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サッカーのマッチレポートなどを中心に。その他サッカーのうんちく系ブログ。

スポーツにおける戦力バランスの均衡のお話

さて皆さん、こんにちは。本日は、前回のエントリからの続きで、スポーツにおける戦力バランスの均衡のお話のお話をしようと思います。


前回のエントリで、「最近の欧州サッカーは相手の大駒を買い取って自分の持ち駒にできる将棋みたいなモノ」って話をしました。こうなってしまったのは、TV放映権料の高騰によってクラブに大金が転がりこみ、ボスマン判決によってEU圏内の選手であれば無制限にピッチに立たせる事が出来るようになった為で、結果として、ビッグクラブは欧州全域から金で選手かき集めて、CLで勝つっていう身も蓋もない事やってるわけです。


ただ、その結果としてですが、欧州圏内のスター選手はビッグクラブの争奪戦となってしまい、移籍金が跳ね上がってしまいました。又、ライバルクラブの引き抜きを防ぐ為、複数年契約+高年俸がデフォルトとなり、サッカー選手の年俸、移籍金は非常識なレベルで高くなっています。


【米国はこう見ている】選手平均年収でヤンキースは世界2位 1位はサッカープレミアリーグのマンチェスター・シティ



こっちにありますが、世界のスポーツで、年収が高いチームトップ12のうち、7チームがサッカーのチームです。こんな事になってる原因の一つが、欧州サッカーにおける選手の引き抜き合戦の結果、経済学における「勝者の呪い」状態になってしまってるという話は前回のエントリでしました。




そして、その結果としてですが、ビッグクラブはどこも赤字で、その赤字をオーナーの私財、オイルマネー、銀行からの借金で穴埋めしてるという悪循環になっており、これが問題なのは誰の目にも明らかな状況です。



一昔の話をすれば、イタリアにおけるサッカーバブルの崩壊時、幾つものクラブが経営破綻に追い込まれましたし、ドイツではキルヒメディアの破綻によってブンデスリーガの発展は5年程度は遅れることになったと思います。最近ではリーマンショック以降、盛大にサッカーに金を突っ込んでいたオーナー(ベルルスコーニモラッティ、アブラヒモビッチ)なんかの私財が大幅に目減りしてしまった為、ミランやらインテルがオーナーによって赤字を補填してもらうってのが難しくなってます。



こういった状況はやばいって事で、UEFAが打ち出したのが「ファイナンシャル・フェアプレー(以下FFP)」になります。あそこ、何もしてないようで色々やってんです。ミランインテルは、FFPでオーナーによる赤字の補填ができなくなった訳で、主力を放出したといわれてますが、実際の所、金融危機でのオーナーの資産の目減りが痛かったと思います。チェルシーやシティ、PSGなんかは、金を他の機関使って迂回して入れたり、子会社に赤字つけかえたりしてますからね。



こういった状況が問題だ、という話はすでにしましたが、今回の話で問題にしたいのは、その一つ前の所です。つまり「戦力バランスの不均衡」の話です。ホントはFFPの話しようと思ってたんですが、その話する前に、こっちを扱わないと、その話にいけないので。


スポーツにおける競争と寡占、戦力バランスの不均衡


競争はスポーツそのものでして、それ自体は何も問題はありません。スポーツ自体、どっちが勝つかって競争な訳ですからね。ただ、競争といっても、ある種の業種は競争から独占に向かいやすい性質をもってまして、独占に向かいやすい業種、独占企業が出ると困る業種なんかは規制が入るわけです。



ライバル企業を片っ端から買収して市場を独占してしまうというのはわかりやすいやり方ですけど、こういう事が起こりやすい業種というのが存在します。


スポーツはその性質上、ライバルチームを片っ端から買収して市場を独占するって事はできないのですが、相手チームのエースを片っ端から引き抜いてマーケットの独占的な地位を得るという事が可能です


これのわかりやすい例としてはセリーグの巨人、MLBヤンキースブンデスリーガバイエルンが挙げられます。


こういったチームのリーグ内での優勝回数を市場シェアとすると、巨人は64シーズンで36回優勝、ヤンキースは109回のワールドシリーズで27回優勝、リーグ優勝40回、バイエルンブンデス52年の歴史で27回優勝な訳ですから、飛び抜けた市場シェアを持ってる状態な訳です。巨人とバイエルンなんか、それぞれリーグ戦で半分くらいタイトル取ってる訳ですから、セリーグは巨人の興行、ブンデスはバイヤンの興行みたいな状況になってます。


まあ、そもそも論として、各国のプロサッカーリーグは、その国のサッカーにおける独占的興行主みたいな状態なんではありますけれども。


こういった形で、一つのクラブが異常なまでにリーグで強い場合に問題にされるのが「戦力バランスの不均衡」になります。一つのチームが延々とリーグで勝ち続けたら、ファンがしらけて球場に来なくなるので好ましくない訳です。


ただ「戦力バランスの不均衡」ってのは大事な事なんですが、基本的にMLBや欧州サッカーが欲しいのは高視聴率と高い観客動員です。これは、人気チームが優勝争いを行う事で達成される性質をもつので、「地方のファンがしらけない程度に都市部の人気チームが優勝争いを繰り広げる」という非常に複雑な状態をリーグとして目指す事になります。



リーグとしては、高視聴率、観客動員の増加を目指したいので、大都市の人気チームには優勝争いを演じて欲しい。一方で、人気チームが露骨に強すぎるとファンがしらけるので、戦力をある程度バランスさせないといけない。



まとめると、スポーツにおける最適な戦力バランスというのは、「TVでの高視聴率、スタジアムでの高い観客動員を保てる」という前提条件があっての最適な戦力バランスというのを模索することになる訳なんです。


なんで、「最適な戦力バランス」ってのは難しい案件になるんです。


ここから先は、イングランドプレミアリーグ(以下EPL)とアメリカのNFLを例として話を進めましょう。



まず、EPLの場合、成功を金で買ってるってのがあります。以前、ブログで扱いましたが、EPLはチームの総年俸と成績の間の相関性が高く、どのアメスポより高い相関性があります。ところが、EPLは全世界で人気があるんですね。総年俸でシーズンの成績が予測しやすいリーグなんですが、ファンはそれほど気にしてない。これは欧州CLもそうですけど、2003ー2004シーズンにポルトが優勝して以降、CLで優勝したクラブは全部ビッグクラブです。ここ10年ほど、CLはビッグクラブでトロフィーを回してる状態なのに、誰もそれを問題にしてません。欧州CLなんて、ビッグクラブの為の興行状態で、今年も優勝するのなんてビッグクラブに決まってるようなモンです。でも、誰も問題にしてませんよね。



EPLにしろ欧州CLにしろ、優勝する可能性があるのは限られた一部のクラブだけです。誰もがそれを知っていますが、それでも人気があるのがEPLであり、欧州CLになります。




一方で、NFLなんですが、こっちは「スポーツの魅力とは最高のレベルで戦力の均衡したチームが繰り広げる競争状態である」を理念に掲げているリーグでして、様々な戦力均衡策がとられています。またシーズンの試合が少なく、プレーオフも一発勝負ときてるんで、運の要素が非常に大きい。なので、スーパーボウルを三年連続で制したチームは存在しません。そのため、勝利数と年俸の相関性は弱いですし、なによりクラブが勝利を求める要因も非常に少なかったりします。レベニュー・シェアリングが凄いので、勝っても負けてもお金が入ってくるんです、NFLってね。そういう仕組みなんで、サラリーキャップには下限が存在します。最低でもこの額以上は使わないといけないって制限があります。NFLの場合、レベニューシェアリングが凄いので、サラリーキャップは下限のほうが大事です。じゃないとフリーライダー問題が起こるからです。スポーツにおけるフリーライダー問題としては、MLBの初期収益分配制度がありまして、導入初期、「ポストシーズンに出られない状態になると、チームが年俸の高い選手を放出し、チーム全体の年俸総額を下げる事で分配金の受け取りを増やす」という行動をするようになってしまいました。勝っても負けてもお金が入ってくるなら、チームの年俸総額を下げることで利益を増やせるので、NFLの場合、サラリーキャップの下限が重要なんです。


MLBの初期の収益分配制度が上手くいかなかったのは、幾つかの球団が多額の分配金をもらいつつ、チーム全体の年俸総額を下げるといった行動に出たからでして,その後、MLBはシステムをちょいといじってます。



ちなみに、サッカーの場合、降格制度があるのでこれは必要ありません。負けてるのに選手放出なんてしたら降格しちゃいますからね。



あと、wikipediaNFLの戦力均衡の追求のトコ読んでもらえば良いことなんで、リンク貼っときますが


戦力均衡の追求


この中で、


「試合日程の編成も前年度の成績のよいチームがより厳しい日程になるように組まれる(勝つと翌年日程が厳しくなる)」
「対戦チーム分析のカギとなるスカウティング映像がリーグによって管理され共有される(スカウティング頑張る必要性が低い)」
「ドラフトでは知られざる逸材を発見してもリーグに通知せねばならない(リクルート頑張る必要性が低い)」


の三つは、正直いってやり過ぎのレベルに達してます。ただ、スーパーボウルの視聴率は全米で常に最高ですし、NFLはアメリカで一番売上のでかいアメスポです。(もっとも売上第2位のMLBに関しては売上の数字が信用できるモンじゃないのですが)



EPLとNFLは色々と対照的なリーグなんですが、面白いのはどちらも非常に人気があり、儲かってるし、視聴率も観客動員も良いって所です。



そういう訳なので、病的なレベルで戦力バランスを均衡させるリーグのが良いのか、不均衡だが突出した人気クラブがあるリーグが良いのかってのは、どちらでも成功例があるため、よくわからない部分があります。



ちとJリーグの話もしときますが、Jリーグは欧州サッカーと比較すると年俸と勝ち点の相関性が弱く、いわゆる「ビッグクラブ」ってのは存在しません。強いていえば浦和がそうですが、浦和さんとこでも総年俸は7億前後でして、この程度の規模なら、まあ金のないクラブでもなんとかなるレベルなんです。



MLBなんかで、総年俸と勝利数の相関性が高くなるのは、ケーブルTV放送からのローカル収入がMLBのチームに流れ込み始た頃からで、欧州サッカーでも、これほどまで年俸と勝ち点の相関性が高くなってしまったのは、有料衛星放送からの放映権料がなだれ込んできてからです。


Jリーグの場合、ケーブルTVからのローカル収入で潤ってるクラブなんてありませんし、有料衛星放送の放映権料も雀の涙程度なんで、欧州サッカーとかMLBみたいな事はそもそも出来ないって事情があります。J1の戦力に関しては団子状態なので、そのおかげでレースがもつれて面白いっちゃ面白いんですが、「全国区の人気チームがない」ってのはJの問題ではありますな。



最後に繰り返しますが、「病的なレベルで戦力バランスを均衡させるリーグのが良いのか、不均衡だが突出した人気クラブがあるリーグが良いのか」については、正直よくわかりません。一長一短です。J1はどちらかというと前者に近い状態なんですが、そのおかげで動員が良いかというとそうでもありませんからね。ブンデスバイエルンのどうしようもない1強リーグですが、スタジアムはいつも満員です。不思議な話ではありますが。



あと、付け足しになりますが、アメスポと欧州サッカーの最大の違いは、欧州サッカーは降格制度があり、アメスポはそれがないってのがあります。MLSも降格制度はありません。欧州サッカーは降格にもドラマがあって、消化試合は少なくなります。一方でアメスポは消化試合が早い段階で発生するというデメリットを持ってます。



欧州サッカーで戦力バランスを均衡させる方法はある、だが・・・・

長くなってきたのでまとめときます。


まず、スポーツにおける戦力バランスの不均衡は、MLBやEPLなどで顕著です。これと対照的な位置にいるのがNFLになります。


ただ、どのスポーツにおいても、プロスポーツである限り、求められるのはTVでの高視聴率であり、スタジアムの観客動員です。戦力バランスが不均衡で、優勝争いが2~3のチームによって寡占状態であっても、TVで視聴率が良く、観客動員が良いなら問題は無いんですね。


詳しい話は次回、CLの話をしようと思ってるので、その時にしますが、欧州サッカー界では、時々、エリートクラブによる新リーグ構想が出てきます。CLに代わる新フォーマットのスーパーリーグ作ろうって奴です。


欧州新リーグ構想浮上のワケ UEFAにビッグクラブの不満噴出


これは去年にでた記事ですけどもね。定期的に出ます、この話。



これはビッグクラブとメディアサイドに旨みが多くて、ビッグクラブは国内リーグで試合するより、欧州のビッグクラブを一つのリーグに集めて、「欧州スーパーリーグ」を設立して、そこで試合やった方が儲かるに決まってるんですわ。そしてメディアサイドとしても旨みがあって、「欧州スーパーリーグ」ってのは、有料衛星放送なんかにとっては、究極のキラーコンテンツになりますから、是非とも欲しいわけです。



でもって、この欧州スーパーリーグ構想は、皮肉なことに、各国のサッカーリーグに「戦力の均衡」をもたらすんです。ハシゴの上二段外せば、下と上の差は少なくなりますよね?それと一緒。例えば、EPLから上のクラブ5つが抜ければ、残ったクラブはどこもドングリの背比べ位になるんで、戦力の均衡が達成されるんです。



ただ、ここで問題なのが、マンU、シティ、リヴァプールチェルシーアーセナルが抜けたEPLなんて誰が見るの?という奴です。実質的に、ビッグ5のプレミアからの脱退は、プレミアに対する死刑宣告に他なりません。



これはわかりやすい例なんですが、リーグの戦力が均衡してれば、TV視聴率が良くなり、観客動員が増える訳じゃ無いって事です。勿論、欧州スーパーリーグの視聴率は凄いことになるでしょうけどね。ただ、戦力が均衡してるから、というより単にスターが多く、人気チームの集まりだからって理由なんですが。



そんな訳ですので、プロスポーツにおいて戦力バランスの均衡は大切だけれど、高いTV視聴率と観客動員の増加をもたらしてくれるモンではない、という形で〆ときます。



またサッカーというより金の話になっちまいましたが、後一回、この話続ける予定です。次はUEFAFFPプラティニの話をします。


ではでは