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2015年 東アジアカップ 日本対北朝鮮のレビュー

さてみなさん、こんにちは。久々の更新になりますが、本日は先日行われた2015東アジアカップ、日本対北朝鮮のレビューでもしようと思います。内容は、レビューというより単なる愚痴に近いですけれど、暑い上に男女ともに逆転負けを食らって、どうもイライラしてるんで、その辺りはお察しください。





ハリルホジッチとフランス・サッカー


今回の話、レビューと題うってますけど、実際のところ、レビューする内容はそんなありません。てのも、今回の試合は、代表として練習できたのは一日のみだったんで、たいした事は出来ないだろうな、とやる前から思っていたからです。


今回のスタメンなんですけど、


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こうなってました。日本はいつもの4231。ただし、ダブルボランチは山口と谷口というコンビになってまして、いわゆる「中盤でボール動かす気がない」ダブルボランチです。二人とも守備のほうに特徴がある選手です。それなりにボール裁ける選手ですけどもね、二人とも。



ここで、ハリルホジッチとフランス・サッカーの話になるんですが、僕は、ハリルホジッチのサッカーをよく知らなかったので、就任当初は「東欧系、旧ユーゴなサッカーやる人なんかな?」と思ってたんです。ところが、試合を何試合か見るにつれて、「旧ユーゴじゃなくて、ガッチガチのフランスサッカー系だ」という結論に達しました。



どういうことかってーと、これね、アンチェロッティが、


アンチェロッティの完全戦術論

アンチェロッティの完全戦術論



この本の中で、PSGの監督やってた時の話をしてるんですけど、そこでフランス・サッカーについて、


ピッチ上で展開されているサッカーに関していえば、ペースが速いフィジカルなスタイルが特徴だ。採用されるシステムはバリエーションに富んでるが、カウンターアタックへの志向が強いという共通点がある

という形で簡潔にまとめてます。ハリルホジッチ監督については、就任以降、しばしば「速攻の重要性」と「フィジカル」について触れてるんですけど、「ペースが速いフィジカルなスタイル」と「カウンターアタックへの志向の強さ」ってのは、ハリルホジッチのサッカーの特徴なんです。つまり、ハリルホジッチさん、フランスサッカーの人であり、旧ユーゴ系のサッカーって訳じゃなかったんですね。


ペースが速いフィジカルなスタイル」ってのは、よーするにボール奪ったら素早く前に当てる。そこでボールがこぼれたらセカンドボールの拾い合い、つまり肉弾戦をするって事です。セカンドボールの拾い合いは、体のぶつけ合いですからね。



そこでなんですが、今年、フランスサッカー界から日本サッカー界に入ってきた人が二人います。つまり、日本代表監督ハリルホジッチ、そしてもう一人が、横浜Fマリノス監督、エリック・モンバエルツさんです。この二人、知り合いで、かつては師弟関係だったみたいです。ハリルホジッチに関しては、旧ユーゴの人ですけれど、サッカーのキャリアのかなりの部分をフランスで過ごしており、選手としても監督としてフランスでタイトルをいくつか取っています。


この二人、今現在、とっても難しい立場に置かれてます。ハリルホジッチはアジア相手に勝てておらず、モンバエルツさんもJ1で勝ててません。もともと、J1にはフランス人監督、フランス人選手は少なく、フランスサッカーは馴染みが薄いサッカーであり、彼らの印象がそのままフランス・サッカーの印象になってしまう状態なんです。ちょっと大げさにいえば、彼らはフランスサッカーを代表する立場といってもいい。ところが、彼らは、現在の所、勝ててない訳で、このままだと「フランスサッカーは日本人には向いてない」って流れが出来ちまうんです。


ちとJ1の話をすると、J1で結果を出している外人選手・外人監督ってのは、圧倒的にブラジル系で、それに次ぐのが旧ユーゴ、ドイツ位の順番になってます。今の所、「日本人とは相性悪い」と言われてる最右翼がオランダサッカーでして、こいつは近年、日本でオランダ式サッカーやった監督が次々と撃沈されてしまったのが原因になってます。正直、オランダサッカーが悪いというより、連れてきた監督が悪かった気がせんでもないのですが、サッカーというのは非情な結果の世界。浦和の旧ペトロビッチ監督のやらかしのせいで、オランダサッカーはJリーグから駆逐されたも同然の状態になってしまいました。とにかくオランダ式433は評判が地に墜ちました。



話をフランスサッカーに戻しますけど、モンバエルツさんにしろ、ハリルホジッチさんにしろ、この二人が失敗しちまうと、日本におけるフランスサッカーの威信が地に落ちることになるので、後進の為にも、頑張って結果だしてくださいとしか言えません。ちょっとモンバエルツさんの話をしますが、この方、現在三門をトップ下にして前プレタイプのサッカーしたいみたいんですが、あんまり上手くいってません。フォメみる限り、三門トップ下にして守備時は442のハイプレスタイプのチーム作りたいみたいんですが、あのチームで一番良い攻撃の選手は俊介とアデミウソンなんで、「それなんか違わないか?」感がすごいんです。


実は、今回のハリルホジッチのチームみてて、西川君にひたすら川又めがけて放り込ませたり、川又にポストプレーを散々やらせたり、宇佐美にオフザボールの動きが少ないと言って雷落としたりと、「それちょっと違うだろ・・・」感が凄く、フランスサッカーってそーゆーモンなのかね・・・と思う次第であります。



あんま書くことなんですけど、試合内容について

こっからは試合内容について簡単にレビューでまとめておきます。繰り返しますが、今回は試合前に練習できたの一日だけなんで、多くは求められません。


今回の試合ですけど、ハリルホジッチはやり方そのものはいじってません。攻撃は4231、守備は442、もしくは4411です。


攻撃に関しては、西川君から川又への放り込み、川又のポストプレー、引いてくるWGにボール当てて相手のSBを引っ張り出し、そのスペースにトップ下orSBが突撃ってのが多かったです。最後のは図にすると、


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こーいう奴です。これはハリルホジッチが就任してからずーっとやってる攻撃です。逆にいうと、速攻とこれら位しか現状、攻め手がないというのもあるんですが、ハリルホジッチはチームつくりの時間を十分に与えてもらってない状態なので、攻め手が少ないのはしょうがない部分があります。モンバエルツさんは、もうちょいバリエーションがある攻撃やってるので、時間をあげれば、もうちょい攻撃のパターンは増えると思います。(そう信じたい)


ちと動画はっておきますが、



ハイライト 日本代表VS北朝鮮 東アジアカップ2015 Japan North Korea Goals ...



先制点の流れは、北朝鮮のパスミスを日本が拾って、右の遠藤に展開、遠藤のアーリークロスから武藤(寿司)がゴール。これは綺麗な得点でした。


動画にある前半23分の攻撃はハリルホジッチになってから、よくやってる攻撃で、モリゲの縦パスを引いてきた永井がフリックして武藤、川又とつないでフィニッシュって流れでした。



日本代表なんですが、ハリルホジッチになってから、そんなに中盤ではボール動かさなくなってます。でっかいサイドチェンジ使って攻撃したのは前半19分くらいだったはずです。基本、縦にさっさとボールつけてしまうことが多く、サイドチェンジ多様する試合は今までなかったはずです。



こっからは、ちょっと戦術うんちくな話になるんですが、いわゆるサッカーにおける「速攻」の話をします。


ハリルホジッチになってから、日本代表のサッカーは「速攻」を強く打ち出すようになってます。この「速攻」に関しては、現在日本代表が守備時に採用しているフォーメーション、つまり442なんですが、442は速攻に関して、構造的な欠陥を抱えているフォメです。


ここで「えっ!?442って速攻の代名詞じゃないの?」と思う人がいるかもしれませんが、ちょっと違うんです。


これについては、先に紹介した「アンチェロッティの完全戦術論」でアンチェロッティが説明してるので、それを引用しますが、


一般論として言えば、442は現在もなお、守備に関しては最良のシステムであると私は考えている。それは、サイドと中央の両方をバランスよくカバーすることが出来るからだ。実際私自身、「クリスマスツリー」をはじめとする他のシステムにおいても守備の局面にはこのシステムを採用することが少なくない。10人のフィールドプレーヤーを3つのラインに配置するこの布陣は、陣形をコンパクトに保ちやすく、したがって敵陣においてもバランスを崩さず相手に効果的なプレッシャーをかけることを可能にする。



他方、3ラインによって布陣が構成されているという事実は、攻撃に転じた時には多少の避けがたい問題をもたらす。前線のフォワードに直接ボールを送り込むか、そうでなければサイドバックとサイドハーフの縦の関係を利用し、サイドのスペースを使って攻撃を組み立てなければならない。これは横パスを多様せざるを得ないことも意味している。もちろん、例えば、サイドハーフが敵の2ライン(中盤とディフェンス)間に入り込んだり、フォワードが手前に引くなど、選手の動きによってパスコースを作り出すことは可能だ。しかしそれを機能させるためには動きとパスのタイミングをぴったりと合わせる必要が出てくる。

黒字強調は僕のモノですが、442ってフォメは3ラインで構成されるため、ボールを奪った直後のパスコースが非常にに少ないという欠点を持っています。4411もそうですが、そのために、ボールを奪った後、FWにボールを放り込むか、サイドに横パスだしてSBとSHの縦関係でボールを運ぶかの二択になりがちです。後者はどうしても横パスが多くなるため、速攻には不向きなんです。もちろん、選手の動きによってパスコースを作ることは可能なんですが、そのためには組織的なシンクロニズムを磨かないといけなくなります。つまり、結構時間がかかるんです。チームとしてのポゼッションの強化に時間がかかるのは有名ですけど、442の速攻にかんしては、結構、習熟に時間がかかったりするんです。上手くいってない442ってのは、ボールを奪った後に横パスがやたらと多くなります。(無論、ハイプレスでDFかボランチからボールを奪えれば話は別ですよ)



今回の試合の話に戻しますが、速攻の際、「ボール奪ったけど前に川又一人しかいない」って状況が多く、しかも川又はボールキープとかポストプレーで天下取った選手じゃないんで、速攻が上手くいかない状態でした。ハリルホジッチは、後半途中から433に布陣を変えてボール奪った後のパスコース増やそうとしてた節がありますが、後半は北朝鮮に放り込まれて、ラインがずるずる下がり、左右のWGも低い位置まで押し込まれてたんで、あんまり意味がありませんでした。


442、もしくは4411みたいな布陣から速攻に転じる場合、横パスを使わずに縦パスのみで速攻しようとすると、FWのキープ力、ポストプレーに強く依存し、または、組織的なシンクロニズムを必要とするので、一朝一夕で出来るもんじゃないって話です。だから、時間を与える必要はあります。




今回の話のまとめになりますが


今回の話は、きちんとしたレビューというより、サッカーうんちくばっかりになってしまいました。すいません。



今回の北朝鮮戦に関しては、暑くてイライラしてたところに、なでしこの敗戦、男子の敗戦と続いたので、イライラが爆発してしまい、twitterのほうではハリルホジッチをかなりクソミソに言ってしまいました。ただ、冷静になってみれば、結構同情すべき点も多いし、なんだかんだで、シュート数、枠内シュート数は多かったので、時間をあげれば、きっちりチームを作ってくれるかな、とは思っております。僕は基本的に代表監督寄りのスタンスでブログ書いておりますので、代表監督の仕事を貶すつもりはそんなにないのです。



ただ、選手の起用法については、ちょっと文句があって、川又を本物のポストプレーヤーとして使うのはやめといたほうが良いです。川又は日本一のポストプレーヤーじゃありません。それと宇佐美についてなんですけど、「オフザボールの動きが悪い」って雷落としたみたいですが、宇佐美をサイドで使って「オフザボールの動きが悪い」って文句をいうのは、根本的に宇佐美を理解してません。宇佐美ってプレーヤーなんですが、基本的にスタミナに不安のある選手で、サイドを上下動できないタイプなんです。



これはドイツで原口なんかもぶち当たった壁なんですけど、彼の最近のインタから引用しますが

ヘルタは守ってカウンターというサッカーなので、サイドの選手は守備の際、サイドバックの位置まで下がるんですよ。そこまでいって(味方が)ボールを奪うと、今度は爆発的なスピードを駆使して50~60m走って前に出て行くんですが、ゴール前で受けたときには、もうフィニッシュのパワーが残っていない。相当きつくて、これで活躍するのは大変だなって思いました



原口元気、ドイツでの苦悩「こんなに自信を失ったのは人生初」

宇佐美、これが出来ないんですわ。「守備のときにはSBの位置まで下がって守備やって、攻撃になったら50メートル走ってゴール前に入る」、これだけのことなんですけど、ドイツ系の監督は、しばしばサイドの選手にこれを求めます。ハリルホジッチのサッカー見てても、サイドの選手は相手のSBが上がってきたら追っかけないとダメなんで、これが出来ないといけない。特に4231の時はそうです。



宇佐美はこれが出来ないんです。というか、宇佐美がサイドで使われているときは、宇佐美抑えるのはある意味じゃ簡単でしてね。対面のSBガンガンあがって、宇佐美の位置を下げてしまえばいい。宇佐美は守備やってからフルパワーで攻撃に移れないから、これやってれば宇佐美は全然怖くなくなる。それに走りっこに持ち込めば、後半ちょっとで宇佐美はガス欠です。健太さんが、宇佐美をサイドじゃなくて中央にコンバートしたは正解だと思いますよ。宇佐美自身「僕はサイドアタッカーじゃなかった」って話をしてますが、宇佐美は現代のサイドアタッカーには向いてないんです。中央で使うべき選手で、サイドで上下動させたら、良さがでません。そもそも、中央で使っても運動量が少ないので、試合終盤にはガス欠起こすことが多く、ガンバの試合終盤の得点の少なさの原因になってしまっている位なんですからね。




宇佐美の話はコレくらいにして、ハリルホジッチに話を戻しますが、ここまでの試合みる限り、ハリルホジッチはホントに速攻系のサッカーの人です。ハイテンポでフィジカルなサッカーを志向してるようです。これ自体は何も問題はありませんし、サッカーには正解なんてありません。基本的にサッカー文化というのは、「隣の芝は青い」の世界でして、イングランドは負けると「技術がない」と嘆き、ブラジルは負けると「守備が弱い」と嘆き、日本が負けると「決定力がない」と嘆き、そして違うサッカー文化の世界に憧れるもんなんです。


ただし、負けた監督が「フィジカルガー」とか「日本の育成ガー」とかいうのは問題外なんです。


今回、試合後のハリルホジッチのコメント読んで脱力し、イライラマックスになってしまったのはそのせいもあるんです。ちょっと前に、鹿島のセレーゾ監督(こないだ松本に負けて解任された)が、ACLで負けたときに


「現日本代表監督のハリルホジッチ監督は率直に感じたことを述べたと思うが、日本人選手はコンタクト(接触)を避ける、嫌がる。(ハリルホジッチ監督が)勇気を持って言っただけで、それはずっと前から分かっていた事実。18歳の高校生、22歳の大学生が入団してきたとき、大半の選手がヘディングの技術、空中戦で競り合うテクニックを身に付けていない」


 こうした現状の背景として、日本と海外の間の文化の違いを挙げた。「他の国では貧富の差があり、1日を生きる、生き延びるためには自分で頭を働かせないといけない。水がなかったり、食べ物がなかったり、それはだれかにもらえるわけではなく、自分でどうするかを考えないといけない」。ブラジル人監督はそう持論を展開し、サッカーに話を移す。


「(ブラジルでは)7歳から10歳ですでに競争の世界に身を置いている。同じ街のチームには負けてはいけない。勝つか、負けるか。そこにどういう意味があり、重みがあり、責任があるのか。それを小さいときから分かっている人と、プロになってから分かる人とでは大きく異なる」


 球際の競り合いや1対1の勝負。勝利にこだわる執着心。「日本には争いをしないという文化、習慣があり、話し合いで解決するという素晴らしい文化がある」と、日本の文化を尊重したうえで、「だが、それは極端に言えば、素手でケンカをしないということ。接触することも嫌がる。日本人選手の大半はヘディングが大嫌いではないか。競り合いになると、できるだけ自分だけは競らないようにしている」と指摘した。


日本人選手の“弱さ”嘆く鹿島セレーゾ監督「接触を嫌がる」


こんなコメント出して、僕を猛烈に脱力させてくれたことがありました。



言ってることはもっともでございますよ。ええ、もっともでございます。



ただね。



アジアで勝てない監督がこんなこと言っても何も説得力がないんですよ。




というか、負けた監督が何いっても負け犬の遠吠えなんですわ、サッカーの世界では。結果が全てですから。



それに鹿島が負けたら原因は日本の育成、勝ったら自分の功績にするようじゃ、下の人間ついてこないでしょう。セレーゾさんは、松本に負けて解任されましたが、J1ですらろくに守れないチームなのに、鹿島の守備の酷さを日本の育成、文化のせいにされてもね。




ハリルホジッチさん、今回の試合の後、「日本の危機だ」とか言って会長に直談判してたみたいですが、負けた原因を「日本の育成のせいだ」とか言いはじめて、その後、解任されちまった監督がつい最近、一人でてますので、そういうのは止めといたほうが無難でござると、僕は申し上げておきます。



ぶっちゃけ、モンバエルツさんも最近J1でかててねーし、ハリルホジッチさんもアジアで勝てないようだと、フランスサッカーってダメなんじゃねぇの?って声が先に出ますわマジに。



今日はこのあたりで。ではでは。