スポーツにおけるジャイアントキリング~スポーツ別での大番狂わせのお話~
さて皆さん、こんにちは。本日はサッカーの話じゃなくて、タイトルの通りに「ジャイアントキリング」の話でもしようかと思います。この話をしようと思ったのは、皆さんご存じでしょうが、ラグビーW杯で、日本代表が南アフリカ代表を破るという快挙を成し遂げたからです。この試合については、すでに各所で話題になってますし、試合内容については触れません。日本代表対南アフリカ代表の試合の内容については、他所の記事を当たってみてくださいな。
あらかじめ言っておきますが、ラグビー日本代表が成し遂げた事は、サッカーを喩えに使って説明するのは困難です。というのも、ラグビーはあらゆるスポーツの中で、最もジャイアントキリングが起きにくいスポーツだからで、ラグビー日本代表の五郎丸が「ラグビーに奇跡はない」って話をしてますが、ラグビーで強いチームは格下には負けません。そーゆースポーツの為に、劇的な試合展開と相まって「スポーツ史上最大の番狂わせ」とまで言われている訳です。
うちのブログは、サッカーブログなんで、ジャイキリの話をする場合には、まずサッカーの話から始めるのが筋でしょう。というわけで、日本サッカー史上に輝く最初の大金星、「ベルリンの奇跡」の話から入りますけど、
youtubeにこんなのが上がってましたが、1936年、ベルリンのヘルタ・プラッツ・スタジアムにおいて、日本代表がスウェーデン代表を3-2で打ち破った試合です。当時、アジアから踏み出した事がなかった日本代表だったんですが、ベルリンオリンピックに参加することになったわけです。この時は「ベルリンへ!ベルリンへ!」を派遣費用のための合い言葉に寄付金が募られたんですが、始まってみると、なんと一回戦で優勝候補の一角スウェーデンと当たることになり、「とんだものと当たったとがっかりし」状態になってました。スウェーデンは日本ではサッカーやってるの?といぶかしんで状態でした。惨敗は覚悟の上での戦いとなったわけです。
試合は前半はスウェーデンが二点リードで折り返したのですが、後半から日本が巻き返し、後半だけで3点を取り返して逆転勝ち。この時の日本の逆転時のスウェーデンラジオの実況、
「Japaner, Japaner, Japaner(日本人だ、日本人だ、日本人が!)」
はスウェーデンにおいて、最も有名な実況の一つとなっています。もっとも日本代表はその後のイタリア戦で0-8で負けて敗退しちゃうんですけどね。
サッカーにおいては、この手のジャイキリは珍しい話ではなくて、W杯の有名所だと、
1,W杯史上最大の番狂わせとも呼ばれる、第四回ブラジルW杯におけるアメリカ代表(アマチュアの寄せ集めだった)のイングランド代表に対する勝利
2,第八回イングランドW杯における北朝鮮のイタリア代表に対する勝利
3、第11回アルゼンチン大会におけるチュニジアのメキシコ戦での3-1での勝利
なんかが上げられます。ちなみに、この三つが有名なのは、1に関しては、映画にまでなってますし、主将のライトは敗戦のスケープゴートにされました。2に関しては、「コレア」が第一次大戦でイタリアが惨敗した戦場、「カポレット」と並ぶ不名誉な敗北の代名詞にまでなったからです。ちなみに、イタリア代表は空港で怒り狂ったサポに出迎えられ、トマトと卵を投げつけられ、代表監督は即刻解任されるというオチがついてます。3の被害者はメキシコで、選手は空港でトマトと石の出迎えを受け、選手の自宅には脅迫状が届く始末でした。
この三つを取りあげたのは、有名所だという事の他に、ノンプロのアマチュア集団にプロ混じりのチームが負けたという、しょーもない敗戦だったからです。
サッカーってスポーツは、今回取りあげるスポーツの中で、もっとも番狂わせが起きやすいスポーツです。最近では、マンチェスターシティがウェストハムに負け、バルサがセルタに負けてますけど、この手のジャイキリはサッカーでは割と頻繁に起きます。
サッカーにおいては、「ジャイキリ」が頻繁に起きるって事を一番よく知ってるのが、オンラインのブックメーカーです。
ブックメーカーのオッズを使って説明すると、基本的にコイントスが賭の対象なら、どちらかが出る確率は1対1です。この場合、オッズは2.0(デシマル値)という形で表示されます。サッカーにおいては、bet365の最新のオッズで説明すると、次の「FCバルセロナ対ラス・パルマス」では、バルサの勝利が1.07、「レアル対マラガ」ではレアルの勝利が1.12となってます。「うわ、低っ!」と思われるかもしれませんね。でもね、このオッズだと、ラス・パルマスだろうと、マラガだろうと、100試合やれば7~8試合はバルサやレアルに勝てるって位のオッズなんです。
サッカーにおいては地球上最強のチームであっても、格下に負ける可能性ってのが常に有るんです。それがサッカーってスポーツなんですわ。だからブックメーカーは、サッカーでは圧倒的な本命チームに対しても賭けを受けてくれます。
さて、ここまでサッカーってスポーツはジャイキリが起こりやすいスポーツだって話をしてきました。じゃあ、他のスポーツは?という話になるんですが、ここで
- 作者: クリス・アンダーゼン,デイビッド・サリー,児島修
- 出版社/メーカー: 辰巳出版
- 発売日: 2014/06/30
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この本紹介しときますけど、この本にサッカー、ハンドボール、バスケットボール、アメリカンフットボール、野球のオッズの中央値と分布の話があります。それによると、スポーツ別の本命チームのオッズの中央値は
ハンドボール1.28、NBA1.42、NFL1.49、サッカー1.95
こうなってるそうです。ちなみにラグビーW杯の場合、オッズの中央値が1.06とかです。
各スポーツの本命オッズを調べていけば一目瞭然なんですが、ハンドボールとラグビーは、笑っちゃうほどジャイキリが起きません。だから、ブックメーカーは本命のオッズをもの凄く低く設定します。ラグビーに関しては、本命のオッズが1.00とかザラです。ウィリアムヒルでオッズ見て貰えば良いのですが、本命のオッズが異常に低いのがラグビーです。日本がニュージーランド代表とやったら、100回やって100回負けるオッズがつくのがラグビーです。
なんでラグビーではジャイキリが少ないのか。それは、他の人が扱ってるのでググって下さい。
次にジャイキリが少ないのがハンドボール。これもジャイキリが少ないスポーツで、ホントに実力差が結果に反映されます。
ここで、ジャパンラグビー公式サイトの星取表貼っときますけど、ラグビーってスポーツは上位と下位で笑える程、差が出ます。星取り表みてもらえばわかると思うんですが、下位チームは身も蓋も無く、上位チームに全敗してます。これは、ハンドボールも同じで、
こっちに日本ハンドボールリーグの星取表貼っときますが、ハンドの世界はラグビーほどじゃないですが、下位は上位に勝てません。
1~3位のチームが、8位以下にチームが負けるなんてありえない。それがラグビー、ハンドボールの世界です。実力差が結果にはっきりと反映されるスポーツなんです。この二つに共通するのは、とにかくコンタクトプレーが多いって所でして、フィジカル差がはっきり結果に反映されるせいだとも言われます。(もっとも同じフルコンタクトのアメフトは以外とジャイキリ多いんですが)
一方で、サッカーの世界では、
こうなるんですけどね。これは2014のJ1の話ですが、ラグビーやハンドと違って、サッカーは7~9位のチームであっても、上位3チームに勝てちゃうんです。それどころか、15位以下のチームでも、上位3チームに勝つことすらある。
この「ラグビー、ハンド」のジャイキリ起きない勢と「野球、サッカー」のジャイキリ上等勢の中間に位置するのが、NBAとNFLになります。ただ、ここはちょっと説明が必要ですね。NBAにしろ、NFLにしろ、ここは戦力均衡に力をいれてるプロスポーツでして、野球やサッカーほど戦力が特定のチームに集中するって事が起きてません。NFLなんかは、野球やサッカーみたいに戦力集中させたら、ひょっとしたらラグビー化するのかもしれません。
一口にスポーツといっても、このように、大番狂わせが多いスポーツと、大番狂わせが全く起きないスポーツってのが存在する訳です。「勝負はやってみるまでわからない」とは、よく言われますが、現実的には、やる前から結果がわかってしまうスポーツもあるって事です。そういうスポーツは、プロ化する場合、ある程度の戦力均衡策が必要と言われます。逆に、サッカーや野球の場合、大番狂わせが多い為、一試合に限っては、結果の予測が困難を極めます。なので、戦力均衡をやらず、不平等そのものなリーグ運営をしても、試合そのものの魅力は損なわれないという見方も出来ます。
勿論「ジャイキリが起きないからラグビーやハンドはつまらない」という人もいます。サッカーとか野球好きな人は、そういう人多いと思います。一方で、アメリカではMay the best team winなんて言葉がありますが、「最高のチームが勝ちますように」って意味ですが、「勝利に相応しくないチームが勝ってしまう」 事があるのがサッカーと野球だったりします。ラグビーやハンドは、基本的に強いチームがかつスポーツなんで、練習や努力は選手を裏切りません。それがラグビーやハンドの良い所だという人もいます。
今回はジャイキリの話だったんですが、スポーツの中には、「やる前から結果がわかりきってるスポーツ」と「結果は誰にもわからないスポーツ」というのがあります。ただ、それぞれのスポーツにはそれぞれの楽しみ方があり、結果の予測性ってのは、必ずしも大きな問題ではなかったります。今日はそんなお話でしたとさ。
それでは。