2014年J2 湘南ベルマーレのサッカーのお話
はい、皆さん、こんにちは。本日はJ2も終わったので、そろそろネタバレしても許されるだろうって事で湘南ベルマーレの話をしときたいと思います。
僕は湘南サポやってる訳ですが、今年の湘南ベルマーレはホントに最高でした。ただ、湘南の話はブログでは意図的に避けてたんです。
今年のJ2は、湘南ベルマーレは勝ち点101という記録的な数字でJ2を制しました。シーズン中、何度かベルマーレの話をしようかなあ、と思った事もあるんですが、ベルマーレの話をすると、戦術上のネタバレになってしまうので、シーズン中は避けていた訳です。今シーズンのベルマーレってのは、戦術をちょっといじってまして、特にJ2の前半戦では、それがびっくりするほどハマりました。まあ、J2のチームがベルマーレのサッカーの変化に気付いた頃にはベルマーレは勝ち点を積み上げまくっており、独走状態になってたというオチです。流石に、2巡目になると対策されはじめましたけどもね。
そーゆー訳で、本日はJ2で湘南ベルマーレが何をしていたのかって話をします。種明かしすると、ひどく単純な話なんで、がっかりさせてしまうかもしれませんがね。
2014年シーズンのベルマーレの基本布陣
さて、まずはこの話からになるのですが、2014年の基本的なベルマーレの布陣は、
こんな感じになってました。もっともスタメン争いが熾烈だったので、結構コロコロ変わる事が多いチームなんですけども。ただし、基本的に3バックは使える時は三竿、丸山、遠藤の並びでして、ココが結構な肝だったりします。センターフォワードはウェリントンで固定でした。
ベルマーレの布陣はいわゆる3421なのですが、前から行くときは343っぽい感じでプレスをかけていき、ハイプレスを交わされた時には、541で守ります。基本的にハイプレス・ショートカウンターのチームですので、前から343っぽい感じでプレスをかける事が多いです。
この辺りは、チョウ・キジェ監督が就任して以来、ずっと変わらない路線でして、343でハイプレスをかけ、プレスをかわされたら541で自陣にブロック作って守るというのがベルマーレの基本的な守備方法となっています。
それでなんですが、2013年、J1において、チョウさんのこのサッカーは通用しませんでした。結構自信をもって挑んだシーズンだったのですが、ベルマーレのハイプレス・ショートカウンターはJ1だとプレスがハマらず、また後ろでブロック作って守る場合においても、守りきれないという感じで、一年で降格することになってしまった訳です。
湘南は基本的に、ロングカウンターも早いチームでして、1トップ+2シャドーと2WBによる人数かけたカウンターが売りだったんですけども、J1だとSHの戻りが早く、カウンターもなかなか決まらないという状態でした。
なにより、J1だと、湘南の選手は70分あたりまでした持たないってのがありました。永木が「70分までは互角の戦いが出来るんだけど・・・」って話を去年していましたが、J2とJ1だと、試合の厳しさが全然違うという現実を思い知らされた訳です。
そんな反省を踏まえて2014シーズンの湘南はJ2から出直す事になったわけです。
2014年、湘南ベルマーレの変化
さて、2014年の湘南ベルマーレなんですが、2013と比べると、ちょっと違うサッカーをやってます。主に攻撃面で、です。守備面は以前と大きくは変わりません。相変わらず、ハイプレス・ショートカウンターですし、フォーメーションもいじってません。
じゃあ、何が変わったんだよ、という話になるんですが、これが今回の話の肝です。
結論からいうと、「90分間、CBがWBを追い越して攻撃参加するようになった」です。こんだけです。種明かしすると、「なんじゃそりゃ」とガッカリされるかもしれませんけど、前年度との違いはココなんです。
でもって、この攻撃は笑ってしまうほど今年のJ2でハマりまして、J2の前半戦で湘南が無双った原因が、まあコレです。
ちょっと動画貼っとくので、動画で説明しますね。
ジェフユナイテッド市原・千葉対湘南ベルマーレ - YouTube
これは7節の千葉戦の動画なんですが、これの1点目が今年の湘南を象徴する点の取り方です。
流れを説明しておくと、自陣内深くでボールを取り返す事に成功した湘南は、CBの丸山がシャドーの武富に縦パスをいれる。次に武富から、サイドを駆け上がっているWBの菊池にパス。この時の注目ポイントは、丸山が武富に縦パス入れたとき、左CBの三竿がオーバーラップしてるんです。次に、菊池は自分を追い越していく三竿にパスして、三竿がクロス。これをウェリントンが決めて湘南が先制という流れでした。
2014/03/16 [J.League Division2 第3節] vs コンサドーレ札幌 - YouTube
こっちは第三節のコンサ戦の動画ですが、この試合なんて2点ともCBの遠藤のクロスから生まれてます。2点目なんてWB追い越してクロス入れてる訳ですよ。
この二つの動画見て貰えばわかると思うんですが、この動きが今年の湘南ベルマーレを象徴してます。ピッチをCBの遠藤と三竿が上下動してるんです。三竿は主にWBを追い越す動きをしてクロスを入れ、遠藤はWBを追い越したり、あるいはWBとワンツーしたり、です。CBがオーバーラップする、CBがWBとワンツーする、この二つが非常に今シーズンの湘南で特徴的でした。
これ、もう完全に数字に出てしまっているので、ネタバレしちゃってもいいだろうって事で話をしているんですが、
湘南ベルマーレ 2014 ランキング | Football LAB ~サッカーをデータで楽しむ~
こっちのページでベルマーレのスタッツを見る事ができます。ここでスタッツ見て貰えば、ベルマーレが何してたかってのは一目瞭然なんです。
特にCBの遠藤と三竿のスタッツ見て貰うとわかりやすいんですけど、CBのクロスのスタッツが異常に高く、三竿はアシスト10を記録してます。くり返しますが、三竿はCBです。遠藤に関しては、シュート数が異常に多くて、56本シュート打ってます。これは、他のチームのFW並の数字だったりするわけです。
でもって、
「日本一走り勝てるチーム」宣言・走行距離発表(4月26日J2第9節横浜FC vs.湘南ベルマーレ) | 横浜FC オフィシャルホームページ
こんな記事も出てた訳ですが、今年の湘南は、走行距離が異常な数字になってました。集計方法によって走行距離は変わるんですが、大体一試合の平均総走行距離は12.5キロとなっており、これはドルトムントより多いんです。チョウさんが「ドルトムントより走れるようになってきた。特に攻撃の部分で走れるのが大きい」って言ってますが、この異常な走行距離の大きな原因になってるのが、ピッチを上下動してるCBでして、CBがWBを追い越して攻撃参加するんで、攻撃時にとんでもなく走ってる奴が最低3人いるんです。WB2枚+CBがシャドーを追い越してオーバーラップしていくサッカーです。横浜FCのデータは更に衝撃的で、横浜FC戦だと、横浜FCは総走行距離が120キロ、一方で湘南は135キロです。こんだけ差があったら、横浜FCが逆転負け食らったのも当然という話です。全体で湘南のほうが15キロ多く走ってる訳だから、湘南はピッチに常に一人多くいるような状況なんですからね。
「チーム全体の総走行距離が異常+CBのクロス数、アシスト数が異様に多い」とくれば、何してたかなんて、試合見なくてもわかりますよね。
湘南の攻撃方法を身も蓋もない表現で説明すると、
「CFをシャドーが追い越して、シャドーをWBが追い越して、WBをCBが追い越して、CBがクロス入れるサッカー」
って形になります。来年はひょっとしたらGKがCB追い越していくかもしれませんね。
これは今年のJ2の序盤戦でJ2の多くのチームを困難に陥れた攻撃でして、CBがWBを追い越してオーバーラップしたり、CBとWBのワンツーで簡単にサイドを突破されるチームが相次ぎました。
「なんか湘南のCBがWB追い越して裏に飛び出してくるんだけど、誰がついていくんだ?」
って感じで、混乱してるチームは多かったです。CBがボールもって持ち上がるとかなら、他のチームもよくやるんです。ただね、今年の湘南みたいに、CBがオーバーラップして裏に飛び出す、WBとワンツーして裏に飛び出すってのは、かなり珍しいです。3バックやってるチームはJ2やセリエによくありますけど、湘南のCBみたいなプレーを90分間やってるCBはまずいません。というか、普通やりません。CBがオーバーラップ、パス&ゴーやってくるってのは、かなり珍しい光景です。
今年の湘南ベルマーレを総括すると、ハイプレス・ショートカウンターをチームカラーにしつつ、CBのオーバーラップを軸にした攻撃でサイドを突破するサッカーという形でまとめることが出来ます。でもって、シャドー、WB、CB、ボランチが攻守にピッチを上下動してるのでチームの総走行距離は、とんでもない事になりました。ドルトムントよりマジで走ってます。ドルだって、CBがあそこまで激しく上下動してるわけじゃないので、その分、湘南のが走ってるんです。
湘南のサッカーがJ1で通用するかどうかは・・・
最後になりますが、最大の問題がコレになります。
結論からいうと、やってみないとわかりません。
あのですね、湘南は、最近、二回ほど昇格してる訳ですが、二回とも一年でJ2に突き落とされました。J1のチームの強さは、サポーターも選手もフロントも嫌というほど思い知らされてます。本当にJ1のチームは強いんです。J2とは全然違う。
今年のJ2のシーズン中、選手が「まだJ1で通用すると自信をもっては言えない」って話をしてたのを覚えているのですが、来年がホントに全てです。
一応ね、僕的に、湘南がJ1で通用するかどうかの目安を「シーズン通して得失点差+40以上」って所にしてたんです。得失点差+40以上で昇格したチームで、一年でJ2に出戻りしたチームはないので。
ところが、今年の湘南の得失点差は+61という頭がおかしい数字になってまして、これでJ1で通用しなかったら、マジでどうにもならない!って感じです。
なんで、来年こそは・・・と思っているのですが、これで通用しなかったら、マジで寝込みますわ。これ以上のチーム作れとかマジで無理。J2で勝ち点101取れる以上のチームなんて無理ですから!!
という訳で、湘南は来年のJ1でドルトムントより走れるサッカーを披露いたします。興味のある方は平塚までお越し下さい。
それでは。