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J1昇格プレーオフ決勝「千葉対大分」のレビュー

さて、皆さん、こんにちは。本日は、ひっさびさにフットワーク軽く、リハビリも兼ねて、J1昇格プレーオフ決勝、千葉対大分の試合のレビューをしたいと思います。久々のレビューですが、興味のある方はおつきあいくださいませ。


内容的には、大分の3バックの話が中心になります。来年は、広島、浦和、湘南、大分が3バックでJ1を戦う事になると思われるので、3バックの話とかが中心になります。現在、3バックは、イタリアで特に流行っておりまして、J2でも、幾つかのチームが採用していまう。現在発売中のワールドサッカーダイジェストでも、ロベルト・ロッシが3バックについて書いているので、興味のある方は、自分でWSD買って、読んでみてください。


さて、本題に行く前に、J1昇格プレーオフのルールについて書いておきます。J2で3〜6位になったチームがプレーオフにまわり、準決では、順位が上のチームがホームで戦います。引き分けの場合、PKではなく、順位が上のチームが勝利となります。


簡潔に言ってしまえば、順位が上のチームは、ホームで0.5点のアドバンテージを貰って試合をスタートできると思って頂いて結構です。決勝は国立で行いますが、やはり、引き分けの場合は、順位が上のチームが勝ちなんで、0.5点程度のアドバンテージを貰ってスタートするのと同義です。


で、試合の話になる前に、J2、24節の湘南対大分の話

さて、本題に入る前に、ちょっと大分と湘南の3バックのシステムの違いとかについて、話をしたいと思います。ベルマーレが3421、大分が343、もしくは352ってシステムです。J2、24節の試合の場合、





こうなってました。何か違いあるの?と思われるかもしれませんが、ベルマーレと大分だと、守り方に明確な違いがあるんです。攻撃方法もそうですが、一番の違いは、守備にかける枚数の違いです。


ちと、大分の守備ブロックの作り方から説明しますけど、




大分の場合、後ろにブロック作って守る場合、こんな感じで7枚で守るか、8枚で守ります。5バック+2ボラ、もしくは5バック+3ボランチです。2トップ、もしくは3トップは、自分のマッチアップの相手にはプレスに来ますが、それほどプレスバックは熱心にしてきません。カウンターに備えて、前に残っているケースが多いです。前に二人ないし3人残して守る為、大分はカウンターがやりやすいです。2トップ、あるいは3トップにボール当てて、そこから一気にカウンターに移れます。



一方で、ベルマーレの方なんですけど、基本、ハイプレスのチームなんですが、プレスを突破されて、自陣に押し込まれた場合、



こんな感じでブロック作ります。前にワントップ一人残して、9枚でブロック作ります。シャドーの二人は、サイドの守備をWBと連携して行います。大分と比較すると、守備ブロックの枚数が多い訳です。ただし、カウンターの際には、前に一人しか残ってませんから、シャドーとWBが長い距離を走ってパスコースを作る事になります。そのため、ベルマーレのほうがシャドーやWBに運動量が要求されるタイプのサッカーです。


さて、両者とも、後ろで守る場合、5バックで守るんですけど、違いは、その前のMFの枚数です。大分は2〜3人でフィルターをかけ、ベルマーレは3〜4人のMFでフィルターをかけます。


で、なんですが、大分のほうはフィルターに割く人数が少ない分、前にFW残せるんですが、一方で、フィルターが少ない為、どうしても、中盤で相手にスペースを与えてしまうという問題を抱えています。j2、24節の試合では、ベルマーレが4−1で大分を下したんですが、大分のフィルターの守備の枚数の問題がモロにでた格好でした。



結論からいうと、この日、大分は時々、2ボラ+5バックの七人で守ってる事があったんですけど、これ、ベルマーレにとっては、中央突破してくださいみたいなやり方だったので、ガリガリ中央突破を行って、前半で3点を取ることに成功しました。



なんで、2ボラ+5バックだと、中央突破がしやすいのかっていうと、ここからはキャプでやりましょう。これね、ベルマーレの3点目が綺麗に中央ぶち抜いた得点なので、それをキャプでやりますが、







という流れでした。


この試合、ベルマーレの最初の3点は、どれも大分の守備ブロックが5−2の時に起こっています。5−2の守備ブロックって、基本的に守るのは非常に難しいんです。



何が不味いかってーと、これ、図でやりますけどね、





こうなります。中盤二人なんで、中盤のエリアをカバーしきれないんですわ。どう頑張っても、中盤2名だと、丸で囲ったエリアをカバーしきれない。だから、ゴールに近いエリアで、ベルマーレのシャドー、ボランチ、WBに前を向かれやすいんです。ベルマーレの先制点の時もそうだったんですけど、



こんな感じになっちゃってましてね。この後のベルマーレの得点は、菊池の超個人技からの突破だったんですけど、ベルマーレの最初の3点は、大分の守備が5−2になってるときに起こっていて、大分は5−2の時、守備が異常に脆くなる傾向があるんです。勿論、前に3人残ってるわけだから、カウンターの時は便利な訳ですけど、一方で、守備は非常に残念になるんですね。ブロックが5−3になってると、これがずっと堅くなるんですけも。


特に5−2だと不味いのは、相手のOMFが前むいて仕掛けるスペースが大量にある所でして、この試合では、そこを湘南のOMFや、WBに散々利用される事になりました。


最初に、大分の守備の欠点の話をするのは、これ、今回の千葉対大分の試合において、ゲームプランと関係するからです。

千葉対大分、フォーメーションとミスマッチ、そしてプレッシングの話

さて、こっからが、今回のプレーオフ決勝の話になります。最初に述べましたが、J1昇格プレーオフでは、順位が上のチームのほうが有利になるように、引き分けでも、J1に昇格できます。0.5点のアドバンテージをもってスタートできるわけですね。


まずは、両チームのスタメンとフォーメーションですが、




こうなってました。


さて、この組み合わせ、簡単にミスマッチが起きます。どーいう事になるかというと



これです。千葉はサイドで簡単に数的有利が作れます。ミスマッチが生じているからです。一人のCFを3人のCBで見ているという典型的な問題がここでは引き起こされます。そのため、サイドで手が足りなくなっています。


さて、大分のほうですけど、この問題をどう解決してたかって話になるんですが、こんな感じでした。



中央の3人のボランチのうち、一人が素早く前に出て、千葉のSBに寄せるという形です。FWにハードワークさせるという手もあるんですが、この日の大分は、そこまでFWには守備をさせていませんでした。ただ、このやり方は問題があります。どういう事かというと、



ココです。千葉が山口智から、SBにボールを出した時、ボランチが一人、前に出てくると、中央のエリアで大分は数的不利に陥るんですね。これ、かなり大きな問題になるはずだったんですけど、実は、前半、これが問題になる事はほとんどありませんでした。


ちょっと、なんで其処に出すんだ?というシーンが前半の11分にあったんですけどね、









ココです。


あのですね、大分のほうは、千葉の左SBにボールが出ると、ボランチが一枚、前に出てきてSBにプレスかけてくるわけですよ。その時、どうしたって、中央で千葉のMFが一枚、フリーになれる。このケースでは、トップ下がフリーになってます。ところが、そこが空いているのに、使わないんですよね千葉。


また、サイドの高い位置に起点作った時でもそうなんですけど



ここ、相手の中盤は3枚なんだから、WBとCBの間にトップ下かSBがフリーランニングかけて、相手のボランチを最終ラインに引っ張って、トップ下の位置にボランチが上がっていって、中央に兵藤がカットインしても面白いんだけどなあ・・・なんて思ったんですけどね。


いやね、ちょっと千葉のポゼッション見てて、モヤモヤしてたんですけどね。というか、前半の千葉さん、あんまり攻撃でリスクを取る気はないようでして、22分のシーンとかでもそーなんですけど、









こんな感じでした。


この日の前半、千葉は引き分けでもいいって事からか、あんましリスクを取った攻めはしてないんですよね。基本、サイドサイドで、中央にはあんまり入れない。


もちろん、中央攻めてカウンター食らってもつまらないって事なんでしょうけど、リスクマネジメントといえばそれまでですが、見てて「中央入れよーよお・・・・」と思ったシーンが結構ありました。「中央攻めてカウンター食らうのは嫌だ」というのは理解できるんですけどね。


大分は、千葉がSBにボールだすと、ボランチが一枚、前に出てきてプレスかける形だったので、千葉はそこで、相手のボランチ一枚サイドに引っ張り出して、そこから薄くなった中央に当てて展開ってのを狙う事も、勿論ありました。個人的には、もっとこれ、やってもよかったと思うんですけどもね。


右だとこんな感じです。




右SBが相手のボランチ一枚を釣り出してから、薄くなった中央にパスを入れると。大分の守り方からすると、これをやられるとかなり厄介でバイタルを使われる危険性があるんですけど、千葉はこっからがちょっと微妙で、大分は助かってました。なんで、やっても微妙だったかなあ、というのはあるんですが。


基本的に、すでにリーグ戦で大分と千葉は二試合戦っている訳で、お互い、手の内は大体わかってるわけです。戦績は1勝1敗で五分。千葉のほうは、リーグ戦での経験から、左サイドから好機を作れるってのはわかっていたはずで、左からそれなりに好機つくれてはいたんですが・・・決めるべき時に決めれず・・・という感じでした。特に後半。


さて、ここからは前半の大分の攻撃と千葉の守備の話になります。


もっとも、この話は、あまり長くならないんですけど、この日、大分の狙いはやっぱりカウンターで、後ろは8枚で守って、前に二人残すみたいな形でした。だから、ボール奪ったら、素早くデカモリシに当てて、セカンドトップに落としてみたいな形です。




こんな奴です。基本的に大分は、守から攻への切り替えの所が非常に速いチームでして、奪ったらワンタッチで前の二人に当ててきます。ここは徹底されてます。そして、ボール納まったら一気にカウンターと。ここも幾つかバリエーションがあるんですけど、その話をするエネルギーが残ってないので、簡単にまとめさせてください。


もひとつはロングボールです。




こーいうやつですね。


この日、千葉のほうは、あんまりハイプレスはかけてませんでした。実際問題として、前からいっても、デカモリシめがけて蹴られちゃうだけなんで、ハイプレスはさほど有効でないと判断したのかもしれません。


さて、千葉の守備のほうなんですが、4231です。4231の場合、大概、前からプレス行くときは442、後ろで守るときは4411です。千葉の場合、後ろで守るときは、トップ下も戻ってきて守備やります。だから、守備の枚数が多めで、



こんな感じですね。J2では、リーグ戦33失点と、リーグ最小失点だったんですけど、基本的にDFの個人能力は高いし、GKもいいです。だから、一端、9人でブロック固められると、大概のJ2チームはノーチャンスでした。千葉はベスメンの時はホントに堅いので、この日、大分がカウンター狙いだったのは当然だと思います。一回、ブロック固められると、まず点を取るのは無理だからです。



とまあ、これで、大体、千葉と大分の攻撃と守備の話は大体終わりです。

2ndhalfと嗚呼、無情


さてさて、ここからが、この試合の前半ですが、自陣内で5−3でブロックを作って守り、カウンターを狙う大分、ポゼッションで攻める千葉って感じでした。ただ、千葉のほうは、引き分けでもいいってのと、大分のカウンターを食らうのが嫌だったのか、無理をせずに試合を進めてました。


ここで両監督のゲームプランの話になるんですけど、千葉と木山監督のほうは、引き分けでもいいわけですから、無理にバランス崩さずに攻めて前半を終えたのは、ある程度ゲームプランの通りだったと思います。勝たないとJ1昇格できない大分の田坂監督のほうは、後半戦、どこかでバランスを崩して攻めにでざるをえなくなる。木山監督と千葉のほうは、相手がバランス崩して攻めてきた時がポイントになります。大分は、点が欲しくなると、後ろの人数削って前増やしてきますから、その時が試合を決めるチャンスなんです。


ここで、最初に湘南対大分の試合の話に繋がるんですけど、大分が守備方法を5−2に切り替えて、前に人数残すようになった時に、千葉としては一気に試合を決めたい。大分は5−2になった時は、守備がかなり脆いんで、その瞬間を待っていても良い訳です。ベルマーレがやったように、相手がバランス崩してきた時なら、中央割るのはかなり簡単になります。また、カウンターでもそうなんですけど、ベルマーレが大分相手に4点目を取ったときには、大分がバランス崩して前に人数かけてきていたので、ボールをうばった後に、ベルマーレの岩上がポコーンとDFの裏にボールを出して、それをCFの馬場が裏に抜け出して駄目押しの4点目でした。千葉としては、相手が攻守のバランス崩してきたときを狙って、一気に試合を決めるってのを狙っていればいい。


一方で、田坂監督としては、どこで勝負をかけるかって話になるんです。バランス崩して前に人数かけた場合、下手すると湘南戦の二の舞になりかねない。しかし、どこかで勝負にでない事にはJ1への道が閉ざされる。さて、どこで勝負をかけようって話になるんですわ。


後半の話になるんですけど、千葉も大分も大きな変更なく、後半に入ってます。ただ、流石にボランチ3枚が疲弊してきたのか、少しづつですけど、大分のフィルターが弱くなってきていて、



こういうのが出てくるようになってくるんですね。この後すぐの74分のシーンでも、大分のボランチの運動量が落ちてきていて、そのため、中央でボールまわされて裏をとられかけてます。また、ミスからシュート打たれた79分のシーンも危なかったです。ただ、この時間帯を無失点で切り抜けた後にドラマが待ってました。


田坂監督が、後半39分、勝負に出ます。DFの土岐田削ってFWの高松をいれてきます。後ろの人数削って、前に人数かけるような形に変更しました。田坂さんは、ここで勝負にでたわけです。


で、田坂さんが動いたのをみて、木山さんも動きます。後半41分、FW荒田を投入。大分がバランス崩して攻めてきた時のプランとして後ろ2バックで守る形にするだろうから、FWの荒田いれて、カウンター狙うって形にしようと思ったんでしょうが・・・無情なのはその後。


後半41分。千葉のDFが痛恨のオフサイドトラップミス。そして、裏に抜け出した林がデカモリシのパスを受けて独走し、サイドはループシュートを決め、これが決勝点に。


最後は千葉はオーロイを入れて、パワープレイにでましたけど、大分はすぐにDFの若狭をいれて、人数かけて守りきり、今期のJ1昇格、最後の切符を手に入れることになりました。


嗚呼無情・・・

さて、最後にまとめになります

今回、最後の試合で、千葉はホントに最後の最後に痛恨のミスが出てしまい、やられてしまいました。あそこでオフサイドトラップのミスが出るとは思わなかったんで、ホント驚きました。まさか、あそこで・・・と。


今回の試合で、僕が凄いなーと思ったのは、大分の中盤3人です。千葉相手に中盤を3枚でカバーしきるっていうのは、かなり難しい仕事で、前半見てて、後半はもたないんじゃないかなあ・・・なんて思ってたんですが、なんだかんだで守りきっちゃいましたからね。ホントに、あれには感心しました。千葉相手に中盤3枚でしのぎきるってのは、相当難しい訳で、それをやりきった訳ですから、感心しきりです。


一方、千葉のほうなんですが、とにかく、点をいれるべき時間帯に取れなかったのがホントに痛いし、最後にあんなミスから失点してしまうとは・・・もうホントに千葉については・・・持ってないとしか・・・大分がバランス崩して攻めてきた訳だから、そこで一気に畳みかけて・・・となるはずが、まさかのオフサイドトラップのミスでしたからね。。。。



大分は、これでJ1昇格の切符を手に入れたので、来期はJ1です。ただ、ベルマーレと同じでJ1であの守備のやり方で守りきれるかどうかは、非常に不安な所があるんですわ。


ベルマーレの話は次でやりますけど、今回の話で扱ったように、大分の守備のやり方、つまり、SBにボールが出た時に、ボランチが一枚、前にでてプレスをかけるってやり方は、相手のボランチやトップ下の選手をフリーにしてしまいやすい為、J1でどこまで通じるか、僕としては、ちょっと不安視してるんですわね。


J1だと、一回SBに出して、大分のボランチをサイドに引っ張り出した後に、薄くなった中央にボール入れてバイタル攻略を狙えるチームは結構あるので、そういうチームを相手にした場合、どこまでやれるかなあと。大分は8枚で守って2枚をカウンターの為に前に残す形ですから、4バックだろうと5バックだろうと、8枚ブロックだと、人数的にスペース消しきれない所があるんです。千葉のほうは、後ろ9枚で守るので、がっつりスペース消してしまえる為、そーゆー問題はないんですけど。


昇格チームの話になりますが、甲府さんの所は、ダヴィがどうなるかわかりません。ダヴィ無しでJ1はきついと思うので、さてどうなるかって感じです。ベルマーレは、3バックでハイラインプレスなんて危ない事やってるチームなんで、J1でどうなるかなー・・・と。次にこの話しますけど、あれねー、かなりリスキーなんですよ。J1だと、デメリットが出まくるんじゃないかな・・・なんて心配を今からしてるんです。j2は、相手チームのミスが多いからあれでも良かったけど、J1はJ2と違ってミスが非常に少ないリーグなのでね・・・あとグギョンと大野君は多分、来年いないだろーし。大分さんは、やっぱり後ろ8枚で守ろうとしてる所が怖い所で、あれが通用しないとなると、FWのどっちか一人にハードワークしてもらわないといけなくなります。また、借金が多いクラブなんで補強もきついところですし。


それぞれのチームで、J1昇格したら昇格したで、悩みがあるんですけど、来年はどこのサポもやっぱりJ1楽しみにしていると思います。今年の昇格チームは、どこも、目標はJ1残留、勝ち点40が目標になるんでしょうが、神戸やガンバクラスの戦力もっていても、勝ち点40取れないJ1という現状をみると、勝ち点40は、ホントにきつい目標だって、わかってはいるんですけどね。



とりあえず、今日はこんな所で。それでは皆様ごきげんよう。