サッカーのマッチレポートなどを中心に。その他サッカーのうんちく系ブログ。

Jリーグのレギュレーションのお話  ~2ステージ制への移行とか諸々~

さて皆さん、こんにちは。お久しぶりでございます。また更新が滞っちまいましたが、私は元気です。


それでなんですが、本日はサッカーのうんちくとか戦術の話でなく、Jリーグのレギュレーションの話をしたいと思います。というか、プロスポーツのレギュレーションの話にもなるんで、ちょいと長くなりますが、興味のある人はおつきあいください。


えーっと、今、Jリーグはレギュレーション問題で揺れてまして、ちょいと前に「2015年からJ1は2ステージ制に」って告知が突然出まして、それに各クラブのサポから反発の声があがりまして、そのあたりで、Jリーグサイドとサポーターサイドで、溝が出来ちまったのが現状です。


ちなみに僕個人は「週末にサッカーが見られればレギュレーションは別に何でもいいかな」って思ってる人間です。


1996年に1ステージ制にして、そのあと1997年に2ステージ制に戻した時、こんな反対意見が一斉にでた覚えはあんまないので、日本では1ステージ制が根付いているんだなあ、と思った次第です。



それと、goal.comで「反対意見の多いJリーグの2ステージ制。問題点は?」ってアンケート取ってますが、それによると、



40.2%
本当に強いチームが決められない
8.5%
提案されている新制度が複雑すぎる
3.2%
ナビスコ杯や天皇杯と差別化できない
23.5%
ヨーロッパの主要リーグとシステムが異なる
13.2%
多くのサポーターが反対しており、観客減少になりかねない
5.2%
その他の問題点
6.1%
問題はない。新制度に賛成


となっており、「本当に強いチームが決められない」ってのと、「ヨーロッパの主要リーグとシステムが異なる」ってのが大きな問題になってるみたいです。もっともアンケートの項目以外で反対している人も多いでしょうけども。



実際問題として、2ステージ制はフェアとは言い難いシステムですし、ヨーロッパの主要リーグはこんな事やってません。だから、そういう理由で反対する人が多いのはしゃーないとは思います。ただ、先日の日経新聞のカズのコラム「サッカー人として」で、カズが言ってますが、ブラジルでもサッカーの人気が低迷した時期、2ステージ制を導入した事もあるわけで、そのあたり、世界のサッカーでも色々あるってのが現状です。



サポーターにこんだけ反対されているのに2ステージ制にする理由とは


さて、サポーターサイドから、かなり強烈な反発がでてる2ステージ制。ちなみに、Jリーグサイドでも1ステージ制のがフェアだし、そっちのがいいってのは認識してるみたいです。それでも、なんで2ステージ制に回帰するのかってーと、




「J1リーグ大会方式の変更について」の説明会(報告)




こっちで、川崎の社長さんが説明してくれてますけど、まずJリーグ全体として観客数が落ちてきているっていう大前提の元(Jリーグの観客動員については別項で詳しく触れます)


こういう状況の中で危機感を持たないといけない。今言ったようにさまざまな指標が右肩下がりになっており、このままだとお客さんの減少に歯止めがかからないんじゃないかという危機感があります。それから放映権料とかJリーグのスポンサーや協賛金。これは実は今年2013年度で契約が切れるんですね。来年2014年から新しい契約を結ばないといけない。その時に今現在の交渉で何と言われているかと言うと、2つ合わせて10数億のダウンが見込まれているんですね。10数億のダウンってどういう数字かと言いますと、JリーグはJ1とJ2の各クラブに配当金を出しています。それが10数億下がるというのは、J1でいうと1クラブあたり5千万くらい配分金が減るということ、J2では1クラブあたり2千万くらいが減るという数字に匹敵するもの。そのぐらい影響のある数字です。


黒字強調は僕ですけど、Jリーグ全体での観客動員が落ちてきている中で、放映権料とかスポンサーや協賛金の契約が今年で切れる事になった。新しい契約を結ばないといけないけど、交渉の席で、このままだと10数億のダウンを提示されている、と。


収入予測というのは、Jリーグの収入です。これは、2013年の予算ベースでトータル91億5,800万円の収入が見込まれています。中身は放映権料が48億、協賛金が38億1,400万、商品化権料が5億4,400万という内訳です。何もしないとここで10数億円下がってしまうと言われています。来年ですから、これは目前の危機です。ここはなんとかしないといけない。元に戻した上で上積みしていく必要がある。実施自体は15年以降で構わないから、何かちゃんとしっかりやるぞということによって、14年も13年ベースまで持ち上げようということ。なおかつ15年になったら、このベースから増やしていこうという交渉をしていて、高い感触を得ている。だからやろうではないかということです。


Jリーグの収入予測の話もでていますが、何もしないと、Jリーグに落ちる金ってのが10数億円減ります。




で、なんですけど、これをカバーしようとすると、ここにTV局の方の意向が入ってきてて、


これは理事会で決まる前の実行委員会のベースなので、実行委員会では2ステージ制プレーオフ制の2つを提案しています。2ステージ制というのはおわかりの通り、各ステージごとの年間1位と2位とがたすき掛けで勝ち上がり、最終的に34節での年間1位のチームとチャンピオンシップを争うという、こういうフォーマットです。プレーオフ制は単純で、34試合でのリーグ戦の1位から5位を並べて、もう一度戦おうということ。


実はテレビ局からの条件もありました。1位と1位が同じだとチャンピオンシップはありませんよというフォーマットははやめてくださいと。昔はどうなっていたかと言うと、1stステージの1位と2ndステージの1位だけのチャンピオンシップだったんですよね。これだと1位と1位が同じチームだとチャンピオンシップは行われなかった。それはダメです、必ずやるフォーマットにしてくださいというのが、テレビ局からの要望なんですね。

って事らしいんですね。まあ、この説明聞く限りは、2014年から新しいスポンサー契約、放映権の契約なんかをする際に、視聴率が取れるプレーオフやってくれないと放映権料やら協賛金やらで10億減らすよって交渉の席で言われてるようで、個人的には「まあ、しょうがねーか・・・」と納得した部分もあるんです。



ざっくりまとめますが、


1,13年でJリーグと現行のスポンサーとの契約が切れる。新契約を結び直す交渉の席では、動員数が落ちてきている今のJリーグでは、放映権料と協賛金を以前と比べて10億円ほど減額されてしまう。



2、Jリーグの収入の8割をしめる協賛金と放映権料が10億減らされると、J1とJ2への分配金を減らさないといけない。ちなみに分配金はJ1だと二億、J2だと1億もらえる。J1はともかく、J2の営業収入の少ない水戸、愛媛、北九州にとって、分配金は非常に重要。



3、CS等のプレーオフをやる事を条件に、Jリーグは地上波での露出を増やしてくれるようにTV局と交渉している。とりあえず、プレーオフを導入すれば、協賛金と放映権料を現状維持の額で再契約できる。




これ、なんともコメントしずらい問題なんですが、極論してしまうと、「10億円の穴埋めをどうするか」って問題のようです。Jリーグの場合、この穴埋めの方法には、大きく分けて3つしかありません。


1,入場料収入を大幅値上げ
2、プレーオフを導入する見返りに、地上波でのメディアでの露出を増やす契約を結び、10億円を確保する←今ココ
3,外資規制を撤廃し、オイルマネーなんかを呼び込む


くらいしか方法がないってのが現状です。他に10億の穴埋めが出来る方法があったら、是非ともJリーグフロントに教えて上げてくださいまし。



これねえ、こういう金金金、視聴率視聴率視聴率って話に反発する人もいるかもしれませんけど、プレーオフってドル箱なんす。視聴率取るにはもってこいのイベントだし、一般人も、こういうイベントだとスタにくるんです。



こないだ、「謎に包まれていた2ステージ制復活の意図 成長シナリオを描くために必要な決断」って記事があって、その中でCSの話もでてますが、

――Jリーグへの一般の人の関心度を示すバロメーターとして、地上波での視聴率というものがあると思います。最近の数字はどんな感じでしょうか?


 なかなか2桁は難しいですね。NHKで優勝が決まる試合をやっても1桁台ですから。開幕戦と、ナビスコカップの決勝も同じくらいです。



――そんなものですか?! では、最後に2桁行ったのは、いつですかね


 サントリーチャンピオンシップの04年の試合(浦和レッズ対横浜F・マリノス)が最後でしょうね。あの時で12%と15%かな。あれはすごかった。もちろん「だからチャンピオンシップを」っていうわけではないんですが、普段スタジアムに来る人以外が(Jリーグに)関心がないと、数字って取れないですよね。

ってのもあります。まあ、コンテンツとして見た場合、プレーオフって形式がやっぱり視聴率稼ぎやすいってのは厳然たる事実だったりします。だから、TV局がやって欲しいのは当然で。




アメリカンスポーツが特にそうなんですけど、NFLのスーパーボウルなんて、

例えば、第47回スーパーボウルの再販の観戦チケット代は平均3278ドルであり、特別室での観戦では31万5000ドルとマンションの購入金額に匹敵する価格水準である[7]。CM枠が世界一高額なことで知られており、テレビ局の広告収入は2億2000万ドルを超えたと試算されている[8]。経済誌『フォーブス』の2012年10月の発表によると、スーパーボウルのブランド価値は4億7000万ドルであり、夏季オリンピックFIFAワールドカップなどを凌ぎ、世界一のスポーツイベントであると推定されている[9]。


スーパーボウル

もう次元が違うんですけど、テレビ局の広告収入だけで2億2000万ドルとかね。プレーオフって、ドル箱コンテンツなんで、TV局がこれやりたがるのは当然なんです。アメリカじゃ、アメフト、野球、バスケのプレーオフはどれも人気があってドル箱コンテンツですけど、プレーオフで全米最強のチーム決めるってのは、フェアじゃないです。総当たりのリーグ戦ホーム&アウェー2回戦で優勝チーム決めた方がフェアに決まってます。でも、アメフトが、そうならないのは、結局、お金のせいなんです。スーパーボウルでこんだけ稼げるなら、そりゃ、プレーオフやりますよ。



ちなみに、欧州サッカーの場合、プレーオフはありません。その代わりに、チャンピオンズリーグってのがあって、そっちで稼いでいる訳です。


実は、Jリーグも欧州サッカーと同じ、1ステージ制+ACLで稼ごうって形にしたのが2005年からです。ただ、これ、今の所、上手くいってないんですよ。理由はってーと、ACLが視聴率取れないし、観客動員も悪いからなんです。



欧州CLって平日開催でも人がはいるし、視聴率も取れてます。サッカーにおけるWカップにならぶ最強のドル箱コンテンツですよね。一方、ACLも平日開催が基本ですけど、入るお客さんなんて7~8000人くらいで視聴率も取れない。だからスポンサーも増えない。悪循環になっちゃってるんです。プレーオフやらないなら、ACLで数字を取りたい。でも、現状それができない。それが、現在のJリーグの状況になってます。欧州の真似をそのままやっても、現状、ジリ貧だってのがあります。



ここまで金金金、視聴率視聴率視聴率、スポンサースポンサースポンサーな話をしてきました。勿論、Jリーグのサポーターが入場料収入の大幅値上げを飲んでくれて、それで10億円の減少を穴埋め出来るってなら話は別なんですが・・・それが可能なら誰も苦労しませんよね・・・という。Jリーグのチケットの単価を平均1500円ほど値上げして、なおかつ入場者数が減らなければどこのクラブも問題ないんですけど、そう上手くもいかんでしょう、という。まあ、僕は湘南のチケットが1500円くらい値上げされても文句はないんですけど。プレミアみたいに、スタジアムを改築、増築して、チケット単価を上げるってのは、Jリーグのチームもやったほうがいいじゃねぇの?ってのはあるわけです。




で、こっからは、Jリーグのレギュレーションの変遷とか、1ステージ制の興行上の問題点の話とかにうつりたいと思います。1ステージ制は、サポーターの多くが賛成しているシステムなんですが、実はこれ、興行面では、問題も結構あるんです。


Jリーグのレギュレーションと観客動員の変遷


さて、こっからはJリーグのレギュレーションと観客動員の変遷の話をしましょう。


あらかじめ言っときますが、観客動員を増やす上で一番てっとりばやいのは、試合数増やすことです。世界で一番、観客動員が多いスポーツは?答えはMLB。年間で7,500万人以上の動員を誇り、世界中のプロスポーツの中でも最大です。一試合あたりの平均観客動員でなら、MLBより多いスポーツはありますが、なんせ野球は試合数が多い。だから、動員数で他のスポーツの追随を許さないんです。


ただ、サッカーの場合、基本、週1か週2しか試合はできませんので、増やせる試合数なんてたかがしれてます。また、週2で試合やると、チームのパフォーマンスがどんどん下がり、試合の質が低くなってしまいます。なんで、あんまり試合数は増やせないのがサッカーってスポーツの現状です。



さて、Jリーグの観客動員の変遷なんですが、こちらのサイトからキャプした奴をちょいと。



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これです。



コレ見ると、まずJリーグ発足して93~95年の時期、観客動員は右肩上がりだってのがわかります。この時期、観客動員が多かった理由なんですが、まず発足当初のJリーグバブル。これが一番大きい。


ただ、レギュレーションも見逃せないんです。93年は2ステージ制で10クラブが各ステージごとにホーム&アウェー2回戦で、各18試合×2ステージ=36試合を戦う形式でした。年間36試合ってのは、Jリーグ最小の数字でして、観客動員も少ないほうです。ただし、Jリーグは、最初のオリジナル10と呼ばれるチームを選ぶ際、動員が見込める大都市のクラブばっかりを選んだんです。そして、そういったクラブ同士が年間4回戦う形式を取りました。


これは、集客という面では非常に大きいんです。例えばですけど、当時は人気絶頂だったヴェルディとホームで2試合、確実に試合ができるってのはホントに集客面だと大きいわけですよ。また、当時からアウェー動員が多かった浦和とホームで二試合できるってのも大きい。


その後、Jリーグはチームを増やし、95年には14チームによる4回総当りの2シーズン制をやり、年間52試合という超過酷なスケジュールをやるんですが、J1は年間610万人といういまだに破られていない最大の観客動員を記録してます。こいつは、年間の試合数が多かった事に加え、2シーズン制で4回総当たりなんで、人気チーム同士の対戦が年間4回できたってのが大きいです。


さて、問題は、ここからです。いわゆるJリーグの暗黒時代の始まりですが、96年、Jリーグは1ステージ制に移行。計16クラブによるホーム&アウェーでの2回戦、30試合となりました。この結果、何がおこったかは皆さん、ご存じの通り。観客動員の著しい減少、平均観客数も前年度より3000人低下しました。


なんで、こんな事が起きたのか。原因は、いわゆるバブルの崩壊、それから1ステージ制にした事で、ドル箱コンテンツだった試合の減少です。簡単にいえば、95年だったら、首都圏のクラブは浦和みたいなアウェー動員力のあるクラブとホームで2試合できてた訳です。ところが96年からは、一試合しかできなくなったし、それほど動員力がない新規クラブと試合をすることになった。これでは、動員が減るのは当たり前です。


動員数の減少から、Jリーグも慌てたのか、97年から2ステージ制に戻してます。ただ、動員数は最盛期の95年のレベルに戻ることはありませんでした。



97年のレギュレーションですが、これ95年までのレギュレーションとは別モノです。2ステージ制ですが、チーム数が増えたんで、95年シーズンまでのステージごとのホーム&アウェー4回総当りではありません。1シーズンを通してのホーム&アウェー2回戦でして、そのため、ステージごとに見た場合、前期はホームでしか戦わない、後期はアウェーでしか戦わないなんて変則方式です。これ、結局、動員力のあるクラブとホームで一試合しか出来ないわけで、集客面では良いことはあんまないんです。


また、制度上、どう考えてもフェアとは言えません。サッカーってスポーツはホームアドバンテージが結構な割合で存在するスポーツでして、基本ホームチーム有利なスポーツです。つまり、この形式だと日程が信じられない程、優勝争いに影響もってしまうんです。例えば、日程に恵まれて、ホームで有力チームと前期で全試合できちゃうと、前期優勝争いでは超有利になります。また、日程で、最初の7~8試合で難しいアウェーゲームばっかり組まれちゃうと取り返すのが非常に難しい。アウェーで負けた相手にホームでリベンジってのが出来ないからです。


こういう事情があったので、Jリーグってのは世界でも非常に珍しい「ホームアドバンテージが少ないプロサッカー」ってのが見られるリーグになったのかもしれませんけども。


ただねえ、結局、それは、フェアネスを考えると、確かにそうするしかないのかもしれませんけど、ホームで勝てないと興行が成り立たないってのもプロスポーツの一面ではあるわけです。


バスケなんかもホームアドバンテージがでっかいスポーツです。NBAなんて、日程でホームチームが超有利になるような組み方してます。



オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く

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こっちの本で、NBAの日程の偏りの話があるんです。そっから引用しますが、


NBAでは毎シーズン、二日続けて試合を行うことが各チームそれぞれ10回ほどある。平均ではそのうち7回、14試合ほどは遠征中に起こる。それだけでも、NBAでホームチームが有利な原因になりうる。僕たちの計算によると、そういう14試合に期待できる勝率は、連戦でない、普段の遠征試合の勝率に比べて、たったの36%だ。ということは、日程が厳しいために、毎シーズン、遠征で1,2試合は余分に負けているという事である。逆にいうと、NBAのチームは、遠征中に連戦を強いられる日程と引き替えに、地元の試合では1,2試合分のゲタを履いているようなものである。

って所ですね。もひとつ引用しときますが、


あるNBAチームのオーナーはこういっている。「(ファンが)NBAでは試合の日程がどうやって決まるか知ってたらどうなるだろうと思うな。まず、チームが自分達のアリーナを使えない(たとえば、サーカスが来てショーをするとか、NHLのチームが使うとかの)日を提出する。次にリーグが『ドル箱の全国中継試合』を選んで、あとは誰かがソフトウェアにちょっと手を借りながら、残りの試合を組むんだ。どこのチームもこの人には頭が上がらない。ケツだってなめるよ。この人の手にかかったら、どこのチームだって黒星が山ほどつく。コービーなんかよりずっとな!」



お金のインセンティブはこんなところでも働いているようだ。フォーブス誌がNBAでもっとも価値が高いと推定したチームは、日程の偏りがやや強い。大きな顧客層を持つ大都市のチームもそうだ。そうそう、どのチームも地元より遠征中に連戦することが多いが、もっとも大都市のチームは連戦が少ない。


って奴です。これもねえ・・・・「きたねえ・・・・」と思う人もいるかもしれませんが、結局、プロスポーツは興行ですから、ホームチームには勝ってもらわないと困るし、大都市の人気チームには出来るだけ、プレーオフに残ってもらわんと、リーグとしてはドル箱のプレーオフが盛り上がらないって大人の事情があるわけですよ。


2ステージ制だったり、プレーオフで優勝チーム決めるのに「フェアじゃないから」って思う人は沢山いると思います。それに、こういった大人の事情が絡むため、プレーオフ自体を嫌う人もいると思うんです。結局、プレーオフやるなら、人気チームにプレーオフに残ってもらわないと困るわけです。そうなったら、日程でどのチームが優遇されるかなんて、最初からわかりきってるでしょ、みたいな。



ちと本題から反れたんで、話を元に戻しますが、形式的には問題が多い97年から2シーズン制ですが、これは2004年まで続きました。さて、観客動員なんですが、Jリーグの観客動員が上昇に転じるのは2000年あたりからになります。この観客動員の上昇の原因になったのが、浦和レッズアルビレックス新潟、FC東京とヴェルディになります。これはレギュレーションとは無関係で、観客動員を上昇させた要因は、新スタジアムの完成です。浦和は新スタ完成以降、観客動員が平均2万人から4万人越えに増えていますし、新潟に至っては、初期は平均4000人とかだったのに、新スタジアムが出来てからは平均で4万人を超える観客を集める事に成功してます。味スタが出来て以来、FC東京とヴェルディは飛躍的に観客数を増やしました。2001年のJ1の観客動員の増加は、新スタ効果で、ほぼ説明できます。


新スタ建てると動員が増加するってのが、サッカーの興行では経験的にわかってまして、最近はプレミアとかブンデスがスタジアムの改築、増築、新築のラッシュになってます。Jリーグだと、初期にもっとも新スタ完成の恩恵をうけたのが鹿島でして、1993年にカシマスタジアムができた事は、鹿島ってクラブを強烈に後押しするモノでした。また、川崎さんも、等々力の改修に乗り出してますが、そっちは頑張って欲しい所です。湘南もスタなんとかしたい所です。


J1の観客動員は2005年あたりから横ばいになります。これは浦和と新潟、FC東京、ベルディの動員の増加がその時期から横ばいになったのが原因です。2009年に、Jリーグは最多の観客動員を記録しますが、こいつはJ2が18チームによる総当たり3回戦、全51節という記録的な試合数をやった事と関係してます。2010年、J2の観客動員が前年度に比べておちてますが、これは2010年から、J2も19チームによる38節、36試合のホーム&アウェーの2回戦に切り替えた為で試合数減らしたんですね。そうなっちゃうと、やっぱり動員数自体は落ちます。


近年の流れですが、J1は現行のACLが始まったのが2003年からで、2005年から2013年までJ1では、リーグ戦+ACL+ナビスコ+天皇杯ってが基本スケジュールになりました。J2もチーム数が増えたんで、1ステージ、総当たりのホーム&アウェーの2回戦でリーグ戦って形になってます。



基本的に、2シーズン制で4回戦総当りだと、水曜開催が必要になってきます。ただ、日本だと平日開催は動員がどうしたって減るので、あんま好ましくないわけです。だから、2004年移行、1シーズン制にしてドル箱のリーグ戦を週末開催にし、平日水曜に行われるのは重要度が低いカップ戦って形にしてたわけです。


ただ、試合数を減らすと、単純に観客動員が減るので、それをカップ戦で補う形にしてたんですが、ACLやナビスコは動員では苦戦してまして、特にACLなんかは、人気チームの試合であっても1万割ることは珍しくないって状況でした。唯一の例外といっていいのが浦和さんでして、ここは2008年10月22日、平日開催のACLの対ガンバ戦で5万人入ってました。


色々あるんですが、浦和さんには、やっぱり強いチームであって欲しい訳です。日本じゃ、浦和さん以外、平日に5万人集められるクラブなんて存在しないですから・・・・浦和が弱いとダイレクトに観客動員に響くんですわ。平日でも3万人から集められる唯一のチームな訳だし。


これは近年の観客動員に関してですが、J2はともかく、J1が2010年から減少傾向にあるんですが、浦和、新潟の動員が落ちてきてるのが問題になってます。今年のACLもそうなんですけど、浦和さん、ホームの試合で2万人ちょいしか集められてなくて、「うーむ・・・」と。以前だったら3万人は入ってたはずだし、動員で苦戦してるなあ・・・と。ここ数年ほど顕著なのが、浦和の動員力の低下でして、浦和さんが上昇に転じないと厳しいってのはあります。フィンケゼリコ・ペトロビッチ時代の動員の低下理由は・・・やっぱり弱かったからでしょうね。


一方で、2001年あたりからのJリーグの観客動員増加のもう一つの主因となった新潟さんなんですが、ここは一時期、無料チケットで集客してたチームでして、実は客単価が非常に低いチームでもあります。もともと、無料チケットで人集めてた時期があるんで、低迷しちまうのはしょうがない部分もあります。入場者数は相変わらずトップクラスですが、客単価を上げない事には・・・となってます。



J1は2004年を境にして動員数を一気に増やしてますが、2004~2009年のJリーグの観客動員って、浦和、新潟を除いて計算すると、ほとんどゼロか減少に近い数字になるんです。この時期のJリーグの観客動員は、この2クラブの動員数の増加によってもたらされた数字でして、この2クラブの動員が落ち始めた2010年あたりから、観客動員が下降し始めたのは当然なんです。


Jリーグの動員の減少については色々言われてますが、2001年あたりからの大幅な動員数の増加は、浦和と新潟、FC東京、ヴェルディなどの新スタ建設組によってもたらされたモノでして、2010年以降の動員の低下も、これらのクラブの動員の低下分が主因だったりします(FC東京は落ちてませんが)。



新潟と浦和のホームゲームの平均観客動員ですが、2009年と比較すると、2012年では浦和が8000人、新潟も8000人減っています。単純計算すると、ホームゲーム17試合*2の34試合で8000人の動員が減った訳ですから、27万人の動員がJ1から失われた計算で、これで大体、2012年度のJ1の観客動員の低下を説明できちゃう位の数字なんですね。




とまあ、Jリーグのレギュレーションと動員の変遷については、このあたりで終わりにして、1ステージ制の問題点について、ちょいとお話したいと思います。僕は別に1ステージ制に反対って訳ではないのですが、1ステージ制には1ステージ制で、結構問題もあるんです。



Jリーグにおける1ステージ制の興行上の問題点(2004~2013)

ここからは、今回の騒ぎだと、問題にされてませんが、2004年から2013年までのJリーグのレギュレーションにおける興行上の問題点についてまとめていきます。あくまで興行面の、です



まず最初の問題ですが、1ステージ制だと、興行上、ドル箱コンテンツであるプレーオフが無いって事です。Jリーグとしては、ACLがドル箱になってくれる事を期待していた節があります。しかし、残念ですが、平日開催のACLで万単位の客を集められるのは浦和さんくらいのモンでして、平日開催のACLじゃ、全盛期のガンバさんや鹿島さんでも、一万切るのが現状です。これだと、クラブのほうでも力を入れる気になれないですよ、やっぱり。現行の平日開催のACLだと、視聴率取れないし、動員力も弱いし、スポンサーも集めにくい。


欧州は、総当たりホーム&アウェー2回戦のリーグ戦+CLで稼いでますが、現状、日本で、それやって稼げそうなのは浦和さんくらいってのがあります。浦和サポーターって人達は、平日でもACLの試合を見に来るんで、浦和さんだけは例外的にACLに力を入れてもいいんではないかと・・・!!浦和さんはACLで人呼べるチームなんだから、ACLで勝ってくれないと困ります。



で、次の問題なんですが、1ステージ制で総当たりのホーム&アウェーの2回戦だと、ドル箱の試合を増やせないってのがあります。プロスポーツってのは興行ですから、ドル箱の試合は多ければ多いほどいいわけです。ところが、総当たりの2回戦だと、集客が見込める首都圏クラブ同士の対戦が年二回位しかできない。J1のレギュレーションの話をしたのは、ここを問題にしたかったからで、集客が見込める試合は出来るだけ増やした方が良いわけです。ここが、時々、話題になるJプレミア構想になるんです。簡単にいえば、Jリーグのチームのうち、集客力のある8~10チームくらいでプレミアリーグ作って、そこで総当たりの4回戦でリーグ戦やるとかの構想です。これは、興行面でメリットがとても多い。ただ、プレミアに入れなかったクラブにはデメリットしかないので、クラブから同意を得るのは難しいです。




次にこれ、1ステージ制の問題って訳じゃないですが、J1は降格制度があり、毎年3チームが降格します。J1の場合、比較的実力差が小さいリーグなので、人気チームの降格ってのが、割と頻繁に起こるわけです。これね、人気チームが降格しちゃうと、J1の観客動員におもいっきり影響がでます。今年でいえば、ガンバ大阪がJ1にいないことで、動員が見込めるガンバ対浦和みたいなドル箱カードが出来なくなってますし、J1の他チームにとってもガンバ戦が出来ないってのは集客面からみるとマイナスです。去年、浦和さんが、ガンバさんと埼スタでやったときは46000人入ってるわけです。こういうカードが出来ないとか金をドブに捨ててるようなモンですよ。千葉みたいに人気チームなのにJ2にはまって抜け出せないってケースもあります。



また、集客が見込めるダービー戦が確実にできないってのも大きな問題です。簡単にいえば、柏対千葉みたいな人呼べるダービーが、ディビジョンが分かれてしまっていることで開催できないんです。J2であっても、千葉ダービーは18000人入ったわけで、これだけ集客力があるカードが出来ないってのは問題な訳です。別に千葉ダービーじゃなくても、九州ダービーとか神奈川ダービーとかは、毎年やったほうが良いに決まってるんです。この手のダービー戦は集客力があるコンテンツなんだから、やったほうがいいに決まってます。ただ、JリーグはJ1とJ2で天皇杯以外では試合やりません。せっかく、人呼べるコンテンツがあるのに、現行のレギュレーションだと試合組めないんですね。今年は、大阪ダービーも出来ません。



今年、J1は動員で苦戦してますけど、ガンバみたいなアウェーでも動員力がある人気チームが不人気なJ2に落ちて、さほど集客力がない湘南や大分がJ1にいる以上、今年のJ1の観客動員が落ちるのは、ある意味では当然でした。興行面から言えば、千葉、ガンバあたりはJ1にいて貰わないと困るんです。千葉さんがJ2にいつまでもいると、興行的に困るんですよ。



2004~2013年のJリーグのレギュレーションでは、機会損失といっていいのが、「ホーム&アウェー2試合ではドル箱の試合を2試合しかできない」、「所属ディビジョンの違いから大阪ダービー千葉ダービーのように集客力のあるカードが出来ない」って所です。



ここはアメリカンスポーツみたいな形が本当は好ましいのですが、J1とJ2という枠を撤廃し、全国を2ブロックに分け、さらに2ブロックの中で地区リーグを二つほど作り、地区優勝したチーム+勝率上位2チームでプレーオフへって形にしたほうが、確実にダービーマッチを確保できるので興行上は好ましいんです。もしくはナビスコの方式を改めて、リーグ戦と平行する形で、ナビスコを地区カップシステムにしてダービー戦を確保するとか。


アメリカンスポーツの話を挟んだのは、これ、結局なんですが、ACLがコンテンツとして浦和以外、人を呼べない状態だからで、それなら、アメリカンスポーツ形式にシステム組み替えて、ダービーマッチプレーオフを確保したほうがいいじゃないかなあ、などと思ってるからです。


ここは、単純に僕が神奈川に住んでで、常日頃から「毎年、神奈川ダービーやってくれたらなあ」と思ってるってのもあります。簡単にいえば、湘南対横浜マリノス、湘南対川崎、湘南対横浜FCの試合は、年間2試合、必ず確保して欲しい訳です。理由は、スタジアムに行きやすいからです。ナビスコなんて平日開催なんだから、遠いアウェーまで出かけるとか、普通無理です。なんで、ナビスコは地区カップシステムに組み替えて、ダービー戦を増やしてほしいってのがあるんです。



最後のほうは僕の個人的な要望ですんで、聞き流してくれて結構です。



最後に。2ステージ制になったらJリーグはどうなるの?


最後になりますが、これ、究極の問いですが「どうすれば観客が増えるのか?」「どうやったらスポンサーが増えるのか?」という問題に行き着きます。Jリーグは2ステージ制になったら、この問題を解決できるの?


ここまで色々書いてきましたが、動員を増やす方法として、確実に効果が見込めるのは、「試合数を増やす」、「新スタを建てる」、「人気チーム同士の対戦を増やす」って所になります。無論、スター選手を呼んでくるってのも手です。



また、簡単に視聴率を取る方法としては、現状、「プレーオフを開催する」って位しかありません。優勝が決まる試合でも、リーグ戦だとNHKで視聴率一桁、開幕戦でも一桁って現状ですんで、リーグ戦が地上波向けコンテンツとして弱いってのは、どうにもならない状況です。視聴率取れれば、露出が増えてスポンサー探しやすくなるわけで、これはこれでしょうがない部分だなあ、と僕は割切ってます。



2ステージ制をやるメリットとしては、一番大きいのは、結局プレーオフが出来るって所です。それによって、今よりスケジュールがきつくなりますが、地上波で視聴率が取れるコンテンツを持てるので、今回の契約更新で、そっちをやらざるを得なくなったみたいな感じです。



今回、長々と書いてきましたが、Jリーグで1ステージ制総当たりのホーム&アウェーの2回戦で優勝を決め、プレーオフに相当するのがACLという2004~2013までの形式は、少なくとも、興行面だと、上手くいかなかったと言わざるをえません。2004年のレギュレーションの変更によって、動員の増加、メディアへの露出の増加には結びついてません。動員の増加をもたらしたのは、現実的には新スタのおかげで飛躍的に動員が伸びたクラブですから。



欧州サッカーと同じやり方を取る場合、少なくとも、ACLがドル箱コンテンツにならないと厳しいってのが現状です。またやる前からいうのは何ですが、2ステージ制にしても観客動員数が伸びることはないと断言できます。



なんでかというと、結局、J1を18チームで回すなら、1stステージ17節、2ndステージ17節のホーム&アウェーで回すしかないからで、これだと、結局1ステージ制と同じで、ドル箱カードを増やせる訳でもないし、試合数が劇的に増えるわけでもないからです。これは、1997年に2シーズン制に戻した時に、1995年の水準に動員数が戻らなかった事を考えれば明らかです。


2ステージ制にしてプレーオフを導入すれば、目前の危機(10億円のjリーグの減収)は回避できますが、根本的に動員数を増やす事には結びつかないってのが僕の率直な結論ではあります。



最後はネガティブな事言っちまいましたが、本気でJリーグが観客動員を増やそうとするなら、「新スタ建てるかスタを増築、改築しる!!」という超金がかかる話になるし、スター選手取るのにも金かかるしで、何するにも金金金な話になっちゃうんです。


もう一つが、ドル箱試合を増やす方法で、これにはアメリカンスポーツ形式の地区制+ポストシーズンにするか、Jプレミア構想なんて、現行のサッカーのカレンダーをぶち壊しかねないアレな制度変更になっちまうので、アレですしね。



まあ、そんな訳ですので、「狼人間を撃つ銀の銃弾はない」というアレで〆ときます。どこかに、もの凄い一発逆転の発想が転がってたら、是非ともJリーグフロントまでお知らせ下さい。



今日はこのあたりで。ではでは。