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2015年東アジアカップ、日本対中国のレビュー 「例えミスマッチだったとしても」

はい、皆さん、こんにちは。本日は先日行われました東アジアカップ、日本対中国のレビューをやりたいと思います。今回の東アジアカップは一勝も出来なかったので、日本代表は公式戦でアジア相手に4戦勝ち無しという状態になっております。



今回の中国戦は前二つの試合と違って、割とこのブログでレビューする事がある試合でした。この試合の後、案の上、ハリルホジッチは色々と叩かれてますが、試合内容のレビューはそんな出回ってない感じですんで、一つ書いとこうと思った次第です。


日本対中国のスタメンとハリルホジッチの基本戦術の話から


さて、まずはスタメンから入りましょう。中国の選手は名前知らないので、日本のスタメンとフォメの紹介から入りますが、


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基本はこんな感じでした。日本は4231、4バックは米倉、槇野、モリゲ、ニワ、ダブルボランチが山口と遠藤航、WGが宇佐美と永井、トップ下に浦和の武藤、CFが川又となってました。一方で中国なんですが、


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こんなフォメが紹介されましたが、試合見る限り、4141でブロック組んで守る感じでした。この試合なんですが、ハリルホジッチは何もせずに試合に臨んだという訳ではなくて、中3日あったんで、きちんと戦術練習は出来たみたいです。そうなると、どういう攻撃してたかって話になるんですが、コレは、キャプでやりますね。


まず、遅攻のほうだと、前半から積極的に狙ってたのが、


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こーいう攻撃になります。このパターンはハリルホジッチが日本代表監督になってから、よくやってる奴です。海外組がいた試合でもフツーにやってました。この時の武藤の動きはなかなか秀逸でした。中国のアンカーを動かして川又がポストプレーをするためのスペース作る所から、アンカーのマークを上手く外す所まで完璧。


図にすると



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こうなるんですけど、トップ下が左右に動く事で、相手チームのアンカーを動かして、中央にスペースを作り、そこをCFに使わせて楔を打ち込んで行くってやり方です。この日は浦和の武藤がトップ下やってましたが、前半から左右に動き回ることで、中国のアンカーを動かしていました。中国のアンカーは馬鹿正直に武藤についていってくれたんで、川又がポストプレーする為のスペース作るのは偉い簡単な試合だったんです。


そんな訳で、この試合の前半から後半になるまで、川又のポストプレーの独演会みたいな感じになりました。その結果、何が起きたかってのは、川又の話の項目でやります。




次に、ハリルホジッチがやりたくてしょうがない速攻なんですけど、これは後半開始直後のプレーで説明するのが良いと思うのでキャプでやりますが、


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こーですね。このシーンの場合、最終ラインはPAから10メートル程度の位置でした。この位の高さだと、WGはハーフウェーライン前後まで戻ればいいので、カウンターになったら即CFのフォローに入れます。なので、このシーンだとモリゲ→川又→宇佐美→武藤という流れで一気に敵陣深くまでボール運べました。最後のクロスは合わなかったんですが、ここのカウンターの流れは非常に良かったです。




ここまでハリルホジッチのサッカーを5~6試合ほど見たわけですけど、遅攻では、ボランチ、トップ下のオフザボールで相手チームの中盤を動かして、CF・WGが降りてくるスペースを作り、そこに楔を打ち込んでいくってスタイルです。速攻では奪ったら出来るだけ速く前に当てようとしてます。



このハリルホジッチのスタイルそのものは何の問題もないですし、この試合でハリルホジッチが取った攻撃戦術ってのも、特に間違ってません。中国のアンカーは、日本のトップ下をマンツーマン気味で捕まえるスタイルでしたから、「トップ下のオフザボールでアンカーを動かしてCFに楔を打ち込んでいく」ってのは常識的な戦術です。W杯のギリシャ戦でもザックが似たような事やってます。



ただ、この試合の問題となったのは、戦術より選手の人選の方でした。



名古屋の川又のポストプレー祭り

こっからは、この試合における選手個別のレビューになるんですけど、まず川又の話から入ります。この試合の川又のプレーを見て、



うわあ、何て下手な選手なんだ・・・・
何でこんなポストプレー下手なCFに楔打ち込み続けてるの?


という感想を抱いた人は多いと思うんです。気持ちはわかりますよ。ええ痛いほどわかります。


例えば、前半25分、槇野がボールをもって持ち上がりました。ここでトップ下の武藤が左サイドに流れる動きで 相手のボランチを一枚動かして川又が使うスペース作ってます。次に、槇野が川又に楔のパスいれたんですが、何故か川又がボールにさわることもできずに、相手ボールになっちゃいました。


前半37分には 「モリゲが前を向く→武藤が動き出して中国のアンカーを動かす→川又が降りてきて、モリゲが楔を入れる→川又がポストしたボールは綺麗に中国の選手の前におち、カウンターの起点に。」なんてドリフみたいな流れもありました。まあ、この時は中国の選手がミスしてくれたので助かりましたけどね。


この試合、川又についてなんですが、残念ポストが複数あって。モリゲが川又に楔入れたら、何故かモリゲに帰ってきたり、ターン出来そうな所でターンできなかったり、処理が難しい山なりのボールを落としてみたり、相手にパスをプレゼントしたみたりと大車輪の活躍でした。これはキャプでやると、川又に気の毒になるんで止めときます。見たい人は録画見直すなりして下さい。



前半から、こーいう残念ポストをやっていたので、この試合みた人が「川又下手すぎね?」と思ってしまうのはしょうがない部分があります。僕なんか、画面の前で爆笑しちゃったシーンもありましたし。「なんでモリゲがいれた楔のボールがモリゲに帰ってくるんだよ~」と笑い死にしそうになった事を懺悔しておきます。



じゃあ、なんでこんな事になったのかといえば、ハリルホジッチが川又をCFで使ったからです。そもそも論になるんですけど、川又のポストプレーがビミョーだってのは、初戦の時点で明らかだった訳ですよ。なのに、なんで川又がポストプレーをせざるをえない攻め方してんの?って話です。「トップ下のオフザボールで相手チームのボランチ動かし、空いた中央のスペースを使ってCFに楔を打ち込む」サッカーやるなら、川又じゃなくてコーロキじゃね?という奴なんです。



CFの人選とやるサッカーのミスマッチが起きてるんですよ。川又はポストプレーでのし上がった選手じゃないのに。



川又なんですが、名古屋だとCFやってます。ただ、現在の名古屋は3421でワントップ2シャドー、守備時は永井と川又の二人前残しするサッカーです。1トップ2シャドーなら、CFは裏取りとフィニッシュに専念してればいいので、川又のポストプレーのアレさ加減がひどく目立つサッカーにはなりません。トップ下が二人いるので、CFはポストプレーはそんなしなくていいシステムなんです。ライン間に引いてきて楔受けるのはシャドーがほとんどやります。ついでに、川又と永井の二人前残しでカウンター狙いのチームなんで、CFが前で時間作る必要がそんなありません。二人残しなら、二人で持っていってしまえるので。具体的には、カウンターになったら、一人が下がってボール受ける動きしてDFを引っ張り出し、空いたスペースをもう片方が使えばいい。


クラブレベルだと、西野さんが苦労して永井と川又を併存させる方法作ってますが、ハリルホジッチは、どうもよくわかってないっぽいです。プレーヤー同士の最適解を見つけるってのは割と大変な作業で、アンチェロッティがキャリアの話でよくネタにする話ですけど、


 もちろん、何度も何度も失敗を重ねながら。たとえばパルマ時代には、あの4-4-2の中でジャンフランコ・ゾラという天才を外してしまうという決断を下しているし、ユベントスに移ってからの私は、98-99シーズン、あのティエリ・アンリを右のウイングで使うという大失敗を犯している。あれこそが私の監督としてのキャリアで最大の汚点だ。


【ロングインタビュー】カルロ・アンチェロッティ、勝者の戦術論(中編)


こーいう話ですけどね。川又って選手はレフティで、ちょっと癖のある選手です。ボール受けて前むける位置が極端に限られてます。つまり、左サイドから出てきたボールを左足でトラップするため、左サイドからのパスが来ると本当に残念なプレーしか出来ません。この試合でも一回ありましたが、レフティの典型的な欠点です。ただ、点とる事についてはサラブレッド的な能力があります。いやマジで。馬鹿とハサミは使いよう的な話なんですけど、使い方を誤るとアレですが、点はホントに取れる選手なんです。もっとも、その使い方が難しい訳ですけども。西野さんも名古屋で散々試行錯誤してますし。


山口の評価が割れている原因の話

次にこの話をしましょう。この日、ダブルボランチは、セレッソの山口と湘南の遠藤航で構成されてました。ただ、この試合では山口の評価が結構割れてました。この試合なんですけど、山口を褒める人と山口のポジショニングに文句を言う人とで、二極化してる感じでした。



ここで山口の評価が何故割れてしまうのかって話になるんですけど、この日、山口は最初から最後までよく走り、広大な範囲をカバーしてました。前への攻撃参加も結構やってましたから、そういう所を評価する人は、「山口って良いボランチだねえ・・・・」となるわけです。




一方で、山口に文句いってる人も多かったんですが、この理由もよくわかります。どういう事かというと、これもキャプでやっときますが、




こんなのが前半開始直後に見られましたし、


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そのすぐ後も似たような事やってました。


この3試合で、山口の評価が割れてしまっている原因がこれで、ダブルボランチがカバー&マークの関係を作れておらず、相手にバイタルを使わせる原因になってしまってました。僕が思うに、ハリルホジッチが433にシステム変更する理由の一つがコレです。前から行くなって支持だしてる時もあるみたいですが、ダブルボランチが揃って前に出てしまうのが散見されるので、非常に危なっかしい訳です。433なら、インサイドハーフが両方前にでてしまってもアンカーが残ってる計算ですから、食いつき癖があるボランチ使う場合には433のほうが向いてるっちゃ向いてるんです。


この日、簡単な1本のパスで裏取られたり、ダブルボランチが二枚一緒に前にでてしまったりと、ホントに単純なミスが散見された訳ですが、チームとして練習できてないので、しょうがない部分があります。だから、そこは多めにみてあげて欲しいです。



つーか、そもそも湘南の遠藤航はクラブだと3バックの右CBですので、この手のミスがでちまうのはしょうがない部分があるんです。元々遠藤航は、チョウさんにもの凄い便利屋的に使われており、湘南でも状況に応じて色んなポジションやらされてるんですが、ボランチ本職でやってる選手じゃないのでミスが出ます。この試合の場合、クラブシーンでは本職じゃないポジで使われる選手があまりに多く、小さなミスについては、多めに見てやる必要があります。もっとも、パス一本で裏取られるのは勘弁してくださいと言いたいですが。



それと、日本が失点したシーンでの話もしときます。


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こーですが、前半9分の日本失点。日本陣内からのスローインから始まる流れです。よくある失点パターンの一つなんですが、壁パスから逆サイドのWGとボランチの間のギャップを取られて、そこから失点という流れでした。本当によくあるタイプの失点の仕方で、これで点取られるのは色んなチームで見られます。ハリルホジッチの日本代表でも、頻繁にあそこのスペースが空くのを見てきたので、この得点については「まあしょうがないか」位で多めに見てやって欲しい所です。



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ぶっちゃけ、現在の守り方、WGの人選では、あそこには絶対スペース出来ます。壁パス使われて、あそこのスペースにボール運ばれた場合、バイタルミドルは覚悟したほうがいいです。あそこのスペースなんですけど、このチーム、マジで空きます。ウズベキスタン戦の時もキャプで解説しましたけど、


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あっこのスペースがぽっかり空いてて、壁パスからあそこのスペースにもちこまれた事がありました。あそこのスペース空けてしまうのは、色んなチームで見られる現象です。後半57分も、あそこのスペースがぽっかりあいてて、あそこのスペースからミドル食らってます。


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このシーンです。ここは宇佐美が中に絞ってないから、あそこのスペースぽっかり空いてしまい、そこからミドル食らいました。ただ、宇佐美が高い位置取っていた分、この後に良いカウンターが出来てるわけで、諸刃の剣的な部分があります。

永井が残念プレーを連発した件なのですが・・・・


最後に永井の話もしときます。永井については、元々サイドの適正は高い選手で、彼にとっては右WGってのはそう悪くないポジション・・・・と言いたい所ですが、今シーズンの名古屋じゃ色々やらされてます........最近は左のシャドーやってたハズです。


この試合、ハリルホジッチの狙いとしては、速攻でも遅攻でも、川又に楔いれて、左の宇佐美かボランチにボールを落とし、右の永井の裏への動きにパスを出す、ってトコだと思います。この人選だと、これ以外に最適解が見あたらないので。


ただ、これがあんまり上手くいかなかったんですね。


ちと名古屋の話しときますが、最近は永井と川又を前に残してのカウンターサッカーみたいな事やってるチームになってます。どういう事かってーと、わかりやすいのがコレ、浦和戦なんですけど、



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この動画の1:30からの森脇がレッドカード食らった時の流れが、今の名古屋のやり方を象徴してるんですが、守備時には永井と川又を前に残して、この二人を使ったカウンターです。この場面だと、ボールを奪ったら、川又が引く動きでCBを釣り出して、空いたスペースに永井が斜めに走り込む。これで森脇ちぎってます。この後、後ろから永井ひっぱった件で森脇にレッドカード。この日は永井が二回スピードで裏にボール持ちだして2点とったといっていい試合でした。ハリルホジッチが永井気に入ってもおかしくないです。速攻には向いてる選手ですから。


現在の名古屋は川又と永井使ったカウンターのチームになってまして、前節はそのキーマン二人がいないので、どーしょもない試合やってました。



話を東アジアカップに戻しますが、大会期間中、「ライン間でボールを受けようとする永井」という全く永井のストロングポイントが全く出ない事を永井がやってまして、それが永井の悪印象に繋がってるんだと思います。勿論、裏を狙って良いプレーした時もあるんですけどね。



ぶっちゃけ、川又の動きでCB引っ張り出して、その裏に永井走り込ませて、そこにパスだすべきなんじゃね?川又にポストさせても何も起きない気がするし、永井引いてボール受けさせても、やっぱり何も起きないと思う。


後半頭にあった川又の残念ポストプレーのキャプやりますけど


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こーいう流れだったんですけど、川又のポストプレーの精度を考えると、


「CBから川又への楔→川又がポストしてボランチに落とす→ボランチからサイドの永井か宇佐美に展開してフィニッシュ」


は、あんまり上手くいきそうにないんです。なんで、もう面倒だから、


「CBがボールもったら、川又が下がって来てボール受けるフリをしてCBを引っ張り出し、そのスペースに永井を特攻させて、そこにパス出す」


で良いんじゃね?って話です。選手の特徴考えると、そっちの攻撃やったほうが生産性高いと思うのですけどもね。この試合なんですけど、選手の特徴と、やってる攻撃のミスマッチが酷くて、「なんでこの選手にこんな事やらせてるの?」と不思議な感じで試合を見ていました。まあ、その分、新鮮で面白い試合だったんですけど。



最後に試合の感想


かなり長くなってしまいましたので、そろそろ感想書いてまとめておきます。



と、その前に、日本の同点ゴールについて、簡単に触れておきますが、前半40分、日本先制。これは見事なゴールでした。槇野の持ち上がりから、宇佐美が中に入ってSBを中に絞らせて、空いたスペースに米倉が突撃。米倉のクロスからニアで武藤が合わせてゴール。ここまで、中国は川又への楔を散々入れられていたので、そっちにDFは気が取られていたっぽいです。その分、サイドが空いちゃった感じです。なので、川又のポストプレー祭りも、あながち無駄じゃなかったのかもしれません。



今回の試合なんですが、僕の感想としては、「選手のストロングポイントが全然出ない攻撃を延々とやってる・・・」というものでした。まあ、その分、川又の面白ポストプレーとか、2ライン間でプレーしようとする永井とか、ゲームメーカー山口蛍とか、左SB米倉とか、SBの位置まで戻ってきて守備やってる宇佐美とか、リーグ戦では滅多に見れないプレーが見られて、新鮮みがあって面白かったです。いや、マジで。試合自体は面白かったです。ストロングポイント出てるか?と言われると、全然出てないよ、と答えますが、見てる分には面白かったです。



この試合、ハリルホジッチにとってのテストだったのか、それともガチだったのかは知りません。収穫があったのは、浦和の武藤(寿司)は使えそうだって事と、湘南の遠藤はどのポジションも無難にやれてた事くらいかと思います。月並ですいませんがね。この試合がテストだったのか、それともハリルホジッチが選手の適正見誤ってるだけなのかは、今後の試合でわかると思います。



最後に。今回のエントリでくり返し述べている事ですが、川又のポストプレーは残念なアレです。川又って選手は癖がある選手でして、ポストプレーはアレだし、テクニックもそれほどありません。ただ、FWに一番必要な「点取る能力」だけはもってます。そういう選手です。FWってのは面白いポジションでして、「決定力」ってのは練習してもあがりません。シュート練習を沢山しても、ゴール数が増えるかというと、増えないんです。そのため、「下手糞だけど点だけは取る」って人種の名FWが歴史的に何人も存在してます。その系譜に連なる選手です。僕はこのタイプ結構好きでしてね。なんで、湘南戦以外だと、川又を応援してるクチです。面白い選手ですよ。



今日はこのあたりで。ではでは。