アギーレ監督が解任されてしまったので八百長の話でもするでござるの巻
はい、皆さん、お久しぶりでございます。滅茶苦茶更新サボってましたが、私は元気です。
皆さん、既にご存じでしょうが、JFAは日本代表監督アギーレを「解任」する事になりました。
アギーレ監督の解任 大仁邦彌会長による26分間の記者会見全文
一応、ニュースにリンク貼っときますが、解任の理由は「裁判が始まったら代表監督の活動に支障が出る」って感じらしいです。今回のリーガの八百長については、他のニュースにもありますが、
こっちのニュースにありますが、スペイン・プロリーグ連盟のハビエル・テバス会長が、理由はよくわからないのですが、とにかくスペインの八百長撲滅に躍起になっており、その煽りを食らったって感じです。はっきりいって、サッカー界内部で八百長撲滅に本気で取り組んでいる人は珍しいです。大体、八百長に関しては内部で処理して、外部に出ないようにするからです。リーグのイメージを著しく損なうので、出来るだけ表沙汰にならないようにするモンなんです。
上記の記事の中にクリス・イートンの、
「スペインでは00年から八百長の黒いうわさがささやかれたが、本格捜査までいかなかった。連盟と提携した監視機関の調査で今回浮上した約10試合でもサラゴサとレバンテは特別なケース。司法警察の証拠がある」
って談話がありますが、ココは今回のお話の肝になります。今回の話は、サッカーの八百長の捜査で主導的な役割を果たしているクリス・イートンと、八百長監視機関の話になりますので。
「サッカー界の巨大な闇」 ブレット・フォレスト著の紹介
さて、最近、サッカーの八百長について専門的に扱った本が邦訳されたので、そっちをまず紹介しときますね。
- 作者: ブレット・フォレスト,堤理華
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2015/01/31
- メディア: 単行本
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この本ですが、先日読了したばっかの奴です。内容は、サッカーの八百長で暗躍しているシンガポールのフィクサーへの取材及び、サッカー界の八百長について専門的に捜査しているクリス・イートンへの取材、それからスポートレーダーって会社の取材を元に書かれた本です。
何で、アギーレの解任話で、この本の紹介になるかってーと、今回の解任劇の裏には、リーガの八百長問題があるんですけど、クリス・イートンが「連盟と提携した監視機関の調査で今回浮上した約10試合でもサラゴサとレバンテは特別なケース。司法警察の証拠がある」って話をしていますが、この監視機関ってのは、明らかにスポートレーダーだろうからです。
現在、八百長を専門的に監視している組織が三つありまして、クリス・イートンが所属する国際スポーツ安全会議(ICSS)、スポートレーダー、EWS社の三つになります。EWS社は日本サッカー協会が契約してる所です。
ちなみに、クリス・イートンなんですけど、ちょっと前まではFIFAのセキュリティ部門の責任者やってました。ただ、FIFAで八百長改革案を出したら、それが先延ばしにされてしまい、それが契機になってFIFAを辞めてます。それでカタールの国際スポーツ安全会議(ICSS)に移籍して、そこで八百長の撲滅の為に現在は働いています。
この本で印象に残ったシーンがあるんですが、イートンが現FIFA会長のブラッターに八百長問題について説明し、そこで全面的な協力をとりつけた話があるんですが、その時、ブラッターが、
「初めて10億ドルのテレビ放映権の契約書に署名した時、アベランジェ(前FIFA会長)はわたしがまちがいを犯したと言った。『君は餓狼の群れを招き入れようとしている』とね」
ってシーンがあります。昨今、サッカーは巨大なビジネスになっており、移籍金だけで100億の金が動き、サッカーのオンライン賭博市場では数百億の金が行き交う世界ですから、それに伴って不正が起こるようになってきたのは、ある意味では当然でした。
昨今、八百長絡みの話題が多いサッカーの世界ではありますが、イートンが色々とやっているので、これからも八百長スキャンダルは出続けると思います。
でもって、もう一つのスポートレーダーって会社の話になるのですが、この会社についても、上記の本の中で結構な分量扱われています。この会社なんですが、要するに「サッカーの試合で八百長が起こったら、それを即座にブックメーカーに通報する」事で、ブックメーカーからお金もらっているような会社です。
ちなみにFIFAのEWSより先にこの手のビジネスを始めてるのですが、現在、彼らの主力の製品はEWS(早期警告システム)でなく、FDS(不正検出システム)となっています。
なんでFDSなのかというと、これはオンライン賭博が流行し、それに伴って、スポーツ賭博の形態が変わってきたからです。以前のスポーツ賭博は、試合の前に賭けてそれでおしまいでしたが、現在のスポーツ賭博は、ライブベッティングと呼ばれる形態が主流になっており、試合の途中経過に伴って、オッズが変動していき、ギャンブラーはそれに賭けることが出来るようになっているからです。
そんな訳で、EWS(早期警戒システム)は時代遅れになってまして、試合の途中警戒におうじて、オッズと基準値を測定できるシステムでないと意味がなくなっています。
以前、ブログで八百長の話を扱った時、はてBで「統計的に八百長試合の存在を確認できないの?」みたいな話をしてた人もいたのですが、統計的に八百長試合の存在を「知っている」のは、オンラインのブックメーカー、スポートレーダー、EWSのような組織になります。
ブックメーカーは、イカサマやられて損害を出すことが珍しくも何ともないので、八百長試合かどうかを判断するシステムがどうしても必要になってる訳です。そういうニーズがあるので、スポートレーダーみたいな会社が存在できる訳ですね。
スペインの八百長
まず、クリス・イートンの「スペインでは00年から八百長の黒いうわさがささやかれたが、本格捜査までいかなかった。連盟と提携した監視機関の調査で今回浮上した約10試合でもサラゴサとレバンテは特別なケース。司法警察の証拠がある」って話に戻る訳ですが、八百長監視機関であるスポートレーダーやEWSは、ブックメーカーのオッズの異常な変動から、その試合が八百長かどうかを判断します。
えっとですね、うちのブログで
以前、こーいう話をしました。サッカーの八百長の種類の話なんですが、アギーレが関わったと疑われている試合は、八百長の分類でいうと、「調整型の八百長」になります。昇格・降格に絡んで、クラブ関係者が星の売り買いをするタイプの八百長です。
ただ、前もって試合の結果が決まっているなら、当然、サッカー賭博で儲けようって奴がでてくる訳ですよ。そうすれば、賭博市場でオッズに異常な変動がでるので、スポートレーダーやEWSのような機関にはすぐに分かる。
ただ、統計的にありえないオッズの変動が起こったとしても、それだけだと八百長で有罪って形にははらないんですわね。司法の場で決定的な証拠になるのは、金の授受が証明されるか、当事者の自白、あるいは電話の会話記録が残っている場合になりますから。
「スペインでは00年から八百長の黒いうわさがささやかれた」って話がありますが、多分、この頃から、スポートレーダーなんかは、リーガのオッズにおかしな動きがあることは察知してたんだとは思います。
今回の話の肝になるのですが・・・・
さて、今回の話の肝に移ります。
まず、最初の肝になるのですが、「アギーレを選ぶ際に日本サッカー協会はEWSやスポートレーダーのような会社に問い合わせを行わなかったのか」って所。
あのですな。EWSやスポートレーダーのような会社は、
って報告だしてますが、「過去5年に各国1部リーグの約千試合で八百長の疑いがある」って、はっきりと述べている訳ですよ。2部じゃなくて、一部の話です。
八百長疑惑がある試合のリスト、そしてその試合のスタメン、監督まで全部データにして持っている訳です、彼らはね。
だから、前もって、問い合わせをして、その試合に出場した選手、監督をリストから省いてしまえば、リスクは大幅に軽減できたはずなんです。ちょっと金はかかるかもしれませんが、それをやってれば、今回のような結果にはならなかったかもしれないのに、何でやらなかったんだろ?、ってのが僕の正直な感想です。
ぶっちゃけた話、
J初の八百長調査 スポーツ賭博で異常な賭け率も…結果は不正なし
ちょっと前に、J初の八百長調査が行われてましたが、その中で村井チェアマンは「もしも不正があれば、その選手は永久追放、クラブは存続しない」と断言までしてる訳です。
ここまでの覚悟だったら、スポートレーダーから八百長試合の資料を取り寄せて、Jリーグのクラブに配布して、「これらの試合に関わった選手・監督は危ないから取るな」って通達だしても良いくらいだと思うんですよね。これ、絶対やってないと思います。理由は、やってたらアギーレを選んでない。
それからもう一つ。
これは暗い話になりますが、「サッカー界の巨大な闇」の、「何かがあそこで起きている」の章に、スポートレーダーの香港支所の話があります。そこから引用しますが、
オフィスの二方の壁にはホワイトボードがかかっており、さまざまな違法賭博組織の役割と関係を示す図表が書かれている。
(中略)
ボードの図表は色分けがしてある。緑が選手と審判、青がフィクサーと連絡係、黒が資金提供者と犯罪組織の人物だ。ペルマルとサンティアのトンエル会社の名前が片隅に列挙してあり、その下の囲みの中に不正に手を染めた審判たちの名前が並んでいる。中国マフィアの”三合会”、イタリアマフィアの”カモッラ”、”ロシア”の枠もある。そこかしこに書かれた文章が、さまざまな色の線で結ばれている。不規則な図表の向こうには、世界各国-イタリア、ハンガリー、クロアチア、ベルギー、ベトナム、フィンランド、グアテマラ、エルサルバドル、トーゴ、ベリーズ、マリ、スペイン、ブルガリア、日本、ジンバブエ、リベリア共和国、南アフリカ、ボリビア、コロンビア、タイ、マレーシア、ベネズエラ、モルドバ共和国、バーレーン-での八百長活動の記録が記されている。
って記述があります。
ええ、日本が入ってます。
どうも八百長組織はJリーグでも活動してるようでして、スポートレーダーはそれを把握しているようでしてね。この本で、僕が一番気になったのはココです。「ああ、やっぱり八百長組織はJリーグでも活動してるんだ」って感じで。
ぶっちゃけ、サッカーのオンライン賭博はいつでも需要があるんですが、欧州サッカーは夏はお休みになります。ただ、幾つかの国は例外的に夏もサッカーやってます。その一つが日本で、この時期に稼ぎ場所を求めて、アジアの八百長フィクサーが日本にやってくるってのは当たり前の話でしてね。
村井チェアマンは「もしも不正があれば、その選手は永久追放、クラブは存続しない」と断言してますので、これ、スポートレーダーに問い合わせして、調査するべきなんじゃねぇの?と本気で思う訳です。代表監督の首を八百長疑惑で飛ばした訳だし、放置していい問題でもないでしょう。本の中で、「日本でもアジアの八百長フィクサーが活動してるよ」って記述があるんですから。
J1はともかくも、J2やJ3のクラブなんて、金が無くてカツカツの所がありますから、そういうクラブ狙って入り込まれたら、イチコロですぜマジで。
そんな訳ですので、チェアマンにおかれましては、対岸の火事とか思ってないで、真面目に調査してください。お願い致します。
Jリーグってのは、今まで、八百長スキャンダルが起こったことがない珍しいサッカーリーグですが、胡座かいてると、マジでやられるので、この部分については、マジで徹底してくださいまし。よろしくお願い致します。
本日はこのあたりで。ではでは。