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サッカーのマッチレポートなどを中心に。その他サッカーのうんちく系ブログ。

「イングランド・フットボールの源泉に毒を投げ入れた」と言われる人のお話

皆様、新年、あけましておめでとうございます。


と、ご挨拶をしましてから、今日は新年一発目の話をしたいと思います。なんつーか、今日のネタは元旦に行われたマンチェスター・ユナイテッドトッテナムの試合を見て、「なんだこれ、チャールズ・ヒューズが泣いて喜びそうなゲームをやってるな」と思ったからです。


ちなみにチャールズ・ヒューズについては英語版のwikipediaへのリンク貼っときます。



Charles Hughes (football coach)



彼は、元イングランドFAのテクニカルディレクターであり、コーチングの為のマニュアルを作成した人物であり、ロングボール戦術の開発者の一人、となっています。そして、今回のタイトルである「イングランド・フットボールの源泉に毒を投げ入れた」とまで言われて批判されている人物です。


僕は、ロングボールの戦術自体は全く否定しないのですが、彼のコーチングマニュアルについては、それこそ言いたいことが山ほどあるので、今日は、そういう話になります。


興味のある人はおつきあいくださいませ。



イングランドとロングボール戦術

えーと、まず、この話からになるのですが、イングランド代表ってのはロングボールとプレッシングに基づくダイレクトなサッカーをやります。彼らの戦術については、以前、ロングボールの戦術を扱った記事があるので、そっちを読んでください。



2013CL決勝トーナメント、レアルマドリー対マンチェスターユナイテッドのレビュー



これですな。



それで、なんですけども、イングランドのサッカーについては、実は、numberの最新号でオシムが


それに比べるとイングランドはナイーブでしょうか?


「悪くはないが、驚きがない。アイデアもなく、やっているのはいつも同じことばかりだ。戦いのサッカーでは彼らは存在感を示す。しかし他のやりかたとなると、なかなかスタイルを変えられない」


とまとめてます。



これ、去年のレアル対マンUでもそうでしたが、マンUのほうは馬鹿みたいにロングボール一辺倒の攻撃をやってました。というか、それ以外はしてなかった。でも、ファーガソンは、たまには、違う事もやってたわけです。


ただ、今年に入って、モイーズが就任して以来というもの、正直な話、「悪質な先祖返り」としか言いようがないサッカーをプレシーズンから繰り広げてまして、正直、辟易している所でもあります。


そもそもイングランド代表ってのは、攻撃パターンが極めて限られているのが特徴でして、レアル戦でのレビューで書いたようなロングボール戦術と、サイドに張っているWGにパスしてWGがドリブルしてハイクロスをぶち込むって攻撃ばっかやります。オシムが「悪くはないが、驚きがない。アイデアもなく、やっているのはいつも同じことばかりだ」って言ってるのは、イングランド代表が、そんな攻撃ばっかり繰り返すからです。


で、先日のマンUもまさにそれでして、前半は右に右利きのバレンシア、左にレフティのヤヌザイを入れて、


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こんな感じで、右サイドに張ってるバレンシアにパスだして、ひたすらクロスをあげてました。右サイドに攻撃が偏る理由は、マンUは左サイドの底から縦パス通せる選手がおらず、ビルドアッパーが右利きばかりなんで、パスが右方向に偏ること、また右サイドから左サイドへのサイドチェンジなんて、まずやんないからです。



ひとまずマンUの話はおいといて、ここで疑問が出ますよね。「なんでイングランド代表はそんな攻撃ばっかりすんの?」と。



ここで、チャールズ・ヒューズの話になるわけです。そう、件の「イングランド・フットボールの源泉に毒を投げ入れた」と言われるサッカーマニュアルを作り上げた人物の話に。


チャールズ・ヒューズの著作の紹介

チャールズ・ヒューズなんですが、彼の著作は日本語訳もされており、普通に日本でも買うことができます。日本語訳されているのは4冊で僕も持っているのですが、


サッカー戦術とチームワーク (1974年)

サッカー戦術とチームワーク (1974年)

サッカーの戦術と技術―イングランドサッカー協会コーチングブック (1)

サッカーの戦術と技術―イングランドサッカー協会コーチングブック (1)

サッカーの戦術と技術―イングランドサッカー協会コーチングブック (2)

サッカーの戦術と技術―イングランドサッカー協会コーチングブック (2)

サッカー 勝利への技術・戦術

サッカー 勝利への技術・戦術


この4冊になります。最初に紹介した3つは、普通の実用的なマニュアルといった所で、特に問題ないのですが、問題なのは4冊目、「サッカー 勝利への技術・戦術」なんです。


それ以前の3冊では、ヒューズはごく普通の実践的なサッカーの指導書を書いています。ところが、4冊目で、もうどうしようもない「ダイレクトフットボールの狂信者」に変貌してるんです。一体、彼に何があったのかは知りません。ただ、この本がイングランドFAの指導・育成ディレクターによって書かれたって事が問題なんです。



「イングランドサッカーを10年遅れさせた」、「イングランドサッカーの源泉に毒を投げ込んだ」、そしてブライアン・クラフ、イングランドサッカー史上最高の監督の一人であり、二部にいたノッティンガム・フォレストを率いて、一部に昇格させ、名門リヴァプールを下してリーグ優勝を勝ち取り、UEFAチャンピオンズカップ(現UEFAチャンピオンズリーグ)2連覇を達成した人物に、「チャールズ・ヒューズのフットボールに対する取り組み方が完全に間違っているということを、疑いの余地無く明らかにしたい。彼はフットボールにつららが生えるべきだと信じている」と言われた人物、それがチャールズ・ヒューズです。


彼が、そういった批判を受けた原因は、4冊目の本なんです。



チャールズ・ヒューズ著「サッカー 勝利への技術・戦術」の何が問題なのか?


これね。


内容としては、技術指導とか、GKへのコーチングの仕方とか、FKでの壁の作り方とか、そういう部分には特に文句はないんです。「へー、イングランドではそーゆー風に教えてるのね」という感じです。


ただ、この本の問題というか、イングランドFAの指導・育成ディレクターとして、明らかに問題があるのは、この本がある種のプレー哲学を勧めている、という点です。つまり、「ダイレクトプレーによるサッカー」を。



ダイレクトプレー自体が悪いという訳ではありません。問題なのは、この本の序論からなんですけどね。ちと引用しましょうか。



サッカーについて、ここ約30年間守備中心の戦術が重視されてきたのは否定できない事実であることを簡単な統計が物語っている。1954年のワールドカップ決勝リーグ26試合で、140得点、即ち、1試合につき5.4点をあげたが、1986年の決勝リーグでは、試合数が52試合と二倍になったのに、得点は132点、即ち、1試合につき2.5点しか得点できなかったのである。この観点からすれば、サッカーは向かしと比べておもしろいとは言えなくなっている。


(中略)


この理由は、新しい効果的な守備の戦略にあるというよりむしろ、誤った指導による攻撃戦略になる。即ち、ボールと取られないように安全にパスを繋ぎながら、ゆっくりと攻撃を組み立てていくポゼッション・サッカーである。


(中略)

しかし、多くの事実から、ポゼッションサッカーは間違っているのである。連続パスの回数を分析してみてもわかるように、味方同士でパスしながら攻撃を組み立てる時間が長くなればなる程、守備は守備の組織を立て直しやすくなる。サッカーでは、「時間はいつも守備側に味方してくれる」と一般的には言われている。つまり、ポゼッション・プレーの行き着くところは、得点のない引き分け試合である。



だからといって、あらゆる機会にボールを前方に、即ち、相手側のペナルティエリアに向かって蹴るという、キック・&ラッシュ戦略のほうが良いという事にはならない。


ポゼッションプレーとキック&ラッシュ戦術の両方のバランスがとれていてこそ成功するのである。


そこで、素早く直線的に相手ゴールに向かって、少ないパスで攻めるダイレクト・プレイが重要になってくる。このダイレクト・プレーは、正確にボールを前方へ動かすことを意味する。連続パスは、シュートのチャンスを作り出すだけで十分である。


これまでの資料によると、5回以上の連続パスでは、得点のチャンスは減少することがわかっている。パスの回数が増えれば増えるほど、シュートチャンスは遠ざかっているのである。勿論、パスが10回以上になっても得点のチャンスが全くなくなることはないが、シュートまでに時間がかかり過ぎる。10回以上の連続パスでは、3%(30回に一回)の得点に過ぎない。

こーなってます。そして、ヒューズは自分が集めた資料を提示しています。その表を引用すると、こうなります。


サッカーのどのレベルにおいても、おおよそ得点の85%、五点のうち四点以上、は五回以下の連続パスから得点されている。得点できた連続パスの回数を分析すると、連続パスの回数が多くなるにつれて得点が少なくなることがわかる。

パスの回数 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
総得点202 53 29 35 26 17 16 7 7 1 5 2 2 2
87% 13%

われわれの資料では、トップグループの109試合の1/4以上の得点は、パスが行われない(パス回数が0)状態から記録されている。これらは、セット・プレーから直接、あるいは守備側のリバウンド・ボールから、または攻撃者が守備者のボールを奪うか、それともパスをインターセプトして得点した記録である。連続パスの回数の多い攻撃は、リバウンドやセットプレーに繋がっていくことはあり得ない。我々は、上記0パス得点53点の直前のパスを分析した。この分析では、6回以上のパスは全体のぴったり11%に当たっている。



0パス得点の直前のパスの回数

パスの回数 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
「0」パスの総得点53 12 13 11 5 5 1 2 1 1 1 none none none none 1
←89% 11%→


いく人かのコーチは、これらの統計に疑義を持っているし、この調査や統計資料の正当性、またはこれから導き出される結論を認めようとしない。ワールド・サッカーは、ここ30年に誤った戦略の方向に動いてきているのも事実である。ダイレクト・プレーの利点を示す統計資料は、ダイレクト・プレーの分析の章、本書の終わりの章、で扱われている。

と、なっている訳です。


さて、皆さん、これ、どー思います?読んだ感じ、もっともらしいと思えるかもしれませんね。ただね、これね、明らかにおかしいんですよ。特に統計関連。



一応、言っておくと、これ、散布図と相関係数を計算して作ったので載せときますが、



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こうなります。相関係数は糞高く、-0.9です。パスの本数が少なければ少ないほど得点は増える。0パスを除いてもそうなります。



ただね、まず黒字強調した所からいきますが、「勿論、パスが10回以上になっても得点のチャンスが全くなくなることはないが、シュートまでに時間がかかり過ぎる。10回以上の連続パスでは、3%(30回に一回)の得点に過ぎない。」がありますよね?これ、計算してみると、10回以上の連続パスで入った得点を総得点で割った数字なんです。これ、絶対におかしい。



まず、この部分ですけど、10回以上の連続パスの攻撃は30回に1回しか成功しない、ってミスリードに繋がります。これは、10回以上の連続パスで入った得点を総得点で割った数字に過ぎないのに。



ただ、この統計で、問題なのはそこじゃないんです。根本的に、確率の話をするのであれば、絶対につけなければいけない指標、つまり試行回数が抜けているんです。



どういう事かというと、コイン投げで説明しましょう。1円玉、10円玉、100円玉、500円玉を用意します。それぞれをコイン投げします。1円玉を500回、10円玉を100回、100円玉を10回、500円玉を5回、コイントスし、表の出た回数を記録します。



この場合、馬鹿でもわかる事ですが、1円玉が一番多く表が出ます。試行回数がダントツに多いからです。一番少ないのは、100円玉か500円玉になります。試行回数が少ないからです。



このケースで「一円玉が一番多く表が出たので、小銭の中では、一円玉が一番表がでる確率が高い」なんて言い出す奴はいないでしょう。一円玉で一番沢山表がでたのは、単に試行回数が多かったからに過ぎず、コイントスの確率は、基本的にフィフティ・フィフティです。



そして、チャールズ・ヒューズの理論の間違いもそこなんです。



パス回数5回以下のプレーから得点の85%が生まれているとして、そもそも、サッカーの全プレーのうち、パス回数5回以下のプレーって全体の約何割なんだ?という点が抜けている。



実は、ここで、チャールズ・ヒューズに関係している人物として、チャールズ・リープの名前が挙がります。彼も、長い事、サッカーの試合の分析をしてきた人物であり、まあ、彼らの間には、色々なアレもあったみたいなのですが、このあたりはジョナサン・ウィルソンの「サッカー戦術の歴史」を読んでみてください。彼らの間では、「ダイレクトプレーの戦略は、ポゼッションサッカーよりはるかに好ましい」という点で一致していたとヒューズは述べています。



で、この「サッカー戦術の歴史」の中では、リープとヒューズの話が沢山でてくるんですけど、リープの分析の話だと、彼の分析した試合の中で「三回以下のパスによる動きは全体の91.5%」、また、当時ロングボールで有名だったチーム、ワトフォードについて「三回以上のパスの受け渡しからは五回に一回しか得点は生まれない」って話が出てくるわけです。



前者の数字がまず問題でして、これはジョナサン・ウィルソンも指摘してますが、「三回以下のパスによる動きは全体の91.5%」であるならば、「何故、三回以下のパスから生まれるゴールは全体の8割に過ぎないのか?ダイレクトフットボールが有効であるならば、この数字は91.5%より高くならなければならない」って事です。


三回以下のパスによるゴールが多いのは、単にプレーの回数が多いからであって、それが確率的にゴールの可能性が高い攻撃だって事にはならんのです。



そしてもう一つ。当時からロングボールで有名だったチーム、ワトフォードについてリープは、「三回以上のパスの受け渡しからは五回に一回しか得点は生まれない」って分析してるんですけど、これ、「ワトフォードですら三回以上のパスの受け渡しから、ゴールが5回に1回成功するのであれば、3回以上のパスの受け渡しをしたほうが良くないか?」ってなるんです。だって、20%の確率でゴールになる攻撃なんだったら、やらなきゃ損でしょう。



ここで、最初に貼ったヴァレンシアのクロスの話になるんです。



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これね。12本クロスあげて、一回もゴールに結びつかなかった。先日の試合ですけど、マンUは、前半、ほとんど手数をかけずにゴールに結びつく攻撃をしてました。CLのレアル戦と一緒。つまり、どういう事かというと、「3~4回のパスからシュートまで行ける攻撃」です。



具体的に、どういうルートかというと、CB→ボランチ→WG→ドリブルしてクロスって奴です。こういった攻撃ならパス回数3~4回でシュートまでいけますからね。いつも通りです。



こういった攻撃の特徴は、少ないパス本数でシュートまで行けるって事です。そんな攻撃を延々と続けた。で、取れた得点は1点。クロス上げた本数、シュートの数、コーナー取った数、ポゼッション、全部上回ってましたけど、マンUの負けでした。



あのですね。これ、イングランド代表もそうなんですけど、ポゼッションを圧倒的に取ってる試合でも、イングランド代表って、パス3~4本でゴールまで行けるような攻撃しか、ほっとんどしないんです。



その新逆にあるのが、バルサであったり、あるいはブラジル代表になります。バルサにしろ、ブラジル代表にしろ連続パス5回以上の得点が非常に多い。バルサは異次元ですけど、ブラジル代表でも得点の32%が6回以上のパスから生まれています。




なんで、こんな風になるかってーと、それは彼らの攻撃方法と関係していて、彼らはドリブルだけでなく、アタッキング・サードでのコンビネーションを好むんです。



どういう事かというと、イングランド代表やマンUの場合、サイドにボールがでたら、そこからはパスでなくドリブルです。一方、ブラジルとかバルサの場合、そしてガンバやセレッソ、広島なんかもそうですけど、サイドにボールだした後、一回バイタルにボール入れる事が多いんです。そこからコンビネーションを始める。そのため、シュートに行くまでのパスの本数が増える傾向があるんですね。




実はヒューズは、著書の中で「パスかドリブルか迷ったらドリブル」ってプレーを勧めており、パスの本数が増えれば増えるほど得点機会は減るっていうヒューズ理論を、あろうことか、イングランドの育成の場に落とし込んだんです。サイドにパスだして、そこからドリブルで突破してクロス。これなら、3本程度のパスでシュートまで行けますからね。しかも、そういう攻撃のための練習方法まで考え出して普及させてしまった。



一国のFAの育成担当のディレクターが、これほど偏った考えに基づいて、選手育成をやるなんて、あまりに馬鹿げてます。



彼の就任後、イングランド代表がどうなったかは、皆さん、ご存じの通り。



正直、今現在でもイングランド代表を見てると、ヒューズの影響としか思えない部分が多いです。特に攻撃面は。



イングランドには10番タイプがむかっしからいません。ルーニーはその数少ない例外で、これ又、オシムの今回のnumberのインタの引用になりますが、

ルーニーがいますが。

「彼はパスも出せるしゴールも決められる。想像力に溢れ、イングランドでは希有な存在だ。というのもプレミアでその役割を担うのは外国人で、彼らがイングランド代表にはいればすぐにでも世界チャンピオンになれる(笑)」


ってのです。イングランドにはアイデアがないと、オシムはいいますが、これね、ヒューズ理論にのっかって選手育成すれば、絶対そうなるんです。ってのも、少ないパス本数でシュートしようとすると、攻撃パターンは非常に限られるんです。FWにロングボール当ててフリックするか、WGにロングボール当ててそこからドリブル突破してクロス。こんな攻撃に限られる。要するに一昔前のプレミアのサッカーです。



最近、ブログで、海外サイトのマンUフォーラムの翻訳とかあるじゃないですか?あれ読んでると、時々、「創造的な選手がいない」とかいう人をみかけますが、そもそも、マンUって創造的なプレーより、3~4本のパスでゴールまでいけるような直線的な攻撃しかしてないのに、創造的なMFとかいらんでしょ?みたいな話になるですよ。


マンUがイニエスタ取るとかいう飛ばしが出た時に、僕が思ったのは、「マンUでイニエスタが何をするんだ?」って所です。



ヒューズ理論だと、パスは少なければ少ないほど良い訳で、コンビネーション・プレーを主体とするサッカーの狂信者集団のバルサの選手とった所で意味ないでしょって話です。コンビネーション・プレーは、パスの本数が5~6本必要になってくるので、3本以下のパスでフィニッシュに行こうとするヒューズモデルのサッカーに合うわけがない。


モイーズのサッカーみてると、遅攻ですら、明らかに少ない本数のパスでフィニッシュまで行こうとしているので、イニエスタとった所で、使う意味がないでしょって話です。


4本以上のパスを繋ぐ必要があるコンビネーションアタックは、ダイレクト・プレーより得点の確率が低いのか?


で、〆にこの話になるんですよ。


あのですね、いわゆるコンビネーション・プレーは、その性質上、パスの本数が増えます。ワンツーひとつとってもそうです。CBからボランチに繋ぎ、そこからサイドのWGに展開。WGは、一度、ここでバイタルにいるトップ下にボールを当てて、斜めにゴール前に走り込み、トップ下からリターンを受け取り、そこからサイドを抉ってグランダーのクロス。クロスを合わせると5本のパスが必要になります。



ヒューズ理論だと、これは得点確率の低い攻撃です。ただ、アレはそもそも問題があるので、そういう訳じゃ絶対ありません。



でも、実際問題として、どっちのが得点期待値はでかいの?ってのは、全プレーにおけるパス本数、それぞれのゴールの割合、そしてダイレクトプレーの数とゴール数、コンビネーションプレーとゴール数の割合を出して見ないとわかりません。実際、僕はそこまで計算した事ないです。面倒すぎるし。



現実的な話をすると、自分のチームの選手次第って話にはなるんですがね。




今回の話で言いたいことは一つです。




「ゴールはパス三回以下のプレーから生まれるものが80%」ってのはサッカーの世界で、しばしば言われる話です。



ちなみに、Jリーグの場合、


調べてもわからないサッカーのすべて

調べてもわからないサッカーのすべて



って本の中に、2010年度の5本以上パスを繋いで決めたゴールランキングがあります。それで計算すると、5本以上のパスを繋いで決めたゴール数は、J1の場合、全体の18.4%となっています。つまり、4本以下のパスで生まれたゴールは全体の82%を占めるという事になります(PKを含む)。



ですが、「パス4回でゴールに向かうプレーを繰り返せばゴールが増える」と思わないでください。J1では「ゴールはパス4回以下のプレーから生まれるものが80%」になっているのは、単純に「パス4回以下のプレー」の母数のでかさによるものだ、というのは覚えておいてください。試合みてても、J1で一番多いのはパス4回以下のプレーです。感覚的な話をするとプレーの9割は、パス4回以下のプレーです。



そもそも、そういうサッカーやれば点がバカスカ入るなら、今頃イングランドはW杯を4~5個取ってます。ヒューズ理論が破綻してるってのは、その後のイングランド代表の得点が伸びてないこと、バルサみたいなチームが点をバカスカとって、スペイン代表が主要大会で3連覇した事でも明らかです。



コレを勘違いすると、酷い事になります。勿論、ポゼッションしても得点が増える、なんて事は絶対ありません。無意味な横パスだけ繰り返しても意味ないです。同様にダイレクト・プレーを増やせば得点が増えるって訳でもないんです。点取りたいなら、どうすればいいのか?それはサッカーにおける究極の問いであって、今でも、その答えをみんなが探していますが、銀の銃弾は見つかってません。



あと、チャールズ・ヒューズの本ですが、ダイレクトプレーに異常なまでに固執してることを除けば、普通に使える指導書なんで、サッカーのコーチングマニュアル読みたい人は、一読の価値はあるかと思います。



ではでは。