2013CL準々決勝2ndレグ、ユヴェントス対バイエルンのレビュー 「ユヴェントスの352守備の欠点について」
さて、みなさん、こんにちは。本日は今朝行われたCL準々決勝、ユベントス対バイエルンのレビューをしたいと思います。いきなり、何でCL?と思われるかもしれませんが、この試合はいわゆる352の良い教材なんで、ちとレビューをしようと思ったわけです。ちなみに、352は今期、磐田と大分が採用しています。
ええと、僕、352系はあまり好きではありません。わかりやすい欠点があるからです。もっとも、ユーヴェはこれで上手くやっているわけですけど、やっぱり352の欠点からは逃れる事は出来ないなあ・・・と試合を見て思ったわけです。バイエルン、非常によくユヴェントスを研究しており、ユーヴェがやられると嫌なことばっかりしてました。
1stレグ、2ndレグ共にバイエルンが2-0で勝っており、今回はバイエルンの完勝といっていい結果となりました。試合後、コンテ監督が、
敗北後は分析、落胆の後は攻撃だ。チャンピオンズリーグ(CL)でベスト8敗退が決まり、ユヴェントスのアントニオ・コンテ監督は、イタリアサッカー界全体に対して明確なメッセージを送っている。
「残念ながら、これが現在の状況だ。イタリアのチームはどこも、またあと何年もCLで成功する可能性がないと思う。計り知れないギャップをつくられてしまったんだ」
コンテ監督は記者会見で次のように説明している。
「2、3人の選手を獲得すれば、CLを制覇できるという声を聞くと、笑ってしまうよ。イタリアサッカーは止まっている。これは全員にとって明らかでなければいけない。国外では投資をし、プロジェクトを組んでいる。我々は審判のことや、どの選手がどのタレントとデートしたとか、そんなことばかりを話しているんだ」
「(マルチェッロ・)リッピ監督とともに私がCLを制覇したとき、基準となるチームは、若手に働きかけていたアヤックスだった。今、アヤックスは存在しない。レアル・マドリー、バイエルン、バルセロナ、パリ・サンジェルマンといったスーパーパワーたちがいる。彼らの売り上げは4億ユーロ(約520億円)以上だ」
「私は、全員が一緒になってイタリアサッカーを変えなければいけないと思う。全員というのは、我々、各クラブ、サポーター、メディア、体制のことだ。そうじゃなければ、どこへも行けない。最後にトロフィーを獲得したのは、3年前のインテルだ。最後の準決勝進出はいつまでさかのぼる? ラツィオがフェネルバフチェを倒せることを願っている。だが、これが今の状況だ。下らないことを考えるよりも、現実を見る方が良い」
と、深刻なコメント残してますが、二試合とも完敗だったので相当ショックだったんでしょう。ホームで2-0で負けた訳ですから言い訳できる立場じゃないです。
でもね、ユヴェントスの守備のやり方、CLだと無理だと思うんです。セリエAならともかく、CLクラスの相手に、あの守備のやり方は危険だろうと。
今期から磐田さんがユヴェントスタイプの352を取り入れてますけど、あれはあれで強みもあるんですけど、同時にユベントスの欠点もコピーしてしまっています。先日のナビスコで湘南とやった時思ったのは「ユーヴェと同じ欠点もってるなあ」という奴でして、本日は、ユヴェントスの守備のやり方と、その欠点のお話をしようと思ったわけです。ちなみにユーヴェスタイルの352やってる磐田の守備にも同じ欠点があります。
ユヴェントス対バイエルン、なぜユヴェントスの守備はバイエルンに通用しなかったのか?
さて、こっからが本題です。今回は教材として、2ndレグ、ユーヴェのホームで行われたユヴェントス対バイエルンの試合を使います。ちなみにスタメンですが、
こーなってました。バイエルンはトップ下ミュラーの4231、ユヴェントスはイタリアで流行っている352です。ちなみにピルロがアンカー。
で、ユヴェントスの352の特徴なんですが、これ変形型の352です。どういう事かというと、4231とやる場合、これ、図でやりますが、
デフォだと、この図にあるように、相手のSBが浮いてます。SBとマッチアップする選手がいないんですね。だから、ほっとくと、あそこのSBからフリーでボール供給されてしまってラインがズルズルと下がることになります。ただ、ユヴェントスも馬鹿じゃないですから、サイドにボールが出たら、これも図でやりますが、
こういう形でボールサイドに全体をスライドさせて守ってきます。WBが前にでて相手のSBに当たり、最終ラインは4バックになって守ります。これがユベントスの基本形となります。この形で相手とシステムをかみ合わせて、サイドでボールを奪いに行きます。
まあ、こうやって書くと、4231相手で何も問題ない、むしろ良い感じじゃね?と思うかもしれませんが、そりゃ相手が何も対策せず、馬鹿みたいにSBを使ってくれたらの話です。
現実にはサッカーは相手がいるスポーツですんで、相手チームが何も考えずにユーヴェの思惑通りのボール運びをするなんて事はありえません。むしろ逆です。こういった守備方法をしてくるとわかったら、まさにこの守備方法が逆に問題になるようなボール回しをしてきます。バイエルンは、まさにそれをやってきました。
えっと、まず、このユーヴェの守備なんですが、当たり前ですけど、やり方的にサイドチェンジされるとプレスが空転します。バイヤンは、実に上手くサイドチェンジを使ってました。どういう事かというと、
こーいうサイドチェンジです。
これ、試合で実際に決まっていて、キャプでやりますけど、試合後半50分の奴です。
流れとしてはこうなりました。ここね、本当に見事なプレス回避で、見て唸ってしまうほどでした。これは実に上手い。この日のバイエルン見てると、SBとボランチのパス交換からのサイドチェンジを多用してまして、これやられてユーヴェは右に左に揺さぶられ続けてました。
バイエルンの狙いは、こういうサイドチェンジを続けてながら、ユーヴェの守備ブロックにギャップをつくり、ギャップが出来たその瞬間を狙ってフィニッシュって形です。特にピルロの両脇が狙い目になってました。なんでかっていうと、これ、ユーヴェの守備方法と関係があるんですけど、
これなんですけど、ユーヴェってチームはピルロをアンカーにした3ボランチを採用してます。ただ、ピルロ自体が守備範囲が広い選手じゃないのと、年齢的な問題で、広い範囲をカバーできません。だから、ユーヴェの守備ではピルロの両脇のスペースってが泣き所になっていて、あそこでボールを受けられて前を向かれると一気に崩されます。これ、イタリア代表のウィークポイントでもあります。
この日、バイエルンが執拗に狙っていたが、ここのスペースでして、ピルロの両脇のスペースは徹底して狙われてました。ユーヴェの守備の関係上、バイエルンのSBにボールが出た際、WBとボランチ一枚で囲い込んでボール奪いたいんですけど、その際、ピルロの両脇にスペースができやすいんです。バイエルンの狙いは、まさにその瞬間で、ユーヴェの守備がボールを奪いにくる、その瞬間にできる隙を狙っていました。
ちと、前半40分に感心したパス回しがあったんで紹介しときますけど、
こいつです。ここ、本当に上手い。ピルロの両脇狙いのパス回しですけど、ラームのプレーに一々感心しました。で、このキャプの二枚目見て貰うとわかると思うんですけど、ボランチがサイドにアタックにでた瞬間、中央のカバーに残っている二人にはそれぞれ、シュバインタイガー、ハビマルティネスというマッチアップがいるんです。これが、ボールサイドでリベリーにピルロが当たりにでるのをためらってしまう理由になるんです。
これ、図で説明すると、
こうなるんです。ボールサイドで囲い込んでボールを取りたいユヴェントス。だけど、バイエルンはその動きを利用してセンターで数的有利を作ることができる。
勿論、コレを防ぐため、CBが前にでて潰すってことは可能です。ただ、キャプでやったように、CBが前に飛び出して交わされたら・・・・ゴールまで一気に行かれます。キャプでロッベンにシュートを打たれたようにね。
で、最後になりますが、これ、バイエルンの2点目が、まさにピルロの両脇のスペース問題と、センターでの数的不利問題がでた奴だったので、そのキャプ使って、ユーヴェの352の欠点の〆とさせて頂きます。
まあ、こういう流れだったんですけどね。えっとね、ここユヴェントスの悪いところがぜーんぶ出てます。ピルロの両脇のスペースを使われやすいって所、SBからのサイドチェンジに脆いって所、中央で数的不利に陥りやすいって所、全部でてしまっての失点でした。
これねえ、バイヤンも上手いですけど、ホームで綺麗に崩されるユーヴェもアレですわ。ぶっちゃけますけど、352って研究されると、こういう攻撃で崩されるんですよ。バイヤンのハインケス監督が試合前「ユーヴェを徹底的に研究した」とか言ってたそうですが、試合見てみると、「本当によく研究したんだあ・・・」と感心しきりです。ボール回しがユーヴェの352対策てんこもり。
今回は、バイヤンの守備のほうは扱いませんけど、CL準決勝からは、きっちりレビューもするので、その時にでもバイヤンの話はします。今日はユーヴェの守備の話と、その欠点の話だけに留めておきます。
最後になりますが、352をJリーグで使う際の注意点について!!!
えーと、ここまでユーヴェの話をしてきましたが、352を大分と磐田が使っているので、352というシステムの問題点を簡潔にまとめておきます。
1,352はデフォだと4231系とやった場合、相手のSBが浮いてしまう。
2、相手のSBにボールが出た時にボランチとWBで囲い込む事で、この問題の解決を図るのがユヴェントス流352だが、これはその代償として相手に中央での数的優位を与えてしまいやすく、バイタルエリアを特に使われやすい。(大分と磐田も同じ欠点を持っている)
3,バイタルをやられないようにCBが前にでて潰しにいく、FWを一枚下がらせて中盤の守備をヘルプさせる意識を強めに持たないと、今回のユーヴェ対バイヤンみたいな事になる。
って所になります。
今回、磐田さんの352の話もついでにしようかと思ったんですけど、これはリーグでの湘南対磐田戦まで持ち越しときます。ちなみに、磐田さんの352は何度か拝見しましたが、ユーヴェと全く同じ欠点を持っております。
ユーヴェをコピーするのは別にいいのですが、欠点までコピーしちまっているので、あそこは何とかしたほうがいいんじゃないかとは思います。
特にCLなんて大舞台で、バイヤンが完璧なまでのユーヴェの352殺しをやってのけた訳で、来週からこぞってJリーグのチームが、磐田相手に、あれやってきます。まず間違いなく、磐田の352相手にはバイヤンと同じ方法で来ると思います。
今日はそのあたりで。ではでは。