジル対ドイツの親善試合で、ドイツがブラジルに3−2で勝った試合での事です。この試合は、かなり衝撃的な試合で、ブラジルがドイツに内容でも完敗するという試合でした。ブラジル代表といったら、美しいチームであることを求められる訳ですけど、この試合では、より美しく、より組織され、洗練されていたのはドイツでした。はっきりいって、ブラジルのほうは時代遅れのチームでした。


ドイツの二点目は、本当に美しい得点で、ブラジルの守備ブロックの中央をぶち抜いて決めた得点です。この試合、エジルが欠場してて、今では欧州最高の若手と呼ばれるまでになったゲッツェがドイツ代表のトップ下に入ってたんですけど、ゲッツェが、ブラジル代表に挨拶代わりの一発をかましたシーンです。キャプでやりますが、








こういう形でした。本当に綺麗に中央をぶち抜いたので驚きました。現在のドイツは、世界最高の代表チームの一つなのは間違いなく、ブラジル代表より、遙かに完成度の高いチームです。崩し方も完璧で、サイドを上手く使って、まず相手の中盤3枚の間にスペースを作り、そこでドイツのゲームメーカー、シュバイニーがボールを受ける。シュバイニーがボールを持ったら、クローゼがボールを受けに下がって来る。この動きで、相手のCBを前に引っ張りだし、CBが空けたスペースにトップ下のゲッツェが走り込み、クローゼが落としたボールをシュバイニーがゲッツェに送る。完璧な崩しでした。


僕は、もうバルサやドイツ代表みたいなモダンなチーム相手に、43の守備ブロックで守りきるのは不可能と考えているクチです。フィードとスローイングが良い世界最高のGKノイアー、繋げるCBのフンメルス、ゲームメーカーのシュバインタイガーがいて、前には、ゾーンの隙間で受けるのが得意なゲッツェ、エジル、ミューラーがいる。後方でのビルドアップから、2列目のポジションチェンジと素早いパスワーク、スペースへの走り込みで振り回されたら、ゾーンの隙間が空きやすい43の守備ブロックでは、引いて守りきるのは無理があるんです。こういう相手には、最低でも9枚で守備ブロックを作らないと守りきれません。


ぶっちゃけ、今のブラジル代表は、日本代表相手でも無失点で抑えきるのは無理だと思ってます。あの守備は、ゾーンの隙間で受けるのが上手い香川の為に守備してるようなモンです。


香川の得意パターンの話をちょいしますけど、こないだのフライブルグ戦のキャプですが、



ドルトムント対フライブルグの試合のキャプですけど、ドイツって、本当に、SBとCBの間にでかいスペースがしょっちゅうできるんですよね。このシーンみた時には、「ブンデスって本当にあそこの守備が緩いなあ・・・」とか思ってみてましたが・・・・


で、案の上、香川にあそこ使われて、ドルトムントに先制されてましたフライブルグ。







見事な崩しで、バルサみたいでした。香川は、これがとっても上手くて、この形を作らせたら日本で一番です。フライブルクは4141だったんで、まだスペース潰せてますけど、それでも香川にやられたわけです。やり方としては、バルサがレアル相手にかました形と同じです。一端、サイドに出してSBをサイドに釣り出す。このとき、フライブルグのボランチの一人が、SBとCBの間のスペースを埋めてるんですが、ここで香川の判断が上手い・・・・一度、中央へのドリブルを入れて、SBとCBの間にいたボランチを前に引っ張りだし、SBとCBの間にスペースを作る。その後で、一度、中央のギュンドアンにボールを入れて、相手のCBやアンカーの視界を中央に寄せる。その瞬間、CBやアンカーの死角となるスパース、つまり、SBとCBの間から、裏へ飛び出す。


これ、ブラジル代表やサントスの433だと、さらにスペースが広大になるので、とてもじゃないが香川を抑えられません。タジキスタン戦の4点目とか見れば、それがわかります。


タジキスタン、最後は4−3で引いてブロック作ってたんですけど、ただでさえ、守備力ないのに、あんなんじゃね・・・・キャプでやりますけど









一連の流れですが、崩し方はセオリー通りです。4−3で引いてブロック作ってる相手には、まず、空いているサイドにボールを入れる。サイドに入れれば、ボランチが出てくる。ボランチが出てきたら、アンカーの横にスペースが出来る。そこにボールを入れれば、今度はCBが出てくる。CBが出てきたら、最終ラインに穴があく。最終ラインに穴が空いたら、それを塞ごうとして、SBやアンカーがどんどんポジションを空ける為、連鎖的に守備が崩れる。あとはフリーの選手にボールを出せばよい。


他にも、ドルトムント対ウォルフスブルグでも、似たような崩しがありました。ドルトムントが、ウォルフスブルグ陣内でスローインを得たシーンからでした。ウォルフスブルグは、この時、4−3の7人で守ってましたが・・・・









このシーン、見事なコンビネーションから、ゲッツェのゴールでした。流れ的には、スローインから、ゲッツェに一度、ボールを当てて、ボランチのライトナーに落とす。その後、ゲッツェは下がる動きを入れてSBを最終ラインから引っ張り出す。これで、SBとCBの間に広大なスペースが出来ました。一回、ゲッツェは中を確認し、その後、すぐに香川が生まれたスペースに動いてボールを引き出す。この時、ウォルフスブルグのアンカーが香川についてくるわけですが、これで、守備陣7人のうち、4人がサイドに引っ張り出されてしまったわけです。当然ですけど、ゴール前の守備が薄くなっている。この後、上手にSBのマークを外していたゲッツェは香川のヒールでのリターンパスを受けて、そのまま中へ切り込み、先制点を決めましたとさ。


ドルトムント、シーズン初期は、こういう崩しが全くできてなくて苦労してましたが、前半戦の終わり頃になると、こういう崩しができるようになってきて、非常に感心しました。引いた相手には、ピッチを横に広く使い、相手の最終ラインを横に間延びさせ、SBとCBの間のスペースを攻略する。非常にモダンなやり方です。単純にクロスあげるだけじゃ、難しい時代ですからね。

今回の試合で感じた南米と欧州の大きな差。サッカー戦術の変化。

正直、相当差ができてます。バルサ対サントスもそうですが、ドイツ対ブラジル見た時も、随分、差ができちゃったなと思った次第です。


W杯の時もそうだったんですが、アルゼンチンとブラジルは、攻→守の切り替えの時、後ろ7枚の戻りは、おっそろしく早いんですけど、前3枚の戻りが遅いか、あるいは全然見られないって事がありました。あれだと、攻守の切り替え時に問題がでます。南米ならアレでもいいかもしれないけれど、欧州のトップリーグだと、あのやり方でなんとかなってるのは、セリエAくらいで、そのセリエAですら、最近は、その風潮に疑問がもたれてます。(もっとも、後ろ7枚で守るやり方で有名になったのは、うちの代表監督だったりするんですが)


欧州のトップリーグ、特にチャンピオンズリーグだと、FWの守備参加は、ほぼ必要不可欠になってます。高い位置からプレスかけるか、ハーフウェーラインからプレスにいくかは、チームによって違いがありますが、迅速な攻守の切り替えと9〜10人での守備は、ほぼ必須といっていいのが現状です。そうでないと、トップチーム相手には、とてもじゃないが守りきれません。多くのトップチームは迅速な攻守の切り替えと、最終ラインから繋いで相手の守備ブロックを破壊する能力を手に入れつつありますから。


欧州のリーグ戦で、迅速な攻守の切り替えと自陣内に組織された9〜10枚の守備ブロックを作って挑んでくる中位〜下位チームに、上位チームが苦戦するのは、別に珍しくもなんともなくなっています。そういった守備戦術の広まりと合わせて、攻撃戦術も変化してきています。


そういった相手に取りこぼしをしないように、ビッグクラブは、より素早い攻守の切り替えを徹底し、CBやGKにも足下のある選手を使い、中盤の底に優れたゲームメーカーを配置するのがデフォになりつつあります。ゲームメーカー墓場だったドイツみたいな所でも、ファン・ハールがシュバインタイガーをボランチにコンバートして成功して以来、次々とトップ下の司令塔タイプやOMFの選手が中盤の底のゲームメーカーにコンバートされてます。(サヒン、ギュンドアン、ホルトビー、ルディなどなど)


それに伴って、トップ下の選手の選択にも変化が起こっており、かつての司令塔タイプでなく、ゾーンの隙間で受ける能力の高いアタッカーが使われるようになってきています。例をだせば、アンチェロッティのミランにおけるカカとピルロ、去年のドルトムントにおけるサヒンと香川、ゲッツェ。ドイツ代表におけるシュバインタイガーとエジル、ミューラー。司令塔の位置が、一つ下がった事によって、彼らのようなアタッカーがトップ下では重用されるようになってきています。


また、一方で、守備戦術においても、中盤の底に強力なパサーを配置するチームが増えているため、CFとトップ下の守備参加は、ほぼ必要不可欠になってきています。そして、中盤の底のゲームメーカーがトップ下やセカンドトップにタイトにマークされる事が増えた事から、ゲームメークの役割は、CBやGKにまで求められるようになってきています。これは、ワントップのチームが増えた事から、CBの一人やGKはフリーでボールを捌けるからです。そういった守備戦術の変化にともない、GKやCBに求められる能力も増えてきています。ノイアーのフィードやスローイングは相手にとって脅威ですし、ドルトムントのCBフンメルスは、異様なフィード力をもっています。


サッカーの世界では、守備戦術がまず広まり、その後に、攻撃戦術に変化が起こるってのが普通なんですけど、この辺りの変化から、どうにも南米のチーム(とセリエA)は置き去りにされてる感じで、どうにも時代に取り残されてしまったという感じです。


サントスとブラジル代表については、ガンソは、ちょっとクラシカルすぎるし、やってるサッカーも古い・・・ネイマールは、十分、欧州でもトッププレーヤーだと思いましたが。


モダンなサッカーの戦術とかについては、日本代表の話もからめて、また日を改めて書こうと思います。今日はこのあたりで。