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フォルランがJリーグに来たのでセレッソのお話

さて、皆さん、こんにちは。本日は、かなーり周回遅れな感じもしますが、


】ディエゴ フォルラン選手と合意のお知らせ


フォルランセレッソに来るのが決定したので、フォルランセレッソの話でもしようかと思います。



セレッソの話は散々、うちのブログで扱ってきましたんで、「またかよ」的なアレもありますが、セレッソの試合はよく見るので、話をしやすいネタなんです。マンUにマタが移籍したんで、そっちの話もしたい所ですが、それは次にとっときます。


最初にセレッソ前監督クルピの特徴

さて、まずは、セレッソの話になると、このレヴィー・クルピって監督の話になります。もう6年くらいセレッソでずーっと監督やってるので、セレッソというとクルピのサッカーです。もっとも、去年は再登板でしたけれどもね。


クルピのサッカーの下で、香川、乾、清武なんかが海外に羽ばたいていったので、若手育成タイプの監督って感じですが、戦術面でも、特徴のあるサッカーをやるヒトです。


まず、フォーメーションにはあまりこだわりません。一つのフォメにこだわるタイプでなく、442,4231、3421と結構色々変えてきます。この辺りは柔軟です。ただし、4バックをやる際、両SBをあげるのが好きなヒトでして、442だろうが、4231だろうが両SB上げてきます。


その結果ですけど、CBには対人強くてSBの裏をカバーできる選手を使ってます。両SBを上げる結果として、最終ラインでの数的同数って問題が頻繁におこるからです。茂庭、上本、藤本、山下と、そういう系統の選手です。ただ、茂庭と藤本は足下がさっぱりな選手でして、この二人が組んでた頃はCBからビルドアップできないって問題を抱えていました。山下が茂庭に代わってスタメン取るようになると、ここが相当改善されました。


攻撃面では、レフティの使い方が非常に特徴的です。左SB、左ボランチにはレフティを使い、右のWGにもレフティを好みます。右サイドにレフティを置く、つまり逆足のWGを使うタイプの監督です。


ちょっと、図で説明しますけど、クルピが左サイドの底にレフティを置き、右サイドの高い位置にレフティを置く理由は、


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こーなります。


サッカーの世界では、レフティってのは、右サイドの高い位置からカットインする時、あるいは左サイドの底から縦パスを入れる時に、DFから遠い方の足でボールを持てるという利点があります。逆に、右利きの選手は左サイドの底から縦パスを入れるのは難しいし、右利きのドリブラーは右サイドで中にカットインするのは難しいです。これは利き足の関係で、DFに近い方の足でボールを持つことになるので、どーしても苦しい。


レフティボランチ、左SBを持っていないチームってのは、パスの展開が右サイドに偏りがちになりやすいです。又、レフティのWG、もしくはトップ下を持っていないチームは、右サイドの高い位置で攻撃に変化をつけられないって問題を抱えがちになります。


サッカーってのは、右利きだけだと良いチームは作れません。


無論、両足をまった同じ精度で使えるボランチと左SB、両足を同じ精度で使える右WG、もしくはトップ下をもてれば別ですが、こいつは、レフティより希少価値が高い選手です。


幾つかのポジションでは、右利きよりレフティの方が好ましく、クルピの場合、左ボランチを左SB、右WG、もしくはトップ下にレフティを置くことを好みます。



クルピって監督の選手起用の特徴としてはこんな所になります。


クルピのサッカーの場合、J2で3421やってた頃だと、タッチライン際にWBを張らせてワントップと2シャドーは流動的にポジションを変えながら、中央突破を狙い、相手が中央固めてくるなら、WBからクロスを上げるってのが基本でした。


442だと、両サイドのSHは中に入ってきて、SBに高い位置を取らせますし、4231でも、両WGが中に入ってきて、両SBは高い位置取らせます。攻撃方法は、いずれの場合でも中央突破がメインで、相手が中固めてくるならライン際に張ってるSBからのクロスを入れていくって形が基本です。



2013セレッソの守備


ここまで、クルピって監督の選手起用の特徴と、サッカーの色は大体説明したので、2013年のセレッソの守備の話に移ります。




まず、失点31はリーグ最少クラスでした。これより下なのはマリノスと広島のみでして、クルピのチームとしては、珍しく失点が少ないチームに仕上がってます。


失点が減った原因としては、


1,キム・ジンヒョンがゴール前で生き神だった。


2,CBの山下の成長。今年に限っていえば茂庭より良かった。


3、トップ下のシンプリシオが真面目にボランチが明けたスペースを埋めてるのでバイタルにスペースがほとんどない。


の三つがあげられます。1と2は、カウンターを食らった時に顕著でして、セレッソは両SB上げてくるので、カウンターの時、両SBの裏には広大なスペースがあります。そこを使われてしまうと、CBとGK、それから残っているボランチ一枚で何とかしないとケースが多くなるんですけど、


2013・J1 GKのセーブランキング


こっちで今年のJ1のGKのセーブ率見られますが、キム・ジンヒョンのセーブ数、セーブ率は圧巻の一言でして、セーブ数136、セーブ率81%ってのは、群を抜いた数字です。試合見てても、ビッグセーブでチームを救った回数がとにかく多い。


セレッソは被シュート本数がとにかく多いチームで、被シュート数416ってのは、大分456、湘南456に次ぐ数字です。普通、こんだけ打たれたら、失点は50を軽く超えてもおかしくないんです。


ただ、チームとしても助かっていたのは、トップ下のシンプリシオが素晴らしいバランサーだったってのがあります。セレッソは、守備の局面では441でブロック作ります。図でやりますが、


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こうね。44じゃなく、44「1」です。トップ下のシンプリシオはきっちり戻ってきます。前には柿谷一人残し、トップ下のシンプリシオボランチのエリアまで下がってきます。で、サイドにボール出されたら、


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こんな感じでズレます。サイドにボールが出たら、セレッソはサイドに3人出してきます。この際、中央が1ボラにならないようにシンプリシオがバランスを取ります。なんで、トップ下をここまで下がらせるかってーと、サイドにボール出された後、セレッソボランチを一人、サイドに出します。これは、SBの酒本と丸橋が元々MFで守備力はあんまないせいもあります。その際、中央を1ボランチにされて、その両脇を使われるってのを避けたいからです。


この守備の形は、遠藤をトップ下にしてたガンバ大阪、俊輔トップ下のマリノスあたりでも採用されており、トップ下が守備の時にバランサーとなり、ボランチがサイドに釣り出された時、トップ下がバイタルのスペースを埋める役割を担います。この仕事は、J1の場合、サイドに一回ボールだした後、中のギャップに当ててくるチームに対抗する為に、非常に重要になっています。


2013年のセレッソは9人でしっかりブロック作るチームになってまして、人数かけて守るってのが基本原則になってました。



2013セレッソの攻撃

こっからは、セレッソの攻撃の話です。


まず、2013のセレッソはロングカウンターが非常に強力でした。原因は、低い位置でボール奪った後、柿谷が裏抜け一発でもっていけるようになった事です。柿谷のFWとしての才能の開花は、やはり、これが一番大きい。自分の絶対的な形を作れた事が、得点量産のきっかけになってます。


勿論、セレッソってチームが、バイタルでのコンビネーションからの中央突破がチームとしての武器なのは変わってません。


どういう事かというと、



Cerezo Osaka vs Yokohama F Marinos: J.League ...


これ、15節のセレッソマリノスの試合の動画ですけど、セレッソの得点は、二点ともセレッソらしい取り方なんで紹介しときます。キャプで解説もいれときますが、一点目は、


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こういう形でした。


これ、セレッソの得意の形でして、「何でセレッソは両SBあげるの?」と言われると、相手のSHとボランチの間にスペース作りたいからです。相手のSHが高い位置を取る両SBに釣られて、SHとボランチの間にギャップ作ったら、その瞬間を狙って、こういう縦パス通して、そこからコンビネーションで一気に中央抜いてきます。


ここがポイントでして、SHとボランチの間にスペースが出来る守り方すると、セレッソの中央突破を食らってしまうので、そーゆーやり方はセレッソ相手にはアウトです。SHとボランチの間のスペース使った崩しは、Jリーグでもトップレベルに強力なチームです。



セレッソ相手に、「これはアカン・・・・」って守備の例としては、もう一つ、14節の磐田戦のキャプでやっときますが、


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コレですね。これねえ、セレッソ相手にはダメなんですよ、このやり方。


図でも説明しときますが、

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こうなっちゃうんです。セレッソは両SB上げて、相手のSHとボランチの間のギャップを広げようとしてきます。SHがSB気にして、ギャップ作っちゃうと、こういう形でセレッソ得意のバイタルからの中央突破食らいます。あそこでセレッソのアタッカーに前向かれちゃうと、そこからはセレッソの18番になるんで、あそこにスペースできる守り方はセレッソ相手には厳禁です。


ちなみに中固められた場合、セレッソは両サイドに張ってるSBからガンガンクロスあげてきます。



ただ、欠点もあって、これは選手の問題なんですけど、右SHと右ボラの間のギャップ使って崩すのは上手いんですけど、左SHと左ボラの間のギャップを使って崩すのはセレッソ、あまり上手くありません。理由は、今年にとったレフティエジノが激しく期待外れだったからで、セレッソで求められる役割をほとんど果たせていませんでした。


セレッソのゴール集みてもらえばわかると思うんですけど、左サイドからは多彩な攻撃が出来るんですが、右サイドからはほぼ単発の攻撃しか出来ないって問題を抱えてまして、その原因が、左SHと左ボラの間のギャップを使って崩せるレフティの不在です。エジノにはそれが求められていたんですが、ほとんど出来てませんでした。「エジノじゃなくてエジルだったら良かったのにね」というアレです。


メッシ、ロッベンエジル、マタ、この辺りのクラスのレフティセレッソにいたらなあ・・・というアレです。ちょっと不思議なのは、セレッソレフティをまだ補強してない所でして、ミッチも確か右利きだったハズなんで、どーするのかな?って所です。


クルピだったら、まず間違いなく、レフティ取ったと思うんですが、不思議な所です。


ディエゴ・フォルランの特徴

次にフォルランの話に移ります。


Los 32 goles de Diego Forlan en la Liga 08/09

Diego Forlan - all goals of season 2009




動画張っときますが、驚異的なのは両足から繰り出されるシュートです。ゴールから30メートルくらいの位置から易々と決めてきます。特に、左サイド寄り、バイタルで前向かれたらアウトです。スーパーミドルが高確率で飛んできます。日本のGKだと、アレを防ぐのはかなり厳しいです。


それから、両足で30メートル級のミドル打てるので、ワンサイドカットはあんまり意味がないですねえ、これ・・・


一方で、グランダーのクロスの処理は上手いがヘディングはイマイチです。CFタイプかというとちょっと違う。どっちかというとトップ下、セカンドトップです。両足でゴール決められますが、頭のゴールは少ないんです、フォルラン


右利きで得意なのは左サイドっぽいです。ただし左からの中へのカットインを警戒してると、縦に来てから左足でミドル決められるので注意が必要になります。





セレッソフォルラン来たらどうなるの?

次に、この話になるんですけど、セレッソは、前FC東京監督のポポヴィッチが新監督に就任しました。


この監督はサイドから延々クロス上げ続けるサッカーやるヒトではないので、セレッソのサッカーは大枠では変わらないと思います。


クルピのサッカーについては、延々と講釈たれてきましたが、基本は両SB高い位置にあげて、相手のSHとボランチの間にギャップを作り、そこのギャップをアタッカーが取ってから、バイタル使って崩す中央突破が特徴でした。


ただ、両SB上げないとなると、これの破壊力が落ちてしまうんですね。守備は、そのほうが安定するでしょうけど、両SB上げても2013年は失点少なかったんで、両SB上げるサッカーは継続したほうが良いとは思います。


ポポヴィッチに関して言えば、FC東京時代、4231か442をベースにして、両ボランチに守備力のある高橋と米本、あるいはアーリアを使って、攻撃時にはSBあげて両SHが中に入ってくる変形型の3421、もしくは2422みたいな形でやってたので、セレッソのサッカーは大枠では変わらないと思います。


セレッソのサッカーが大枠では変わらないって話を前提にして進めますが、左サイドの攻撃力は、2013と比べて、確実に上がります。理由は、そこからのフォルランのミドルがあるで、「右SHと右ボラの間でセレッソのアタッカーに前向かれたらアウト」状態は継続します。


一方で、右サイドの攻撃力は、良いレフティとってないし、ちょっと微妙です。右サイドの高い位置で攻撃に変化をつけられる選手を一人取った方が好ましいんですが、今の所、補強の予定はないみたいです。


なので、このままだと、左サイドに蓋されると、攻撃面で停滞してしまう可能性が有ります。僕だったら、レフティを何とか調達してきます。


ただ、攻撃面はフォルラン取ったんだし、そんな問題はないんです。問題は守備の方でしてね。



守備面では、フォルランを柿谷でツートップ気味で組ませる場合、どっちかが下がって守備をしないといけません。ただ、どっちもシンプリシオみたいに気の利いた守備は出来ないので、守備面では今年よりルーズになる可能性が高いです。



前のメンツなんですけど、

  フォルラン柿谷
南野       ミッチ(アーリア?)
  扇原山口(アーリア?)


になるとすると、凄い豪華なんですけど、一方で守備面でサイドにボール出された後が問題で、


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この円で囲った所が空いちゃう可能性が高いんです。シンプリシオがトップ下の時は真面目に下がってきてスペース埋めたり、相手ボランチのマークについたりしてくれたんですけど、「柿谷とフォルランにそれをやらせるのはどうなの?」って話にはなるわけです。どっちもバランサータイプの選手じゃありません。純粋なストライカータイプです。


なんで、この二人は前に残しておきたいんですけど、そーなると、一回サイドにはたいてから、相手の守備ブロックにギャップを作り、中に当ててくるチームに対して、守備面で問題を抱えることになります。勿論、どっちか片方を下がらせれば良い訳ですけど、柿谷下がらせちゃうと、せっかくの裏抜けの才能が台無しになるし、フォルランを下がらせるのも勿体ないというジレンマです。


なんで、前に二人残らせる前提で、守備面考慮すると、


  フォルラン柿谷
アーリア       ミッチ
    扇原山口


こんな感じになるかと。ミッチとアーリアにサイドだけでなく、中に絞っての守備もがっつりやらせる事になりますが、44でブロック固めるなら、両SHに守備力の高い選手使った方がいいです。こっちは前に二人残す場合のやり方になります。



最後に

セレッソってチームは、ちょっと前までJ2にいたんですけど、去年は平均観客動員18000人越えで、ガンバを上回ってます。


実は、ここ二年ほど、セレッソとガンバの間で観客動員の逆転現象が起きており、セレッソは二年連続でガンバより動員が良い状態が続いています。フォルランを取ったのは、ココで一気にガンバに差をつけて、大阪での動員NO.1クラブになろうという意気込みがビンビンします。2013年リーグ後半戦では、長居スタジアムでやったゲームは3万越え連発してたので、今年のセレッソの観客動員凄いことになりそうです。


実は、密かに期待してるのですが、ガンバのほうも「このままじゃアカン!」って事で、ガンバさんが、フォルランに対抗して、大物取りをしてくれないかなあ、と。パナソニックも業績回復してきてるし、新スタと合わせて一発かましてほしいのですよ。



そうなったら、Jリーグはウハウハです。



今日はこのあたりで。


ではでは。