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現在の森保ジャパンの攻撃とその問題点について

どうもこんにちは、私です。


こないだのコスタリカ戦はレビュー書くような内容がないのでサボりました。


実際に失点の原因は「吉田がいつもの奴をやった」だけですし、攻撃面でも「引いてがっちりブロック作られて点取れない」のはアジア予選でもしょっちゅうなので本当に書く内容がないです、あの試合。当ブログとして言えることは「残り時間が少ない時は迷わず大きくクリアしろ」という事くらいです。もっともカメルーンセルビアの試合でカメルーンの二失点目はカメルーンのDFが残り時間少ないのに中途半端なクリアしたのをセルビアに拾われて失点してたので、ああいうミスはサッカーにおける事故で一定確率で起きちまう奴なんですけどね。


そういうわけですので、本日はちと趣向を変えまして、現在の日本代表の攻撃の話をしていきたいと思います。


コスタリカ戦で本田さんが言ってた奴


abema.tv



ここではコスタリカ戦の動画へのリンク貼っときますが、この試合で前半から本田さんが「隙間にボールが入らない」みたいな話を結構してたのを覚えている人がいると思います。あと遠藤のパス出しについても動画内でかなり問題点指摘してましたが、最終的に「ワタルはそういう選手じゃないからしょうがないんですけどね」でまとめてました。これねえ、どういう事なのか、サッカーあんまし見てない人はわからんと思うので解説しときます。


この日、コスタリカは541でブロック組んでる時間が長かったんですが、541ブロックを日本が3421で崩そうとした場合、どうしたらいいかというと、一番簡単の図で解説すると、




この形を作るのが一番手っ取り早いです。あの位置でシャドーがボール持って前向ければ決定機に繋げるのは難しい話じゃないです。本田3はこの形作りたいんです。この形を作ることが出来れば、あとは割と簡単で、


こんな感じで決定機に繋げられます。このケースでは、ボール持ったシャドーにCBが食いつきますから、その裏のスペースが空きます。その裏にもう一枚のシャドーが走ります。この時にシャドーをマークしてるCBにCFがスクリーンかけてマークを剥がします。そしてフリーになったシャドーにボールが通ればGKとの一対一が作れます。


これの他にもワンツー、スルーを使ったコンビネーション、WBが斜めに走りこむ動きに合わせたスルーパスも使えますし、CB外してミドルシュートでもオッケーです。


ようするにあそこのスペースでシャドーかボランチがボールもって前向ければ高確率で決定機に持ち込めるわけです。


さて、ここで問題です。

一枚目でシャドーがボール持ってるスペースをサッカーでは「バイタルエリア」と呼ぶんですが、あそこでボール持って前向くにはどうしたら良いでしょうか?


あそこでボールもってアタッカーが前向ける状況を作り出すには、大きく分けて三つの手段があります。


今日はここを解説していきます。



CFのポストプレー

これは最も代表的なサッカーのプレイであり、そして現在の日本代表が使えなくなってる攻撃でもあります。



一番単純なのはCBからのボールをCFに当ててシャドーに落とす形です。これが一番簡単なんですが、最も難しいプレーでもあります。ボランチとCBはこれを絶対に通させないように訓練されてる連中だからです。屈強なCBを背負いつつ、ボランチとのサンドイッチに晒されながらボールをシャドーに落とせるCFなんてのは世界でも実はそんなにいません。


CFというのは一番の仕事は点を取ることなんですが、チーム戦術の上でポストプレーに優れている事も求められます。しかし、W杯のレベルで点取れてポストプレーも最高。そんなCFは世界的にみても数人だけです。ポーランドレバンドフスキがこれの代表格ですけど、ああいう選手は滅多にいないんですよ。


日本代表の場合、これが完璧にできるのは大迫だけでした。過去形になってるのは、大迫のパフォーマンスの低下がアジア最終予選の時から明らかだったからです。ポイチさんにとって、これが最高に頭の痛い問題でした。


ポイチさんが代表監督になった時、最初にやった事は香川を外して南野をトップ下に抜擢したことです。これは本当に大ヒットでした。というのも大迫にとって、一番やりやすいタイプのトップ下だったからです。南野と大迫の縦関係は完璧といって良く、大迫のポストから南野の裏抜けだけで点取った試合がいくつもあります。


アジアカップの決勝で大迫のポストから南野が決めたシーンなんかその象徴ですけど、ああいうプレーは今の日本代表だと難しいのです。大迫のパフォーマンスが下がってしまったので。


これは南野がW杯でスタメンでない理由でもあるのです。大迫とのセットで使われていた部分があるので、大迫がいないとトップ下で南野を使う理由があまりないのですよ。


ポイチさん、上田に大迫の役割を求めていたのかもしれませんが、残念ながら現在上手く行ってません。


中盤のゲームメイクを使った戦術


こっちはポストプレーよりちょっと面倒になります。戦術も多岐にわたる為、全部説明するのは流石に無理です。なので代表的な方法として「相手チームの中央を1ボランチにする」事に絞って説明します。


現在のサッカーの戦術においてはダブルボランチが一般的です。このダブルボランチの一人をサイドに引っ張り出すか、最終ラインに吸収させる事が出来れば中央を1ボランチにする事が可能です。どうすればいいかというと、



この形は日本がドイツのミュラーに散々やられた方法なんですが、サイドにシャドーを一枚落とすんです。そこで相手のボランチを一枚サイドに釣りだす。そうすると中央が1ボランチになってその両脇にスペースが出来るんです。あそこの両脇のスペースでボランチかシャドーが前を向ければ決定機に持ち込めます。ドイツ戦ではこれを散々やられました。



そしてもう一つがドイツ対日本でギュンドアンに前半19分にやられた奴なんですが、図でやると




こういう動きです。最終ラインからボールを動かして、ボランチからサイドに展開した瞬間にWBとCBの間に走りこみ、そこでリターンを受けます。この動きには相手のボランチはほぼ必ずついてきます。「ワンツーされたらマークを離すな」は基本ですからね。この動きで相手のボランチを最終ラインに吸収させ、バイタルを1ボランチにします。そして、その両脇のスペースを使ってフィニッシュ。



中盤のゲームメイクによってバイタルにスペース作るやり方は本当に多岐にわたるので全部紹介するのは無理です。これは正直申し上げてゲームメーカーと呼ばれる選手の芸術なんです。真似したくても出来るもんじゃないです。出来る選手見つけてくるしかありません。ドイツのギュンドアンはそういうタイプの選手であり、彼がいなくなった後にドイツがgdgdになって立て直せませんでしたが、誰でもできるモンじゃないんです。



現在の日本代表でこれが出来る選手は柴崎になります。ポイチさんは就任当初、柴崎と遠藤のダブルボランチを取っており、初期森保ジャパンがゲームメイクに困ることはなかったんです。しかし、アジア最終予選から柴崎のパフォーマンス低下が目立つようになりました。


ポイチさんも本当に困ったと思います。大迫のポストプレー、柴崎のゲームメイクをチームの攻撃の主軸にすることができなくなったんです。



その結果としてポイチさんが出した解決策が433によるWGを使った攻撃、になります。



WGを使ってバイタルを取るにはどうしたらいいか?


現在の日本代表はWGの突破力に完全に依存しているといっても良いです。もう本当にこれしかありません。伊東と三苫の突破力頼みです。ただ、この二人はWGとして見た場合、性質がかなり異なります。


伊東は純足のWGであり、右サイドの縦突破を得意とし、前にスペースがあったほうが活きるタイプの選手です。これの代表的な選手としては昔のウェールズガレス・ベイルとか右でWGやってた頃のエムバペですね。圧倒的なスピードで縦に突破してクロスかニアをぶち抜くシュート、それが求められる仕事です。


一方で三苫は逆足タイプのWGになります。右利きのWGを左サイドに配置し、カットインから違いを作ることが求められます。これの代表的な選手はメッシですな。メッシの右サイドからカットインしてシュートは芸術ですからね。



WGの縦突破は戦術でなく絶対的なスピードがモノをいう分野なので今回は扱いません。スペースにポーンと出してスピード勝負。話はシンプルです。


一方でWGのカットインについてはチーム内でかなり戦術を煮詰めておく必要があります。実は前回のコスタリカ戦で途中から入った伊藤のパス出しがかなりSNSで叩かれていたのです。そのあたりも絡めて説明していきます。



伊藤が叩かれてたシーンの一つにこういう状況がありました。




伊藤は左利きのCBであって、あの状況だと三苫にボールつけるのは難しい事じゃありません。ただ、この状況で三苫にボールつけちゃうと三苫はDF背負ってボール受けざるを得ないので三苫にとってはCBから直でボールつけられると困る部分があるんですよ。三苫はDF背負うのは得意な選手じゃないんです。


じゃあ、どうしたらいいかというと、




こっちです。三苫でなく遠藤につけたいんです。一度遠藤にボール入れるとDFは中央に絞ります。中央突破されると困るからです。そこで遠藤は三苫にボール落としてコスタリカのWBの裏にフリーラン。そこで三苫からリターン貰えればサイドを抉れます。


さらにいえば、この遠藤の動きにボランチがついてくれば(ほぼ確実に遠藤についてきます)中央へのカットインコースが空くので



こういう形で三苫が中央へカットインできるんです。そして円で囲ったスペースはガラ空きです。


ここでは「三苫がドリブルで対面を抜く」のが前提ですが、カットインでバイタルエリアに侵入できる。三苫はそれが出来る選手です。


カットインした先は三苫がミドル撃つなり、中央の動き出しに合わせてラストパス出すなり、クロスあげるなり、ボランチ引きつけてからフリーの守田にパスするなり、好きにやればいい。


一見良い事づくめです。しかし問題があるのです。遠藤が右利きなのです。


例えばあの場所でワンタッチで三苫にボール落とそうとすると左足のインサイドでボール蹴らないといけません。右足のインサイドでやろうとすると相手のDFに近い方の足なのでひっかけられる可能性が高いんです。左足のインサイドなら、右半身でDFをブロックしつつ左足でプレーすれば安全にボール扱えます。しかし遠藤は右利きです。難しいのですよ。


さらに言えば、遠藤が三苫とのワンツーに成功したとしても、クロス上げる時はやっぱり左足でクロス上げないといかんのです。これだとクロスの精度がどうしても落ちます。やっぱり難しいのです。


左サイドの三苫のカットインを活かしたいなら、ここは絶対に左利きのボランチが欲しいのです。でもそんな選手はおらんのです。左足でワンタッチパスができるボランチが欲しい。でも今の代表にはそれがいないのです。


三苫の突破は現状の日本代表で唯一守備ブロックをぶち壊せる武器ですが、そこに重要なパーツが一枚足らんのです。




攻撃面でも守備面でも足らないものだらけ、でもスペイン戦は明日

ポイチさんの心労は計り知れません。誰にもそれを理解することは出来ないでしょう。


サッカーでチーム組むなら欲しいどうしても欲しいがなかなか手に入らない選手ってのがいます。ポストプレーが出来て点が取れるCF、優れたゲームメイカー、突破力のあるWG、左利きのボランチ。これらは本当に貴重です。W杯クラスのこういった選手は大体ビッグクラブが独占してます。チームに一人でもこういう選手がいたら感謝すべきです。そのくらい貴重なんです。


現在の日本代表にあるのは突破力のあるWG、つまり伊東と三苫だけです。


4年前だったら、大迫と柴崎がいました。でも今は1人はW杯で落選。もう一人は使う目途がたちません。代わりとなれる選手も出てこなかった。それなのにW杯で戦わないといけない。圧倒的に手札が足らないのにも関わらず。しかも更に悪い事に守備の要の冨安と遠藤が怪我してんです。



攻撃の手札があまりに少ない。守備の要は怪我をしている。これで代表監督にどうしろと?


スペイン戦は明日です。ポイチさんの手札は限りなくブタに近い。もっているジョーカーは三苫と伊東のみ。


勝てば無条件突破です。しかし立ちふさがる壁はあまりに高い。



どうする森保一


解決策は・・・俺には浮かびません。