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サッカーのマッチレポートなどを中心に。その他サッカーのうんちく系ブログ。

FC東京と攻守のバランスのお話 「守備を制するものが勝負を制す」

さて、みなさん、こんにちは。本日はFC東京ってチームの話をしようと思います。理由は週末に湘南とFC東京が試合するってのが一つ。もう一つは先日、川崎フロンターレのハイパー・ザル・サッカーについて扱ったので、その正反対の位置に存在するチームの話もしといた方が良いと思ったからです。



ホントは、今日は鹿島かガンバの話でもしようかと思っていたのですが、鹿島の話は川崎の話と被っている所がありますし(似たような守備上の問題を抱えています)、ガンバの話はやたらと書きにくいので、FC東京の話に鞍替えした次第です。FC東京については、えらい書きやすいチームの一つなんです。やろうとしているサッカーのスタイルが明白なチームってのは、ブログで書きやすい。



と言う訳で、本日はFC東京とフィカンデンティさんのサッカーについて扱いたいと思います。



フィッカンデンティ監督と、サッカーにおける攻守のバランス


さて、FC東京の話をする際、避けて通れないのが、「攻守のバランス」という言葉です。この言葉は、サッカーにおける永遠のテーマの一つです。そして、サッカーにおける究極のイデオロギー対決の根源とも関わっています。



もう随分昔のコラムになりますが、セルヒオ・レビンスキーがコラムで、「メッシに必要なチームとは何か 天才を擁するがゆえに生じた問題」という文章を書きました。この中で、

 ディエゴ・マラドーナとの比較という無意味な論争に加え、メッシはアルフィオ・バシーレ(2006‐08)、マラドーナ(08‐10)、セルヒオ・バティスタ(10‐11)と監督を頻繁にすげ替えてきたアルゼンチンが抱える長期的な強化計画の欠如という問題とも戦わなければならなかった。



 いずれの場合もメッシは、小心者で守備的な戦い方を好み、悪名高き「攻守のバランス」という言葉に権威を与えた監督たちのさい配を受け入れざるを得なかった。これらの監督は皆、より多くのボランチやDFを起用すべくFWの数を減らしてきたため、いつもメッシは単独、もしくはほとんどフォローがない状況でのプレーを強いられてきた。



 これらの監督が就任して以来、メッシはほぼ常に自身の前方に1人のFW(通常はゴンサロ・イグアイン)しかいない状態でプレーしてきた。サイドアタッカーが時折攻撃に参加するとはいえ、守備のタスクを課された彼らはすぐに自身のマークを捕まえるべく自陣に戻らなければならない。全く異なるバルセロナのシステムでのプレーに慣れているメッシにとって、それはあまりにも孤立した状況である。

って話をレビンスキーはしてます。「小心者で守備的な戦い方を好み、悪名高き「攻守のバランス」という言葉に権威を与えた監督たち」という表現が最高にロックだと思ったので、このコラムは僕のブックマークの中に未だに残ってます。



イタリアサッカーでは「攻守のバランス」とは至上命題であり、一つの宗教的な響きを持っている訳ですが、南米の場合には「攻守のバランス」という言葉を毛嫌いする人もいるわけです。



「攻守のバランス」という言葉が南米で毛嫌いされる理由の一つは、この言葉を連呼する連中は、大概の場合、より多くのボランチやDFを起用すべくFWの数を減らす傾向があるからでして、「攻守のバランスという建前の下で、FW減らしてボランチとDF増やすチキン野郎共にはウンザリだ」というのがあるんですね。



これに対する究極のアンチテーゼが皮肉な事に川崎の風間サッカーでして、「DF減らしてFWを増やし続ける」という地獄の黙示録路線です。風間サッカーについては、「FW減らしてボランチとDF増やすチキン野郎共にはウンザリ」というのが、あのサッカーやってる動機なんじゃないかと、実は勘ぐっております



まあ、ネタはこの位にして、真面目に攻守のバランスの話をしましょうか。




基本的に、サッカーというゲームは、


1,攻撃の局面(自分達がボールを持っている)
2,守備の局面(相手がボールを持っている)
3、攻守の切り替えの局面(トランジションとか言われる)



の三つの局面で構成されます。この三つの局面で、質の高いプレーをすることが良いチームを作るための条件になります。



ここで問題になるのは、サッカーの永遠の問題なのですが、


攻撃の局面でありがちな問題
1,攻撃を効果的に行うのは、ボールより前に多くの人を送り込む必要がある。
2、ボールより前に多くの人を送り込むと、切り替えの局面で守備の人数が足らなくなる。
3、カウンターで失点してしまう
4,点は多いが失点が多いチームになる



守備の局面でありがちな問題
1、守備を効果的に行うには、ボールより後ろに人を沢山残してスペースを消す必要がある。
2,ボールより後ろに人を沢山残すと、切り替えの局面で攻撃の人数が足らなくなる
3、ボール奪っても、効果的に攻撃を行えない
4、失点は少ないが得点も少ないチームになる



という問題に直面する事が多いんです。攻撃と守備は、互いに相反する二つの局面であり、攻撃に重きをおけば守備が犠牲になり、守備に重きをおけば攻撃を犠牲にせざるを得ません。この二つの状態は、いずれのケースでも「攻守のバランス」が取れていない典型例です。



簡単にいえば、攻撃でボールより前に7人送り込むようなチームは頭おかしいし、守備でボールより後ろに常時9~10人残しているような引きこもり野郎は勝つ気あるの?という話です。



これ、両立することは不可能ではないのですが、そのためにはチーム全体で、コンパクトな陣形を敷き、ラインを高めの位置で保つ必要があるんですが、これにはチーム全体に相当な運動量と集中力が要求される為、出来るチームは世界でも限られます。



ここでFC東京の話になるんですけど、現監督のフィッカデンティの前は、ランコ・ポポヴィッチが監督やってました。ポポヴィッチ時代のFC東京というのは、いわゆる「地獄のワンツーサッカー」でして馬鹿の一つ覚えみたいなワンツー・サッカーでした。



ただ、ポポビッチの2年目には、J1におけるクラブ史上シーズン最多の61得点を上げてまして、こういうのを馬鹿の一念岩をも通すと呼びます。 2年間、ひたすらワンツーすると、以外と点が入ったりします。馬鹿の一つ覚えって怖いですよね。ちなみにコレを30年続けるとバルサが出来ます。



それで、フィッカデンティになってからなんですが、やってるサッカーが180°かわりました。リーグ戦61得点47失点だったチームが、一年で47得点33失点に早変わり。たった一年で得点が14点減り、失点が14点減ったんです。差し引きゼロだろとか突っ込んではいけません。




この得点数の減少と、失点の減少の原因といっていいのが、監督がフィッカデンティになってから、FC東京では、攻撃にかける枚数が厳しく制限された事です。FC東京というチームでは、「ボールより前にいていいのは最大4人まで」というのが徹底されてまして、10人のうち、5人が攻撃、5人が守備ってバランスを絶対に崩しません。(当たり前ですけど、DFやアンカーがボール持ってる時には、ボールより前に6人とかいる事ありますよ。)そのため、数的同数カウンターってのを受けるのは、最終ラインか、アンカーのパスがカットされた場合に限られます。



基本的にフィッカデンティさんって人は、攻撃で人数かけてきません。ボールより前にいていいのは、3~4人って所です。なので、ペナ内に入ってくるのは多くて4人までです。湘南とか川崎みたいな特攻系チームは、5人目、酷い時には6人目が入ってくるカミカゼ・アタックを敢行しますが、FC東京はそーゆーのやりません。カミカゼ・スピリットはイタリアには無いようです。



だから、どうしても攻撃面では個人による単独での局面打開が求められてしまいます。FC東京だと、個人技での局面打開が可能な選手は石川とムトゥ。この二人がいないと、引いた相手からは点取るのは難しいってのがあります。



一方で、攻撃で人数かけない分、カウンターは当然受けにくいです。また、流れの中でも点取られたのは第一節のガンバ戦のみで、しかもセルフジャッジ絡みなんで、組織としてもきっちり出来てます。フォメは、梶山アンカーの4312なんですけど、梶山の両脇を使わせないように守れていますし、試合によっては守れてないと監督が判断すると、すぐに普通の442のダブルボランチに変更してきますんで守備では相当に厄介なチームです。


守備で特に厄介なのが、攻撃側がFC東京に対して攻勢に出る為、システムチェンジしても、フィッカデンティさんが、それに対応してシステムをいじってくるんです。この対応のスピードがもの凄く速く、相手のシステム変更に対して、柔軟に対応できるってのがフィッカデンティさんの一番の強みだと僕は思ってます。


また、守備において、「ボールより後ろに9~10人動員する」系じゃあ無いってのも特徴です。これやってしまうと、イタリア人大好きなカウンターがやりにくいからです。基本、前に2人ないし3人残して守ろうとするのも特徴です。


で。



なんで、こんな「守備」と「守から攻への切り替え」を重視したチーム作りをするの?というと、これねえ。アンチェロッティが著書の「アンチェロッティの戦術ノート」で述べてますが


高い位置でコンパクトかつ秩序の整った陣形を保てる保障がないのであれば、攻撃にかける人数を抑えて守備を固めた方が、リスクが少なく効率もずっといい。もちろん攻守のバランスは守備寄りになるし、その分ゴールを挙げるのは難しくなるが、少なくとも失点の可能性を減らすことが出来る。失点さえ抑えれば、得点が少なくとも勝利を得ることは十分に可能なのだ


結局、イタリア人のサッカーの基本思想はコレなんだなって思う次第です。「守備を制するものが勝負を制す」。これが彼らのわかりやすい哲学なんです。もっともアンチェロッティは、イタリア人監督では珍しく、攻撃6人、守備4人みたいな事を平気でやるんですけどね。平均的なイタリア人監督より、攻撃参加してよい人数が一人多いです、アンチェロッティ。



このタイプの基本的なサッカー思想は、


1,攻撃にかける人数を制限してカウンターによる失点を減らす
2、守備を整えて失点を減らす
3、守から攻への切り替えを重視して、カウンターによる得点を増やす
4、現代サッカーでは得点の3割がカウンター。つまり、カウンターの得点を増やし、カウンターから失点を減らせば勝つる!


って形です。これを突き詰めるとモウリーニョが出来ます。要するに、「相手チームにはカウンターをさせず、自分達は一方的にカウンターを見舞う」というのが理想です。




でもって週末にFC東京と湘南の試合があるんですが


さて、実は、今週末、湘南ベルマーレとFC東京の試合があります。湘南はFC東京がフィッカンデンティになってから、初めて試合するんですが、あの監督さんの事だから、どういう手に出てくるかは、ある意味でわかりきってるンですね。



えっと、湘南のサッカーなんですが、基本的にはドルトムントとミシャサッカーを融合させたようなサッカーです。攻撃時にはボールより前に5~6人送り込んでくるし、守備の時はボールより後ろに9人とか平気で送り込んできます。こういうサッカーをする為には切り替えの速さが必須でして、カウンターを受けない為、またカウンターを行う為に、徹底して攻守の切り替えのスピードの高速化を追求してます。



この手のサッカーに対しては、イタリアの連中がどういう手をとってくるのかなんて、わかりきってるというか。



つまり、湘南にボール持たせて、湘南のCBが攻撃参加してきた所でカウンターで先制点取る。その後は湘南を走らせつつ、湘南が走り疲れる後半でサクっと追加点って感じで来るでしょう。湘南と、はしりっこ対決は絶対やりませんわ。ラテン系の連中はハードワークの概念がないので。




ある意味じゃ、どういうゲームプランで来るか、ハッキリしてると言えばハッキリしてるので、やりやすいのではあるんですけどね。




一応、僕個人としては、フィッカデンティさんには頑張って欲しいと思ってるのです。理由は、去年、フィッカデンティさんは川崎に一分一敗で負け越してる上に、順位は先代のポポヴィッチと変わらずなんで、今年結果が出ないと




イタリアサッカーの連中は口だけ。実際にやらせてみると大したこと無い。革命に勝てない上に、ワンツー地獄と順位かわんない




とか言われちゃいますからね。



日本だと、オランダサッカーの監督が最近立て続けに大失敗して、オランダサッカーは日本には向いてないという流れが出来てしまった事があるんですが、ザックがW杯で負けて、今シーズン、フィッカデンティさんがJ1で失敗すると、「イタリアサッカーは日本には向いてない」という流れが出来てしまう訳で、それはそれでつまらないのです。



そんな訳ですので、僕は湘南サポですが、フィッカンデンティさんには頑張って欲しいと思ってるのですよ。ただ、今週末は頑張らなくて良いです。



今日はそのあたりで。ではでは。