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サッカーのマッチレポートなどを中心に。その他サッカーのうんちく系ブログ。

日本代表におけるバイタルの守備のやり方についての話

はい、皆様、こんにちは。超お久しぶりです。またもや間隔空いてしまいましたが、ちょっと気になった事がありまして、本日は現在の日本代表における守備のやり方について取りあげたいと思います。



すでに前回のボスニア・ヘルツェゴビナ戦から一週間以上経ってるので、周回遅れ気味なんですが、2016/6/11 に行われたガンバ対湘南戦や、6/15に行われたガンバ対浦和戦を見て、「バイタルの守備のやり方」について思う事があったので、ちょっと一筆書いておこうと思った次第です。



日本代表対ボスニア・ヘルツェゴビナ代表における失点シーンの話


さて、まずは前回の日本代表の試合の話になります。あの試合、日本は1-2で負けてる訳なんですが、日本の2失点のシーンをキャプで解説しときます。どっちも日本のバイタルでの守備のやり方に問題があります。


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こっちに動画を張っときますが、キャプでやると、



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こうなんですけどね。


この試合なんですが、はっきり言って日本のCB二人がボスニアのCFに一対一で負けまくっていたので失点はしょうがない部分があります。ただし、日本のバイタルの守備方法は正直感心しないので言わしてもらいますが、このやり方は問題があります。


どう問題があるというと、ボランチの柏木です。あそこでCBがボールもった時、引いてくるボスニアボランチを柏木が捕まえて前にでてしまってるんです。その結果として、バイタルが1ボランチになり、その後のプレーで1ボランチの両脇を使われて、CBを前に引っ張り出され、最終ラインに出来たギャップを使われて失点してます。



このシーンだと、柏木にも勿論問題があります。ボールが頭上を越えた時点で、ボランチは最終ラインとの距離をすぐに詰めないといけないんですが、ハッキリ言って遅いです。ただ、柏木みたいな守備専ボランチじゃない選手にそこまで求めるのは酷かもしれません。



実は、これ2失点目も全く同じ形で失点してます。




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こーでしたがね。




これね、2失点ともそうなんですが、ボールが出る前から、ボランチがチェックに出るもんだから、日本のバイタルが1ボランチになってるんです。その結果として、1ボラの両脇がガラ空きになって、そこを使われて失点してます。



前回の試合で、僕が気になったのはココで、全く同じ形で2失点してるんですわ。バイタルの守備方法に明らかに問題がある。この試合、柏木は前半で交代させられて、後半から遠藤航が入ってきましたが、ぶっちゃけバイタル1ボラ問題は後半も継続してました。その結果が後半の2失点目に繋がる訳です。ボランチの対人の強さの問題じゃねぇんですよ。ボランチがボールが出る前からチェックに出て、バイタルが1ボランチになった所をやられている訳ですからね。



後半でもしょちゅう同じ問題が生まれていたんで、チームとして、2列目の守備のやり方に問題があるといわざるを得ません。



今の日本代表なんですが、2列目に浅野とか宇佐美みたいな実質FWといっていい選手を使う傾向があります。こういった選手は守備面では、対面の選手をみるのに精一杯でバイタルのケアまでは頼めません。そういう選手を使っている以上、バイタルからボランチが引っ張り出されないようにトップ下とCFがボランチの前のスペースを消し続ける必要があるんですが、この辺、今の日本代表の守備は適当と言わざるを得ません。


この試合の前半の場合、ボスニアの方はCFとセカンドトップボランチの前のスペースをきちんと消して引いてくる日本のボランチはFWが捕まえてました。結果としてダブルボランチが常にバイタルを固めてましたから、ボスニアバイタルはかなり硬かったです。一方、相手が中央固めていたので、サイドにはスペースがあり、それが前半の宇佐美無双に繋がったわけですけどね。



正直いって、同じボスニア出身監督でも守り方は随分違うなと思った試合だった訳です。




ガンバ大阪バイタル問題について


次にガンバ大阪の話をしときましゅ。今回、周回遅れでボスニア戦の話題を取りあげたのが、最近見たガンバ大阪の2試合が非常に面白かったからです。



6月11日に行われたガンバ大阪対湘南の試合の方ですが、



www.youtube.com



動画張っときますけど、コレです。



この試合なんですが、湘南の3得点は全部スーパーミドルでした。ただし、全部そうでしたが、この試合のガンバの守備方法って、基本的にバイタルが空くんですね。



どういう事かというと、ガンバってチームはサイドを攻められて4バックにギャップが出来た場合、ガンバのボランチが一人、必ず最終ラインのカバーに入るって形を取ってます。そうなると、必然的に、バイタルが1ボラになりますから、1ボラの両脇にはスペースが生まれます。



ガンバの1失点ですが、湘南にサイドを攻められた時、4バックの中央、CBの間にギャップが生まれました。そのギャップを埋める為にボランチがカバーに入ってます。その結果、バイタルがガラ空きになりました。そして、空いたバイタルから湘南のミドルが決まって失点。


2失点目は、これはアデミウソンの怠慢守備です。このシーンの場合、ガンバの守備ブロックは整っており、これといってスペースは生まれてません。ただ、あの位置に持ち上がった下田にアデミウソンがしっかり寄せてればミドル打たれなかったのに、怠慢な寄せしかしなかったので、スーパーミドル突き刺されました。



そして三失点目。これは興奮しましたが、湘南のサイド攻撃の結果、ガンバのCBがサイドに引っ張り出されたので、ボランチが最終ラインのカバーに入りました。このプレーは特に問題はなかったのですが、クリアしたボールが運悪くバイタルに転がりました。ボランチが最終ラインのカバーに入った訳ですから、バイタルにはスペースが出来ます。このこぼれたボールを湘南の下田が再びスーパーミドル突き刺しました。




現在のガンバさんなんですが、前目の選手の守備意識にちょっと問題があります。ボランチが最終ラインのカバーに入る以上、バイタルのカバーをセカンドトップとWGがやらないといけないのですが、ぶっちゃけ、そこが上手く行ってません。第一節の鹿島戦、第四節の神戸戦なんかでも、その辺が上手く行ってなくて失点してます。



でもって、面白いナーと思ったのが、実はこないだのガンバ大阪対浦和の試合んですよね。


前回の湘南戦でバイタルミドルを三発食らい、僕は「同じ守備のやり方してたら浦和に絶対狙われるぞー」とか思ってた訳ですよ。どういう事かってーと、これは湘南戦でのキャプでやりますが、


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これですけど、こういう守備やってたらガンバは絶対浦和にボコられんだろ・・・って守備でした。あそこで3421の2シャドーをフリーで前向かせちゃうような守備やってたら浦和相手はダメです。


さて、ガンバの長谷川監督。対浦和で何したのかっていうと、スタメンをガラッと変えてきてまして、フットボールラボさんからのキャプですいませんが、


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湘南戦

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浦和戦


となってました。このビッグマッチで井手口使ってきたのには驚きましたが、結果的に、これは当たりでした。後半66分に井手口がミドルシュートのブロックに行ったシーンとか、素晴らしい判断の良さでした。湘南戦で散々やられてた形でしたが、きっちりと対応してましたからね。


浦和戦なんですが、ガンバの方は、442でがっちりブロックを組み、ボランチの前のスペースは遠藤とアデミウソンで完全に潰してました。湘南戦では前の守備が適当でボランチが引っ張り出されるシーンがよくありましたが、浦和戦では遠藤とアデミウソンでがっちり鍵かけてましたので、ボランチが前に釣り出されない。結果、ガンバのバイタルにスペースがないって状況でした。


となると浦和としてはサイドなんですが、ガンバの右サイドは阿部と丹羽ががっちり固めてて難しい。ガンバの左サイドは宇佐美なんで、狙い目になるんですが・・・・今の浦和さんって、右サイドの高い位置で違いを作れる選手ってのが・・・いない。


そんなこんなで、ガンバが前半の1点守りきって勝利という結果でした。ガンバは湘南戦からはスタメンも守備のやり方も随分と変えて、非常に守備的に戦ってました。結果はしっかりついてきた訳ですから、あれはあれで良いと思います。



今回の話はバイタルの守備のお話なんですけど、442でバイタルを完全に封鎖したい場合、両サイドの選手の守備、そしてFW二枚がバイタルのケアを行う事が必要不可欠になります。今の日本代表ですが、その部分で上手く行ってません。ガンバさんもスタメンによってムラがあります。今日はそんなお話でしたとさ。

2018FIFAワールドカップアジア2次予選、日本代表対シリア代表のレビューとハリルホジッチ戦術、そして日本サッカーの病について

さて皆さん、お久しぶりでございます。更新が半年近く止まってましたが、久々に日本代表のレビューでもやってみようかと思います。対象の試合は、直近のアフガニスタン戦とシリア代表戦になります。この2試合なのですが、ハリルが色々と戦術のテストをしてくれたおかげで、うちのブログでも書くことが出来た訳です。本当に有り難い話です。うちみたいなブログは監督が戦術いじってくれないと書くことなくて困るのです。



今回のエントリなんですが、シリア戦のレビューとかいいつつ、アフガニスタン戦の話もします。内容的には、いつかやろうと思っていた話なんですが、「サイドにWG貼るタイプのサッカー」と「サイドにWGが貼らないサッカー」の戦術の違い、選手の動き方の違いなんかを扱います。


実は、日本サッカーの場合、「WGを使ったサッカー」をやるチームがそんなに無く、WGを使ったサッカーの代表格である433系はあんまり人気がありません。そのため、ワイドに張ったWGを使うサッカーってのが過小評価されてると思う事もあるわけです。レーブのドイツが使っていた4231のシステムはSBとWGがサイドに張り付いてるタイプだったんですけどね。まあ433になってからシステムが変わりましたが。



という訳で、本日はまずシリア戦の日本代表のシステムと戦術の話をしてから、アフガニスタンでハリルホジッチが試していたシステムの話をします。二つのフォメを比較すると、色々と面白い事がわかります。



シリア戦における日本代表の戦術とシステムの話、ハリルホジッチジャパンの戦術のおさらい。


まずは、先日のシリア戦の日本代表のシステムの話から入りましょう。随分長い事、日本代表のレビューしてなかったので、簡単にハリルホジッチの戦術のおさらいから入ります。


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フォメはこうでした。4231で、ワントップと2列目はいつもの。ボランチは長谷部と山口蛍、4バックは長友、モリゲ、マヤ、ゴートクの並びです。相手のシリアは4141を採用してました。香川にアンカーを貼り付けたかったんでしょう。


フォメはザック時代と一緒ですが、ハリルホジッチは、ボランチの二人の片方にゲームメーカーでなくて、働き蜂タイプを入れてるところに特徴があります。また、原口を時々ボランチで使ってますが、ボランチに前への攻撃参加が得意な選手を起用している所にも特徴があります。



こういった人選は、通常、サイドにWGを張らせるタイプの4231で使われます。ハリルホジッチの戦術面での狙いとしては、


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こうなりますが、このシステムの肝はSBとWGをサイドに張り出させる事で、相手のブロックのSBとCBの間、SHとボランチの間にギャップを作る事が狙いになります。その上で、このギャップをトップ下、ボランチ、CFが使っていくことになります。具体的には


1、ボランチのSBとCBの間に走り込み
2、トップ下がSHとボランチの間でボールを貰って前を向いて配球する
3,SBとCBの間に流れて来たCFのポストプレーからの展開



といった形を狙いとして持っていました。相手が中央を固めてくるなら、サイドチェンジからサイドに張り付いてるSBとWGのコンビネーションで崩していく、といった形となります。ハリルホジッチの4231の戦術での狙いとしては、こんな所になります。特にボランチの攻撃参加が多いチームに仕上がってます。ザック時代よりボランチが前に走り込むのを本当によく見るようになりました。




上記の三つのやり方を使った攻撃シーンをシリア戦のキャプで説明しますが、



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前半27、これはボランチの走り込みを使った攻撃で、サイドチェンジからSBとCBの間にボランチがフリーランかけるって攻撃。これはハリルホジッチがよくやってる攻撃です。山口と長谷部は前への攻撃参加は得意な方ですから、これは正しい使い方。このシーンだと走り込んだ長谷部はフリーになってますから、あそこにパスが出せればビッグチャンスになります。



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前30、これはCFがSBとCBの間に走りこんだケース。この動きで相手のアンカー引っ張って、宇佐美が中にカットインするコース作ってます。岡崎はこういう動きもサボらずやってくれます。



これらのプレーは、以前にブログで扱ってますので、


pal-9999.hatenablog.com


興味のある方はどうぞ。WGのカットインを使ったコンビネーションプレーです。SBとCBの間に走り込む選手に相手チームのボランチがついてくるならカットイン、ついてこないならそのままパスをつけてサイドを抉ってクロスという形に持ち込むのが多いですね。


お次は


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これはCFのポストプレーからトップ下のギャップ受け、前半41。ここは本田がサイドに張ってる状態なんですけど、あそこにいてくれるとSBとCBの間のスペースをボランチとトップ下が使いやすいんです。SBがどうしてもWGにひっぱられますからね。


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これはワントップのポストプレーから展開です。後31からの奴ですね。ここは本当に絵に描いたようなポストプレーからのコンビネーションが決まってます。SBにはたいた後、WGがサイドに開く動きでSBとCBの間にスペース作って、そこのスペース使ってCFがポストプレーをしてトップ下がラストパス。本当にお手本みたいなコンビネーションが決まってます。




これらの攻撃なんですが、シリアがアレな守備やってるんで通った部分もありますが、ワイドのアタッカーを使って相手を横に広げて攻撃するってコンセプトがきちんと出来てるシーンなんで紹介しました。


ハリルホジッチなんですが、就任当初は速攻速攻言ってましたが、「アジアは日本のホームじゃ極端なドン引きしてくる+アジアは1点リードされても前にでてこない」という現実を目にした結果、最近はあんまし速攻速攻言わなくなった感じです。アジア予選における日本代表というのは「いかにドン引きアジアから点を取るか」という戦いになりますので、しょうがないと思います。これが現実です。先に2点リードしない限り、アジアは前にでてきません。


なので、ハリルさんも引いた相手から点取るために色々とやってる訳です。あの監督、きちんと考えてチーム作ってます。


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得点シーンは、1点目オウンゴール、2点目はシリアのクリアミスから香川の個人技、3点目はカウンター、4点目は相手のクリアミスから、五点目は長友のオーバーラップからクロス、でしたね。



全体として日本代表は攻撃面では良い試合したと思うのですが、問題もありました。やっぱり本田が中に入りすぎる問題がこの試合でも起きていて、


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前18のシーンですが、ここね、本田はワイドに開いて欲しいシーンなんです。この後、本田はワイドに開いてるんですけど、ワンテンポ遅かったです。そのため、SBとCBの間にスペースが無いから、CFやボランチが使いたいスペースを本田が潰しちゃってるんです。


WGがああいうポジショニングを取ると、CFのポストプレー、トップ下のギャップ受け、ボランチの前への走り込み、全部出来なくなります。



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これは前35のシーンですけど、ここもそうなんですが、本田が中に入りすぎてます。本田はこの時、バックステップでサイドに開いていけば、SBがついてきますから、SBとCBの間で香川が使うスペースが出来ます。あそこに香川が動くとアンカーがついてくるでしょうけど、そしたら、バイタルが無人になりますから、そしたら本田にボールつけて、本田がドリブルでカットインすれば良いんです。




こういうプレーですけどね。このシーンの場合、あそこで本田がボール貰った場合、マークがついてる状態でフリックで香川にボールを出すか、マークついた状態からターンするっていう難易度の高いプレーを選択するしかなくなります。わざわざそんな難易度の高いプレーしなくても、サイドに開いて、香川にSBとCBの間のスペース使わせるか、あるいは香川にアンカーがついてくるならバイタルが空きますから、それからサイドでボール受けてカットインしたほうがずーっと攻撃はスムーズに行くんです。



この問題なんですけど、実は、岡田ジャパン時代に俊輔が右サイドやってた頃、ザックジャパン時代に香川が左サイドやってた頃にもよく引き起こされてました。日本代表名物サイドアタッカーがサイドに張っていられない問題。日本のサイドアタッカーって、やたらと中に入りたがる傾向があり、何だかなあ・・・・と思う事が多いです。それやっちゃうと逆足のウィング使う意味ないでしょうと。逆足のWG使うメリットはまさにここで、カットインドリブルを使った攻撃したいから逆足のWGを使うわけです。


この形を取れば、それほど人数かけなくてもフィニッシュまで持ち込めるので攻守のバランスを崩さなくて良いんです。ここがもう一つのメリットです。



この問題はハリルホジッチが就任して以来、ずーっと続いており、「どうするのかなー」と思っていたのですが、ハリルホジッチがアフガニスタン戦で戦術いじっていて「おお、そっち系の戦術の引き出しも持ってるのね!」と、ちょっと感心したので、それについて触れておきます。ハリル先生がアフガニスタン戦で戦術いじってくれてたんで、今回のエントリ書く気になったんですけどもね。



アフガニスタン戦の日本代表の戦術のお話

次はアフガニスタン戦の話になります。試合の順序は変わってしまいますが日本代表の攻撃時の問題と絡めると、この試合の戦術テストの意味がわかりやすくなるので、それについて説明しときます。




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試合なんですが、この試合の日本代表はスタメンとフォメいじってまして、4312となってました。日本代表で2トップみたのは久しぶりです。しかし原口はボランチで使われたりインサイドハーフで使われたりと便利屋の如き扱われ方です。



この試合で、ハリルホジッチは、結構毛色の違う戦術を試してます。図でやると



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こーなります。両SBの位置が超高い。4312はもともとサイドの高い位置にアタッカーがいないシステムなんでサイドはほぼ全部SBのプレーエリアになるんですけど、アフガニスタン戦の両SBの位置取りはとんでもなく高かったです。どれくらい高かったかというと、



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これは、アフガニスタン戦の前17分のシーンですが、両SBが相手アタッキングサードでプレーしてるんですね。正直呆れましたが、ただ、この日の日本代表は、常にサイドの高い位置にアタッカーがいる状態でした。


両SB上げるサッカーってのは、日本代表で見るのは久しぶりです。ザックはこれを絶対やりませんでしたからね。イタリア人監督は「SBはつるべの動きをするものだ」というセオリーに忠実なので両SB上げるサッカーはまずやりません。ハリルホジッチはつるべの動きにはそれほどこだわりはないようです。





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このシーンでもそうなんですけど、とにかく酒井ゴリの位置が高い。シリア戦だと、あの位置にはアタッカーがいない事がよくありました。



で、この高い位置に張り出したアタッカーが常に入るって事は何が起きるかっていうと、


日本代表 [ハリルホジッチ] マッチレポート | 2016年3月24日 日本 vs アフガニスタン | Football LAB ~サッカーをデータで楽しむ~



こっちのサイトで数字に出てますが、クロス47本って数字に繋がる訳です。この日はサイドチェンジがボンボン入ってましたが、あの位置にアタッカーがいないと、ボランチやCBは試合を大きく動かせません。普段の日本代表だと、あの位置にアタッカーが居ないため、サイドチェンジができないって問題が結構起きるんですけど、アフガニスタン戦みたいに両SB上げたり、あるいはインサイドハーフがサイドに張り出したりするなら、そういった問題は起きないわけです。


アフガニスタン戦なんですけど、後半もそうだったんですが、


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常に両サイドの高い位置にアタッカーがいるんです。後半12分の攻撃とかは普通に見事な攻撃で


www.youtube.com




清武の得点ですね。これはキレーな攻撃でした。



これ系の「中央3名のアタッカー+両サイドの高い位置に常にアタッカー」がいるシステムってのは、日本だとミシャ式3421サッカーが有名ですが、欧州だとドルトムントがやってます。ドルトムントの場合、433ベースから変形して両WGが中に絞って両SBが上がるってシステムですけどもね。実はドイツ代表なんかも最近はこっち系です。



でもって、このシステムの場合、WGを使わないので「サイドアタッカーがサイドに張っていられない病」という日本代表の特異な病が発症しないんです。日本代表がこのシステムを使う最大のメリットは個人的にはコレです。ハリルホジッチがこのシステムをテストした時に思ったのは、「あらハリルさん、意外と本田の病気を気にしてるのね」という事でした。こっち系のシステム使うんであれば、本田の中に入りたがる病は、さほど問題にはなりません。そもそもサイドで使う事はありませんから。




最後に日本代表の不治の病について


最後に日本代表の不治の病について言及しておきます。日本代表を随分長い事見てますが、このチーム、誰が監督やっても治らない病気ってのがあります。今回のエントリでは、「サイドアタッカーがサイドに張っていられない病」の話をメインにやってきましたが、もう二つほどありまして、



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これは前半27分に日本が数的不利カウンターを受けたシーンのキャプで、



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これはシリア戦40分に数的不利カウンター食らった時のキャプです。どちらのケースでも原因は一緒です。DFとボランチが軽率にスライディングし、それがかわされたせいで数的不利、数的同数カウンターを食らうことになりました。特に前半40分のマヤのスライディングは画面の前で草生やしました。



守備においてはスライディングというのは最後の手段です。ただし、日本代表においては最後の手段を最初にぶっぱなす傾向があります。



日本のサッカー教本でも、ドイツのサッカー教本でも、オランダのサッカー教本でも、イタリアのサッカー教本でも、「スライディングは最後の手段」という点で一致してます。ただ、最後の手段をどの段階でぶっぱなすかは、国によって差異があるようです。



スライディング病」と僕は呼んでいますが、日本代表ってチームではDFが滑ってはいけない場面で滑ってかわされてカウンター食らうってのがホントに多いです。




そして最後が、皆さんお馴染みかとは思いますが、「カミカゼアタック病」です。


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実に麗しい4対5が出来てます。


根本的に前に人数かけ過ぎでして、シリア相手に4対5作られるとか草です草。アジア相手に前に人数かけすぎて、数的同数、数的不利カウンター食らうのは日本代表のお家芸です。





サイドアタッカーがサイドに張っていられない病」、「スライディング病」、「カミカゼアタック病」は日本サッカーの風土病みたいなモンでして、治らない病です。誰が代表の監督やっても発症してますので、僕はもう治らない病だと割切って見てます。よく日本の守備はディレイ中心とか言われますが、攻守の切り替えの時、SBやCB、ボランチがいきなり相手のアタッカーにスライディングするのを何度も何度も何度も見てきました。僕は「日本の守備はディレイとか言う人は、切り替えの時にいきなり滑るDFが沢山いるの見てないんだろうか?」と不思議に思うことが多いです。




これね、皆様も割切って感染観戦なさることオススメいたします。文句言っても治りません。治った試しがありません。もはや日本サッカー文化の一部となっており、不治の病です。



ぶっちゃけた話、後ろ二つは見てるだけなら、スリルがあって非常に面白いですから、エンタメとしては間違ってません。前のに関してはWG使わないシステム使えば問題は起きません。



今日はこのあたりで。ではでは。

スポーツにおけるジャイアントキリング~スポーツ別での大番狂わせのお話~

さて皆さん、こんにちは。本日はサッカーの話じゃなくて、タイトルの通りに「ジャイアントキリング」の話でもしようかと思います。この話をしようと思ったのは、皆さんご存じでしょうが、ラグビーW杯で、日本代表が南アフリカ代表を破るという快挙を成し遂げたからです。この試合については、すでに各所で話題になってますし、試合内容については触れません。日本代表対南アフリカ代表の試合の内容については、他所の記事を当たってみてくださいな。



あらかじめ言っておきますが、ラグビー日本代表が成し遂げた事は、サッカーを喩えに使って説明するのは困難です。というのも、ラグビーはあらゆるスポーツの中で、最もジャイアントキリングが起きにくいスポーツだからで、ラグビー日本代表の五郎丸が「ラグビーに奇跡はない」って話をしてますが、ラグビーで強いチームは格下には負けません。そーゆースポーツの為に、劇的な試合展開と相まって「スポーツ史上最大の番狂わせ」とまで言われている訳です。


うちのブログは、サッカーブログなんで、ジャイキリの話をする場合には、まずサッカーの話から始めるのが筋でしょう。というわけで、日本サッカー史上に輝く最初の大金星、「ベルリンの奇跡」の話から入りますけど、


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youtubeにこんなのが上がってましたが、1936年、ベルリンのヘルタ・プラッツ・スタジアムにおいて、日本代表がスウェーデン代表を3-2で打ち破った試合です。当時、アジアから踏み出した事がなかった日本代表だったんですが、ベルリンオリンピックに参加することになったわけです。この時は「ベルリンへ!ベルリンへ!」を派遣費用のための合い言葉に寄付金が募られたんですが、始まってみると、なんと一回戦で優勝候補の一角スウェーデンと当たることになり、「とんだものと当たったとがっかりし」状態になってました。スウェーデンは日本ではサッカーやってるの?といぶかしんで状態でした。惨敗は覚悟の上での戦いとなったわけです。


試合は前半はスウェーデンが二点リードで折り返したのですが、後半から日本が巻き返し、後半だけで3点を取り返して逆転勝ち。この時の日本の逆転時のスウェーデンラジオの実況、



「Japaner, Japaner, Japaner(日本人だ、日本人だ、日本人が!)」


はスウェーデンにおいて、最も有名な実況の一つとなっています。もっとも日本代表はその後のイタリア戦で0-8で負けて敗退しちゃうんですけどね。



サッカーにおいては、この手のジャイキリは珍しい話ではなくて、W杯の有名所だと、


1,W杯史上最大の番狂わせとも呼ばれる、第四回ブラジルW杯におけるアメリカ代表(アマチュアの寄せ集めだった)のイングランド代表に対する勝利
2,第八回イングランドW杯における北朝鮮のイタリア代表に対する勝利
3、第11回アルゼンチン大会におけるチュニジアのメキシコ戦での3-1での勝利


なんかが上げられます。ちなみに、この三つが有名なのは、1に関しては、映画にまでなってますし、主将のライトは敗戦のスケープゴートにされました。2に関しては、「コレア」が第一次大戦でイタリアが惨敗した戦場、「カポレット」と並ぶ不名誉な敗北の代名詞にまでなったからです。ちなみに、イタリア代表は空港で怒り狂ったサポに出迎えられ、トマトと卵を投げつけられ、代表監督は即刻解任されるというオチがついてます。3の被害者はメキシコで、選手は空港でトマトと石の出迎えを受け、選手の自宅には脅迫状が届く始末でした。


この三つを取りあげたのは、有名所だという事の他に、ノンプロのアマチュア集団にプロ混じりのチームが負けたという、しょーもない敗戦だったからです。


サッカーってスポーツは、今回取りあげるスポーツの中で、もっとも番狂わせが起きやすいスポーツです。最近では、マンチェスターシティがウェストハムに負け、バルサがセルタに負けてますけど、この手のジャイキリはサッカーでは割と頻繁に起きます。


サッカーにおいては、「ジャイキリ」が頻繁に起きるって事を一番よく知ってるのが、オンラインのブックメーカーです。



ブックメーカーのオッズを使って説明すると、基本的にコイントスが賭の対象なら、どちらかが出る確率は1対1です。この場合、オッズは2.0(デシマル値)という形で表示されます。サッカーにおいては、bet365の最新のオッズで説明すると、次の「FCバルセロナ対ラス・パルマス」では、バルサの勝利が1.07、「レアル対マラガ」ではレアルの勝利が1.12となってます。「うわ、低っ!」と思われるかもしれませんね。でもね、このオッズだと、ラス・パルマスだろうと、マラガだろうと、100試合やれば7~8試合はバルサやレアルに勝てるって位のオッズなんです。


サッカーにおいては地球上最強のチームであっても、格下に負ける可能性ってのが常に有るんです。それがサッカーってスポーツなんですわ。だからブックメーカーは、サッカーでは圧倒的な本命チームに対しても賭けを受けてくれます。




さて、ここまでサッカーってスポーツはジャイキリが起こりやすいスポーツだって話をしてきました。じゃあ、他のスポーツは?という話になるんですが、ここで



サッカー データ革命 ロングボールは時代遅れか

サッカー データ革命 ロングボールは時代遅れか




この本紹介しときますけど、この本にサッカー、ハンドボール、バスケットボール、アメリカンフットボール、野球のオッズの中央値と分布の話があります。それによると、スポーツ別の本命チームのオッズの中央値は


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ハンドボール1.28、NBA1.42、NFL1.49、サッカー1.95


こうなってるそうです。ちなみにラグビーW杯の場合、オッズの中央値が1.06とかです。


各スポーツの本命オッズを調べていけば一目瞭然なんですが、ハンドボールとラグビーは、笑っちゃうほどジャイキリが起きません。だから、ブックメーカーは本命のオッズをもの凄く低く設定します。ラグビーに関しては、本命のオッズが1.00とかザラです。ウィリアムヒルでオッズ見て貰えば良いのですが、本命のオッズが異常に低いのがラグビーです。日本がニュージーランド代表とやったら、100回やって100回負けるオッズがつくのがラグビーです。


なんでラグビーではジャイキリが少ないのか。それは、他の人が扱ってるのでググって下さい。


次にジャイキリが少ないのがハンドボール。これもジャイキリが少ないスポーツで、ホントに実力差が結果に反映されます。




2014-2015星取表 ジャパンラグビー公式サイト



ここで、ジャパンラグビー公式サイトの星取表貼っときますけど、ラグビーってスポーツは上位と下位で笑える程、差が出ます。星取り表みてもらえばわかると思うんですが、下位チームは身も蓋も無く、上位チームに全敗してます。これは、ハンドボールも同じで、



星取表 | 日本ハンドボールリーグ


こっちに日本ハンドボールリーグの星取表貼っときますが、ハンドの世界はラグビーほどじゃないですが、下位は上位に勝てません。



1~3位のチームが、8位以下にチームが負けるなんてありえない。それがラグビー、ハンドボールの世界です。実力差が結果にはっきりと反映されるスポーツなんです。この二つに共通するのは、とにかくコンタクトプレーが多いって所でして、フィジカル差がはっきり結果に反映されるせいだとも言われます。(もっとも同じフルコンタクトのアメフトは以外とジャイキリ多いんですが)



一方で、サッカーの世界では、


J. League Data Site



こうなるんですけどね。これは2014のJ1の話ですが、ラグビーやハンドと違って、サッカーは7~9位のチームであっても、上位3チームに勝てちゃうんです。それどころか、15位以下のチームでも、上位3チームに勝つことすらある。



この「ラグビー、ハンド」のジャイキリ起きない勢と「野球、サッカー」のジャイキリ上等勢の中間に位置するのが、NBAとNFLになります。ただ、ここはちょっと説明が必要ですね。NBAにしろ、NFLにしろ、ここは戦力均衡に力をいれてるプロスポーツでして、野球やサッカーほど戦力が特定のチームに集中するって事が起きてません。NFLなんかは、野球やサッカーみたいに戦力集中させたら、ひょっとしたらラグビー化するのかもしれません。




一口にスポーツといっても、このように、大番狂わせが多いスポーツと、大番狂わせが全く起きないスポーツってのが存在する訳です。「勝負はやってみるまでわからない」とは、よく言われますが、現実的には、やる前から結果がわかってしまうスポーツもあるって事です。そういうスポーツは、プロ化する場合、ある程度の戦力均衡策が必要と言われます。逆に、サッカーや野球の場合、大番狂わせが多い為、一試合に限っては、結果の予測が困難を極めます。なので、戦力均衡をやらず、不平等そのものなリーグ運営をしても、試合そのものの魅力は損なわれないという見方も出来ます。



勿論「ジャイキリが起きないからラグビーやハンドはつまらない」という人もいます。サッカーとか野球好きな人は、そういう人多いと思います。一方で、アメリカではMay the best team winなんて言葉がありますが、「最高のチームが勝ちますように」って意味ですが、「勝利に相応しくないチームが勝ってしまう」 事があるのがサッカーと野球だったりします。ラグビーやハンドは、基本的に強いチームがかつスポーツなんで、練習や努力は選手を裏切りません。それがラグビーやハンドの良い所だという人もいます。



今回はジャイキリの話だったんですが、スポーツの中には、「やる前から結果がわかりきってるスポーツ」と「結果は誰にもわからないスポーツ」というのがあります。ただ、それぞれのスポーツにはそれぞれの楽しみ方があり、結果の予測性ってのは、必ずしも大きな問題ではなかったります。今日はそんなお話でしたとさ。



それでは。