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2022年カタールW杯、日本対スペインの祝勝会、でなくレビュー

はい、勝ちましたね、皆さん。


今日一日ハッピーな気分でした。私です。こんだけ爽快な勝利であれば、別に国民の祝日とかなくても一日中ハッピーな気分なので十分です。素晴らしい勝利でした。


前回のエントリでも述べましたが、あれだけの悪条件の中でスペインに逆転勝利をおさめるというのは並大抵の事じゃありません。そんなわけですので、本日はあの試合のレビューを書いてまとめておきたいと思います。


abema.tv


試合の方はabemaで動画がいつでも見れます。


日本対スペイン、前半戦、日本代表の451守備ブロックについて


先にフォーメーションとスタメンから。


この試合、スペインのブスケツが出ないんじゃないかとか前情報があったのですが、この試合では普通に出てました。そしてスペインはお家芸の433。中盤のペドリ、ガビ、ブスケツは三試合連続ですね。違いはワントップにアセンシオでなくモラタ、右WGがウィリアムズだったって事でしょうか。


一方で日本はこの試合、最初から3421で入りました。ここまで日本は前半は4231から入ってたんですが、この試合では最初から3421です。これはいわゆる広島型ですね。ここ8年くらいかな、この形を採用するチームは増えてます。このシステムは前からプレスにいく場合は343、後ろに引いて守る場合は541、ボール持ってる時は3421となる可変式フォーメーションになります。


日本はこの試合、最初から伊東が右WBに入り、左CBには谷口が入ってます。前田のワントップに鎌田と久保の2シャドー。他はいつも通り。



でもって、この試合なんですが、つまらないと思いますが、最初は日本の守備の話から入ります。これは退屈な話かもしれませんが、この話は避けて通れません。



日本代表はここまでの二試合、前半の最初の10分はハイプレスを行ってました。しかし、この試合ではそれを行いませんでした。前半の入りからいきなり541を自陣で組んで守るという形で入りました。ここは正直言って「おや?」と思った部分です。いつもの日本代表らしくないな、と。ゲームの入り、いきなり「攻めてこい守ってやるぜ」という形から入ったんです。


この試合の守備のポイントとしては、




この円で囲った中盤の3枚、ブスケツ、ガビ、ペドリを試合から消すという戦術上の目的です。この三枚がスペインのポゼッションのキーです。なんでこの3人を試合から消したいかというと、この3人が簡単に前を向いてボール配給できる状態になるとコスタリカみたいな事になるんですよ。ブスケツからサイドに配給されても駄目ですし、ガビとペドリにバイタルで前向かれたら世界中のどんなチームだろうと守れません。この3人は試合から消す必要があるんです。



スペインの中盤三人を試合から消してしまう事、それがこの試合の前半の日本の戦術的目標でした。



さて、その為に日本がどういう事やってたかというと、まず前田にブスケツ見させました。これでブスケツを試合から消せます。次の問題がガビとペドリになります。この二人は通常であれば日本のボランチ二人とマッチアップしており、特に問題はないのですが、実際の所、この二人はちょっと引いてボール受けにくる事があります。この時に誰が見るか、結構気をつけないといけないんです。





なんでここで久保なのかって話なんですが、ここでね、田中碧が出てってしまうと、




スペインはこーいう動きしてくるんですよ。田中碧を前に引っ張り出して、空いたスペースにCFか左WGが入ってくるんです。そしてSBが高い位置を取る。ここで円で囲ったスペース、バイタルエリアというんですが、ここでWGかCFがボール受けて前を向ければそこから一気に決定機に持っていけます。前回のエントリで扱いましたが、これも所謂一つの「中盤のゲームメイクを使った戦術」です。コスタリカはこれでまんまとやられました。スペインに好き放題にバイタル蹂躙されてましたからね。



この試合なんですが、日本の前半の戦術目標は「スペインにバイタルエリアを使わせない」、ここに集約されてました。その為にはどうするべきか?答えは「出来るだけダブルボランチを中央から動かさない事」なんです。スペインはあの手この手で日本のダブルボランチを引っ張りだそうとしてきますが、それに乗ってボランチが引っ張り出されるとやられちゃうんです。


こういう戦術を取った結果、日本の前三人、つまり前田、久保、鎌田の守備負担は異常なレベルに膨らみました。つまり、常時二人の選手を見てないといけない状態になりました。





もうずーっとこんなんです。滅茶苦茶です。でもしょうがないんです。スペインはグループEでもっともバイタルを使うのが上手いチームであり、それに対抗するにはここまでやらないといけないんです。


さらに言えばボールがSBにでた時とかも



こんな感じで対応します。とにかくバイタルエリアの番人である日本のダブルボランチを動かされたくないんです。動かすとやられちゃうんです。逆にいえば、ダブルボランチバイタルエリアにいる限り、スペインはそうそう中央使えません。


もうね、この試合、スペインは日本のボランチが動くと必ずその裏に入ってくる選手がいました。その裏に入ってくる選手は必ずケアしないといけない試合でした。3バックはその動きのケアに最新の注意を払っていた試合です。注意深く試合見てみてください。ボランチが出た後のスペースに入ってくる選手、CBが前に出て捕まえてます。これは徹底しないと絶対やられる奴です。


さて、これで最初の日本代表の守備ブロックの話は終わりです。


ちなみに、この守備戦術を取る代償は何かというと「前3人が異常に体力を消耗する」って所です。ずっと一人で二人を見てるような状態なんでどうしようもないのですがね。


一方で、この試合、日本では体力を温存できる選手も出ます。だれかというとWB。本田さんも解説で言ってましたが、スペインはゆっくりポゼッションします。後ろで回せる時はゆっくり回してサイドチェンジしてました。ポゼッションは8割方スペインです。そうなるとWBは後ろで対面の守備してるだけで良くてそんなに疲れないのですよ。ずーっと後ろで対面見てるだけでサイドをアップダウンする機会はそんなにありません。だから日本代表の二枚看板の片割れである伊東の体力は温存できるんですね。


ちょっと話題は反れますがね、この守備のやり方、やられるとクッソむかつくんです。ポイチさんが広島の監督やってた頃、時々アウェーの試合でやってたんですが、やられると一番ムカつくタイプの守備でした。本当にムカつくんです。やられるとバイタル取るのは殆ど無理で、サイドで勝負するしかなくなるからです。高確率で541ブロックによる塩試合に持ち込まれるんですよ。


見てて「前半は塩試合に持ち込む気だぜえ・・・」って感じでした。


ただ、スペインもやっぱり世界最高レベルのチームです。あっさりと先制しちまいました。前半11分にあっさり先制。これねえ、日本の守備ブロックで誰がどう考えても不味いポイントがありまして、右WBに入ってる伊東の所、あそこ狙われると困るんですよね。


日本の一失点目なんですが、日本の左サイドからファーサイドの伊東の所狙われたんです。日本は本職のWBじゃありません。クロスへの対応は難がある。サイドアタックされて、伊東がファウルでしか止められなかったり、あるいは逆サイドから伊東のところにクロス打ち込まれると困るんです。正直、伊東のWBは守備面で絶対に問題がでるってのはスタメン見た時から思ってた事で、前半11分の失点については、まあしょうがないかなと思ってました。あそこはしょうがないです。



前半から堅く行きたいなら、スペイン戦の前半は酒井使いたいんですよ。でも怪我で使えない。遠藤も使えない。冨安も使えない。スタメンの守備の要3人がいないのに、前半一失点で済んだ訳で、日本は前半、ほぼゲームプラン通りの試合が出来たと評価してよいと思ってます。



スペインの前半もゲームプラン通りです。ポゼッションは8割越えで一点リード。完璧ですね。一方で日本はポゼッションは2割。一点ビハインドですが、ここまではゲームプラン通りです。スペインに殆どバイタル使わせませんでしたから狙い通りの守備は出来てます。



日本対スペイン、後半戦の話


この試合、ポイチさんは後半始まると同時に切り札を投入しました。久保に代えて堂安、長友に代えて三苫です。






ちょっと早いんじゃないかと思いましたが、エースの三苫を後半頭から投入です。そして久保の交代については妥当でした。前半終了間際、abemaのマイクから「タケー頑張れー」って声が聞こえてるんですが、ちょっとね、久保は守備で問題がありましてね、見てて「おいおいそこのスペースは埋めなきゃ駄目だろ」って場所を空けちゃう事があったんです。「あれ、ひょっとして久保もうバテてる?」と思ってしまうシーンがあって気になってました。なのでフレッシュな堂安に代えたのは大変妥当な判断だったと思います。ただ、その代えた堂安がいきなりゴール決めるとは思いませんでした。



さて、この布陣、みればわかりますが、日本のWBは本職じゃありません。中央の守備は前半上手く行ってましたが、サイドの伊東と久保の所だけは怖かった。ところが後半頭から左WBは三苫です。スペインはこれ、サイドアタックしてファーにクロス上げれば良いだけです。そこに本職のDFはいないんだから、そこを狙えばいいだけなのですよ。



後半頭からポイチさんはリスクを取りました。勝負をかけるってメッセージです。塩試合はここまで。リスクを取ってでも点を取るってメッセージです。



そして後半頭、試合は大きく動くことになります。前半開始直後、日本はハイプレスをしませんでしたが、後半開始直後、日本はハイプレスをかけて前からボールを奪う守備に切り替えます。



驚いたことに、これがハマったんですよ。


abema.tv




日本の先制点、動画貼るのでこれで解説いれます。



動画2:34秒のところからですけど、鎌田、三苫、前田のプレスでGKまでボール戻させて、そこに前田がもうチェイスを入れます。ボランチへのパスコースは前田に切られていて、CBのところも堂安が狙っている。なのでGKは空いてるSBへのパスを選ぶんですが、そこにWBの伊東が自分のマーク捨ててプレスに出たんですね。これプレス抜けられたら大ピンチって事なんですが、ここは伊東はリスクを取りました。本田さんはここの伊東褒めてましたが、あそこの判断は本当に良かった。日本はギャンブルに勝ったんです。



そして2:44秒のところでボールがこぼれます。


ここでスペインにやらかしが出ちゃったんです。


堂安の所にボールがこぼれたんですが、そこにスペインのペドリが飛び込んじゃったんです。さらに背中を見せてターンしてしまうというおまけつき。これは絶対やっちゃいけない守備です。あそこは堂安の中へのコースを切って外に追いやらないといけないシーンなんです。


結果として堂安は中央へカットインしてミドルシュートをフリーで撃ち、これがキーパーのニアをぶち抜いて日本は同点。


まー、ペドリやっちまったというシーンですね、見返すとありえない守備でした。もちろん、堂安のシュートはスーパーでしたけどね。





そして立て続けに日本は得点を重ねました。


動画で4:25の所からですが、右サイドの高い位置で伊東がボールもてた所からです。





図でやると、こういう状況が出来ました。この時点ではスペインの守備に特に問題はありません。



で、この時、日本のボランチの田中碧がバイタルに走りこんだんですね。これもリスクのあるプレーなんですが、この時にペドリが、





カットインしてくる伊東に対して中へのコース切る守備やっちまったんです。そして田中碧のマークを捨てた。その結果、何が起きたかというと、



こうなるわけです。ドフリーの田中碧にパス出され、「バイタルエリアで日本のボランチがフリーで前を向く」という状況が突然出来ちまったんです。これ、もうスペインは大ピンチです。一人がおかしな守備やった事で、何でもない状況が突然ピンチになりました。伊東は右利きのWGです。右サイドから中へのカットインはそれほど警戒すべきプレーじゃありません。あそこは田中碧のマークを外してはいけないんです。



そして田中碧は堂安へのパスを選択。




ペドリは一つ前の失点で堂安に中にいってミドル決められてますから堂安の中へのコース切ってます。あの場所ではレフティの中を切って外に行かせて右足でのプレーを強いるのは当然なんですが、ここで大問題。スペインのシステムと日本のシステムのかみ合わせの関係上、大外で三苫が一枚余るんです。あそこにクロスが届いたらスペインはお終いです。


で、その通りの事が起きちまったんです。堂安はGKとCBの間にクロスを入れ、それはこの試合を象徴するプレーに繋がりました。





こいつです。今現在も議論を呼んでる奴。スペインとドイツは認めたくねーでしょうが、入ってますからね、コレ。インプレーです。三苫の折り返しのクロスを田中碧が決めて日本は逆転。



これで日本は2-1ですから、虎の子の一点を守りきれば無条件で突破確定です。あとは守るだけ。



後半、スペインが日本のサイドを狙ってくる事はわかりきってました。そしてポイチさんはそれに合わせて交代カード切っていけばいいだけです。主導権はこちらにある。そして、その通りの采配をポイチさんはやりました。スペインはサイドのアタッカーを交代で強化して、日本の両サイド、WBの所を狙ってきましたが、スペインの交代カードを見てから、ポイチさんは後半23分に鎌田を下げて右のWBに冨安を入れてスペインの右のサイド攻撃を封殺。これで日本の右サイドが突破されて三苫のところにクロスいれられる可能性はなくなりました。



唯一ポイチさんが怖いのは三苫がぶち抜かれる事や三苫が対面止められずにファウルしてしまい、FKやCKから失点する事位でしたが、三苫はサイドの一対一では負けなかった。これはマジででかかったです。


ただ、後半15~40分あたりは、試合そのものより、ドイツ対コスタリカの試合の経過情報のほうが面白かったです。後半13分にコスタリカが同点、後半25分にコスタリカ逆転という激アツ展開。ここで「スペイン、ドイツの同時予選敗退」というまさかの状況が生まれてました。


twitterのTLが物凄い熱気に包まれており、「スペイン、お前予選敗退するのか?」という異常な状況。この状況は日本にとってはうれしくないのです。スペインが最後にギャンブル仕掛けてくる可能性が出てくるので。個人的には「ドイツ、クッソ役にたたねぇ!!」と毒づいてました。


そして、後半28分にドイツ同点ゴール。ここで再びスペインの二位通過が復活。これでスペインは終盤にギャンブルしなくてよくなったんですね。


ここで又ドイツがリードされたら、もうTLが爆発してましたが、この後はドイツが立て続けにゴール決めていって最終的に4-2に。ドイツは二点リードであればスペインが日本と引き分けてくれたら得失点差で突破できたので宿題は済ませました。



もし、コスタリカがリードを保ってたら、スペインはギャンブルに出たでしょうが、何もしないでも二位通過は確定してたのでスペインはギャンブル無しで試合を終わらせました。日本は一位通過。どちらにとっても良い結果でしたね。日本は突破できれば良かったし、スペインも二位通過できればブラジルと違う山に行けるし、初戦はモロッコです。クロアチアよりやりやすい相手です。



悲惨だったのはドイツです。スペインが負けてる以上、ATに6点入れないといけなかったのですが、それは不可能だろって話で。


本当に後半は面白かったです(月並み



次はベスト16なんですが


タイトルで祝勝会とか言ってますが、個人的には「もう十分勝ったから後はボーナスステージ(はぁと」という状況です。



W杯優勝国の二つをぶっ倒しての16強進出です。もう十分楽しませて頂きました。あとはボーナスステージという気分なのですね。自分はあとは気楽に見ます。