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イングランドプレミアリーグ第24節 シティ対チェルシーのレビュー

さて、皆さん、こんにちは。本日は、今週月曜に行われたシティ対チェルシーのレビューでもしたいと思います。ちょっと時期的にレビューやるには遅すぎた感じもしますが、最近、モウリーニョの話をちょこっとしてたので、モウリーニョのサッカーの話もかねて、やっときたいと思います。


ちなみに、スタメンのほうは



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こーなってました。シティのほうはデミチェリスボランチになってたのが特徴で、チェルシーのほうは新加入のマティッチがボランチに入ってます。


でもって、レビューになる前に、シティってチームの特徴から始めます。このチームは特徴ある攻めをやります。


マンチェスター・シティの攻撃面での特徴


で、まず、シティってチームの特徴なんですけど、チリ人のペジェグリーニが今、監督やってますが、赤い方のマンチェスターのチームと違い、両サイドにWGを張らせないサッカーやります。どういう事かというと、攻撃時に、


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こんな感じに変形します。2422みたいな感じになります。このポジションチェンジの時に、シティのキープレーヤーになるのがダビド・シルバでして、彼はレフティなんですが、サイドに張って縦に行ってクロスってプレーはしません。ポゼッション時には中に入ってきて、トップ下としてプレーします。でもって、シルバの開けたスペースには、ボールが左サイドにある場合、左SBが上がって来ますし、ボールが逆サイドにある場合、FWが一枚流れて来て使います。ここはシルバのポジション次第です。ダビド・シルバなんですが、彼はシティの攻撃時はほぼフリーマンでして、場合によっては、逆サイドまで流れてきます。


でもって、ダビド・シルバのシティでの役割なんですが、図で説明しますが、



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この白い円で囲ったエリアでボールを引き出して前を向き、そこから違いを作り出すって感じなります。ダビド・シルバがあそこでボールを受けて、前を向いた時にシティの攻撃はスイッチが入ります。ここでのポイントとして、シルバは、右サイドにまで頻繁に流れてくるって所になります。チェルシーはゾーンで守るので、シルバが右サイドに流れてきた場合、そこまではSBは追えません。なんで、このシルバを誰が見るのかってのが、このシティとやる場合、非常に大きな問題になります。これは、この試合でも、チェルシーに大問題を引き起こしており、これは試合のキャプでやりますが、



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こんな具合で、ギャップでボールを引き出すシルバがチェルシーの大問題になってました。


この試合、チェルシーは中央にウィリアン、ダビドルイス、マティッチの3人を置いて守ってましたが、シティは中央にシルバ、ナバス、ヤヤ・トゥレデミチェリスがいる状態なので、中盤センターでの守備に問題を抱えていました。



シティとやる場合に、相手チームが頭を悩ませるのがコレでして、チェルシーは、前半20分あたりまで、この中に入ってくるシルバを捕まえてきれておらず、前半17分には危うく失点ものシュートをシルバに打たれてました。


ただ、前半20分あたりからなんですが、ダビド・ルイスかマティッチが必ずシルバをマークするようになって、シルバを封じようとしてます。ただ、それやってると、シルバにボランチが引っ張られるので、そうくるなら、


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シティはこーきます。シルバにボランチがつくなら、シルバのポジショニングでボランチ引っ張って、ダブルボランチの間を広げて、真ん中に楔を打ち込んできます。



基本的にシティってのは、こういった形で攻めてきます。スペインとかで見るタイプのチームでして(ペジェグリーニはスペインで監督やってたので当然ですけどね)、プレミア的かってーと、ちょっとばっかり毛色が違います。WGのスタートポジションはワイドでなくて、中です。ナローワイドとか言われるタイプで、WGにトップ下タイプを起用するタイプのサッカーです。




んでもって、次にモウリーニョのシティ対策について


さて、こっからが、今回のエントリの肝です。シティの攻撃の話をしてきたのは、モウリーニョのシティ対策の話に繋がるからです。シティの攻め方を、ここまで説明してきましたが、これは、モウリーニョが、このシティの攻撃に対して、どう対応しようとしたのかって話に繋がる。



モウリーニョチェルシーはシティに押し込まれると、


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こんな感じで9枚でブロック作って守ってました。シルバが中に入ってくるので、ウィリアンが中盤センターでの守備に下がってくるのは必須でした。ただ、それでもシティの分厚い攻めに対抗できていたかってーと、そうでもありませんでしたが・・・・(シルバに頻繁にギャップを使われてしまっていた)



ただ、モウリーニョの方のシルバ対策ってのは、そこじゃねぇんです。モウリーニョのこの日のゲームプランなんですけど、これ、このゲームのヒートマップに良く出ているのですが、


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これです。



まず、チェルシー陣内中央に選手が集まってるのがわかると思いますけど、これは中に入ってくるシルバを潰そうとDFとボランチが頑張っていたからで、あそこを潰さないとシティ相手はダメです。バイタルでシルバにボール受けられて前向かれると、チェルシーのDFでも耐えきれません。


そしてもう一つ。チェルシーは右サイドを集中的に使って攻撃してました。もう徹底的に、容赦なく右狙いです。何で、右狙いなのかってーと、これは図でやりますが、



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このシティの左SBの裏は常に空いてるんです。シルバが中に入る以上、幅を作る為に左SBが上がらないといけないため、あそこはガラ空きになります。また、シルバは頻繁に左サイドから右サイドにまで出張してくるため、攻守の切り替えの時、戻るのが必然的に遅れます。そのため、


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ここが空くんです。なので、カウンターで攻めきれなくても、シルバが戻り切れてないのを利用して、白で囲ったスペースを利用して、攻撃を仕掛けることができるんです。



この日のモウリーニョのゲームプランは、ここ狙いでして、もう延々と、あそこを狙った速攻を繰り出してました。で、それが報われたのは、前半30分。


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こうなりました。これでチェルシーが先制に成功します。


この試合なんですが、


逆サイドにまで流れてくるシルバを使った数的優位アタックをメインにしたシティ
VS
戻りがどうしても遅くなるシルバとシティの左SBの裏を狙った速攻メインのチェルシー


って形で両チームの思惑ががっちりと噛み合ってまして、非常に面白い試合でした。



ちなみに、両チームの狙いをちょっとキャプで説明しときますが、後半開始直後も変わってません。

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シティのほうは逆サイドまで出張してくるダビド・ルイスを使って数的有利を作ろうとする。もし、ここでダビド・ルイスがバイタルを捨ててサイドに出てくるなら、中央二枚のFWに当ててきます。


一方で、チェルシーも分かりやすい攻めをやってまして、

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この日のチェルシーの速攻は一次速攻と二次速攻の二段階に分かれてます。一次速攻ってのは、言うまでもなく、シティの左SBの裏を一気に使ってする速攻。で、次が戻りが遅いシルバのポジを使った速攻です。こっちは図でやりますけど、


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こーですね。よく考えられたゲームプランだと思います。このあたりは流石のモウリーニョ



最後に

この試合なんですが、シティが先制してれば、さっさとシルバをトップ下に上げて、左WGに守備できる奴いれてモウリーニョの速攻狙いを封じ、カウンター狙いに切り替えることが出来たんですけど、チェルシーが先に先制してしまったので、それが出来なくなったってのがペジェグリーニとしては痛い所でした。




この試合のレビュー書こうと思ったのは、「両チームの狙いがはっきりしてて面白い試合だなあ」と思ったからでして、シティが数的有利アタックから先手を取ろうとするのに対して、チェルシーは後手で、シルバの戻りの遅さを利用して点取ろうという意図が最初から明白だったからです。ひじょ~にわかりやすい試合でした。


こーいう試合だと、先制点が非常に重要で、シティが先制できれば、ペジェグリーニは即座にモウリーニョの右サイド狙いを潰しにかかったでしょう。ただ、逆にチェルシーが先制したんで、ペジェグリーニは「右を狙われているのはわかっているが、シルバをトップ下にあげてしまうと数的有利アタックが出来なくなってモウリーニョの思う壺になる」って感じで、動きが取れなくなってました。



個人的に、モウリーニョの右サイド狙いが明確になった時点で、シティサイドが、何かプランBを見せてくれるんじゃないかと思ってたんですけど、まだシティにはそれが無いようでした。この辺りは、シティの今後の課題ですね。



今日はこの辺りで。


ではでは。