サッカーにおけるに個人戦術のお話(主に守備)
さて、皆さん、こんにちは。本日は、又、地味な話なんですが、サッカーにおける守備のお話をしたいと思います。前回もちょいとしましたが、今回は、守備戦術の中でも、個人戦術(一対一)なんかの話がメインです。そういや、守備のチーム戦術の話はしてきたけど、個人戦術の話は全くしてこなかったので、良い機会なんで、やっとこうと思います。
ちなみに、今回の奴はゾーンディフェンスの話です。
まあ、これはホントに基本のお話であって、わざわざそんな基本的な話をエントリにする必要なんてあんのかよ、というアレがあるんですが、書こうと思ったきっかけは何かってーと、
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これです。サッカーダイジェストの最新号に、毎年恒例のJ1全ゴールのDVDがついてまして、そいつにサッカーダイジェストの編集部が選んだベスト10ゴールってのが載ってたわけです。
で、どれも凄いゴールなんですけど、そのうち4つほど、DFが基本的な部分でミスをした事がきっかけで生まれたゴールってのがありまして、今日はそれと絡めて、サッカーにおける守備の基本というか、個人戦術とグループ戦術の話をしようと思ったわけですね。
とりあえず、まずyoutubeから、サカダイの編集部が選んだベスト10ゴールの動画探してきたんで、貼っときます。
10位 柏レイソル、工藤のゴール
2013 J1 第10節 柏レイソル 2-1 横浜F・マリノス 06/05/2013 - YouTube
9位 鹿島、大迫のゴール
J1 第2節 鹿島アントラーズ対ベガルタ仙台 得点ハイライト - YouTube
8位 広島、高萩のゴール
2013 J1 第13節 湘南ベルマーレ 0-2 サンフレッチェ広島 25/05 ...
7位 大宮、ズラタンのゴール
セレッソ大阪VS大宮アルディージャ ズラタンのゴール J1第6節 4月13日 - YouTube
6位 浦和、原口のゴール
2013 J1 第10節 セレッソ大阪 2-2 浦和レッズ 06/05/2013 - YouTube
5位、川崎、大久保のゴール
2013 J1 第23節 川崎フロンターレ 2-1 大宮アルディージャ 28/08/2013 - YouTube
4位 C大阪 柿谷のゴール
2013 J1 第13節 セレッソ大阪 2-1 名古屋グランパス 25/05/2013 ...
3位 横浜FM、斎藤のゴール
2013 J1 第16節 横浜F・マリノス 2-1 大宮アルディージャ 13/07 ...
2位 横浜FM 俊輔のゴール
J1第23節 横浜Fマリノス 3-0 浦和レッズ [ハイライト] - YouTube
1位 広島、佐藤寿人のゴール
2013/09/28/ サガン鳥栖 0-2 サンフレッチェ広島 佐藤寿人、スーパーゴー ...
となっております。とりあえず、それぞれのハイライトをちょっと見てみて下さい。
ここで、問題。
この中で、約一名、DFが一対一の局面で絶対やってはいけないプレーを二回やっており、それが原因でゴール決められている選手がいます。それは誰でしょう?
答えは、守備の個人戦術の話の話をしながら、お答えします。ホントに基礎的なミスをやってるので、分かる人にはすぐ分かると思います。
サッカーにおける守備の個人戦術
さて、こっからが今回のエントリの主題になります。サッカーにおいて、基礎の基礎ですが、一対一の局面での個人戦術の話です。
まず、一対一の局面というのは、前を向いているアタッカーとの一対一、アタッカーの背後からの一対一の局面に分けられます。さらにそれを細分化すると、
個人戦術
│
│
├→ 前を向いたアタッカーとの一対一
│ │
│ ├→ 中央での一対一
│ │ │
│ │ ├→ 長距離
│ │ └→ 短距離
│ └→サイドでの一対一
│ ├→ 長距離
│ └→ 短距離
│
│
├→ アタッカーの背後からの一対一
│ │
│ ├→ 中央での一対一
│ │ │
│ │ ├→ アタッカーがボールを持っている
│ │ │ │
│ │ │ ├→ 中央へのパス
│ │ │ └→ サイドへのパス
│ │ └→ アタッカーがまだボールを持っていない
│ └→サイドでの一対一
│ ├→ アタッカーがボールを持っている
│ └→ アタッカーがまだボールを持っていない
│
│
└→数的不利(中央、もしくはサイドでの1対2)
局面ごとに分解すると、こんな具合になります。それぞれの局面ごとにおいて、守り方のセオリーみたいなモンが存在します。
でもって、サッカーには無数のセオリーが存在しまして、互いに相反するみたいな奴もあります。例えば、ヨーロッパ式の4バックと、南米式の4バックだと、ちょっと毛色が違います。
前を向いたアタッカーとの一対一
これ、守備のセオリーから入りますけど、「前を向いてボールをキープしてる相手に対して無闇にボールを奪いにいってはいけない」ってのがあります。
ボールを奪えずにかわされたら、相手に馬鹿みたいにスペースを与えてしまい、さらに味方選手がカバーに走らないといけなくなるため、チームにとって非常に迷惑な行為になるからです。前をむいた相手に対して、無闇にボールを奪いに行くのは基本的に間違いです。特に中央での一対一ではそうです。中央での一対一では、サイドと違い、守備の助けになるサイドラインがありません。中央で前向いた相手との一対一の場合、ディレイ&ジョッキーでサイドにボールを出させます。できれば、アタッカーの不得意なサイド、ドリブルで使う足の逆側のサイドに追い込んでいき、アタッカーの逆足でキープさせる状況に持って行ければ満点です。
基本的に、中央でボールを持って前を向いたアタッカーとDFの一対一ではアタッカーが有利な状況となります。この状態で、DFが適切な個人戦術上の行動を取らなかった場合、その後には悲惨な結果が多くの場合、待ち構えています。
ここで、問題にしたいのが、
5位、川崎、大久保のゴール
2013 J1 第23節 川崎フロンターレ 2-1 大宮アルディージャ 28/08/2013 - YouTube
こいつです。中央で大久保と大宮のボランチの一対一の状況が出来てるんですけど、大宮のほうのボランチが、前向いてボールもった大久保にたいして、つっかけちゃってるんですね。しかも、大久保から見て右方向へのコースを空けてしまった。大久保は右足が利き足なんで、こっち方向へのドリブルはゴールに繋がるアクションになりやすい。しかも、大宮のDFは川崎側からみて左サイドに絞っているってので、絶対にボールを持ち出させてはいけない方向に行かせてしまっている。
大久保のシュートはスーパーでしたけど、このシーンでは、大宮のボランチの一対一での対応の不味さ、それも基本的な部分でミスがでているので、その後に悲惨な結果が待っていたのは、当然とも言えます。不用意に大久保クラスのアタッカーにつっかけて、しかもその後、行かせていけない方向に突破させてしまっているわけで、これはホントに不味いプレーでした。
次に、もう一つ。こっちは技術論の話にもなるんですが、どんな局面であろうと、「前を向いたアタッカーに背を向けてターンをしてはならない」ってのがあります。左右に振られる中で、DFがアタッカーに背を向けてターンしてしまうと、その瞬間、必然的に相手アタッカーを見えない瞬間が出来るからで、能力の高いアタッカーであれば、その瞬間に決定的なプレーをしてしまうからです。
「そんなん基本的な話じゃねーか、馬鹿か?」と思う人もいるかもしれませんけど、コレね、やらかしてるDFがいるわけですよ。これが、最初の問題の答えになります。やらかしてるDFがいるんです。
7位 大宮、ズラタンのゴール
セレッソ大阪VS大宮アルディージャ ズラタンのゴール J1第6節 4月13日 - YouTube
6位 浦和、原口のゴール
2013 J1 第10節 セレッソ大阪 2-2 浦和レッズ 06/05/2013 - YouTube
この二つです。やらかしてるのはセレッソのCB、茂庭です。茂庭のプレーに注目して見てください。ズラタン相手、原口相手に背を向けてターンしてしまい、その後にシュート打たれてます。
これ、ズラタンや原口クラスの相手にはプロのCBなら絶対にやってはいけないプレーで、ズラタン相手、原口相手に、茂庭が背中を見せてターンしちゃってるんです。これは絶対にやっちゃいけない。理由は前述した通り。
これねえ、今回のエントリ書いた理由でもあるんですが、茂庭って、日本代表にも選ばれた事があるCBな訳です。そういう選手が、こういう基本的な所でミスする事があるんですよ。前回のエントリで話をした事でもありますが、時々、日本人DFって、信じられないようなミスをすることがあるんです。
勿論、海外のDFもやらかすときはやらかしますけどね。ちょっと、その話も含めて、次に「背後からの一対一」の話をしましょう。
アタッカーの背後からの一対一
今度は、アタッカーの背後からの一対一になります。こっちは、特にCBに多い状況なんですけど、この場合、基本的にDFが有利になります。というのも、ボールと相手アタッカーを同一の視野に入れてアクションを起こせる状況が多い為です。
この状況で、一番理想的なのは、相手のパスをインターセプトする事です。ただし、それが出来ずに、相手アタッカーの足下にボールが入ってしまった場合、適切な行動を取る必要があります。
これ僕の私見ですけどJリーグでは、アタッカーの背後からの一対一でミスが起きる事が多いです。日本代表の試合で、中澤とか闘莉王がアタッカーの背後からの一対一でやらかすことがあって、僕は、どうにも、日本人DFは、ここでのミスが多い印象をもっています。
ただ、海外のDFでもやらかすときはやらかします。ユーロでのドイツ対イタリアで、フンメルスがやらかしました。動画貼っときますが、
EURO 2012 準決勝バロテッリ2発! - YouTube
こいつです。ドイツの失点、最初のは完全にフンメルスのやらかし。この一点目がドイツに重くのしかかる事になります。
何がいけないかってーと、サイドでフンメルスとカッサーノの一対一が出来たわけです。この時、カッサーノはゴールに向けて背を向けた状態で、この時にフンメルスに求められるのは、絶対にカッサーノをゴールに向けてターンさせない事。
ところが、フンメルス、カッサーノに対して、不用意に足出して態勢を崩してしまい、結果としてカッサーノにゴール方向にターンされちゃう訳です。これは絶対やっちゃいけないプレーでして、その後にバロテッリがゴール決めたんですけど、この最大の原因は、フンメルスのやらかしです。
でもって、これ、日本代表で闘莉王もやってるんですよ。2009年のオランダ戦ですけどね。
日本 VS オランダ(Japan vs Netherlands)2009-09-05 - YouTube
日本の2失点目の闘莉王の対応が問題なんですけど、中央でボールを受けたデセーブに対して、闘莉王がマークに出たわけです。この時、デセーブはゴールに背を向けており、やはり、ここではターンさせない事が一番重要です。ところが、闘莉王は不用意に足出して、態勢を崩してしまい、その結果としてターンされてしまってるんです。あとはスナイデルのゴラッソが決まって日本が2失点目。これ、完全に闘莉王のやらかしでして、CBがやっちゃいけないプレーをやってます。
闘莉王の欠点なんですけど、時々、この手のやらかしをするのと、攻撃の時に「急ぎすぎる」ってのがあります。これは、サカダイのベストゴール10に入ってる、柿谷が名古屋相手に決めたゴールの奴でもそうでした。
4位 C大阪 柿谷のゴール
2013 J1 第13節 セレッソ大阪 2-1 名古屋グランパス 25/05/2013 ...
これですけどね。何が不味いって、闘莉王、マークついてる相手に左足でパス出してるんです(逆足でのパスは体の向きからコースを読みやすい)。その結果として、セレッソの枝村は簡単にインターセプトのコースに入ることが出来、そこから一気にショートカウンターでセレッソに持っていかれてます。日本代表や名古屋で、闘莉王は似たような事をやっており、スペイン人のエチャリであったり、イタリア人監督に、揃ってこの部分を指摘されてます。闘莉王はフィード上手い選手なんですけど、時々、無謀すぎるパス入れる事があり、これは結構な問題だったりします。これは、守備戦術の話というより、ビルドアップの話なんで、この辺りでやめときます。
アタッカーとの背後からの一対一では、基本的にDF有利なんですけど、対応ミスると致命傷になります。こないだ、ミラン対インテルでありましたが、ミランのポーリが、ゴールに背を向けてる長友に対して体を寄せすぎてしまい、バランス崩して長友に入れ替わられてしまうってミスをやってました。しっかり寄せて前向かせないのは基本ですが、寄せすぎて入れ替わられるのは厳禁です。
もっとも、しっかり寄せないと、
日本×ガーナ Japan×Ghana 全得点シーン 2009/09/09 - YouTube
日本の3失点目のシーンですけど、中澤がゴールに背を向けてボールを受けたムンタリとの距離空けすぎてしまい、簡単にターンされてパス通されて失点とかいう目にも合います。
これも基本的な話なんですけど、背後からの一対一では、「相手にしっかり寄せてターンされないようにする」、「その際に不用意に足だしてバランスを崩さない事」、「体を寄せすぎてFWに体を押さえ込まれ入れ替わられないようにする事」ってのが大事になります。こういう基本が出来てないと、やっぱり悲惨な事になります。
ちと、長くなりすぎたんで、今日はこの辺で。
今回は、紹介した動画大杉だし、中身も長くなってきたんで、この辺りにしときます。ホントは、全局面での解説もいれるべきなんですが、それやると、本気で長くなりすぎてしまい、二万字とか書かないといけなくなるので、勘弁してください。
今回のエントリ書いたのは、前回のエントリで「日本人選手は時々、信じられないような戦術的な未熟さを見せることがある」って話で、どういう局面でどういうミスが出てるのかって話をちょいとしたかったからです。
前回紹介した本ですが、
世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜 (COSMO BOOKS)
- 作者: 宮崎隆司
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こっちの本の付録に、「サッカーにおける戦術とは何か?」ってのがついてます。中身は基本的な守備のセオリーをまとめたもので、何でこんな付録がついてるのかってーと、日本代表の試合で、極めて初歩的なミスが多いというのがその理由です。あともうひとつ。よく、「Jリーグはディレイ主体」って話をする人がいますが、これもアレな話ですが、本の中で、イタリア人監督に「日本人は時間を稼ぐという守備の基本が出来ていない」って指摘をされてます。岡田時代、前向いたアタッカーにやたらと飛び込みたがる選手が多かったせいなんですがね。
今回、サカダイのベストゴール10を見てみて、そのうち4つのゴールはDFの初歩的なミスが原因となっており、「うーん」と思ったので、こんな話になったんですけども。そのうち一つに大久保につっかけたアレがあって、うーん、と。
日本代表でも、最近、DFが初歩的なミスやらかして失点ってのが多いんですけど、それは代表の今ちゃんやマヤに限った話じゃなくて、中澤や闘莉王も、代表時代にやらかしてたりするんです。元日本代表の茂庭までやらかしたりします。
以前、ザックが、日本代表の目指すところとして、「バルセロナのサッカーとドルトムントのサッカーの中間」とか言ってた事があるんですが、最近の日本代表って、ほとんどガンバです。
ザル4バックにネタGKはガンバの代名詞でしたが、バルセロナのサッカーとドルトムントのサッカーの中間とは、ガンバだったのか・・・・!と、僕は最近気づいた次第です。まあ、ここはネタですけどね。
えっと、もうすぐW杯なんですが、僕はもう失点については諦めました。もういいです。守りきれるはずないし。なんで、全盛期のガンバさんみたいに、3-2で勝つサッカーを目指せばいいと思います。これ、割とマジで言ってます。
こないだ、ザックが、
「我々は全3試合に勝つことを常に考えていかなければならない。W杯は非常に重要だし、素晴らしいサッカー文化を持つ国で行われるので、そこで日本のイメージを高められると信じている。私のチームの選手たちには『守備の心配はするな。そして多くの攻撃を仕掛けるようにしよう』と要求するだろう。この3年半で我々はかなり成長しているし、FIFAランクで上の相手と戦う我がチームをぜひ見てみたい」
「私のチームの選手たちには『守備の心配はするな。そして多くの攻撃を仕掛けるようにしよう』と要求するだろう。」とか、景気のいい事いってたんで、
「イエーイ、ガンバ路線!」
と当ブログはザッケローニを応援しております。ガンバに対して「一番心配なのは守備だよ!!」とかいうのは野暮なように、もうここまで路線が決まってる以上、開き直って、どんだけ点取れるかを楽しみにW杯を待ちたいと思います。もうザルで結構です。ザルで殴りかかるサッカーでいきましょう。
イタリア人監督を連れてきて、3年半が経ち、できた代表チームがドルトムントでもバルセロナでもなく、ガンバサッカー(美しいパスワークとコンビネーション、そしてザル守備)だったというのは、非常に香ばしいものを感じるのですが、ある意味でとても日本らしいといえば日本らしいので、当ブログはザッケローニを支援し続けます。
ではでは。