読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる
サッカーのマッチレポートなどを中心に。その他サッカーのうんちく系ブログ。

アブラヒモビッチのゲーム、そしてロシアサッカーの世界~おそロシア~

サッカー小咄

西側のおとぎ話は「むかし、むかし、あるところに・・・」で始まる。
東側のおとぎ話は「やがて、いつかは・・・」で始まる。


共産圏のジョークより



さて、皆様、こんにちは。本日のお題は「ロシアのサッカー事情」でござる。ブログを分割したんで、こっちでは好き放題サッカーの話が出来ますんで、今日もちゃっちゃと更新でございます。今回は、ロシアサッカーの話を小咄形式で紹介したいと思います。やっぱり怖いロシアサッカー。最近は本田がCSKAから移籍できなくて、「シベリア抑留」なんて言われてますが、あんなん、ロシアサッカーの恐ろしさの一部に過ぎません。



アブラヒモビッチのゲーム、チェルシーという名のロシアンルーレット

ロシアで1990年代に政界に大きな影響力を誇った新興財閥の代表的な実業家で、その後のプーチン大統領との対立でイギリスに亡命していたボリス・ベレゾフスキー氏がロンドン郊外の自宅で死亡し、イギリスの捜査当局が死因を調べています。



ロシア大統領と対立の新興財閥死亡

こんなニュースが飛び込んできたからです。おそロシアという奴なんですが、まー、これ、暗殺の香りがぷんぷんしますよね。



これ、アレックス・モンゴメリー著の「プレミアリーグの戦術と戦略」のなかに、なんでアブラヒモビッチはチェルシーを買ったのかって話があります。プレミアリーグに詳しくない人のために補足しますが、ロシアの新興財閥、オリガルヒのボスの一人だったアブラヒモビッチがプレミアリーグのチェルシーを買収したのは2003年の事です。


なぜ、彼は、チェルシーを買ったのか?


これ、いわゆる一つの「金持ちオーナーの気まぐれ」って訳じゃないんです。彼がチェルシー買ったのは「僕の考えた最強チーム」という男のロマンのためじゃないんですね。これ、「プレミアリーグの戦術と戦略」から引用しますが、


「アブラヒモビッチにとって、チェルシーが儲かるか儲からないかというのは問題ではなかったのです」


ロシア事情に詳しいある情報筋はそう明かしてくれた。


「プーチン政権によるオリガルヒへの追求から逃れるためには、財産を全て投げ出すか、国外へ逃亡するしかない。そこまでロシア国内の事情は差し迫っていました。でも、ロンドンの名門クラブを買収した事で、さすがのプーチン政権もアブラヒモビッチに手を下すことはできなくなってしまいました。さらに、チェルシーが強くなり、欧州の頂点にまで立った事で、ますます弾圧することが難しくなってしまいました。イギリスの首都ロンドンに居を置く名士として、その地位は確立されたも同然ですから」


アブラヒモビッチが赤字覚悟で補強を続ける理由。


それは自らの財産と地位を保証するための生きる術だったのだ。



プレミアリーグの戦術と戦略 日本人選手活躍の条件 (ベスト新書)

プレミアリーグの戦術と戦略 日本人選手活躍の条件 (ベスト新書)



というものです。アブラヒモビッチは、ボリス・ベレゾフスキーと同じく、ロシアの新興財閥のボスの一人です。ただ、プーチンが大統領に就任して以来、新興財閥を片っ端から潰して回ったのは有名な話でして、アブラヒモビッチも当然狙われていたわけです。アブラヒモビッチのチェルシーへの投資は、自分の命への投資でもあるわけです。彼が生き残るための保険だったんですね。チェルシーに、アホみたいに金つぎ込んでますし、ちょっと負けがこんだだけで、速攻で監督のクビを飛ばしますが、チェルシーとは、彼にとって、自分の命をかけたゲームそのものであって、負ける訳にはいかないんです。とまあ、そういう訳ですので、アブラさんが、時々、気が狂ったとしか思えない監督解任に走っても、大目にみてやってください。こういう裏事情があるわけですよ。


チェルシー、それはアブラヒモビッチの生命をかけたゲームなわけです。このゲームに負けたらプーチンにぶっ殺されかねない。



ロシア、サッカーで死人が出る国(ただし死者はピッチの外で出る)


さて、次の話に移るんですけど、アブラヒモビッチと新興財閥とサッカーって、ちょっとした関係があります。もともと、ロシアの新興財閥に関しては、ソビエト連邦崩壊後の混乱の中、市場経済導入の過程で、様々な優遇措置を受ける事で財をなしたグループです。このような優遇措置の一つに、税制の優遇、関税の免除があります。これらを巻き込んで政財界、ロシアンマフィアの癒着がどんどん進行していきます。特に銀行は様々な優遇を受けていた為、ロシアンマフィアの抗争にしばしば巻き込まれました。この時期、ロシアの民間銀行の頭取がマフィアに暗殺される事件が多発してます。



それで、なんですが、こっからがロシアのサッカーの話になるんですが、1990年代初頭、ロシアのサッカーも又、どん底の状態にありました。収入はなく、選手に払う給料もないという奴です。そんな中、ボリス・エリツィンがスポーツ大臣に彼のテニスコーチだったシャミル・タルピシェフを任命した事から、全てが始まります。



タルピシェフはエリツィンに対して、スポーツクラブが別口の収入を得られるように、酒とたばこを無税で輸入できるようにすべきだと提案しました。これが彼の考えだったのか、それとも又、別の黒幕がいたのかはわかりません。これによって、スポーツクラブは、酒とたばこを輸入して売れば、普通の輸入業者より遙かに効率良く利益を出すことができるようになった訳です。



これは非常に大きな利権でした。その結果として、ロシアマフィアが、このビジネスに食いついて、スポーツクラブに食指をのばし始めます。マフィア同士がスポーツクラブを争って抗争を繰り返すようになり、1990年代、ロシアのサッカー関係者が殺人事件に巻き込まれる事になります。



この時期のロシアでは、銀行関係者やスポーツ関係者がマフィアに暗殺される事件が多発してるんですが、この原因となったのが、銀行やスポーツクラブに与えられた「関税の免除」を巡るものです。


デクラン・ヒル著の「黒いワールドカップ」の中に、当時起きたロシアサッカー界での暗殺事件のリストがあるので、それを引用しますが、

CSKAモスクワの会長エフゲニ・ギネルの息子ワディムと運転手は暗殺未遂事件で襲撃された。
ノヴォシビルスクで地元サッカー協会の会長をしていたウラジミール・バレエフが殺害された。
サッカークラブ、ルフ・エネルギア・ウラジオストクの幹部、ビクトル・スクリパルが殺害された。
サッカーエージェントのユーリ・チシコフが殺害された。
スモレンスクが拠点のサッカークラブ、クリスタルで2002年に会長だったウラジミール・プロホロフが殺害された。
CSKAモスクワのニコライ・レノ会長が謎の自殺未遂。
CSKAモスクワの幹部アンドレイ・トルビツインが拷問を受けて脅迫された。
CSKAモスクワに所属するコーチの妻ナタリア・ドルマトフが行方不明に・
サッカークラブ、ロトル・ボルゴグラードの名誉会長ウラジミール・ゴリュノフの息子が殺害された。
サッカークラブ、クリスタルで1999年に会長だったアレクサンドル・シュカドが殺害された。


というものです。本田が所属してるCSKAモスクワの名前が目立ちますが、CSKAはもともとロシア陸軍のチームだったんですけど、2000年代初頭、前述した利権をめぐるマフィアの抗争に当然のように巻き込まれまして、その結果がコレです。



サッカーは戦争だ!なんて言った文豪がいますが、ロシアにおいてはサッカーは一時、ホントに戦争状態だったというオチです。


CSKAの奨励報酬とロシアサッカーの八百長の文化

「捕まらない限り泥棒じゃない」


古いロシアのことわざより


さて、現在、CSKAは「奨励報酬」なるものを他チームに支払って、八百長に荷担しないようにしてます。これ自体がCSKAによる他チームへの買収みたいなモンだろ!!とか思う人もいるかもしれませんが、これがロシア的事情という奴です。CSKAから、他のクラブにいった選手がイマイチ活躍できなかったりしますが、こういう裏事情があるわけですから、CSKAの成績については、そのあたりさっ引いて考えないといけないわけです。



笑っちゃう話ですが、ロシアサッカーといったら八百長です。これは、もうソビエト時代から続く伝統みたいなモンです。もっとも、ロシアサッカーの関係者はそれを認めないでしょう。冒頭にはった通り、「捕まらない限り泥棒じゃない」からです。




これ、サイモン・クーパーの出世作、「サッカーの敵」にロシアのサッカーと八百長事情のコミカルな文章があるので、それを引用しますが、


ぼくはウラジミール・シンカリョフと彼の仕事場である科学アカデミーに座っており、ウラミジーミルはロシアのフットボール雑誌の記事を読んでくれていた。記事はロコモティフ・ニジニ・ノヴゴロドの監督ワレリー・オフチニコフへのインタビューだたが、その中でオフチニコフはやぶからぼうにしょっちゅう審判を買収していると語った。「やってるのは俺だけだと思うか?」オフチニコフは尋ねていた。シンカリョフは表情も変えずに記事を読み、その先を読み続けようとするので、ぼくは割って入った。「これはスキャンダルにならなかったんですか?」シンカリョフは説明した。「最近のロシアはスキャンダルだらけで、すっかり麻痺してしまったから」



言いたいことはよくわかる。スターリンが自国民を何百万人と虐殺していたこと、五カ年計画は何百%もの達成率を誇っていなかったこと、西側の食料支援がいずこともなく消え去り、しばらくしてから店頭に並ぶことを知ったあとでは、フットボールの監督が賄賂を贈る程度ではなかなか騒げまい。少し前、一部リーグの18人の監督が「リーグで八百長試合はありますか?」と尋ねられたことがあるが、18人全員が「イエス」と答えた。次の質問、「あなたのチームは八百長に参加したことがありますか?」には全員が「ノー」だった。

また、サイモン・クーパーとロシアの地元のジャーナリストで、レフェリーの買収について論争した話が、これまた傑作なんで、引用しときますが、


「昔、若かった頃、年上のジャーナリストから言われたよ、『悪いレフェリーはPKやオフサイドを与えるが、いいレフェリーは中盤でとめることができる』違いはそれだけだ。レフェリー?レフェリーなんかどこだっている。ここのレフェリーはすべてをみてる」彼は空を指さし、ぼくは話題を変えた。


これ、傑作ですけど、審判への賄賂に対する考え方が、まあ、全然違うんですね。もう審判やマフィアへの支払いは、税金と同じレベルです。



本田がなかなか移籍できなくて、日本のファンはいつものガッカリさせられますけど、実は、CSKAとロシアサッカーには、こういった裏事情がありまして、他の国のクラブとしては、CSKAでの成績をそのまま鵜呑みにするわけにはいかない状況だったりします。ロシアサッカー自体、八百長まみれっぽい為、リーグ戦を参考にできないんですね。これは、他の東欧のリーグほとんどに当てはまる問題でして、東欧のリーグだと八百長がはこびってますから、そこから選手を買うときには、もの凄く注意する必要があるわけです。




ちなみにですが、ロシアの隣国のウクライナでも状況は似たようなモンで、ウクライナではサッカークラブに免税特権を与えられてました。ウクライナのクラブ、ディナモ・キエフはそれを利用して西側の会社と合弁会社を設立。利益が免税なんで、月、百五十万から二百五十万ドルの利益を上げたと言われてます。当然、そこにもマフィアが入り込みました。ウクライナのチーム、シャフタール・ドネツクはこないだCLにも出ていたので有名かと思いますが、シャフタールのオーナー、アルト・ブラギンと5人のボディガードが殺害されるなんて事件が起きた事もあります。東欧の国だと、マフィアへの支払いは税金みたいなモンになってるわけです。勿論、八百長はウクライナにも存在します。ディナモ・キエフの話で、サイモン・クーパーがそれに言及してます。マフィアに選手が脅迫された話や、ディナモ・ファンのマフィアのボスが暗殺されて、それにディナモの選手全員が参列した話とかね。


滅茶苦茶だろ、って思うかもしれませんが、東欧の話って、日本に住んでる身からするとファンタジーすぎてついて行けません。



最後に、東欧系マフィアとアジア系マフィアの資金源の違い


さて、最後になりますが、


欧州CL抽選で操作あった?元国際審判がトルコのテレビ番組で“告発”



まーた、こんな話が出てきてます。こっちはUEFAの腐敗とかの話にも繋がるんですが、トルコ、ウクライナあたりはマフィアがスポーツクラブ運営してるような状態なんで、なんか、そっちであったんかな?こんな暴露して?と思ったニュースです。



トルコだと、近年、フェネルバフチェSKが八百長疑惑でCL出場権剥奪されて、トラブゾンスポルが出る事になった騒ぎがありましたが、同じ八百長疑惑のポルトとの違いは一体・・・という奴です。これねえ、キナ臭いニュースですよ。なんか裏であったんでしょう。



これ、東欧とかだと、スポーツクラブ(サッカーのクラブ)が免税特権もってるケースがあって、そこにマフィアが目をつけて、マフィアがサッカークラブの経営に乗り込んでくるってのがあるんです。ウクライナとロシアは、そういった形でマフィアがサッカーに入り込みました。最初は、サッカークラブの経営を助ける為のアレだったんでしょうが、免税特権のせいで、マフィアとの癒着に発展するケースがあるので、正直、どーなのよって思うわけです。トルコもマフィアが国を牛耳ってるような状態なんで、なんかキナ臭いんですよね、このニュース。




これ、東欧とかのマフィアがサッカーと関わる場合の典型ケースなわけです。アジアのマフィアの場合、サッカーの結果に賭けるオンラインギャンブルが資金源ですけど、東欧の場合、サッカークラブの免税特権を資金源としてるケースになるんですね。



以前、どこかで「ヨーロッパみたいにJリーグのチームにも免税特権を与えるべき」というアレをみた事があるんですが、「そんな事したらヤクザがサッカーに手を出してくるから駄目だろ・・・」というのが僕の意見な訳です。免税特権とかはいると、大抵、ヤーの字が出張ってくるんですよ。東欧というアレなモデルケースがあるので、僕はそういうのはするべきじゃないと思ってます。



最後になりますが、ヨーロッパサッカーって、裏に回ると、ホントに真っ黒な世界です。特に東欧になると、ホントにアレな話ばっかりで嫌になります。最近、FC東京から梶山がギリシャに移籍しましたが、ギリシャに行く位ならJリーグでいいだろ・・・と。ギリシャリーグも汚職で有名なんですよ。だから、そういうリーグに僕は日本人選手に行って欲しくないんです。



サッカー=ギリシャ八百長事件、1部リーグの2会長も逮捕



こんなニュースありましたけど、欧州だと、トルコ、ギリシャ、ウクライナ、ロシアのサッカーリーグは八百長とかマフィアの話が絶えないので、サッカーを真面目にやりたいなら、行くべきリーグじゃないと僕は思うわけです。他にもセルビア、ベルギーでも八百長が問題になったばかりだし、海外行けばいいって時代じゃないんです。海外のサッカーリーグは八百長が蔓延してるリーグが結構あって、そういう場所にいっても成長はできませんよ、と。最悪、命の危険まであるわけで。



やがて、いつかは、こんなカオスな状況も終わる日が来るのかもしれません。やがて、いつかは・・・。



今日はそんな所で。ではでは。