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フットボール、マネーボール、お金とリーグ戦の成績の相関性

みなさん、こんにちは、本日も元気に更新いたします。代表期間中で、明日はイラク戦がありますが、「まぁ勝つだろ」くらいの気楽さで最終予選を見てる状態でございます。今の日本代表、えれー強いし、グループ首位だし、他が勝手に自滅してくれてるし。



というわけで、本日は、ちと趣向を変えて、世界のサッカーリーグの順位と年俸総額の相関性を見ていきたいと思います。最近は、そんな事やって数字遊びしてます。代表期間だしね。



ちと、最近、気になった記事を紹介しておきますが、


【イングランド】なぜリバプールの成績はここまで悲惨なのか


イングランド】マンチェスター・シティは金だけでなく頭を使った


スポルティーバに、僕が本もよく読んでるサイモン・クーパーのコラムが載ってます。これ、結構面白い記事なんで、一読してみてください。


それで、なんですが、サイモン・クーパーの著書、『サッカーノミクス』(邦訳『「ジャパン」はなぜ負けるのか──経済学が解明するサッカーの不条理』NHK出版)には、プレミアリーグにおける順位と総年俸の強い相関性の記事があります。

クラブのリーグ順位を予測するのに最も役立つ数字は、選手年俸の総額だ。『サッカーノミクス』(邦訳『「ジャパン」はなぜ負けるのか──経済学が解明するサッカーの不条理』NHK出版)を僕と一緒に書いたスポーツ経済学者のステファン・シマンスキーが言うように、フットボールではたいていの場合、選手年俸が最高のクラブが優勝し、最低のクラブが最下位になる。それはフットボール選手が、なんの感傷も交えず、最も高い年俸をもらえるクラブへ行く人種だからだ(彼らの言葉で言えば、それが「プロフェッショナル」だ)。


【イングランド】なぜリバプールの成績はここまで悲惨なのか


って奴です。これ、事実でして、プレミアリーグのみならず、セリエA、ブンデス、リーガ、Jリーグでも、選手年俸の総額と順位には、おおよそ0.7程度の相関性が見つかります。


なので、今日は、2010/11シーズンにおけるリーグ別の相関性などの数字を紹介しながら、「お金の使い方が上手い」幾つかのクラブの紹介をしたいと思います。


ちなみに、Jリーグから海外の4大リーグにいたるまで、クラブの順位を予測する、一番つまらなく、かつ無難なやり方は「選手年俸の総額の順に並べる」になります。


ただ、これが、一番当たるっちゃ当たるんですが、シーズン前のサポーターの楽しみを丸ごと奪うやり方なので、つまんないと思ってます。

Jリーグの順位と年俸の相関性、2010/11シーズン


さて、まずは、Jリーグの話から始めましょう。調査対象としたのは2010/11シーズンです。

順位 チーム 勝ち点 試合 勝数 分数 敗数 得点 失点 得失差 選手年俸総額(単位万円)
1 柏レイソル 72 34 23 3 8 65 42 23 75450
2 名古屋グランパス 71 34 21 8 5 67 36 31 92790
3 ガンバ大阪 70 34 21 7 6 78 51 27 82840
4 ベガルタ仙台 56 34 14 14 6 39 25 14 45990
5 横浜F・マリノス 56 34 16 8 10 46 40 6 73740
6 鹿島アントラーズ 50 34 13 11 10 53 40 13 75930
7 サンフレッチェ広島 50 34 14 8 12 52 49 3 54150
8 ジュビロ磐田 47 34 13 8 13 53 45 8 52140
9 ヴィッセル神戸 46 34 13 7 14 44 45 -1 65960
10 清水エスパルス 45 34 11 12 11 42 51 -9 48960
11 川崎フロンターレ 44 34 13 5 16 52 53 -1 57580
12 セレッソ大阪 43 34 11 10 13 67 53 14 36380
13 大宮アルディージャ 42 34 10 12 12 38 48 −10 56070
14 アルビレックス新潟 39 34 10 9 15 38 46 -8 30880
15 浦和レッズ 36 34 8 12 14 36 43 -7 97680
16 ヴァンフォーレ甲府 33 34 9 6 19 42 63 −21 29770
17 アビスパ福岡 22 34 6 4 24 34 75 −41 21240
18 モンテディオ山形 21 34 5 6 23 23 64 −41 29770


さて、こうなりました。順位と勝ち点の相関性は、この年の相関係数は0.68となっています。散布図もつくりましたが、



こうなります。決定係数R2は、0.46くらいですんで、まぁ、ほどほどって所です。


Jリーグは、上と下での総年俸の差が、海外のリーグみたいに100億以上開くとかいうことはないリーグですから、結構、年俸が低いチームが上位に顔だすことがあるリーグです。


最近のエントリで、J1の各チームの期待勝率を出してみましたが、今年のJ1には、期待勝率が0.7以上、得失点差+40をはじき出せそうなモンスターチームはありません。というか、そんなチーム、ここ数年、一つも出てません。これも、海外との違いで、海外のリーグだと、リーグ1位のチームの得失点差が+40に届くことが頻繁にあります。リーグ戦を食い荒らすモンスターが、大抵1〜2チームあるわけです。J1だと、そういうモンスターは存在しません。


まあ、リーグ始まる前から「どうせ、あそこのチームが優勝すんだろ」みたいな事は無いわけです。おかげで、リーグ戦が予想のできない事になっておもしょいのですが。


また、ガンバ、名古屋、横浜FM、浦和、鹿島あたりのお金があるチームも、年によっては、さっぱりになったりするので、色々面白いリーグです。


現在のJリーグの特徴は、やっぱり、本物のビッグクラブがないって所です。海外だと、リーグに幾つか、「リーグ戦を食い散らかすモンスターチーム」ってのが存在しますが、J1だと、そういうチームがないんですね。


今年もサガン鳥栖が予想外の躍進を見せており、J2あがりのチームがJ1チームを食い散らかすという最近のJリーグのアレな傾向が今年も出ました。


ただねー、J2あがりのチームが予想外の躍進をみせた後、問題になるのは、そのチームの構成メンバーをどこまで保持し続けられるかって点なんですよ。J2クラブって、どこもお金がないので、J1で躍進したとしても、その勝利に見合ったレベルで年俸を上げていけるか、というと・・・これが結構難しい。総年俸3〜4億のチームが、1億円プレーヤーを複数抱えるなんて不可能ですしね。


最近だと、セレッソがJ2からカムバックしてJ1で旋風を起こしましたが、その後、主力が流出しちまったんですよね。香川、乾、清武、アドリアーノ、家長をチームに留めておければ、今頃、モンスターチームになってます。ただ、彼らの年俸をセレッソが払い続ける事ができたかってーと・・・まあ、無理です。セレッソは予算が4億前後のクラブですからね。香川、乾、清武の三人に関しては、海外でなら、いずれ年俸1億稼げる選手です。それを無理に引き留める事は無理ですし。


セレッソは育成型クラブを目指してますが、育成するなら、選手の売り方も、もうちょっと考えないといけません。ま、この話は別の時にします。


で、今年、旋風を起こしているのがサガン鳥栖なんですけど、総年俸1億8510万程度のクラブです。今年はいいんです。ただ、来年になったら、当然、何人か年俸上げないといけない選手がいるわけです。これだけ結果を残したんだから、選手が年俸上げて欲しいのは当然です。


でもサガン鳥栖は・・・お金がない。そうなると、選手をクラブに留め続けるのは、やっぱり無理で。結果を残せば残すほど、良い選手から先に放出するしかなくなるんです。そして、良い選手を獲得できるのは、やっぱりお金のあるクラブな訳ですよ。


どこのリーグでもそうですが、10年単位で順位と総年俸の相関性をみると、強い相関が見つかるんですけど、そうなっちゃうのは、こーいう仕組みがあるからです。


プレミアリーグの順位と総年俸の相関性、2010/11シーズン


まあ、こいつは、サイモン・クーパーがやってるので、僕がやるまでもないですが、ちょいとやってみました。


ただし、年俸のデータは、「Highest-paying teams in the world」から引っ張って来てます。いくつか、年俸のデータがないチームがあるので、それは弾きました。データがないので、どうしようもなかったのです。ホントは、もう一つ前のシーズンの年俸データが揃っているのが欲しかったんですが、それがないので、年俸総額は2012シーズン開始の時のモノです。そこんとこ、ご容赦を。クラブの年俸総額は、油オーナーに買収されない限り、1年だと劇的には変わらないので、まぁ、なんとかなるだろうと思って、まずプレミアから調査開始。

順位 クラブ名 試合 得点 失点 勝ち点 年俸総額 年俸総額(単位億円) 年俸/勝ち点
1 マンチェスター・シティ 38 28 5 5 93 29 64 89 185093858 144.4 1.62
2 マンチェスター・ユナイテッド 38 28 5 5 89 33 56 89 138035567 107.7 1.21
3 アーセナル 38 21 7 10 74 49 25 70 132002699 103 1.47
4 トッテナム・ホットスパー 38 20 9 9 66 41 25 69 95236903 74.3 1.08
5 ニューカッスル・ユナイテッド 38 19 8 11 56 51 5 65 55995199 43.7 0.67
6 チェルシー 38 18 10 10 65 46 19 64 169897463 132.5 2.07
7 エヴァートン 38 15 11 12 50 40 10 56 59298699 46.3 0.83
8 リヴァプール 38 14 10 14 47 40 7 52 130763119 102 1.96
9 フラム 38 14 10 14 48 51 −3 52 60628997 47.3 0.91
13 サンダーランド 38 11 12 15 45 46 −1 45 59186667 46.2 1.03
14 ストーク・シティ 38 11 12 15 36 53 −17 45 48780935 38 0.84
15 ウィガン・アスレティック 38 11 10 17 42 62 −20 43 45703150 35.6 0.83
16 アストン・ヴィラ 38 7 17 14 37 53 −16 38 101686591 79.3 2.09
18 ボルトン・ワンダラーズ 38 10 6 22 46 77 −31 36 58574062 45.7 1.27
19 ブラックバーン・ローヴァーズ 38 8 7 23 48 78 −30 31 51942058 40.5 1.31
20 ウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズ 38 5 10 23 40 82 −42 25 36599228 28.5 1.14


さて、年俸と勝ち点の相関性は0.73と出ました。サイモン・クーパーが、プレミアの1シーズンにおける順位と年俸の相関性は70%程度って言ってるのと合致します。これなら、いけそうかな。



で散布図作ると、こんな感じ。1シーズンのみなんで、R2はそこそこですな。これ、10シーズンにすると、R2も0.88くらいまで上昇するようですが。


で、なんですけどね。


これ、作ってみると、わかる事があるんですけど、マンチェスター・ユナイテッドの年俸/勝ち点がいいんですよ。1.21億程度で、これ、ビッグクラブだと、ユヴェントスに次ぐ成績です。


一方で、成績悪いのが、チェルシーとリヴァプールで、勝ち点1取るのに2億つかってます。


あのね、これ、作ってみて思ったんですが、やっぱりファーガソンは凄い監督なんだな、と。お金を効率的に使って良いチーム作ってる。アーセナルのヴェンゲルもいい数字出してますけどね。ただ、ファーガソンのほうが数値は良い。


一方で、しょうもないのが、アメリカ人に買収されたリヴァポ、オイルマネーに買収されたチェルシーで、金の使い方が全くわかってない。アストンビラにいたっては、金をドブに捨ててるようなモンです。外人オーナーに買収されても、金の使い方がわかってないから、順位が思うようにあがらない典型です。こういうクラブは良いカモです。


シティも、サイモン・クーパーがいうほど良くありません。ぶっちゃけ、これなら、アーセナルとユナイテッドのほうが効率いい。ユヴェントスドルトムントはもっといい。なので、取材するなら、アーセナルかユナイテッドじゃないかと。



あと、注目すべきは、シティじゃあくて、エヴァートンのほうじゃないかと。投資効率が非常にいい。勝ち点1取るのに8300万円しか使ってないし、勝ち点も56取ってます。しかも、リヴァポより順位が上だし。


エヴァートンの監督、デイヴィッド・モイーズの評価が高くなるわけですわ。この年俸総額で、これだけ勝てるとは凄いもんです。ファーガソンの後継者とか言われますが、悪くない人選なんじゃないでしょうか。


シティより、エヴァートンのほうに興味を引かれますね、個人的には。少ない予算で勝てるチームのほうが取材対象としていいんじゃないかなあ。サイモン・クーパー


ブンデスリーガの順位と総年俸の相関性、2010/11シーズン

さて、次からブンデスリーガになります。調査対象は2010/11シーズンです。

順位 クラブ名 勝点 得点 失点 総年俸(単位ドル) 総年俸 円(億) 総年俸/勝ち点
1 ボルシア・ドルトムント 81 25 6 3 80 25 55 89985406 70.2 0.87
2 バイエルン・ミュンヘン 73 23 4 7 77 22 55 170231332 132.8 1.82
3 シャルケ04 64 20 4 10 74 44 30 115844040 90.4 1.41
4 ボルシア・メンヒェングラートバッハ 60 17 9 8 49 24 25 48522298 37.8 0.63
5 バイエル・レヴァークーゼン 54 15 9 10 52 44 8 65648916 51.2 0.95
6 VfBシュトゥットガルト 53 15 8 11 63 46 17 78411126 61.2 1.15
7 ハノーファー96 48 12 12 10 41 45 -4 49456494 38.6 0.8
8 VfLヴォルフスブルク 44 13 5 16 47 60 -13 56996834 44.5 1.01
9 ヴェルダー・ブレーメン 42 11 9 14 49 58 -9 78807905 61.5 1.46
10 1.FCニュルンベルク 42 12 6 16 38 49 -11 61430961 47.9 1.14
11 1899ホッフェンハイム 41 10 11 13 41 47 -6 50743650 39.6 0.97
12 SCフライブルク 40 10 10 14 45 61 -16 39760704 31 0.78
13 1.FSVマインツ05 39 9 12 13 47 51 -4 47992938 37.4 0.96
15 ハンブルガーSV 36 8 12 14 35 57 -22 74340947 58 1.61
17 1.FCケルン 30 8 6 20 39 75 -36 50713819 39.6 1.32
18 1.FCカイザースラウテルン 23 4 11 19 24 54 -30 50772882 39.6 1.72

で、このデータから計算すると、2010/11シーズンのブンデスにおける勝ち点と年俸の相関係数は0.66でした。Jリーグとそんな変わりませんね。散布図も作りましたが、



こうなってます。


ブンデスリーガは、比較的、Jリーグと良く似ているリーグと言われます。というか、Jリーグがブンデスを模範にして作られたンで、当然っちゃ当然なんですが。


さて、最大の違いは、というとブンデスには本物のビッグクラブが存在している事です。つまり、バイエルンミュンヘンです。ブンデスリーガを一つの町とすると、一人だけ町に巨人がいる訳です。


なんで、フツーに考えたらというか、基本的に、ブンデスはバイエルンの一強リーグでして、


ブンデスリーガ:22回優勝
DFBポカール:15回優勝
CL:4回優勝


と、ぶっちぎりの成績を残してます。基本的に、リーグ戦は、バイエルンとそれ以外って状況になりがちです。


とまあ、ここまでは誰でも知ってる事なんですが、ここ2シーズンほど、異変が起きてて、ドルトムントがリーグを2連覇するという珍妙な状況です。


で、ドルトムントとクロップの話になるんですけどね。ちょっとクロップの経歴の話をしましょう。クロップが、ドイツの小規模クラブ、マインツの監督になったのが2001年なんですけど、そこから、異常ともいえる事が起こるんですがね、以下、マインツの成績なんですけど、


シーズン リーグ 試合 勝点 順位
00-01 2nd ブンデスリーガ 34 10 10 14 40 37 45 14
01-02 2nd ブンデスリーガ 34 18 10 64 66 38 クロップ監督就任
02-03 2nd ブンデスリーガ 34 19 10 62 64 39
03-04 2nd ブンデスリーガ 34 13 15 54 49 34 3(昇格)
04-05 ブンデスリーガ 34 12 15 43 50 55 11
05-06 ブンデスリーガ 34 11 14 38 46 47 11
06-07 ブンデスリーガ 34 10 16 34 34 57 16(降格)
07-08 2nd ブンデスリーガ 34 16 10 58 62 36 クロップ退任

こうなりました。まぁ、うちのブログで、「クロップの経歴が凄い」って話をちょくちょくしてきましたが、これね、成績的にありえねーんですよ。クロップの就任前は、マインツは勝率30%程度のチームだった訳です。それが、就任後、いきなり勝率50%くらいのチームになってるわけですから。1シーズンだけだったら、運が良かっただけかもしれませんが、その後も継続的に結果を残し続けてるんです。これ、ちょっとありえない。


で、ドルトムントでもそうなんですけどね、

シーズン リーグ 試合 勝点 順位
04-05 ブンデスリーガ 34 15 10 55 44 40 債務超過による破綻寸前危機
05-06 ブンデスリーガ 34 11 13 10 46 45 42
06-07 ブンデスリーガ 34 12 14 44 41 43
07-08 ブンデスリーガ 34 10 10 14 40 50 62 13
08-09 ブンデスリーガ 34 15 14 59 60 37 クロップ就任
09-10 ブンデスリーガ 34 16 57 54 42 12
10-11 ブンデスリーガ 34 23 75 67 22 優勝
11-12 ブンデスリーガ 34 25 81 80 25 優勝


大体、ドルトムントの場合、2004年に債務超過やらかして破綻寸前になり、その後3年ほど低迷してた訳です。この時期は、大体勝率30%くらいのチームでした。ところが、クロップが就任すると、またもや勝率が50%まで上がってるんですね。で、2010年、日本から香川、ユースからゲッツェというもの凄い当たりクジを引いたことで、一気にチーム力が上がり、勝率70%のチームになったわけです。


これね、まずありえないンですよ。正直、これだけ劇的にチームの成績を引き上げられる監督って、滅多におりません。


又、ドルトムントのフロントも凄いですわ。勝ち点1稼ぐのに8700万円ほどしか使ってませんし、あのバイエルンを二度に渡って王座から退けているわけです。総年俸の差はこのデータだと60億の差です。バイエルンが移籍金に使った金額を合わせれば、軽く100億の差は出ます。こんだけ使った額が違うのに、バイエルンより勝ち点稼げるってのは、ありえねーです。


勿論、これは運もありますけどね。ただ、ドルトムントってチームは、金の使い方がホント上手くなりました。一方で、どうしようもないのがバイエルンとウリ・ヘーネスなんですがね。


基本的に、ウリ・ヘーネスはクラブ経営は上手いけど、選手の取り方が上手くないです。バイエルンが勝ち点1ポイントを取るのに使った金額は1.8億で、これ、他のビッグクラブと比較すると、相当に悪い数字なんです。


あのね、バイエルンがまともなら、ドルトムントはノーチャンスです。これだけ差があるんだから。


ただ、バイエルンってアホな金の使い方するんですよホント。こないだもハビ・マルティネスを4000万ユーロで買ってましたが、もうアホかと。よっぽどドルトムントに追い詰められたんですかね。4000万ユーロでハビ・マルティネス一人とはね。やれやれ。


まあね、基本的に、貧乏人が金持ちに勝てる可能性がある時ってのは、金持ちが馬鹿でモノの価値がわかってないケースです。ブンデスリーガの最近の状況みてると、バイエルンはモノの価値がわかってません。だから、ドルトムントにまくられるんです。フンメルスドルトムントに放出したりね。フンメルスドルトムントに放出して分捕られ、ハビマルティネスを4000万ユーロとか、やれやれですよ。


あと、基本的にドルトムントに選手を売っちゃ駄目ですよ。あそこはモノの価値がわかってるクラブですからね。貧乏人がもうけたい時は、馬鹿な金持ちにポンコツを売りつけるのが一番です。


つまりですけど、Jリーグのチームが高値で選手を売り抜けたいなら、選手の希望なんて関係なく、まずは金の使い方がアホな、ケルン、ハンブルガーSV、ヴェルダーブレーメンのGMに電話かけて売り込むべきなんです。で、高値で売りつけるべきです。



セリエAの順位と総年俸の相関性、2010/11シーズン

さて、お次がセリエAになります。


順位 クラブ 試合 勝利 引き分 敗戦 得点 失点 点差 勝ち点 総年俸(ドル) 総年俸 単位億 年俸/勝ち点
1 ユヴェントス 38 23 15 0 68 20 48 84 117399399 91.57 1.09
2 ミラン 38 24 8 6 74 33 41 80 152619219 119.04 1.49
3 ウディネーゼ 38 18 10 10 52 35 17 64 26486450 20.66 0.32
4 ラツィオ 38 18 8 12 56 47 9 62 48133754 37.54 0.61
5 ナポリ 38 16 3 9 66 46 20 61 41732623 32.55 0.53
6 インテル 38 17 7 14 58 55 3 58 142522871 111.17 1.92
7 ローマ 38 16 8 14 60 54 6 56 97441501 76 1.36
8 パルマ 38 15 11 12 54 53 1 56 24301676 18.96 0.34
9 ボローニャ 38 13 12 13 41 43 -2 51 26532264 20.7 0.41
10 キエーヴォ 38 12 13 13 35 45 -10 49 17386565 13.56 0.28
11 カターニア 38 11 15 12 47 52 -5 48 26237334 20.47 0.43
13 フィオレンティーナ 38 11 13 14 37 43 -6 46 51343625 40.05 0.87
15 カリアリ 38 10 3 15 37 46 -9 43 22036726 17.19 0.4
16 パレルモ 38 11 10 17 52 62 -10 43 30867452 24.08 0.56
17 ジェノア 38 11 9 18 50 69 -19 42 45187315 35.25 0.84
18 レッチェ 38 8 12 18 40 56 -16 36 19757460 15.41 0.43
20 チェゼーナ 38 4 10 24 24 60 -36 22 10457137 8.16 0.37

こうなります。この年の、勝ち点と年俸の相関係数は0.69です。ここもJリーグと数字的には似てますね。散布図も載せておきますが、



こうなります。


さて、セリエAなんですけど、ここで最もアホな金の使い方をしているクラブは、インテルの1強です。インテルほど、アホな金の使い方をするクラブは、他にありません。勝ち点1を稼ぐのに1億9200万を使うチームでして、これ、チェルシー、リヴァプールと並んで、最も高コスト体質のチームです。アホですねー。


さて、インテルが超高コスト体質なのは明らかな訳ですが、2009/2010シーズンではユヴェントスも、勝ち点1を稼ぐのに2億ほど費やしており、高コストの馬鹿クラブでした。ただ、2010/11シーズンでは、ビッグクラブで一番、低コスト体質なチームに切り替わっています。勝ち点1を稼ぐのに1億という、効率のいい投資を行っているわけです。


さて、その原動力は、というと。


これね、コンテに注目が集まってますが、僕は、このユヴェントスの成績、コンテよりも、GMのジュゼッペ・"ベッペ"・マロッタの就任が大きいと思ってます。


彼、2002−2010年の期間、サンプドリアのGMやってたんですが、この時期のサンプドリアの成績が凄くてね、


2002-2003 セリエB 2位 昇格←ここでマロッタがGM就任
2003-2004 セリエA 8位
2004-2005 セリエA 5位
2005-2006 セリエA 14位→12位
2006-2007 セリエA 9位
2007-2008 セリエA 6位
2008-2009 セリエA 12位
2009-2010 セリエA 4位←ここでマロッタが退任
2010-2011 セリエA 18位(セリエB降格)


となってます。まあ、サンプドリアはマロッタと共にはじまり、マロッタが退任したら大騒ぎという感じです。GMとしては、イタリア屈指ですね。少ない予算でチーム作らせたら、凄い手腕を発揮します。


でもって、ユーヴェに来ても、それは変わってなくてですね、ユヴェントスの総年俸って、いまんとこ、ミランとインテルと比べると少なめなんですが、見事にスクデットを勝ち取ってます。まあ、ユーヴェは、マロッタがGMやってる限りは、インテルみたいな事にはならんでしょう。2010年に、彼がユーヴェのGMになったのは、ホント大きかったなと。モノの価値がわかってるGMさんなのです。


それから、もう一つ、セリエで、「金をかけずに勝つ」というマジックを成し遂げているのが、ウディネーゼです。年俸総額20億かそこらのチームで、セリエAに踏みとどまり、時々、上位に食い込むという奇跡のチームです。2010/11シーズンでは、勝ち点1取るのに3200万円というギャグみたいな投資効率を誇り、金さえあれば、今頃、セリエAを飲み込む怪物になりかねないってチームです。まあ、金がないんで、いかんともしがたいのですがね。ここは、世界各国にスカウト網を張り巡らせて、いい選手を安くとってくるので有名ですよね。


セリエAは戦術化が激しいリーグなんですが、少ない予算で何シーズンも残留に成功し、時々上位に食い込むチームってのは、戦術的に優れているチームより、少ない予算でいい選手を取ってくるのが上手いチームなのが実情なんです。まあ、これは、どこのリーグも変わらない事ですけどね。


予算の無いチームはね、戦術より、編成のほうが大事なんですよ。少ない予算でいい選手を取ってくるスカウティングが上手いチームじゃないと、中小クラブは生き残れません。


戦術ってのはね、基本的に、競争の激しい場所だと、一番最初に研究されて真似されて対策建てられてしまうので、長期でみれば、競争優位を生んではくれないモンなんです。戦術とか練習メニューは真似されやすいので、これはしょうがないんですけどね。


リーガ・エスパニョーラの順位と総年俸の相関性、2010/11シーズン

さて、次がリーガですが、ここは、実際に計算してみたら、激しく脱力しました。

順位 クラブ名 試合 得点 失点 勝ち点 年俸総額 年俸総額(単位億円) 年俸/勝ち点
1 レアル・マドリード 38 32 4 2 121 32 89 100 194915932 152.03442696 1.52
2 FCバルセロナ 38 28 7 3 114 29 85 91 217014221 169.27109238 1.86
3 バレンシアCF 38 17 10 11 59 44 15 61 76637764 59.77745592 0.98
4 マラガCF 38 17 7 14 54 53 1 58 17379601 13.55608878 0.23
5 アトレティコ・マドリード 38 15 11 12 53 46 7 56 64388286 50.22286308 0.9
6 レバンテUD 38 16 7 15 54 50 4 55 14448102 11.26951956 0.2
7 CAオサスナ 38 13 15 10 44 61 -17 54 21358065 16.6592907 0.31
8 RCDマヨルカ 38 14 10 14 42 46 -4 52 27849242 21.72240876 0.42
9 セビージャFC 38 13 11 14 48 47 1 50 63655412 49.65122136 0.99
10 アスレティック・ビルバオ 38 12 13 13 49 52 -3 49 47741558 37.23841524 0.76
11 ヘタフェCF 38 12 11 15 40 51 -11 47 25860011 20.17080858 0.43
12 レアル・ソシエダ 38 12 11 15 46 52 -6 47 26174100 20.415798 0.43
14 RCDエスパニョール 38 12 10 16 46 56 -10 46 30152562 23.51899836 0.51
16 レアル・サラゴサ 38 12 7 19 36 61 -25 43 41459774 32.33862372 0.75
18 ビジャレアルCF 38 9 14 15 39 53 -14 41 41040989 32.01197142 0.78
19 スポルティング・デ・ヒホン 38 10 7 21 42 69 -27 37 9516055 7.4225229 0.2
20 ラシン・サンタンデール 38 4 15 19 28 63 -35 27 20729886 16.16931108 0.6

何が脱力したって、相関係数の高さです。相関係数0.88と出ており、なんぞコレ・・・と。で、R2も高くて、



R2(決定係数)高杉だろ、リーガェ・・・・・


まあ、なんというか、リーガの2010/11シーズンに関しては、ほとんど年俸で説明ついちまうじゃねーかバーヤバーヤ。こんなの知りたくなかったわい。


まあ、アレですよ。リーガは始まる前から「レアルかバルサが優勝すんだろバーヤ」と誰もが思ってますが、今年もそーでしょーね。ここほど優勝チームの予想が簡単なリーグはありません。バルサかレアルのどっちかしか優勝の可能性がない訳だし。



なんですけどね。


これ、作ってみて気づいたんですよ。「あれ、マラガ凄いじゃん」と。


マラガなんですけどね、カタールの王族の一人、シェイク・アル=タニが2010年に買い取ってます。まあ、よくあるオイルマネーによるサッカークラブ買収でして、僕としては「どーせ金を湯水のように使って順位あげんだろ」とか思ってたんですが、ちょっと見る目がかわりました。


なんでかというと、思ってたより、選手の総年俸が低い。平均給与も6900万円くらいで、フツーです。ホントにフツー。


なのに、昨シーズンは驚くほど多くの勝ち点(53点)を挙げてるし、今年も今現在、勝ち点7取って3位につけてます。チームも、ベテランと若手を上手く融合させたチームになってて、バランスがいい。


去年のリーガですが、レバンテとマラガが偉い投資効率の良さでして、ちょっと信じられません。低予算で、あれほど勝てるとわ・・・・


もし、今年もマラガが低予算で勝ち続けたら、こりゃ、ちょっとしたセンセーションですよ。


まあ、リーガについては、とんでもなく、効率的な移籍市場をもってるようで、良い選手は、みんな金持ってるクラブに行って、金持ってるクラブが勝つ傾向がどこよりも強いようです。


アホらしいと思うかもしれませんが、そーゆーリーグみたいです。


年俸が高い選手は良い選手。それはいいとして・・・・


今までの奴は、データ的にちょっとずれがあるので、アレですが、手に入る他の年俸データで計算する限り、2009/10シーズンのセリエだと、年俸総額と順位の相関性は74%ほどでした。ガゼッタの年俸データでやったんですけどね。


色々思う事はありますが、海外のリーグや、Jリーグで数値を計算してみると、やっぱり、サッカーのリーグ戦で、一番大切なのは、「良い選手が取れるかどうか」のようです。そして、いい選手ほど年俸が高い。たとえ低くても、選手が結果をだせば、やがては年俸が高くなる。


従って、貧乏クラブは、運良く、凄くいい選手が取れたとしても、いずれは年俸を払えなくなり、金持ちクラブに選手を売らざるを得なくなる。そして、順位には総年俸の差が反映されていく。結果として、長い目でみれば、金持ちクラブに勝つのは不可能で、貧乏クラブにはチャンスがない。


まあ、納得いく説明かと思います。実際、今回調べたリーグ全てで、年俸と順位には相関性が0.67〜0.88程度見られたわけです。長い目でみると、相関性はさらに強くなる。結局、順位予想というので、一番、てっとり早いのは、総年俸の順に並べる。それだけです。つまんないですけどね。


むかーし、日経の「私の履歴書」で野村克也、元阪神監督が連載してて、ある時に球団社長に向かって


野村「野球で一番大切なのは何だと思いますか?」
社長「監督じゃないのか?」
野村「違います編成ですよ」


みたいなやりとりをしたってのを読んだ覚えがあるんですがね。その後、阪神の編成部にメスが入ることになるんですけどね。


野村さンによれば、スカウトがよくいうのが「10年にひとりの逸材」って奴です。野村さンにいわせれば、スカウトのいう「将来性」ほど当てにならないものはないそうですが。だから、即戦力として、大卒と社会人をほしがったそうですが、それが阪神だと全然叶わない、と。もっとも、最近は、切り替えてるみたいですけどね。


これ、野球に限らないんですけどね。バスケット、サッカー、アメフト、全部そうです。毎年のように「10年にひとりの逸材」ってのが現れます。まるでボジョレーヌーボーですけどね。


95年「ここ数年で一番出来が良い」
96年「10年に1度の逸品」
97年「1976年以来の品質」
98年「10年に1度の当たり年」
99年「品質は昨年より良い」
00年「出来は上々で申し分の無い仕上がり」
01年「ここ10年で最高」
02年「過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄え」「1995年以来の出来」
03年「100年に1度の出来」「近年にない良い出来」
04年「香りが強く中々の出来栄え」
05年「ここ数年で最高」
06年「昨年同様良い出来栄え」
07年「柔らかく果実味が豊かで上質な味わい」
08年「豊かな果実味と程よい酸味が調和した味」
09年「50年に1度の出来栄え」
10年「今年は天候が良かった為、昨年並みの仕上がり。爽やかでバランスが良い」 


まあ、サッカーも、こんな感じですけどね。タレントの所に、その年にデビューして騒がれた選手の名前でも入れて遊べますよ。毎年のよーに10年に一度のタレントが発生するのは、サッカーの世界じゃよくあることです。それどころか、今まで、何人の100年に一度のタレントがいたんだっていう。サッカーが生まれてから、まだ200年もたってないのに。


てか、スカウトという人々は、若手を破滅させる為に、「前途有望」とか「100年に1度の逸材」とか「天才」とか「最高傑作」とか呼んでるんじゃないかと思ってしまうほどで。「10年に1度の逸材」の破滅率、「マラドーナ二世」、「ペレ二世」の破滅率の高さといったら、ちょっと尋常じゃありません。


そういう傾向があるんで、基本的に、これもよくいわれるのが「選手の将来性なんてわからない」って奴です。


まあ、確かにその通りです。


しかし、少数ですが、「金をかけずに勝つ」というマジックを長期間に渡って成し遂げているクラブが、現実にはいくつかあるわけです。何故か、若手や聞いた事もない選手の発掘が上手いクラブもある。そして、金かけてるのに散々な成績のクラブもある。


市場と同じで、貧乏人に勝ち目があるのは、市場に馬鹿がいる場合です。ギャンブルでカモがいるケースです。辺りを見回して、カモがいなければ、カモは貴方ですけどね。


サッカーの選手市場が完全に効率的だとしたら、貧乏人には勝ち目がないんですよ。でも、実際のところ、効率的とは言えない場所があるんです。だから、そこを上手く利用したクラブが、年俸から予測されるより、良い成績を収める事が可能な余地が少しだけ残っているんです。


次は、サッカーの世界や他のスポーツの世界で、かつて存在した非効率の話でもしようかな、と思います。データの話を延々としてきましたが、本当にやりたかったので、こっちの話なんどす。



話が長くなりすぎたんで、今日はこの辺りで。