2014セリエA 第22節 ユヴェントス対インテルのレビュー(ついでにちょっと本田の話も)
さて、みなさん、こんにちは。最近、5バックの話ばっかしてたので、今日は5バック大流行中のセリエAのレビューでもしてみたいと思います。
この試合、長友がインテルのキャプテンという、歴史的な試合だったんですが、スタメンはってーと
こーなってました。インテル、何か知らない選手ばかりです。
内容はってーと、インテルのボロ負けでして、ユーヴェが3-1で快勝してます。しかも、内容的に、もうユーヴェの完勝といって良いモンでして、「すげー差が出来てるなあ」などと、試合見ながら思った次第です。
ユーヴェの守備、FWのアクティブな守備参加の話とインテルの機能不全
まず、この話から。
これは図でやりますが、
基本的に、相手が5-3でブロックを組んで来る場合の崩し方は、こうなります。1度、3の所の両脇にボールを当てて、相手チームのボランチをサイドに引っ張り出し、アンカーの脇にスペースを作る。その後、そのスペースにFWが降りてきてボールを受ける。あのエリアでボールを受けると、アンカーが絶対に食いつくので、そしたら、ボールをボランチに落とす。これで、高い位置でボランチが前を向いてボールを持てるので、そこを起点にして崩しに入る、というパターンです。
これは5-3でブロックを組む場合の泣き所でして、8枚ブロックだと、この攻撃を防ぐ方法は事実上、存在しないと言っていいです。
ただ、この試合のユーヴェはFW二枚がきっちり戻ってきて、3の前のスペースを潰す、あるいはボランチのマークについていた為、インテルはサイドに出してから中にあてるってボール回しを、事実上、完全に封じられていました。(中に当てても、ボランチはFW二枚がきっちりマークしちゃってるので、ボランチにボールを落とせない。)
図でやっとくと、こうです。ユーヴェはFW二枚が守備にもアクティブに参加し、プレスバック、ボランチへのマーク、ボールを持ち上がってきたCBへのチェックをきちんとやっていたので、守備に殆ど穴がありませんでした。
まず、これ。
ついでにもう一つ。
これね。
正直、ここまで糞真面目にFWに守備やられたら、どんなチームだろうと、そう簡単には点は取れません。ユーヴェは、その性質上、ピルロの両脇がウィークポイントなんですが、FW二枚がきっちり下がって来て守備やってたら、そう簡単にはあそこは使えません。
長友の突破もふたりがかりで止められてたし、これではインテルは攻め手がないって状態でした。
一方でインテルの守備とユーヴェの攻撃
一方で、なんですがインテルの方は、守備で5-3-1-1で固めます。
こーです。
これ、ユーヴェと比べると、守備時にパラシオを前に残らせてプレスバックはやらせてません。だから、ユーヴェより一人少ない9人でブロック固める事になってます。ユーヴェは身も蓋もない10人守備ですが、インテルは前に一人残します。
基本的にはアルバレスがピルロを見て、ピルロには捌かせないって布陣です。ただ、ユーヴェと同じく、3の両脇がガラ空きになります。なんで、あそこでユーヴェは起点を作れます。
あそこで起点を作ったら、どういう風に崩せばいいかってーと、
こうなります。3の両脇にボールを当てて、インテルのボランチを一人、サイドに釣り出す。でもって、FWにボールを当ててから、即、ボランチとボランチの間のギャップに動き直して、リターンパスを受ければ、バイタルでボランチが前を向いてボールを持てます。
で、そんな感じで、3の両脇を使った攻撃を繰り返されたせいか、前半14分、アルバレスがギャップを埋める動きをします。
こうね。で、そーなると、
ユーヴェは、こーきます。
ユーヴェ相手には、どこもピルロに一人はFWをマークをつけてくるもんです。ただ、そういう場合、ユーヴェは、
こういう流れで攻撃してきます。で、こういう流れで攻撃されると、バイタルのカバーにピルロをマークしてる選手が戻ってくるようになります。そしたら、ユーヴェは、ここぞとばかりにピルロを使ってくるんですね。つまり、こう。
ここでピルロが前向ければ、その後はピルロがパス一発で違いを作ってくれるんで簡単です。ユーヴェはピルロをフリーにする方法をビルドアップの中に組み込んでおり、相手のフォメに合わせて、色々やってきます。
勿論、ここで、インテルのパラシオが、ピルロのマークについてくれれば、何の問題もないですけどね。ただ、パラシオはやってませんでした。ユーヴェがテベスとジョレンテを守備に戻らせるのは、こーいうパターンで崩されるを警戒している為です。去年のバイヤン戦で、散々やられたんで、FW二枚戻すようにしたんでしょう。
ちなみに、この試合の3点目は、ユーヴェのスローインからなんですが、ものスッゴイ美しいスクリーンプレーが決まってるので、紹介しときます。
こうですね、これ図でも説明しときますが、スローインからのスクリーンプレーで、
こーなります。これはスローインからのスクリーンプレーでして、実は日本代表もコレをやってます。スローインの際に、マンツーマン気味で守ってくる相手には、これは非常に有効です。
この試合、インテルは守備面では、セットプレーから、流れの中からと、両方ユーヴェに点を取られており、攻撃面では完全に封じられと、良いところが何もありませんでした。
コンテのユーヴェは非常に組織的なサッカーをしており、攻守にわたって11人で行い、セットプレーも戦術レベルで洗練された、非常にコレクティブなチームを作ったという印象です。はっきりいって、これ、去年より上のチームになってますね。特にジョレンテが印象に残ってるんですが、攻守に渡って、非常に重要な役割を担ってます。
ついでに、こないだのミラン対トリノの試合の話をちょっと
最後に、ちょっと寄り道というか、ミラン対トリノの話をしときます。
こないだのミラン対トリノ戦なんですが、本田があんまりよくなかったので、本田がイタリアメディアに酷評されてました。ただ、内容的にみると、ミランのほうなんですけど、戦術面で煮詰まってないって印象です。コンテのユーヴェと比べての話なんですが、ボランチ、FW、WBの連携が上手く行ってません。
どういう事かってーとですね。
これ、こないだのミラン対トリノのマッチアップです。ミランは4231、トリノは352です。でもって、トリノは5-3でブロック組むんですけど、その際に、ユーヴェと比べて、FWのプレスバック、ボランチへのマークは断然緩いんです。
だから、ミランのほうは、3の両脇に当ててから、ボランチに戻すことで、ミランのボランチがフリーでボール持てる状況を作れてました。ただ、問題はその後で、
ここなんですけど、ムンタリが動かないんですよ。このシーンだと、ムンタリがフリーランかけてれば、トリノのアンカーを最終ラインに吸収させる事ができるので、バイタルにカカーがカットインするスペースが作れる。なのに、ムンタリは動かない。「なんじゃこりゃ」と思ったシーンで、呆然としました。
で、その後の攻撃もずっこけたんですけど、
どうなってるの?これ?と思ったシーンで、ここ、ロビーニョはカットインからミドル打つか、それが出来ないなら、ムンタリとワンツーでニアを抉るべきなのに、その動きが全くない!!!それどころかムンタリは、空いたニアのスペースでなく、マークついてる本田にパスとか、マジ、こいつ、何とかして!!と思ったシーンです。
ちなみに、正しいビルドアップってのはミランの先制点の時のやつで、
、
これですね。こういう風にきちんとパス&ゴーをやれば、相手は3ボランチ、FWのプレスバックがほとんどないってチームなんだから、あそこに起点作って崩せるはずなんです。
トリノ戦なんですけど、本田が酷評されてましたが、まあ、ちょっとアレなプレーもしてました。どういうのかってーと、
このシーンなんですけどね。単純な個人技だけでは、セリエAのDFは崩しにくいです。ユーヴェの話をしたんで比較としては良いプレーですけど、ユーヴェが非常に組織的なプレーをしているのに対して、ミランのほうはちょっと個人技に走りすぎです。そんなモンスター級のプレーヤーなんて、今のミランにはいないんだし、もっと連携を磨かないと・・・。
この場面でいうと、
まあ、こういう動きなんですけどね。
その後、ミランで又、ずっこけるビルドアップがあったんですけど、
こんな感じです。ピルロがいりゃあ、あそこで前むいてスルーパス確実に通してくれるんですけど、そこにいたのはムンタリでした。ムンタリは、これだからやめられません。ネタ的には最高に美味しい選手なんですが、本田がミランにいるので、あまり笑えませんでした。本田さえいなければ、最高に楽しめるのですが、本田がいるので、楽しめない状態です。
この試合のミランに関してなんですが、とにかく連携が適当すぎます。ユーヴェの試合を見た後だと、本当に連携がつたないです。パス&ゴーひとつとっても、ユーヴェとは雲泥の差があります。ユーヴェがセットプレー、ポゼッションともに連携が熟成しているのに対して、ミランは、もうさっぱりって状況でした。特に問題だったのが、ボランチ二人(ムンタリとモントリーボ)と、WG二人(本田とロビーニョ)の連携に難があって、もっとお互いに信頼してパス出せよ、出したら動けよ、WGの為のフリーランしろよ、という感じで、見ていて切なかったです。もっともモントリーボはマシな方でしたけどね。
そんな訳で、本田については、とにかくボランチとの連携を深めていくことが、この先、大切だと思います。カカーとはそこそこあってきてますが、ボランチ二人との連携がちょっとまだ拙いです。
ま、今日はそのあたりで。
ではでは。