現在の森保ジャパンの攻撃とその問題点について
どうもこんにちは、私です。
こないだのコスタリカ戦はレビュー書くような内容がないのでサボりました。
実際に失点の原因は「吉田がいつもの奴をやった」だけですし、攻撃面でも「引いてがっちりブロック作られて点取れない」のはアジア予選でもしょっちゅうなので本当に書く内容がないです、あの試合。当ブログとして言えることは「残り時間が少ない時は迷わず大きくクリアしろ」という事くらいです。もっともカメルーン対セルビアの試合でカメルーンの二失点目はカメルーンのDFが残り時間少ないのに中途半端なクリアしたのをセルビアに拾われて失点してたので、ああいうミスはサッカーにおける事故で一定確率で起きちまう奴なんですけどね。
そういうわけですので、本日はちと趣向を変えまして、現在の日本代表の攻撃の話をしていきたいと思います。
コスタリカ戦で本田さんが言ってた奴
ここではコスタリカ戦の動画へのリンク貼っときますが、この試合で前半から本田さんが「隙間にボールが入らない」みたいな話を結構してたのを覚えている人がいると思います。あと遠藤のパス出しについても動画内でかなり問題点指摘してましたが、最終的に「ワタルはそういう選手じゃないからしょうがないんですけどね」でまとめてました。これねえ、どういう事なのか、サッカーあんまし見てない人はわからんと思うので解説しときます。
この日、コスタリカは541でブロック組んでる時間が長かったんですが、541ブロックを日本が3421で崩そうとした場合、どうしたらいいかというと、一番簡単の図で解説すると、
この形を作るのが一番手っ取り早いです。あの位置でシャドーがボール持って前向ければ決定機に繋げるのは難しい話じゃないです。本田3はこの形作りたいんです。この形を作ることが出来れば、あとは割と簡単で、
こんな感じで決定機に繋げられます。このケースでは、ボール持ったシャドーにCBが食いつきますから、その裏のスペースが空きます。その裏にもう一枚のシャドーが走ります。この時にシャドーをマークしてるCBにCFがスクリーンかけてマークを剥がします。そしてフリーになったシャドーにボールが通ればGKとの一対一が作れます。
これの他にもワンツー、スルーを使ったコンビネーション、WBが斜めに走りこむ動きに合わせたスルーパスも使えますし、CB外してミドルシュートでもオッケーです。
ようするにあそこのスペースでシャドーかボランチがボールもって前向ければ高確率で決定機に持ち込めるわけです。
さて、ここで問題です。
一枚目でシャドーがボール持ってるスペースをサッカーでは「バイタルエリア」と呼ぶんですが、あそこでボール持って前向くにはどうしたら良いでしょうか?
あそこでボールもってアタッカーが前向ける状況を作り出すには、大きく分けて三つの手段があります。
今日はここを解説していきます。
CFのポストプレー
これは最も代表的なサッカーのプレイであり、そして現在の日本代表が使えなくなってる攻撃でもあります。
一番単純なのはCBからのボールをCFに当ててシャドーに落とす形です。これが一番簡単なんですが、最も難しいプレーでもあります。ボランチとCBはこれを絶対に通させないように訓練されてる連中だからです。屈強なCBを背負いつつ、ボランチとのサンドイッチに晒されながらボールをシャドーに落とせるCFなんてのは世界でも実はそんなにいません。
CFというのは一番の仕事は点を取ることなんですが、チーム戦術の上でポストプレーに優れている事も求められます。しかし、W杯のレベルで点取れてポストプレーも最高。そんなCFは世界的にみても数人だけです。ポーランドのレバンドフスキがこれの代表格ですけど、ああいう選手は滅多にいないんですよ。
日本代表の場合、これが完璧にできるのは大迫だけでした。過去形になってるのは、大迫のパフォーマンスの低下がアジア最終予選の時から明らかだったからです。ポイチさんにとって、これが最高に頭の痛い問題でした。
ポイチさんが代表監督になった時、最初にやった事は香川を外して南野をトップ下に抜擢したことです。これは本当に大ヒットでした。というのも大迫にとって、一番やりやすいタイプのトップ下だったからです。南野と大迫の縦関係は完璧といって良く、大迫のポストから南野の裏抜けだけで点取った試合がいくつもあります。
アジアカップの決勝で大迫のポストから南野が決めたシーンなんかその象徴ですけど、ああいうプレーは今の日本代表だと難しいのです。大迫のパフォーマンスが下がってしまったので。
これは南野がW杯でスタメンでない理由でもあるのです。大迫とのセットで使われていた部分があるので、大迫がいないとトップ下で南野を使う理由があまりないのですよ。
ポイチさん、上田に大迫の役割を求めていたのかもしれませんが、残念ながら現在上手く行ってません。
中盤のゲームメイクを使った戦術
こっちはポストプレーよりちょっと面倒になります。戦術も多岐にわたる為、全部説明するのは流石に無理です。なので代表的な方法として「相手チームの中央を1ボランチにする」事に絞って説明します。
現在のサッカーの戦術においてはダブルボランチが一般的です。このダブルボランチの一人をサイドに引っ張り出すか、最終ラインに吸収させる事が出来れば中央を1ボランチにする事が可能です。どうすればいいかというと、
この形は日本がドイツのミュラーに散々やられた方法なんですが、サイドにシャドーを一枚落とすんです。そこで相手のボランチを一枚サイドに釣りだす。そうすると中央が1ボランチになってその両脇にスペースが出来るんです。あそこの両脇のスペースでボランチかシャドーが前を向ければ決定機に持ち込めます。ドイツ戦ではこれを散々やられました。
そしてもう一つがドイツ対日本でギュンドアンに前半19分にやられた奴なんですが、図でやると
こういう動きです。最終ラインからボールを動かして、ボランチからサイドに展開した瞬間にWBとCBの間に走りこみ、そこでリターンを受けます。この動きには相手のボランチはほぼ必ずついてきます。「ワンツーされたらマークを離すな」は基本ですからね。この動きで相手のボランチを最終ラインに吸収させ、バイタルを1ボランチにします。そして、その両脇のスペースを使ってフィニッシュ。
中盤のゲームメイクによってバイタルにスペース作るやり方は本当に多岐にわたるので全部紹介するのは無理です。これは正直申し上げてゲームメーカーと呼ばれる選手の芸術なんです。真似したくても出来るもんじゃないです。出来る選手見つけてくるしかありません。ドイツのギュンドアンはそういうタイプの選手であり、彼がいなくなった後にドイツがgdgdになって立て直せませんでしたが、誰でもできるモンじゃないんです。
現在の日本代表でこれが出来る選手は柴崎になります。ポイチさんは就任当初、柴崎と遠藤のダブルボランチを取っており、初期森保ジャパンがゲームメイクに困ることはなかったんです。しかし、アジア最終予選から柴崎のパフォーマンス低下が目立つようになりました。
ポイチさんも本当に困ったと思います。大迫のポストプレー、柴崎のゲームメイクをチームの攻撃の主軸にすることができなくなったんです。
その結果としてポイチさんが出した解決策が433によるWGを使った攻撃、になります。
WGを使ってバイタルを取るにはどうしたらいいか?
現在の日本代表はWGの突破力に完全に依存しているといっても良いです。もう本当にこれしかありません。伊東と三苫の突破力頼みです。ただ、この二人はWGとして見た場合、性質がかなり異なります。
伊東は純足のWGであり、右サイドの縦突破を得意とし、前にスペースがあったほうが活きるタイプの選手です。これの代表的な選手としては昔のウェールズのガレス・ベイルとか右でWGやってた頃のエムバペですね。圧倒的なスピードで縦に突破してクロスかニアをぶち抜くシュート、それが求められる仕事です。
一方で三苫は逆足タイプのWGになります。右利きのWGを左サイドに配置し、カットインから違いを作ることが求められます。これの代表的な選手はメッシですな。メッシの右サイドからカットインしてシュートは芸術ですからね。
WGの縦突破は戦術でなく絶対的なスピードがモノをいう分野なので今回は扱いません。スペースにポーンと出してスピード勝負。話はシンプルです。
一方でWGのカットインについてはチーム内でかなり戦術を煮詰めておく必要があります。実は前回のコスタリカ戦で途中から入った伊藤のパス出しがかなりSNSで叩かれていたのです。そのあたりも絡めて説明していきます。
伊藤が叩かれてたシーンの一つにこういう状況がありました。
伊藤は左利きのCBであって、あの状況だと三苫にボールつけるのは難しい事じゃありません。ただ、この状況で三苫にボールつけちゃうと三苫はDF背負ってボール受けざるを得ないので三苫にとってはCBから直でボールつけられると困る部分があるんですよ。三苫はDF背負うのは得意な選手じゃないんです。
じゃあ、どうしたらいいかというと、
こっちです。三苫でなく遠藤につけたいんです。一度遠藤にボール入れるとDFは中央に絞ります。中央突破されると困るからです。そこで遠藤は三苫にボール落としてコスタリカのWBの裏にフリーラン。そこで三苫からリターン貰えればサイドを抉れます。
さらにいえば、この遠藤の動きにボランチがついてくれば(ほぼ確実に遠藤についてきます)中央へのカットインコースが空くので
こういう形で三苫が中央へカットインできるんです。そして円で囲ったスペースはガラ空きです。
ここでは「三苫がドリブルで対面を抜く」のが前提ですが、カットインでバイタルエリアに侵入できる。三苫はそれが出来る選手です。
カットインした先は三苫がミドル撃つなり、中央の動き出しに合わせてラストパス出すなり、クロスあげるなり、ボランチ引きつけてからフリーの守田にパスするなり、好きにやればいい。
一見良い事づくめです。しかし問題があるのです。遠藤が右利きなのです。
例えばあの場所でワンタッチで三苫にボール落とそうとすると左足のインサイドでボール蹴らないといけません。右足のインサイドでやろうとすると相手のDFに近い方の足なのでひっかけられる可能性が高いんです。左足のインサイドなら、右半身でDFをブロックしつつ左足でプレーすれば安全にボール扱えます。しかし遠藤は右利きです。難しいのですよ。
さらに言えば、遠藤が三苫とのワンツーに成功したとしても、クロス上げる時はやっぱり左足でクロス上げないといかんのです。これだとクロスの精度がどうしても落ちます。やっぱり難しいのです。
左サイドの三苫のカットインを活かしたいなら、ここは絶対に左利きのボランチが欲しいのです。でもそんな選手はおらんのです。左足でワンタッチパスができるボランチが欲しい。でも今の代表にはそれがいないのです。
三苫の突破は現状の日本代表で唯一守備ブロックをぶち壊せる武器ですが、そこに重要なパーツが一枚足らんのです。
攻撃面でも守備面でも足らないものだらけ、でもスペイン戦は明日
ポイチさんの心労は計り知れません。誰にもそれを理解することは出来ないでしょう。
サッカーでチーム組むなら欲しいどうしても欲しいがなかなか手に入らない選手ってのがいます。ポストプレーが出来て点が取れるCF、優れたゲームメイカー、突破力のあるWG、左利きのボランチ。これらは本当に貴重です。W杯クラスのこういった選手は大体ビッグクラブが独占してます。チームに一人でもこういう選手がいたら感謝すべきです。そのくらい貴重なんです。
現在の日本代表にあるのは突破力のあるWG、つまり伊東と三苫だけです。
4年前だったら、大迫と柴崎がいました。でも今は1人はW杯で落選。もう一人は使う目途がたちません。代わりとなれる選手も出てこなかった。それなのにW杯で戦わないといけない。圧倒的に手札が足らないのにも関わらず。しかも更に悪い事に守備の要の冨安と遠藤が怪我してんです。
攻撃の手札があまりに少ない。守備の要は怪我をしている。これで代表監督にどうしろと?
スペイン戦は明日です。ポイチさんの手札は限りなくブタに近い。もっているジョーカーは三苫と伊東のみ。
勝てば無条件突破です。しかし立ちふさがる壁はあまりに高い。
どうする森保一。
解決策は・・・俺には浮かびません。
2022年カタールW杯、日本対ドイツのレビュー
4年ぶりの更新になりますが、twitterでレビューやってくれという要望が多かったので4年ぶりにサッカーレビューでもやってみようかと思います。
正直な話、最近のネットのサッカー系レポートについてはもう文章の時代じゃなくて動画の時代になってましてね、youtubeとかでサッカーの解説動画作ってる人も多くて、そっちが50万再生とか稼いでる時代なので「もう文章でサッカーの解説する時代じゃねぇなあ」と思ってるんですよ。文章で解説やってもW杯でもせいぜい2~3万ですし。
ここ数年、ネットも動画時代で動画配信できねえ奴は用無しなんじゃねーかと思ってる所もありましてtwitter位しかやってませんでした。自分は時代の流れに完全に取り残された男です。
これも時代の流れですからね、しょうがないです。愚痴ってもしょうもないので、本題に入りたいと思います。
この試合の動画についてですが、abemaで全部動画でみれますので、それへのリンクを貼っておきます。
基本的に、この動画の時間にそって説明していきます。正直言って、この試合の戦術解説に関しては解説で本田さんが全部喋ってくれてるので、それを図をいれつつ補完する形になります。
この試合の展開から始めますと、
基本的にはフォーメーションは双方4231同士でした。ただ、これはあくまで初期配置です。ドイツは攻撃時にフォーメーションが変わります。日本は試合開始10分くらいはハイプレスしてたのでドイツのフォメチェンは問題になってなかったんですが、日本がハイプレスを止めて自陣内でのプレスに切り替えた辺りからドイツのフォメチェンが問題になり始めます。
ドイツは試合当初、ポゼッション時にWGを中に絞らせて1トップ2シャドーの形を取って、両SBを高い位置に上げてトップ下のミュラーを頻繁に中盤に落としてきてました。
ちょっと極端な図になるんですが、
こんな感じで日本が6バックになってるような状況に陥りました。
このポジションチェンジが日本に二つの問題を引き起こしました。一つは日本のWGの二人が最終ラインに吸収されて6バックの状態になってしまっていた事。これではボール取れてもWGの位置が低すぎてまともに攻撃につなげることが出来ません。日本の最大の武器である伊東の良さが消えてしまう。
そしてもう一つ。中盤中央で2対3の数的不利が出来てしまい、ドイツの中央でのポゼッションを止める事ができなくなった事。ここの所、ドイツが本当に上手くてですね、中盤中央に1トップとWG、トップ下のミューラーがポジションチェンジを繰り返しながら中盤に降りてくるんですね。そこを日本が上手く捕まえることが出来ておらず、日本代表は完全にドイツに中盤を制圧される事になります。そして中盤中央を制圧されて、今度はサイドに散らされてサイドもやられるという悪循環にハマって前半は完全にサンドバック状態になりました。
この問題については、abemaの動画で12分くらいの所から本田がすぐに気づいて日本の守備の問題について詳しく解説してます。
本田3「前田さんと鎌田さんがだんだん最終ラインにプレスかけれなくなってきたんですよ。で伊東さんが最終ラインにいって6バックみたくなってるんですよ。タケも最終ラインまで引いてほぼ6バック。こうなってくると低いんですよ位置が。でエネルギーがないんですよ、そしてホラ、また拾われるんですよ」
ってね。前半12:27の動画のシーンj確認してもらうとわかるんですが、日本は本当に6バックになっちまってます。
もう一つ、日本代表は前半、CKの守備でも苦戦してましてね、abemaの動画だと前半15:55の所のドイツのCKなんて、ドイツはスクリーンプレイを上手に使ってリュディガーをフリーにして、ヘディングにつなげてます。日本はCKの守備をマンツーマンでセットするんですが、マンツーマンはスクリーンプレイでマークずらされるとフリーでシュートされてしまう危険性が常にあります。ここね、完全にリュディガーがフリーでヘディングしてます。これは戦術的にはドイツの一点です。ここで日本は先制されてもおかしくなかった。日本が失点しなかったのは運が良かったからとしか言えません。スクリーン上手いチームにマンツーマンで守備セットするのは怖いんですよね。
次、前半19:37分からです。ドイツのポゼッションなんですが、ここもギュンドアンがずっと上手いんですよ。ギュンドアンがこの日の日本にとって最大の問題だったってわかるシーンなんですが、まず最終ラインまで降りてきてボールを受けてズーレにはたく。その後、すぐにポジションを中盤に戻してます。ドイツはズーレからミキッヒに繋ぐんですが、ここで最終ラインから中盤に戻ってきたギュンドアンがフリーになってるんです。ミキッヒ→ギュンドアン→ムシアラ→ラウムと流れるようなパスワークで中盤を制圧してサイドに展開。そこからギュンドアンは相手のバイタルに走りこんでラウムからパスを受けてヒールでムシアラに落としてムシアラがカットイン。ムシアラはDFが止めたんですが、最後はこぼれたボールをキミッヒに弾丸ミドル打ち込まれました。権田のセーブで助かりましたが、ここも失点しててもおかしくなかったです。
ここねえ、ギュンドアンは最終ラインに降りて行って、そこからゲームメイクからフィニッシュのお膳立てまで全部ひとりでやってるんです。たまんねえですね、こんな事されたら。ギュンドアンがボールに触っちゃうとそこからゲームを作られてしまうので、ずーっと日本代表にとって頭の痛い選手でした。
前半15分、前半19分だけで2失点してもおかしくなかった。日本にはツキがあった。これはこのゲームの前半で一失点で済んだ事からも明らかです。
前半21分、日本は久保が良い位置でボール奪った所から速攻に繋げるんですが、本田も言ってましたが「タケ、右(足)やから、左だったら確実にアシストしてたシーン」でした。レフティの選手は逆足が苦手な事多くてですね、ああいう決定的なシーンでも逆足だと決めきれない事多いんです。これは最後の伏線でしたね。浅野は最後の決定機、純足だったからノイアーのニア抜きました。
前半の22分、ここでまた本田が「ここなんですよ、ミュラーが(右サイドに)降りて来るんですよ、ミュラーがタイミング良くは受けれてないんですけど、でもちょっと気にはなってます」って解説いれて、その後に「タケがプレスに行ったらミュラーが開きます、ホラ」って言ってますよね。よく見とるなーと感心してたんですけど、このミュラーの動きが厄介でしてね、この後も本田が続けて解説してるんですけど、「それが結構厄介でしてね、田中さんがどんどん引っ張られていくので、ホラ、サイドに開いてから戻ってきてるんで凄い走らされてるんですよ」って解説してますけど、22分のところも田中碧がサイドに引っ張り出されて中央が1ボランチになり、遠藤の両脇をドイツに使われて中盤からサイドに展開されちゃってるんです。それで日本は余計に走らされて体力削られ続けてんですね。
この試合の後、選手が「ミュラーのポジショニングが厄介だった」って言ってましたけど、この動きが本当に効いてて日本がドイツに中盤を制圧される原因になってました。
皮肉な話ですが、この厄介なミュラーとギュンドアンが後半22分に交代してから日本の時間がやってくるわけです。ただそれはずっと先の話。
前半23分にもギュンドアンから始まる攻撃で危険なシーンを作られ、前半25分にもサイドに流れてきたミュラーから攻撃作られ、前半27分には3バック気味になったドイツのポゼッションからギュンドアンのミドルに繋げられと、もう完全にサンドバックです。ドイツのポゼッションに全く日本は対応できてません。
前半28分。ドイツはこの時間帯、CB二人とSB一人の3バックポゼのスタイルでこのあたりからドイツの狙いが明確にわかるようになります。図にすると、
日本がズーレをボールの取りどころを定めているってのを逆手にとったやり方です。3バックポゼでズーレにボール預けて久保を引きつけ、久保がいなくなったスペースにミュラーを落とす形。ここもズーレ→ミュラーからゲーム作られ、ニャブリのカットインから最後はギュンドアンのミドル。
ドイツがやり方をちょっと変えたので日本の守備は混乱してて誰が誰みるのかわかんくなってる状態です。
ここで本田が「いや四枚じゃ厳しいよ、だって相手五枚に、ヒロキとユウトがミュラーみたりニャブリみたりで、WGがアレやから、これはキツイすね」と解説いれて、このあたりから5バックにしたほうがいいと気づき始めた感じでしたね。
この試合ね、本田さんの解説はどれももっともな事しか言ってないんですよ。だからこの試合については俺がどうこういうより、本田さんの解説だけで事足りるって試合なんです、本当に(’この記事書く意味あるのかって話)。
そして前半30分。日本代表が失点したシーン。ここもそうなんですが、結局ズーレにボールが入ったところからです。ズーレにボールが入ったところで久保が行ってしまうと背後をミュラーに取られるってのを繰り返していたんで、久保はここでは行っておらず、背後のミュラーをケアしてます。ズーレがドリブルで日本陣内に入ったところで久保は寄せるんですが、この時にドイツのCFが降りてきてズーレからの楔を受けてミュラーに落とします。これでミュラーがフリーでボール持てました。ここも結局ミュラーからゲーム作られたんです。
で、ミュラー→キミッヒと繋いで逆サイドに走りこんだラウムに展開。これでペナルティエリア内で正真正銘のGKとの一対一が出来てしまいました。戦術的にはもうこれでドイツの一点です。PA内でGKとの一対一作ったんですからね。この後、権田がラウム倒してしまってPKを取られ、ギュンドアンに決められて日本は失点。
もうこの時点で運が悪ければ3点取られててもおかしくない、一方的な試合展開でした。ここまでは。
前半の試合の話はこれの繰り返しです。右サイドはギュンドアンから始まる攻撃で凹られ、左サイドはミュラーから始まる攻撃で凹られるの繰り返し。日本代表は悲惨なほどに凹られっぱなしで前半のスタッツは壊滅的としか言えない内容でした。1失点で済んだのは運が良かったから、ドイツ代表に決定力がなかったからとしか言えません。それほどに酷い内容でした。
前半はドイツのゲームプランに全く日本は対応できておらず、本当に何もさせてもらえませんでした。
本田さん、前半から「5バックにしたほうがいい」って繰り返してましたが、これは至極真っ当な指摘で、後半、日本代表は5バックに変更し、3421フォメでドイツに挑むことになります。
さて、こっからは日本代表が盛り返した後半の話です。前半は一方的に凹られた日本代表でしたが、後半頭から久保に代えて冨安を投入。3421としました。
こうですね。これは初期配置であり、守備時には
こうなって541でブロック作る形になります。前から行くときは343ですね。
ただ、この守備がすぐ機能したわけじゃなくて、後半開始直後いきなりドイツに決定機作られてます。さらに後半5分にもムシアラのカットインからシュート打たれてて、最初からフォメチェンが上手く行ってたというわけでもないのです。ぶっつけ本番での3421です。最初から上手く行くわけないんですわ。
そして、この試合を動かす日本の選手交代が始まります。長友に代えて三苫、前田に代えて浅野。最終的に日本代表を勝たせた二人がここで投入。
後半12分に日本は後半最初のビッグチャンスを迎えます。ドイツの楔を吉田がインターセプトしたところから一気に速攻。ドイツのDFと日本のFWで3対3の数的同数での勝負でした。ここはニアの浅野で勝負したんですが、残念ですが浅野のヘッドは枠に飛ばせず。
この後もドイツペースは変わってなくて、後半15分には又ギュンドアンにバイタル取られてそのままPA内に入られてシュート。ここもドイツの一点もののシーンでした。なんでドイツのシュートは入らないんでしょうかね。あんな綺麗にバイタルで前向けてるのに。見返すと本当に不思議なほどです。
ただし、この後の後半15分あたりからドイツも怪しくなってくるんです。後半12分に引き続き、再び日本の攻撃で最終ラインの所で3:3の状況作られました。ここでも浅野がシュートふかしてしまいました。逆足のシュートでしたからしゃーない。でもここ決めれなかったので個人的には「3:3の状況で勝てんかーきっついなあ」と思ってました。三苫、はたかず自分で行ってもよかったのになあ、と。
その直後、15分のシーンでもドイツのパスをインターセプトして日本のショートカウンター。ここも残念な攻撃で終わってしまったのですが、このあたりからですね。
見返してみると大体このあたりからドイツがどんどん怪しくなっていって、日本がペースを引き寄せ始めるんです。この辺りの時間帯から日本はポゼッションできるようになり、守備でもドイツのパスをひっかけることが出来るようになってきます。守備も攻撃も機能しはじめるんですね。
ドイツの監督はそれをみてか、後半22分にミュラーとギュンドアンの二枚替え。ギュンドアンに代えてゴレツカ、ミュラーに代えてホフマン投入。結果論ですが、これは悪手でした。日本代表にとって最大の問題といっていいプレーヤーがいなくなったんです。この試合、「ドイツは選手を代えるごとに弱くなり、日本は選手を代えるごとに強くなっていった」と言われる事になる采配でした。ドイツ監督としては守備が怪しくなっていて、最終ラインで同数になるような場面を二回作られていたのでそこを何とかしたかったんでしょうけども。
本当にこの辺りからドイツは守備怪しくなっていて、後半22分にも吉田のロングフィードから酒井に抜け出されて最終ラインの所で二対二の状況を作られる羽目になってます。ドイツ、守備を何とかしないといけないって状況でした。最終ラインのところであんなに数的同数になるようだといずれ失点してもおかしくありません。一本のフィードで裏を取られてしまうような状況になってたんですドイツ。
ドイツは後半12分、15分、22分と三回も最終ラインで数的同数の守備を強いられており、テコ入れが必要な状況だったのは間違いない事です。
後半24分、本格的にドイツが怪しくなったのがココでした。ミュラーとギュンドアンがいなくなって日本の守備がハマりはじめたんです。この時間帯以降、ドイツは効果的なビルドアップが出来なくなっていきます。日本の守備にドイツの選手は捕まってしまい、それ以前のような攻撃が出来なくなってしまったんです。
後半24分にドイツは立て続けに決定機を迎えますが、ここが本当に最後のドイツの決定的なチャンスでした。ここを凌ぎ切ったのが本当に大きかった。
ここから攻撃は手詰まり、守備も怪しい、ドイツはそんな状況に陥ってしまいました。要するに遂に日本の時間が来たんです。そしてそれを見てか、森保監督はここで畳みかけるように攻撃のカードを切ります。後半26分、田中碧に代えて堂安を投入。
そして後半27:35に日本に決定機が訪れます。遠藤のふわっとしたフィードをドイツのSBとCBの間でボールを受けた伊藤がPA内でシュート。これは本当に決定的なシーンでしたが、ノイアーに防がれ、こぼれたボールに詰めた酒井はシュートをふかしてしまいます。ここドイツの最終ラインが酷い守備やってて、右SBのズーレと右CBのリュディガーの間におかしなスペース出来てんですよ。なんでそこ開けた?という感じです。ドイツの最終ラインの守備がおかしいんですよね、ずっと。
これも後から見返してわかったんですが、ドイツの右SBズーレはこの後ドイツの2失点に関与することになります。
そんでもってここでリプレイみた本田が「ほらズーレが穴なのよ、わかる?もっとそこ狙っていけって」と仰っておられますわね。本当に的確な事しか言ってないんですわ解説者本田。攻撃でも守備でも真っ当な指摘ばかりです。
後半29分、森保監督は酒井に代えて南野を投入。ここで両WBが三苫に伊東、浅野のワントップに南野と堂安のシャドーという形に変更します。超攻撃的な布陣すぎて草という奴です。
そして日本が同点に追いついたのが後半29分35秒からの攻撃です。本田はこのシーン「三苫さんいける三苫さん」って三苫さん連呼オジサンになってるんですが、この時ね、ドイツがよくわかんない守備やってくれたんですね。ドイツのWGが日本のCBのプレスに前に出てくれたんです。動画で確認して欲しいのですが、これが決定的な結果を招くことになります。
ドイツのWGが前にでて、三苫は左サイドの高い位置でボール持てました。この時、ドイツのWGが守備ブロックにいないんです。これが何を意味するか。図でやるとこうなるんですが
WGが守備ブロックにいれば、あの場面ではWGとSBのダブルマークすればいいだけの場面でした。しかしWGは前に出てしまった。つまり三苫のカットインするスペースが開いたんです。そして三苫は空いた中央にカットイン。ここ、ズーレは三苫に振り切られているのでミキッヒは南野のマークをリュディガーに受け渡して三苫の対応に行くしかありません。
ここからドイツのマークが一個ずつずれていくんです。これはどうしようもない問題を引き起こすのですが、
リュディガーは南野をマークする
↓
シュロッターベックは浅野をマークする
↓
ラウムは堂安と伊東を同時にはマークできない
そう、ラウムが一人で二人を見ないといけなくなるんです。これはどうしようもないのです。
そして三苫は一人でズーレ、ミキッヒ、ゴレツカを引きつけてから南野へのスルーパス。この時、動画で確認するとわかるのですが、29:40のところでドイツの最終ラインの所でDFは三枚。一方で日本は4人なんです。もうどうしようもない。
かつてないほどの決定機になりました。そして南野のシュートはノイアーが前に掻き出すしかなかった。ファーに伊東が詰めていたのでファーに反らせば伊東に決められる。でも前にこぼれた所には堂安がいる。詰んでいたのです。あの時、あの瞬間の状況では。
びっくりするくらい綺麗なゴールを決めて日本は同点においつきました。
ところで自分はこのゴール決めた後、「ドローでいい」と思っていたのです。というのも、あんなゴール決めた後に三苫が空くことはもうないからです。あれをみたらドイツは三苫には絶対にWGとSBのダブルマークを動員して何もできなくさせます。もちろん、ダブルマークをやればドイツも攻撃の時にWGが上手く使えず、日本代表の前半みたいな事になるのですが、それはそれでいいのです。日本は同点で勝ち点1でも十分だったし。
ところが日本代表は同点で良しとしなかったんですね。というか、単純にドイツの穴と本田が連呼してた右SBのズーレが又やらかすんですが。
後半38分ですね、浅野が一本のロングフィードで抜け出すんですけど、誰が不味い守備やってたかというとズーレでした。
At the point at which the ball is kicked, Rudiger and Schlotterbeck seem to be playing an offside trap. Rudiger in particular seems to be letting his runner go free. However, Niclas Sule has dropped in behind the line meaning Asano is onside. pic.twitter.com/znOlf4WfaP
— Jon Mackenzie (@Jon_Mackenzie) November 23, 2022
これです。ドイツの最終ラインは後半ずっと怪しい状況だったんですが、ここで右SBのズーレが最終ラインを崩してしまい、それが浅野の飛び出しが成功した原因です。
この後は皆さんご存じの通り、抜け出した浅野はノイアーのニアをぶち抜くスーパーシュート決めて日本は逆転に成功したんです。
日本に勝ち越された後、ドイツには試合をひっくり返す力はもう残ってませんでした。「ドイツは選手交代をする度に弱くなり、日本は選手交代をする度に強くなった」という試合評の通りです。ドイツの選手交代はまるで機能せず、日本の選手交代はドンピシャでしたから。
試合終了の笛が吹かれるまでもうドイツは前半のような攻撃は出来なくなっていた。一方で日本が逆に3点目いれるチャンスまであったほどです。
試合を見返してみて、やはりこの試合は本当に厳しい試合でした。前半で試合が壊れていてもおかしくなかったし、後半の24分くらいまではドイツが圧倒的でした。しかし、そこを一失点で凌いで日本の時間が来るまで耐える事ができた。そして日本の時間が来た時に少ないチャンスをモノにしてドイツより美しいゴールを二つ決めて日本は勝ったわけです。
サウジアラビアがアルゼンチンを倒し、日本はドイツを下した。今回のW杯は史上かつてないほどのジャイアントキリングが吹き荒れる大会となっています。
2018年FIFAワールドカップ、日本対ベルギーのレビュー「日本が史上最もベスト8に近づいた日」
非常に残念ですが、日本のベスト8への夢は潰えました。
本当にあと少しでベスト8という所だったので気持ちの整理に時間が必要だった人も多いんじゃないでしょうか。
本日はそんな日本対ベルギーの試合のレビューをお送りします。結果は2-3で日本は逆転負け。あと20分守れたらベスト8という所まで来てたんですがね・・・。気持ちが落ちてついてから見返してみると色んな事がわかりました。今日はそんなレビューになります。
日本対ベルギー、スターティングメンバーとフォメ
まず、日本対ベルギーのスタメンですが、
こうなってました。日本は4231で、大迫のワントップに2列目は乾香川原口、ボランチは長谷部柴崎、4バックは長友昌子マヤ酒井の並びです。ちなみに試合が行われる前にポーランド戦でのスタメン流出が問題となり、長友と本田がメディアに「情報流出止めて!」的なメッセージを出す異常事態が起きてます。このメッセが出た時には「あれ?まさかスタメンとフォメいじってくる?」とか思ったんですが、試合前日の会見で昌子を連れて西野監督がインタビューをやったので、「あら昌子が出るなら4231のままだ」という感じでした。もし3421にするなら槇野使うでしょうしね。
一方でベルギーのほうはいつもの3421です。スタメンは完全に予想通り。コンパニがCBで復帰した位ですかね。
この試合なんですけど、試合前に西野サンが言った通りの試合でした。つまり、「日本がここのラウンドに入ったということで、(日本の)チームスタイル、個人のスタイルはすべて分析されているうえで戦う。両チームがそういう中での戦いになると思う。もちろんストロングの部分がベルギーにあるが、されどウイークポイントもたくさんあると感じているので、全面に日本のストロングを出して対抗したい」という奴です。
これ、プレビューで書くつもりだった事でしたが、プレビューさぼってtwitterで書き込みした奴張っときますが、
ベルギーはカウンターヤバイしセットプレーもヤバイけど、守備は隙があります。あれなら点は取れる相手です。問題はベルギーのカウンターとセットプレーを凌げるかです。日本は攻撃で人数かけるし両SBあげるサッカーやってるので尚更。
— pal9999 (@pal9999) 2018年7月2日
これですけど、ベルギーってチームは守備で極めてわかりやすい穴があるチームです。ベルギーの試合をチェックしてみて、すぐに「あ、これなら点は取れる相手だ」と思いました。具体的に言えば、左WBのカラスコは本職がMFなんで裏狙えます。右WBのムニエもそんな大したことないです。その上にSBのオーバーラップにベルギーのシャドーがついてこない事が非常に多いのでサイドでは2対1作りやすいです。ベルギーのシャドーは守備意識が薄くて、中盤はフィルターが効かない事が多いです。中盤のフィルター能力が低いチームなので、日本にとってはとんでもなくやりやすい。中盤で簡単に前向けますからね。そもそも中盤の4枚がアザール、デブルイネ、ヴィツェル、メルテンスなんですが、守備がキチンとできるのヴィツェルくらいです。
1試合みただけで欠点が大量にみつかったんで、点は取れるなって確信しました。サイドの守備でも中盤の守備でも、ハッキリ言って穴が多い。試合後、カペッロがベルギーの守備に対して「なってない」と断罪してましたが、守備はGKのクルトワとCBの3人、ヴィツェル頼みな所があります。この5人がやられるとベルギーは失点します。
しかし日本も守備は良くないのでお互い様なんですがね!!!
という訳でして、この試合なんですが、日本もベルギーもお互いに相手の弱点を狙って試合を進めていました。お互いに誘い受けみたいなサッカーやってるのでね。突いてくれと言わんばかりの穴があるチーム同士の対戦です。
西野さんは試合前に「ベルギーには弱点があるので対抗できる」と言ってましたが、本当にわかりやすい弱点があるチームです。
試合開始~前半20分まで。日本の時間帯
ここからは試合内容に進みましょう。
ベルギーの守備上の欠点に関しては開始6分で露わになるんですけど
このシーンです。このシーンの問題なんですけど、ベルギーが前プレかけた時、アザールとデブルイネが被ってしまってるんですね。そして酒井ゴリがフリーになってしまった。そしてそこから大迫への楔入れられて香川に落とされ、香川から柴崎に繋がれた。これで日本は前プレ突破できました。アザールね、前プレの時も引いて守る時も、守備では本当に適当です。
そしてそこからサイドに展開されてからが最大の問題なんですが、長友が中央にフリーランかけたとき、そこにルカクは当然ついていってません。WBが対応してます。だから乾にフリーになる。
このシーンを取りあげたのは、ベルギーの守備の問題点である「中盤のフィルター能力の低さ」と「サイドで2対1を作られやすい」ってのがモロに出たシーンだからです。前半開始6分でコレですよ。
ハッキリ言って、こんな守備やってたらブラジル相手だと無理ゲーだと思ってたんですが、本日のベルギー対ブラジル戦では流石にスタメンいじって中盤のフィルターを増やし、フェライニ、ヴィツェル、シャドリの3枚にしてブラジルのサイド攻撃の際には中盤1枚サイドに送ってました。
基本的に、このチームはメルテンスとアザール、デブルイネの守備に大きな問題を抱えてます。中盤でこの三人がフィルターにならないといけないのに、フィルターとして機能してません。日本の中盤に割と好き勝手にプレーされた原因は、この三人の守備が適当だからです。(ブラジル戦では流石にスタメンいじりましたが)
さらに言えば、開始直後は大迫への楔の対応は最悪に近く、
これは開始7分のシーンですけどね。開始7分でCBからCFに楔打ち込まれてトップ下に落とされるとか、ヌル杉です。見ててアホかと思った程です。どうかしてるぜ。開始7分でCFに楔打ち込まれてトップ下に落とされてサイドで2対1作られる守備やってたら、試合後にカペッロに「守備はなってない」と言われて当然でござる。
もうひとつロングボールへの対応も酷くて、
これですよ。この布陣じゃセカンドボール拾えないし、中盤2枚じゃ相手にセカンド取られた後にフィルターが効きません。実際、この後、日本にショートパス3939繋がれて、ヴィツェルの脇で簡単に香川に前向かれて乾にはたかれました。長友は即座に乾を追い越す動きいれて(勿論メルテンスはついてこない)、相手のWBが長友に釣られた瞬間を見逃さずに乾はクロスあげました。原口は斜めにニアに入ってきてヘディングを試みますが、惜しくも合わず。原口は完全にマーク外してコンパニの前に入ってた訳で、あってたらここで日本が先制してました。
完璧な日本の攻撃でしたが、ベルギーは本当に「守備はなってない」。
これがFIFAランク3位のチームの守備です。
ベルギーのサッカーを日本が真似したら、W杯で間違いなくボコボコにされてます。絶対に真似しちゃ駄目。日本じゃ無理。日本じゃガチで無理。最低でもクルトワクラスのGKがいないと無理。
この守備でも何とかなってるのはカウンターが糞強力で帳尻できてるからです。カウンターは世界のトップ3に入ります。ブラジル、フランス、ベルギー、これがカウンターアタック三強です。調子扱いて攻撃してると前3人のカウンターで沈められます。岡ちゃんは試合前に「ベルギーはカウンターでしか点取ってない」って言ってましたが、それが彼らのストロングポイントです。基本的に前3枚はあんまり守備せず攻め残ります。
日本は明らかにベルギーを研究しており、アザール、デブルイネ、メルテンスが守備そんなにやらないという所を狙っていました。アザールとメルテンスのスペースが常時空いてる状態だったし、SBがオーバーラップすればついてこない。そこを利用することで日本はチャンスを作り出すことができました。
大体前半20分あたりまでは日本が良い感じで攻撃できてたんですが、ベルギーもやられっぱなしにはなりません。FIFAランキング3位のチームなんですから。
日本対ベルギー、前半20分以降のアザールを中心としたポジションチェンジ
ここからは前半20分以降のお話になります。前半20分あたりからベルギーの時間が始まります。ベルギーはスロースターターな所があって、大体このあたりの時間帯からギアあげてきます。この試合の場合、前半20分あたりからアザールが動き始め、FIFAランキング3位の実力を見せ始めます。
ここですけどね。アザールが降りてきてデブルイネが上がってますが、ベルギーの攻撃はアザールが中心となってポジションチェンジが起こります。アザール、カラスコ、デブルイネがぐるぐるとポジションチェンジしながら攻撃してきます。これに日本はかなり苦労する事になります。図にすると
こんな感じなんですが、ベルギーとやるチームはどこもアザールを警戒します。アザールに前向かせないように徹底してます。当然、マークも集中します。そういった場合、アザールはマーク引き連れてボランチの位置に降りたり、サイドに流れたりして、空いた自分のスペースをカラスコやデブルイネに使わせます。これが実に厄介でどこのチームも苦労してます。単なるドリブル馬鹿なら対策方法簡単なんですがね(ダブルマークつければ良いだけ)。アザールは周りの使い方も上手いんです。だから厄介なんです、この選手。
そしてもう一つ、長谷部と乾の間のスペース問題。前半20分、22分と立て続けに長谷部と乾の間の所でメルテンス、ムニエに前向かれてます。
これは前半20分のシーン。
こっちは前半22分のシーン。
多分、ココでベルギーの選手達は「あ、ここの守備緩い」と気付きました。あそこのスペースだと前向ける、とね。もしくはスカウティングの段階でわかっていたんでしょうが、乾の守備はお世辞にもよくありません。長友との縦の関係はともかくとして、長谷部と乾の関係が悪い。中央のスペースをケアする事に関しては酷いもんです。そのためベルギーに長谷部の左脇のスペースを使われてしまう。この問題は特に後半に酷くなります。
長谷部の左脇のスペース。ここが、この試合における日本代表の最大の問題となったスペースでした。ただ、前半、乾の体力が残ってるうちはまだ良かったんです。後半ですね。本当に深刻な問題となったのは。
この後、前半40分くらいまではベルギー優勢の時間となります。左はアザール、カラスコ、デブルイネのポジションチェンジ、右はメルテンスとムニエがポジションチェンジをくり返してきて、日本はマークを掴みづらくなり苦労するようになります。この時間帯は両WGと香川まで下がって来て守備する時間帯が多かったです。
攻撃面でも、最初は通っていた大迫への楔に対して、ベルギーが慣れてきてCBとボランチで挟めるようになってきており、難しい時間帯でした。
尚、前半43分にはクルトワのお笑い未遂、前半44分にはムニエのお笑い守備があったんですが、残念ながら日本は決めきれず。前半は0-0で折り返すことになります。ムニエについては時々アマチュアみたいな守備やります
後半開始,日本の先制点と2点目
さて、日本全国をエクスタシー寸前まで追いこんだのが後半の立ち上がりでした。ベルギーは立ち上がりが緩いんですね。
これはキャプでやる必要もないでしょう。日本の左サイドでメルテンスとムニエがワンツーを試みますが、乾はこれを読んでおりパスカットに成功。ボールを柴崎に預けると同時に原口が右サイドを猛烈な勢いで駆け上がり、柴崎から原口へ。カウンターから3対3の状況が出来、最後は原口がベルトンゲンを外してシュート。クルトワでも止められず、日本が先制!!
このカウンターは3バック相手の基本です。WBの裏を使ってカウンター。基本中の基本ですが、素晴らしいカウンターでした。
ただ、この直後、ベルギーは決定機作ってます。この時、ちょっとベルギーは形変えてきてるんですが、
これです。ここではベルギーはボランチ一人、WBの裏に落として、そこから組み立て始めました。これは前半には見られなかった形なんで日本はマークのズレが生じてます。そこから一気にアザールのシュートまで持っていかれました。この時、日本が失点しなかったのは運が良かったからです。これは完全に1点モンのシーンでした。
そして、後半から特に顕著になったんですが、ベルギーは執拗に日本の左サイドを狙うようになります。
ただ、ベルギーの左サイド狙いが報われる前に、ベルギーの中盤スカスカ問題が後半6分で出ます。中盤スカスカというか、単なるデブルイネの怠慢守備なんですが・・・・
まあ、デブルイネが真面目に守備やらなかった罰です。ヴィツェルだけで最終ラインの前のスペースをプロテクトできる訳がない。こーいう守備やるから自分はベルギー相手には点取れると確信してたんです。本当に中盤でフィルターが効かないチームなんです。勿論、乾のシュートはゴラッソでした。アンくらいのシュートじゃないとクルトワの守るゴールは割れませんから。ブラジル戦では枠内シュート9本喰らって失点1のGKです。
中盤のフィルターが効かないチームなので、ベルギーってバイタルミドル対策はCBとGK頼みです。それを何とかしてるのがクルトワなんですよ。日本のチームは真似しちゃ駄目ですよ。あれはクルトワだから何とかなるんです。中盤のフィルター効かなくても守れていた日本のチームなんて全盛期楢崎の名古屋くらいです。そういうレベルのGKもってないならマジで真似しちゃ駄目。死にます。ガチで死にます。
ここでベルギーは2点差を追いかける展開になりました。
赤い悪魔の反撃
もうすでに長すぎるエントリになってますが、この後に起こった後半9分のシーンはとりあえずには居られないので取りあげときます。
このシーンのカウンター対応ですけど、典型的な日本の守備です。数的同数のカウンター食らってるのに、いきなりボランチが相手のボールホルダーとの距離詰めるっていうね。よく「日本の守備はディレイ」っていう人がいますけど、ここボランチ二人が全くディレイ(ボールホルダーと距離を保ちながら併走)せず、逆に間合い詰めてます。ディレイなんてこれっぱかしもやってません。数的同数のカウンターの状況でね。しかも海外組の選手が、ですよ。
このシーン扱うのは、この試合、逆転された時の山口の対応が強く批判されてるからです。あの時に山口がやらないといけない守備はディレイでした。デブルイネのドリブルに併走する形でPAギリギリか3m手前位まで下がるしかないです。5対3のカウンターだったので、それ以外に選択肢ないんですが、やりませんでしたね。併走をやめてしまってる。でも、このシーンでもそうですが、長谷部も柴崎もディレイやってませんよね。
あの対応、別に山口蛍だけに限ったモンじゃないです。日本のボランチ、あーいうプレーをよくやります。これ日本のサッカー文化です。数的同数のカウンター受けて突っかける、数的不利のカウンター食らってるのにディレイしないとかいう。
ただ恐ろしい話なのはココからです。西野ジャパンはテストマッチ含めて7試合、海外の強豪と試合して13失点しましたが、カウンターからは二失点しかしてません。
SBが高い位置とる上にポジションチェンジ多用するので、いかにもカウンター食らいそうなサッカーしてるチームなんですが意外とカウンターからは失点してません。
そういう訳ですので、僕はこういった日本のボランチのプレーを容認することにしました。カウンターからはあんまり失点してない訳だし、別にええやろうと。イタリア人には「守備の文化がない」とか「日本は時間を稼ぐという守備の基本が出来てない」等と否定されそうですが。
話を戻しましょう。ベルギー戦ですが、皆さんご承知の通り、試合が動くのは後半19分、ベルギーがメルテンスに変えてフェライニ、カラスコに変えてシャドリを入れてきてからです。フェライニの投入については、攻撃では高さ。そして守備では長友のオーバーラップへの対応です。フェライニはきちんと守備でサイドのケアをやってました。シャドリ投入に関しては、直前のプレーでカラスコが香川と酒井のワンツーであっさり裏取られたので守備で不安すぎるのと、逆サイからのクロスに合わせる係。デカイですからね。攻撃では高さ勝負、そして守備強化という采配でした。
そして一番重要な事ですけど、フェライニ(194㎝)とシャドリ(187㎝)をいれた事でCKの際にルカクが守備やらないで良くなった事です。これ以降、日本のCKの際にルカクは前残りするようになってます。
これはその後のATでのベルギーの大逆転カウンター、ベルギー対ブラジルでのCKからのカウンターに繋がりました。相手のCKからのカウンターの時にルカク使えるのは大きい。もの凄く大きい。そして、日本の選手とベンチはこれに気付くのが遅すぎました・・・。ある意味ではブラジルも。高すぎる代償を支払うことになります。
ベルギーは後半16分,後半20分、後半22分と立て続けに日本の左サイドを狙ってきます。この辺りの時間帯、徹底して日本の左サイド狙いです。左サイドのどこ狙ってるかというと、前半言及した場所なんですよね。日本の左ボランチの脇。この時間帯は長谷部が右で柴崎が左だったんですが、柴崎の左です。
これは後半16分のシーン。
これは後半20分のシーン。
ここは後半22分のシーン。
ここなんですけど、乾が疲れてきて動けなくなってきていたんで、この辺りで代えといても良かったんじゃないかなと思う訳です。左サイドの守備は本当に怪しくなってきてました。途中から長谷部右に出したのはアザール対策なんでしょうけど、左サイドに柴崎乾だと守備のバランスが・・・という奴です。右より左のが深刻な問題だった訳で・・・あそこに起点作られてやられてるのに西野さんの対策が・・・
それでこの後、ベルギーのCKから川島の非常に残念なプレーで日本は失点。川島はもう十分叩かれているので、あえて触れません。
この後もベルギーの日本の左サイド狙いは続いて後半25分の攻撃はやはり左狙い。ここ延々とベルギーの左狙いが続いてるの何も手を打たないというのはちょっと・・・という感じです・・・西野さんェ・・・・
そして問題の後半26分。日本はCK取ってショートコーナーを選択するんですが、柴崎がとんでもなく酷いロストかましてベルギーのカウンター発生。ルカクが前残りしてる状態で数的同数カウンター食らうとかいう罰ゲーム、ゲームオーバー寸前でしたが、デブルイネのシュートにギリギリで昌子のシュートブロックが間に合いました。しかしCKとなり、1度ははじき返したのですが、セカンドボール拾われて再度アザールからクロスあげられてフェライニのヘディングで日本は同点に追いつかれます。ちなみにカウンターのシーンで乾がシャドリにぶっちぎられているんですが、最後のベルギーのカウンターのシーンでもやっぱりぶっちぎられてたりします。
このシーンだとフェライニのヘディングにどうしても目がいってしまうんですが、それ以外にも問題が多すぎるシーンです。ショートコーナーからの柴崎の酷いプレー、ルカクが前残りしてる状態で数的同数カウンター、シャドリにぶっちぎられる乾と日本の三失点目に繋がる伏線出まくってます。
そして後半31分、ここでもベルギーは日本の左サイド狙いです。もう徹底して日本の左サイド狙いうち。アザールまで左サイドにくるレベル。
続いて後半32分の攻撃は日本の左サイド狙うと見せてサイドチェンジ。
続いて後半34分の攻撃でも日本の左サイド狙うと見せてサイドチェンジ。
そして後半35分、ここで、ようやっと西野監督が動きます。原口に代えて本田、柴崎に代えて山口。え、左放置!?という采配でした。
ここまでの試合では西野さんの采配当たったんですがね・・・この日は・・・
後半40分、やはりここでもベルギーは日本の左サイド狙いなんですが・・・ちょっとここでの乾の守備はひどい。乾がきちんとマークついてないので・・・・
後半16分からベルギーは徹底して日本の左サイド狙いをしてました。本当に露骨に左サイド狙ってきてました。難しい判断だったのかもしれませんが、交代枠は乾だったんじゃないかなと思います。日本の左サイドに起点作られてやられた訳で、あそこ何かしないといけなかった。交代枠で山口を左ボランチに入れてきてましたけど、それでも足らない。乾の守備が中途半端になりがちなトコを狙われているので、ベルギーの左サイド狙いが明確化した時点で左WGに守備強化のカードをもっと早く切ってもよかった。延長までいけば、もう1枚カード使える訳だし。
そして問題の最後のシーンの話・・・
ただし最後に浴びたカウンターは左サイド関係ないのです。日本は残り30秒時間潰せば延長という状況でCKから5対3のカウンター食らって逆転負けしました。
本当にね、何であそこで本田はハイボール蹴り込んだのか問い詰めたい。心の底から問い詰めたい。
「残り時間30秒で延長戦で」
「ベルギーはカウンターが非常に強力と誰もが知っていて」
「CKからカウンター取れるようにルカクが前残りしてるベルギーに対して」
「エリア内に180後半~190超えの選手が6人守備でいるのに」
「ゴールから逃げていく軌道のハイボールをGKクルトワの守備範囲に蹴り込む」
とか理解できません。なんでやねんと。ショートコーナーで時間稼いで、時間ギリギリまで使ってからカウンター食らいにくいボール蹴る場面だろ常識的に考えて。
しかも、この失点後、自分のtwitterのTLでは「山口蛍氏ね」的なコメントが溢れかえりました。
この国のサッカー文化だと5対3のカウンター食らって失点するとボランチが戦犯にされるみたいです。怖いです。
それと、このCKの時ね、ルカクが前残りしてるのに昌子までベルギーのPA内に入ってるんですよ。後半29分の時は昌子がルカクについて残ってたから最後のシュートブロックが間に合った。でも最後の場面では昌子は上がってしまってて最終ラインに居なかった。恐ろしい早さで戻ってきて、最後の場面、スライディングしてたのは凄かったですけどね。昌子が試合後に死ぬほど後悔してましたけど、あそこでルカク前残りしてるのにPA内にはいった判断の悪さはね・・・・
なんで、あの場面であがっちゃんでしょうね・・・CB一人は残ってないといけなかった・・・後半29分のCKシーンでは残ってたのに・・・何故・・・・本当に本当に理解しがたいミスが幾つもあります、このシーン。
ショートコーナー使わない本田、シャドリにぶっちぎられる乾(2回目です。なんで替えなかったの西野はん・・・・)、何故かPA内に入ってた昌子、ディレイしない山口と立て続けに4つの不味いプレーです。そりゃ失点しますって。
くり返しますが、ショートコーナーで時間潰してれば何も問題なかったんですがね!!
試合の総評と日本代表の今後など
試合の総評なんですけど、このエントリはベルギー対ブラジルの試合またいで書いてます。ベルギーはブラジルのオウンゴールと、カウンターで2点取って2-1でブラジルを下しました。ベルギーのカウンターはCKでのルカク前残しからのデブルイネのミドルでした。ミランダとチアゴ・シウバは最終ラインにおらず、ベルギーのPA内に入ってました。だからカウンターになった時、ルカクのターンをブラジルは防げなかった。(ベルギーとブラジルの試合は面白かったし、レビュー書こうかと思った程です。あれはかなり濃い試合でした。)
この試合で日本が犯した過ちを王国ブラジルが綺麗に再現してて草生やしましたですわ。ベルギーはCKでルカクを前にのこしてんです。CBの一人は残らないといけない。
王国でもやらかすんですから、日本がやっちまったのはしょうがないと割切るしかないです。そうする事にしました。じゃないとやりきれない。
こうやって試合見返してみると、ベンチワーク含めて後半は残念な部分が多いです。後半69分まで完璧な試合でしたが、その後が残念すぎました。色々と。
ただグズグズ言ってても結果は変わりませんからね、この辺りにしときましょう。日本対ベルギーは極上のエンターテイメントでした。それだけで十分。
最後に日本代表の今後の話もしときます。皆さん、知っておられると思いますが、本田と長谷部、酒井ゴートクが代表からの引退を表明してます。一時代の終わり、という感じですね。
長谷部とゴートクの代役については、これはそれほどには困らない部分があるんですが、問題は本田の代役です。来年のアジアカップでは2列目乾香川原口で良いので問題ないのですが、その後が問題になります。香川と乾は年齢的に次は厳しい。本田は日本代表では極めて貴重なレフティでした。良いレフティ無しで良いチームは作れないっていう位、レフティは重要な存在です。いるといないのとじゃ使える攻撃オプションに大きな差がでるんです、本当に。俊輔、本田の次に控えているレフティが未だに出てきてないってのがちょっとした不安材料です。候補は何人かいるんですが、今の所使える算段がついてない。今の所、最有力候補は堂安なんですけどね。久保君はどうなるかなあ。今回のW杯では経験積ませてあげられなかったのが残念。
ここまで書いてきて1万2000字とかいう誰が読むんだよエントリになった事に気付きました。この辺りでやめておきます。ではでは。