サッカーのマッチレポートなどを中心に。その他サッカーのうんちく系ブログ。

2015年ブンデスリーガ第2節 ドルトムント対インゴルシュタットのレビュー 「4141ブロックの崩し方」

さて、本日は、久々にドルトムントのレビューである。前にドルトムントのレビューやったのいつだったか思い出せない程度に久々のドルトムントのレビューである。ブンデスリーガはすでに開幕しているのだけれど、ドルは第一節でBMGを4-0で、第2節ではインゴルシュタットを4-0で屠っており、PSMで虐殺された川崎はそろそろ許されてもいいのではないかと思う。最近の公式戦では3試合で12点取ってるチームである。川崎は悪くないと思う。(こないだ湘南が川崎に勝った事とは、これは無関係である)



この試合では、香川がブンデスリーガ公式戦初ゴールを決めているんだけれど、それ以外にも香川の出来は良かった。中2日だったので、ドルの選手はみんな動きが鈍く、いつものスピーディーなサッカーが出来ていたとは言い難い所があったんだけれど、それでも圧勝してしまったのだから本当に今のドルは強いと思う。



この試合の場合、単にドルと昇格組のインゴルシュタットの実力の差というだけでなく、チームとしての攻撃の組織度、攻撃の選択肢の選び方に大きな差があって、今日はその辺りについて、試合のレビューを進めてみようと思う。


ドルトムント対インゴルシュタット、前半戦のお話


まず、スタメンの紹介から。


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スタメンはこうなっていた。ドルトムントは4231、インゴルシュタットは4141。この組み合わせは、完全にフォメが噛み合っている為、ミスマッチが起きない対戦である。ただ、これはフォメ上の話であり、相手チームがどういう守り方をしてくるか、自チームがどういう攻め方をするのかで、話は全く変わってくる。



具体的に説明すると、4231対4141の対戦の場合、中央の3枚のマッチアップにおいて、マンツーマン気味に守るか、ゾーン気味で守るかによって、攻め方というのが変わってくる。


こっからはキャプでやる。インゴルシュタットの守備とドルの攻撃を例にして説明するけれど、


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これは前半7分のシーンのドルトムントのビルドアップ。このシーンの場合、中央の3枚が香川、ギュンドガン、ヴァイグルを捕まえている。マンツー気味の守備なんだけど、相手がこういう風にマンツー気味に捕まえようとするなら、その裏のスペースが空くという事でもある。具体的にいえば、このシーンだと、香川が引いてボールを受ける動きをしてアンカーを釣り出して、そして空いたスペースをロイスが使おうとしている。このシーンの場合、ロイスが下がってきたので、インサイドハーフがロイスのマークについた。その結果として、ギュンドガンがフリーになってしまい、そこに起点をつくられてインゴルシュタットはラインの裏を取られかけた。(この攻撃は巡り巡って香川のゴールの伏線なんだが、それは最後にやる)




このシーンは、4231対4141の対戦では、中央の3枚をマンツーマン気味にしてしまうと、中央3枚のポジショニングにアンカーとインサイドハーフのポジショニングが支配されてしまい、そこから崩される危険性があるって事を示している。ここでドルが使ってる形なんだが、「トップ下+ボランチのポジショニングで、相手のインサイドハーフとアンカーを動かして、空いたスペースをCFとWGに使わせる」って戦術だ。



んじゃあ、アンカーが香川をマンツーマン気味で捕まえるのやめて、中央のスペース潰すの優先でやったら、どうなるかってーと、これはこの後、すぐやるんだけど



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これは11分のシーンだけど、アンカーが中央にいるため、香川にギャップ受けされちゃってサイドチェンジされたんだ。アンカーが香川にマンツーマンでついてこないなら、相手のインサイドハーフを前に釣り出してから、アンカーの脇のスペースを香川に使わせれば良いだけって話になる。



実は、この日の前半、インゴルシュタットの守備上の穴になっていたのが、このシーンで香川がボールをうけた場所だった。右インサイドハーフの10番とアンカーの間のスペース。完全に守備上の穴となっていて、あそこのスペースを香川に使われまくることになった。



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これは21分。ここもそうなんだけど、インゴルシュタットのアンカーの右脇の所、誰もいないエアポケットになってるんだ。で、そこを香川に使われてしまっている。


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さらに23分、またあそこで香川に前を向かれてしまう。あそこのスペースが空くって事がわかってから、ドルは楽に攻める事ができるようになった。26分にもアンカーの右脇で香川に前向かれてしまっている。




ここ、アンカーが香川にマンツーマン気味でつけばいいんじゃ?というのがあるんだけれど、それやっちゃうと前半27分にあったみたいに


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香川の動きでアンカー動かされて中央に楔入れられて、そこからコンビネーションで崩される危険性ってのが出てくるんだな。



ここで、インゴルシュタットも動く。連続で香川にアンカーの右のスペースを使われた事から、30分あたりから香川にマンツーマン気味で10番のインサイドハーフがつくようになる。サイドに流れても、相手のWGがきっちり捕まえるようになり、香川が良い形で中盤で前をむけるって事は段々なくなっていった。インサイドハーフに香川を捕まえさせたことで、一旦はインゴルの守備は落ち着いた。


ただ、前半33分みたいに、の高速コンビネーションやられると流石についていけなかったけれど。前半33分のコンビネーションは流石に凄かった。



www.nicovideo.jp



33分のは、動画張っとくのでそっちでどうぞ。やり方はロイスのと一緒で、右サイドから斜めにパスいれて、スルーをつかったコンビネーションから裏を取るって形。動画見て貰えばわかると思うんだけど、このシーン、相手の10番が香川についてきてるのね。もっとも、スルーを使ったコンビネーションされるとマーク外してしまってるんだけど。



このインゴルシュタットの守り方、前半はそこそこ上手くいっていたんだが、後半、トゥヘルとドルの選手が修正を行ってくると、この守り方そのものがインゴルシュタットに致命傷を与えてしまう事になった。



ドルトムント対インゴルシュタット、後半戦で起きた事、トゥヘルとドルの修正


さて前半は0-0、インゴルとしてはこれでオッケーだった。ドルは、なんとかして勝ち点3が欲しい。だから、インゴルは耐えて、ドルが前がかりになった所をカウンター、そんなゲームプランでよかった。ただ、問題はドルの選手達がインゴルの守備方法になれてきてしまった事である。どーいう事かというと、相手のインサイドハーフが香川をマンツーマン気味で捕まえている訳だから、必然的に、ドルトムントのボランチの片方がフリーになれる。


結果として、何が起きたか、それはキャプで説明するけど、



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これは後半45分のシーン。ボランチのヴァイグル君が完全に空いちゃってるのね。次に



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これは後半47分のシーンだけど、香川が気になってるのか、ここでも空いてるんだ。あそこでボランチに前向かれて捌かせてしまうの非常に不味い。こうなってしまう原因が、インサイドハーフに香川を見させてしまうからだ。


1,アンカーに香川を見させると、香川のオフザボールでアンカー動かされて中央に楔打ち込まれる
2,じゃあインサイドハーフに香川見させると、ドルのボランチの片方がフリーになる。



後半開始直後から、インゴルシュタットは、こういう悪循環になっていた。一旦、ボランチが空くって事がわかりはじめると、ドルトムントはボランチを起点にして攻めに出ることが出来るようなる。ボランチが高い位置でボールを捌けるようになった事が、この後のドルの先制に繋がってくる。




次に54分のドルの先制シーンになるが



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これだが、香川をインサイドハーフがマンツーマン気味で捕まえているせいで、ドルのボランチのヴァイグル君(19才!)がフリーになって、そこを起点としてやられてしまった。前半の最後のほうは、ドルの選手が慣れてなかったから、この守り方でも良かったんだけど、一旦、ボランチが空くって事がバレたら、このやり方は非常にリスクが高い。






その後のドルの二点目の時もそうなんだが、


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後半58分、あそこでヴァイグル君が又フリーになってる訳だ。正直な所、インサイドハーフに香川を見させるのは悪手。ヴァイグル君を空けるのは不味い。彼、19才で今年からドルに来た子だが、凄い良い選手でドルトムントのビルドアップが前シーズンとは比較にならないほど安定してる原因になっている。この後、ギュンドガンとのパス交換から、ギュンドガンに縦パス入れられて、シュメルツァーがPKもらってロイスが決めてドルトムントは二点目となった。




ここでインゴルシュタットのほうも、ヴァイグル君フリーにしてるとやられるとわかったみたいで、69分あたりになると


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こんな感じで10番がヴァイグル君捕まえに出てくるようになった。ここでインゴルシュタットは、インサイドハーフがドルのボランチ捕まえて、アンカーが香川捕まえるみたいな形に変更。ところがそれはじめると、今度は降りてきたロイスにSBから楔入れられてしまうんだな。インサイドハーフが前にでてしまう事になるから、どうしたってアンカーの両脇が空いてしまう。そして、その両脇をWGやCFに使われてしまうと、前半のリプレーになってくる。



最後の香川の得点シーンが、まさにそれなんだけど、まず


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という流れから、


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こうなった。これは典型的な4141における、アンカーの両脇を使われて失点の仕方。綺麗にホフマンと香川にアンカーの両脇を使われて失点。ヴァイグル君とギュンドガンをフリーにしたくないので、インサイドハーフをヴァイグルとギュンにつけたら、インゴルシュタットは空いたアンカーの両脇を使われて失点してしまった。




この後、オバメヤンのゴールもあるんだけど、あれは、文脈のないゴールだったので割愛する。



新生ドルトムントとトゥヘルのまとめ


ここまでこの試合の流れを見てきたわけだけど、トゥヘルのドルトムントに関しては、かなりポゼッション寄りのカラーを持ってる。相手チームに対して、合理的な攻め方をするチームになっていて、かなり驚いている。クロップの頃からスピーディーなパスワークをもっているチームだったんだけれど、トゥヘルのチームの場合、相手チームの守り方に応じて攻め方を柔軟に変える事が出来ていたので、正直言って驚いた。



BMG戦では、BMGの442ブロックをいともたやすく引き裂いていたので、びっくりしたモンだが、この試合ではインゴルシュタットの4141ブロックを中2日にも関わらず、簡単に引き裂いてしまった。


この試合の流れをまとめておくと、


1,前半開始直後はインゴルシュタットの前プレが強く、ドルトムントはあまり良い所なし
2,前半10分過ぎあたりから、香川がインゴルシュタットのアンカーの右脇を使えるようになり、ドルトムントペースに。
3、前半27分あたりでインゴルシュタットは守備方法を変更。相手の右インサイドハーフの10番が香川にマンツーマン気味でつくようになる。
4、前半はその後は静かな展開に。ドルはアンカーの右脇を使えなくなり、ちょっと攻めあぐむ。
5、後半開始直後から、ドルのボランチがフリー。ドルトムントは、フリーのボランチ、特にヴァイグル君を使うようになる。
6、後半54分、ドルトムント、ヴァイグル君の縦パスから先制。さらにそのあと、ギュンの縦パスからシュメがPKもらってで追加点。
7,70分あたりからインゴルシュタットはまた守備変更。ヴァイグル君フリーは不味いと気付く。インサイドハーフがギュンとヴァイグル君をきちんとマークするように。
8、インサイドハーフが、ドルのボランチ捕まえる為に両方前に出るようになり、アンカーの両脇にスペースが生まれる。
9、そのスペースをドルに使われて3点目。勝負あり。
10 最後のドルのゴールは、インゴルがもう集中切らしてた。



こうなる。



この試合のレビューをしようとおもったのは、非常に良い対4141オフェンスのモデルケースだったからだ。インゴルシュタットが試合中、何度か守備方法をいじってくれた事もあって、4141に対して、どういう風に攻めればいいのかってのの、教科書的な試合となった。



トゥヘルのドルトムントは、クロップのカラーを引き継いで、前プレのチームなのはそのままなんだけど、ポゼッション面やコンビネーションの面で、クロップ時代より質が高いチームに仕上がっており、今年一年は楽しめそうな感じである。去年と比較して、コンビネーションプレーの質が断然高い。



で、最後になるんだけど、この試合でやたらと目立ったドルのヴァイグル君。記事の中でも彼のことを何度か扱ったけど、この子、本当に良い選手。19才とは思えない位落ち着いてる。この日、一番関心したのは、前半26分のシーンのプレーで、インターセプトしたボールをダイレクトで香川につけたのね。これは動画にあるから、見て欲しいのだけれど、あれをみて「うわ、これで19才か・・・・」と感心してしまった。あれはなかなか出来ないぞ・・・というプレーだった。19才でドルトムントのプレースピードについていけるどころか、加速させることすら出来てる訳で、末恐ろしい。



そんな訳ですので、ドルトムントの新星、19才のヴァイグル君はホントに良い選手なので、ドルトムントの試合みる時は彼に注目してみてみてね。



今日はこのあたりで。ではでは。

2015年 J1 1stにおける傾向のお話

さて皆さん、こんにちは。本日はブログ書きのリハビリもかねて、2015年のJ1における傾向なんかの話をしたいと思う。内容は戦術分析というより、J1におけるトレンドの話になる。J1の各チームの話は、そのうち、それぞれやる。


本日はJ1が再開して、清水の大榎監督が成績不振から辞任、鹿島のセレーゾ監督が成績不振で解任となった事をうけて、Jリーグの最近の傾向の話でもしておこうと思う訳だ。


J1においては、外人選手、外人監督が以前ほど活躍できなくなってきた。特にブラジル人。


まず、この話から入るのだけれど、昨今、ブラジル人監督、ブラジル人選手はJ1では以前ほど活躍できなくなってきている。


Jリーグというリーグは、これまでブラジル人の成績が際立って良いリーグだった。実際、過去22シーズンで、ブラジル人監督が優勝したのは9回。ブラジル人の得点王は7人となっており、ブラジル人助っ人といのはチームが成功する為に絶対に必要なピースと言って良いくらい重要な存在だった。



Jリーグ 歴代のMVP・新人王・ベストイレブン・得点ランキング



こっちのサイトで、Jリーグの歴代得点ランキングがまとめられているけれど、2000年代はまさにブラジル人FWの時代といっていい位だった。2001~2008年までは得点ランキング上位をブラジル人FWが独占している状態であり、得点王に至っては、


2003 ウェズレイ 
2004 エメルソン
2005 アラウージョ
2006 ワシントン、マグノ
2007 ジュニーニョ
2008 マルキーニョス


と、ブラジル人が6年連続で取っているような状態だった。ブラジル人FWというのは点を取るためには必須と言って良い位重要な存在だった。



また、2007~2009のオリヴェイラの鹿島の三連覇、2011の柏でのネルシーニョの優勝は、ブラジル人監督の評価を際立たせるものでもあった。



ところが、状況が変わりはじめたのが2012年あたりからになる。2012,2013のポイチの広島の2連覇、2014の長谷川健太のガンバの三冠と日本人監督が立て続けに成功を収め、得点ランキングの上位は日本人FWがほぼ独占というトレンドが出現するのである。



これがJリーグだけの話なら、ブラジルの凋落なんて話にはならないのだけれど、ブラジルの凋落を決定づける出来事が最近立て続けに二つ起こってしまった。つまり、ブラジルW杯におけるセレソンの7-1での敗北、コパアメリカでのベスト8敗退という結果だ。正直な話、最近、J1にやってくるブラジル人助っ人のプレーを見ても、あまりワクワクしない。ブラジル経済が好調なので、良い選手がブラジル国内に留まるようになったせいもあるんだろうと、以前は思っていた。ただ、W杯、コパアメリカにおけるブラジルの失態、ネイマール以外のFWのレベルの低さを見て、「王様は裸だ・・・・」という思いに駈られている部分もある。



この手の出来事で思い起こすのは、1953年にウェンブレーにおいて、イングランドが「マジック・マジャール」ことハンガリーに6-3で敗れた試合だ。イングランドは試合前まで、「ハンガリーのボールジャグラーなど強いタックルで阻止できる」と高をくくっていた。しかし、6失点したのは1881年のスコットランド戦以来という大敗をホームで喫してしまった。それまで、イングランドは、英国内のチームとの対戦を除けばホーム不敗の伝統を誇っていたのだが、それを粉々に砕かれたのである。さらにいえば、翌年のブダペストでのリベンジの試合も7-1でフルボコにされ、「ドナウの災厄」と呼ばれる事態にまで陥った。1950年のブラジルW杯におけるアメリカ戦での敗北、そしてハンガリーに対する2度の大敗によって、「イングランド最強論」は地に墜ちた。そして、イングランドのW杯での恥辱の歴史が始まるのである。


ロンドン五輪の時、ブラジル代表をみて「うわ、ひでえ、こんな糞みたいなチームに優勝されたらどうしよう・・・」とか思ったモンであるが、流石に自国開催のW杯なら勝てるだろうと思ってはいた。なんだかんだで、サッカーってのはホームアドバンテージが非常に強いスポーツだからだ。ところが、7-1でドイツにフルボッコにされてしまい、うごご・・・状態である。



話がそれてきたので、元に戻す。




2012年以降、ブラジル人監督、ブラジル人選手の成績は、はっきりいって良くない。ネルシーニョもぱっとしないし、鹿島のセレーゾもそう。結果と給料が全く釣り合っていない状態だった。ブラジル人選手もそうだが、2014年、得点ランキング上位であるマルキーニョス、ペトロ・ジュニオール、レアンドロ、エドゥーは点は取ってはいるが、給料が非常に高額なので、コスパが悪かった。日本人FWと大して成績は変わらないのに、給料は倍くらい貰っているので、これだと何の為に高い給料払っているのかわからない。


これは、2015年シーズンも続いており、



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これは、2015年J1 2ndステージ 第5節までのJ1の外人監督の年俸、勝ち点数、勝ち点1取るのに必要とした額の表だけれど、ネルシーニョとセレーゾの両ブラジル人監督の数字の酷さが際だっている。高い給料貰ってる割に勝ててないのだ。セレーゾが解任されたのは「給料高い割に勝てなかったから」としか言えない。ネルシーニョも、このままの成績だと、あと一年持たないと思う。根本的に給料が高すぎるんだ。



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一方で、こちらが日本人監督のモノになる。日本人監督は全体的に安い。安かろう悪かろう理論でいえば、鳥栖の森下さん、柏の吉田さんはしょうがない部分もある。清水の大榎さんもそうだが、給料低い訳だから、そんなに多くの事を期待してもしょうがない部分はある。ちなみに湘南のチョウさんは韓国人なんだが、ここでは日本人枠にいれた。基本的に、この人は海外でのキャリアがゼロで日本のサッカーシステムで育った人だからだ。



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こっちは恒例のFWのコスパ表である。自分で作ってみて思った事だが、FWのコスパを計算していくと、清水と神戸のコスパの悪さが目についてしまう。神戸にいったっては、高額なペトロ・ジュニオール、マルキーニョス、レアンドロ、ネルシーニョを抱えているが、結果がついてきていない。最近のJ1でのブラジル人FWのコスパの悪さ、ブラジル人監督のコスパの悪さを考えると、神戸は払った金額に見合わない順位で終わることになると思われる。清水に関しては、大榎監督は年俸が超安いので多くを期待すべきではなかった。ただ、年俸が高いウタカと大前はもうちょい頑張ってくれないと困る。大前には厳しく言うけれど、5500万というのは日本人得点王クラスの給料なので、年間20点は取って欲しい所である。そこまでやらないと、清水は降格してしまう。



余談になるが、ちょっと元湘南ベルマーレのウェリントンの話もしておこうと思う。昨年、J2の得点王であり、湘南にとっての不動のCFだった。ただ、オフに色々あって、契約を更新できず、湘南はウェリントンを手放すことになってしまった。ウェリントンについては、僕はそれほど惜しいとは思わなかった。理由が昨今のブラジル人FWのJ1でのパフォーマンス低さであり、高い給料払っても、それに見合うだけの成績は収めてくれないだろうなあ、と思っていたからだ。


最近のJ1で、ブラジル人選手で、日本人選手より明らかにパフォーマンスが良いと言える選手は二人しかいないかった。川崎のレナトの半分、そして新潟のレオ・シルバだ。レナトの半分ってのは、レナトは守備でJ1最低の選手だからだ。攻撃ではJ1最高の選手の一人だったが、守備ではJ1最低の選手だった。ただ、レナトにしても、ジュニーニョほどのすごさは無かった。


何故、ブラジル人選手、ブラジル人監督がJ1で結果を残せなくなったのか。それはホントによく分からない。2011年までは、J1でブラジル人選手、ブラジル人監督は結果を出しまくっていたんだ。ところが、2012年以降、ブラジル人選手・監督がJ1で結果をだせなくなり、代わりに日本人監督がタイトルを取り始め、日本人FWが得点ランキング上位を独占しはじめた。



現在のJ1のトレンドは、「純国産のFW・監督のほうが結果を出すようになってきた」、「ブラジル人監督・FWのコスパが極端に悪くなってきた」これに尽きる。なんで、こんな事になってしまったのかは知らない。ブラジルのレベルの低下か、日本のレベルの上昇によるものなのか。議論はあるだろうけど、とりあえす結果の世界なので、最近のJ1はブラジル人監督より、日本人監督、ブラジル人FWより日本人FWのが結果だしてるのは事実なんだ。




ACLに出たチームはどのくらいのハンデを背負うのか

次の話題はコレ。2015年のACLについては、浦和さんと鹿島さんがGLで敗退。ガンバさんと柏さんはGL突破と明暗が分かれた。浦和さんは、ACLで一勝も出来なかったが、リーグ戦では前期負け無しで優勝してしまった。言いたい事は色々あるが、まあ、浦和さんは良い。問題は鹿島さんと柏さんである。ACLでもダメで、リーグ戦でもダメ、セレーゾ監督は遂に、松本に負けた試合の後で解任されてしまった。柏さんは、前任者のネルシーニョが柏最高の監督という評価なので、その後を継いだ吉田さんへの風辺りが非常に厳しい。何が良くないって、ネルシーニョで十分勝ってたのに、やり方を全部変えてしまった事である。これをやってしまうと、ネルシーニョ時代より負けが増えたら全部監督の責任になるわけで覚悟がいる。そんな訳で、吉田さんは、茨の道を歩んでる状態である。



とまあ、ここまではJリーグ見てる人なら誰でも知ってる話なんだろうけど。



ACLに出た場合、翌年の成績にどのくらい影響を及ぼすのか?というのは、しばしばネタになるんだけど、実際に勝ち点の増減を表にしてまとめると、次のような形になる。



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こんな具合なんだけど、ACLに出たクラブの勝ち点の増減で調べた場合、ACLにでたクラブは勝ち点を平均で8ポイント失っている。酷い年、つまり2012年に関しては、柏、名古屋、ガンバはリーグ戦でボロボロになってしまった。


ACLとリーグ戦の並行はとても難しい。過密日程で勝ち点を落とすのが珍しくも何ともないし、怪我人だって増える可能性が高い。リーグ戦ではACLがないライバルが有利になるだけで、観客動員も良くないと来ているので、正直いって、非常にビミョ~なコンペティションと化してしまっている。



表の最後に、ガンバ、浦和、鹿島、柏さんの今年の予想勝ち点も載せといたけど、ACLにでるクラブは、前年度と比較して平均8ポイントを失う事から、これらのクラブは、今年は勝ち点51~54前後になる可能性が非常に高い・・・・と言いたい所だけど、ここまでの勝ち点ペースを見る限り、浦和は大きく上ブレし、柏は下ブレすることになる。具体的には浦和は年間勝ち点60強とるだろーし、柏は年間勝ち点40弱位にはなりそうだ。


浦和は最初からACL捨ててるような感じだし、柏はACLにあまりに真剣に望みすぎている部分がある。真面目にやりすぎればリーグ戦が犠牲になり、リーグ戦重視だとACLを捨てざるを得ない、そんな部分もある。



さらに難しい話をすると、ACLという大会は日本では完全にブランディングに失敗してしまった。欧州CLはブランディングに成功し、平日開催だろうと人は入るし、視聴率も取れている。一方で、ACLは平日開催なので人が入らないし、視聴率も取れない。もっとも、J1のリーグ戦だろうと平日開催だと人が入らず、地上波でTV放送しても視聴率3~4%だから、大した違いはないのだけれど。


残念な話だけれど、J1のリーグ戦では、現状、スカパーですら採算が取れておらず赤字だと聞くし、一部のチームを除いて、電通・博報堂が頑張っても広告が全部売りきれないという状態のようだ。国内でも厳しい訳なんだから、海外は尚更厳しい・・・


海外チームと試合するなら、欧州強豪となら、平日でも人が入る。この前の川崎対ドルトムントの試合は、ただの親善試合+平日開催なのに24000人入ったし。ただ、アジアの強豪とじゃ、人は入らないのである。


この、「人が入らない平日開催のコンペティションは、一番大切なリーグ戦の足枷にしかならない」というのがJリーグの現状でもある。J1で連覇したチームがアジアでさっぱりなのは、アレな部分もある。



昇格組の行方

最後に、昇格組の行方の話もしておこう。湘南ベルマーレの話にもなるし。


これは以前も話をした事なんだけれど、僕はJ1で通用するかどうかの目安を、「J2で年間得失点差+40以上」と定義している。なんで+40以上かというと、近年、得失点差+40以上で昇格したチームで、一年でJ2に出戻りしたチームはないからだ。


J2に関していえば、得失点差+20~+30稼げば、J1昇格の切符を手に入れることは出来る。ただ、その切符は往々にして片道切符なのだ。2013年の湘南がそうだったが、2012年、得失点差+23で昇格したもの、一年で降格してしまった。確実に残留できるチームを作るなら、J2で得失点差+40以上で昇格できるチームを作らないといけない。そのくらい圧倒的なチームでないとJ1では厳しい。


今年に関して言えば、松本さんと山形さんは、非常に厳しい状態にある。J1が24試合終了した時点で、松本さんは勝ち点21,山形さんは勝ち点18となっており、降格ペースとなっている。新潟と清水が盛大にコケているので、まだ残留の目はあるんだけれど、清水や新潟みたいに補強資金があるチームではないので、正直難しいと言わざるを得ない。


湘南に関しては、すでに勝ち点33を稼いでいるので残留できそうだぜヒャッハー!(これが言いたかっただけ。)


サッカーとtilt


今回の話は、これで〆ておこう。


tiltっていうのは、本来ポーカー用語なんだが、これ、実はスポーツの世界でもしばしば見られる現象である。この話をしようと思ったのは、先日の柏対広島の試合後の監督コメントで、


[ 吉田 達磨監督 ]
サンフレッチェは今、日本で一番強いチームだけど、向かっていこうと選手と話をしていました。彼らのカウンターはとても鋭いし、ボールを回しはじめたらおそらく簡単には取れないでしょう。そういったところに対して準備をしていたのですが、(3分に)点を取ったことでカウンターからチャンスを迎えるシーンが増えました。ちょっと想像とは違う展開で、前半から過ごすことになりました。この相手に対してアウェイの地で、最後まで集中力を切らさずコンパクトな陣形を保ち、戦い続けたことは評価していいなと。ただわれわれは前期(1stステージ)にたくさんの落とし物といいますか、忘れ物といいますか、たくさんのモノを置いてきました。それを1日でも早く、1分でも1秒でも早く取り返したいという思いでやっています。連勝はしましたけれど、次から次に試合はやってきます。しっかりと引き締めて、これからのゲームに臨んでいきたいです。

こんな事を柏の吉田監督が言っていたからだ。僕が問題にしたいのは、黒字で強調した部分になる。正直な所、柏の吉田監督は、勝負師として見た場合、ちょっと致命的な欠点がある。J1の前半戦で、非常に苦しんで、なかなかそこから抜け出せなかったけれど、メンタルの部分にちょっと問題がある。このコメントを見る限り。



まあ、柏さんは、2ndステージに入ってからは好調で勝ててる訳だから、余計なお世話的な部分があるんだけど、今回は、「勝負事で負けを取り戻そうとした場合に何が起きるのか?」ってのを絡めて、ちょっと説明しておく。



tiltというポーカー用語がある。これは、



ティルト



こっちのポーカーのページでまとまっているが、

定義

一番広い意味でティルトとは、「プレイヤーが合理的な判断ができなくなり、感情にかられた行動をとるようになってしまった状態」、のことを指します。例えば、プレイヤーが大きな損失を出してそれをできるだけ早く埋め直すために、アグレッシブな賭けをしたり、弱いハンドでビッグ ポットを勝ち取ろうとすることは、彼がティルトになっていることを意味します。

ティルトの定義とは、こういう状態である。簡単に言えば「負けた分を取り戻そうとして、アグレッシブな賭けに出てしまう」状態になる。


ティルトの種類


ティルトが一番はっきりわかるのはアグレッシブな態度です。プレイヤーは、アグレッシブな動きでビッグ ポットを勝ち取ろうとします。彼はブラフをかけて多額の賭けをしてきます。彼は非常にアグレッシブになり、勝ち目の薄いハンドで大きなポットを勝ち取ろうとする傾向があります。そして絶望的な「ダブル オア ナッシング (チップが倍になるか、それともゼロか)」の状況に追い込まれます。それはまるでルーレットで赤にすべてのお金を賭けるようなものです。
この種のティルトでは、プレイヤーはバンクロール (手持ち資金) の管理を無視して、自分のバンクロールに合わないような大きすぎるリミットのベットをします。


よりやっかいな種類のティルトはパッシブなティルトです。プレイヤーはあまりに内気で臆病になり、十分なアグレッシブさがあるプレーがもはやできません。彼は強いハンドでもアグレッシブにプレーができず、いつも「またバッド ビートがどこかから来るのではないか」とびくびくしています。

これはティルトの種類なんだけど、負けを取り戻そうとして、躍起になるあまり、弱い手で「ダブル オア ナッシング」をしてしまうのが典型的なケース。もう一つが、自信を失って強いハンドでも強気に掛け金をつり上げられない状態になる。




今回は、柏の話になるんだけど、これは僕個人の感想なんだが、今の柏ってチームは、時々、ひどく冷静さを欠いてしまう。特に勝てなかった時期の前半戦で目立ったが、異常なまでに前に人数かけて攻撃に出てきたり、異様にライン上げてボールを奪いにくる時がある。その結果として何がおきたかっていうと、あっさりカウンターでやられたり(1stの鹿島戦)、一本のパスで裏取られて失点したりしていた(1stの新潟戦)。身も蓋もないけれど、勝てなかった時期の柏さんってのは、リスクを取りすぎていた。


なんであんな不必要なリスクを取るんだろうと思っていたのだけれど、柏さんの監督さんのコメント読んで、「ああ、この人、tiltに陥りやすい性格なんだ」と思ったのである。というのも、コメントで、

「ただわれわれは前期(1stステージ)にたくさんの落とし物といいますか、忘れ物といいますか、たくさんのモノを置いてきました。それを1日でも早く、1分でも1秒でも早く取り返したいという思いでやっています。」


と言ってるんだけど、これ典型的なティルトに陥った人間の心理だからだ。勝負事の世界でやってはいけない事の一つに「負けた分を取り戻そうと考えてはいけない」ってのがある。なんでダメかというと負けた分を取り戻そうとするあまり、まったく割に合わないリスキーな行動をしてしまうからだ。サッカーでは、これの典型状態は大きく分けて二つで、



1,攻撃時に前に人数をかけすぎてカウンター食らって憤死
2,守備では前でボール取ろうとする余り、ライン上げすぎて裏取られて憤死



となる。これね、上手くいってないチームで本当に頻繁に見られる傾向なんだ。チームが連敗していて、こういう状態が起きていたら、チーム全体がtiltに陥っている兆候だ。ぶっちゃけ、清水さんとこも似たような状態だった。



サッカーでもポーカーでもそうだし、他のゲーム全般でそうなんだけれど、勝負事では「負けた分を取り戻そう」という心理状態になったら、その時点で負けだ。この心理状態になったら、すぐにゲームをやめて頭が切り替わるまで待つしかない。その状態でゲームに臨むと、不必要なレベルでリスクを取るようになり、結果として自滅してしまう。



僕は柏さんの今のサッカーが結構気に入ってるんだけど、監督さんの心理状態は非常に危険と言わざるを得ない。「負けた分を取り戻そう」としてはいけない。これだけは絶対にダメだ。サッカーでは全部の試合には勝てない。だから1シーズンで何試合かは必ず負けるスポーツなんだ。だから、「負けた分を取り戻そう」なんて考えてはダメだ。そういう心理状態に指揮官が陥りやすいのは本当に危ない。連敗した時に本当に危険な状態になる。


今日は、そういう話で〆とく。ではでは。

2015年東アジアカップ、日本対中国のレビュー 「例えミスマッチだったとしても」

はい、皆さん、こんにちは。本日は先日行われました東アジアカップ、日本対中国のレビューをやりたいと思います。今回の東アジアカップは一勝も出来なかったので、日本代表は公式戦でアジア相手に4戦勝ち無しという状態になっております。



今回の中国戦は前二つの試合と違って、割とこのブログでレビューする事がある試合でした。この試合の後、案の上、ハリルホジッチは色々と叩かれてますが、試合内容のレビューはそんな出回ってない感じですんで、一つ書いとこうと思った次第です。


日本対中国のスタメンとハリルホジッチの基本戦術の話から


さて、まずはスタメンから入りましょう。中国の選手は名前知らないので、日本のスタメンとフォメの紹介から入りますが、


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基本はこんな感じでした。日本は4231、4バックは米倉、槇野、モリゲ、ニワ、ダブルボランチが山口と遠藤航、WGが宇佐美と永井、トップ下に浦和の武藤、CFが川又となってました。一方で中国なんですが、


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こんなフォメが紹介されましたが、試合見る限り、4141でブロック組んで守る感じでした。この試合なんですが、ハリルホジッチは何もせずに試合に臨んだという訳ではなくて、中3日あったんで、きちんと戦術練習は出来たみたいです。そうなると、どういう攻撃してたかって話になるんですが、コレは、キャプでやりますね。


まず、遅攻のほうだと、前半から積極的に狙ってたのが、


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こーいう攻撃になります。このパターンはハリルホジッチが日本代表監督になってから、よくやってる奴です。海外組がいた試合でもフツーにやってました。この時の武藤の動きはなかなか秀逸でした。中国のアンカーを動かして川又がポストプレーをするためのスペース作る所から、アンカーのマークを上手く外す所まで完璧。


図にすると



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こうなるんですけど、トップ下が左右に動く事で、相手チームのアンカーを動かして、中央にスペースを作り、そこをCFに使わせて楔を打ち込んで行くってやり方です。この日は浦和の武藤がトップ下やってましたが、前半から左右に動き回ることで、中国のアンカーを動かしていました。中国のアンカーは馬鹿正直に武藤についていってくれたんで、川又がポストプレーする為のスペース作るのは偉い簡単な試合だったんです。


そんな訳で、この試合の前半から後半になるまで、川又のポストプレーの独演会みたいな感じになりました。その結果、何が起きたかってのは、川又の話の項目でやります。




次に、ハリルホジッチがやりたくてしょうがない速攻なんですけど、これは後半開始直後のプレーで説明するのが良いと思うのでキャプでやりますが、


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こーですね。このシーンの場合、最終ラインはPAから10メートル程度の位置でした。この位の高さだと、WGはハーフウェーライン前後まで戻ればいいので、カウンターになったら即CFのフォローに入れます。なので、このシーンだとモリゲ→川又→宇佐美→武藤という流れで一気に敵陣深くまでボール運べました。最後のクロスは合わなかったんですが、ここのカウンターの流れは非常に良かったです。




ここまでハリルホジッチのサッカーを5~6試合ほど見たわけですけど、遅攻では、ボランチ、トップ下のオフザボールで相手チームの中盤を動かして、CF・WGが降りてくるスペースを作り、そこに楔を打ち込んでいくってスタイルです。速攻では奪ったら出来るだけ速く前に当てようとしてます。



このハリルホジッチのスタイルそのものは何の問題もないですし、この試合でハリルホジッチが取った攻撃戦術ってのも、特に間違ってません。中国のアンカーは、日本のトップ下をマンツーマン気味で捕まえるスタイルでしたから、「トップ下のオフザボールでアンカーを動かしてCFに楔を打ち込んでいく」ってのは常識的な戦術です。W杯のギリシャ戦でもザックが似たような事やってます。



ただ、この試合の問題となったのは、戦術より選手の人選の方でした。



名古屋の川又のポストプレー祭り

こっからは、この試合における選手個別のレビューになるんですけど、まず川又の話から入ります。この試合の川又のプレーを見て、



うわあ、何て下手な選手なんだ・・・・
何でこんなポストプレー下手なCFに楔打ち込み続けてるの?


という感想を抱いた人は多いと思うんです。気持ちはわかりますよ。ええ痛いほどわかります。


例えば、前半25分、槇野がボールをもって持ち上がりました。ここでトップ下の武藤が左サイドに流れる動きで 相手のボランチを一枚動かして川又が使うスペース作ってます。次に、槇野が川又に楔のパスいれたんですが、何故か川又がボールにさわることもできずに、相手ボールになっちゃいました。


前半37分には 「モリゲが前を向く→武藤が動き出して中国のアンカーを動かす→川又が降りてきて、モリゲが楔を入れる→川又がポストしたボールは綺麗に中国の選手の前におち、カウンターの起点に。」なんてドリフみたいな流れもありました。まあ、この時は中国の選手がミスしてくれたので助かりましたけどね。


この試合、川又についてなんですが、残念ポストが複数あって。モリゲが川又に楔入れたら、何故かモリゲに帰ってきたり、ターン出来そうな所でターンできなかったり、処理が難しい山なりのボールを落としてみたり、相手にパスをプレゼントしたみたりと大車輪の活躍でした。これはキャプでやると、川又に気の毒になるんで止めときます。見たい人は録画見直すなりして下さい。



前半から、こーいう残念ポストをやっていたので、この試合みた人が「川又下手すぎね?」と思ってしまうのはしょうがない部分があります。僕なんか、画面の前で爆笑しちゃったシーンもありましたし。「なんでモリゲがいれた楔のボールがモリゲに帰ってくるんだよ~」と笑い死にしそうになった事を懺悔しておきます。



じゃあ、なんでこんな事になったのかといえば、ハリルホジッチが川又をCFで使ったからです。そもそも論になるんですけど、川又のポストプレーがビミョーだってのは、初戦の時点で明らかだった訳ですよ。なのに、なんで川又がポストプレーをせざるをえない攻め方してんの?って話です。「トップ下のオフザボールで相手チームのボランチ動かし、空いた中央のスペースを使ってCFに楔を打ち込む」サッカーやるなら、川又じゃなくてコーロキじゃね?という奴なんです。



CFの人選とやるサッカーのミスマッチが起きてるんですよ。川又はポストプレーでのし上がった選手じゃないのに。



川又なんですが、名古屋だとCFやってます。ただ、現在の名古屋は3421でワントップ2シャドー、守備時は永井と川又の二人前残しするサッカーです。1トップ2シャドーなら、CFは裏取りとフィニッシュに専念してればいいので、川又のポストプレーのアレさ加減がひどく目立つサッカーにはなりません。トップ下が二人いるので、CFはポストプレーはそんなしなくていいシステムなんです。ライン間に引いてきて楔受けるのはシャドーがほとんどやります。ついでに、川又と永井の二人前残しでカウンター狙いのチームなんで、CFが前で時間作る必要がそんなありません。二人残しなら、二人で持っていってしまえるので。具体的には、カウンターになったら、一人が下がってボール受ける動きしてDFを引っ張り出し、空いたスペースをもう片方が使えばいい。


クラブレベルだと、西野さんが苦労して永井と川又を併存させる方法作ってますが、ハリルホジッチは、どうもよくわかってないっぽいです。プレーヤー同士の最適解を見つけるってのは割と大変な作業で、アンチェロッティがキャリアの話でよくネタにする話ですけど、


 もちろん、何度も何度も失敗を重ねながら。たとえばパルマ時代には、あの4-4-2の中でジャンフランコ・ゾラという天才を外してしまうという決断を下しているし、ユベントスに移ってからの私は、98-99シーズン、あのティエリ・アンリを右のウイングで使うという大失敗を犯している。あれこそが私の監督としてのキャリアで最大の汚点だ。


【ロングインタビュー】カルロ・アンチェロッティ、勝者の戦術論(中編)


こーいう話ですけどね。川又って選手はレフティで、ちょっと癖のある選手です。ボール受けて前むける位置が極端に限られてます。つまり、左サイドから出てきたボールを左足でトラップするため、左サイドからのパスが来ると本当に残念なプレーしか出来ません。この試合でも一回ありましたが、レフティの典型的な欠点です。ただ、点とる事についてはサラブレッド的な能力があります。いやマジで。馬鹿とハサミは使いよう的な話なんですけど、使い方を誤るとアレですが、点はホントに取れる選手なんです。もっとも、その使い方が難しい訳ですけども。西野さんも名古屋で散々試行錯誤してますし。


山口の評価が割れている原因の話

次にこの話をしましょう。この日、ダブルボランチは、セレッソの山口と湘南の遠藤航で構成されてました。ただ、この試合では山口の評価が結構割れてました。この試合なんですけど、山口を褒める人と山口のポジショニングに文句を言う人とで、二極化してる感じでした。



ここで山口の評価が何故割れてしまうのかって話になるんですけど、この日、山口は最初から最後までよく走り、広大な範囲をカバーしてました。前への攻撃参加も結構やってましたから、そういう所を評価する人は、「山口って良いボランチだねえ・・・・」となるわけです。




一方で、山口に文句いってる人も多かったんですが、この理由もよくわかります。どういう事かというと、これもキャプでやっときますが、




こんなのが前半開始直後に見られましたし、


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そのすぐ後も似たような事やってました。


この3試合で、山口の評価が割れてしまっている原因がこれで、ダブルボランチがカバー&マークの関係を作れておらず、相手にバイタルを使わせる原因になってしまってました。僕が思うに、ハリルホジッチが433にシステム変更する理由の一つがコレです。前から行くなって支持だしてる時もあるみたいですが、ダブルボランチが揃って前に出てしまうのが散見されるので、非常に危なっかしい訳です。433なら、インサイドハーフが両方前にでてしまってもアンカーが残ってる計算ですから、食いつき癖があるボランチ使う場合には433のほうが向いてるっちゃ向いてるんです。


この日、簡単な1本のパスで裏取られたり、ダブルボランチが二枚一緒に前にでてしまったりと、ホントに単純なミスが散見された訳ですが、チームとして練習できてないので、しょうがない部分があります。だから、そこは多めにみてあげて欲しいです。



つーか、そもそも湘南の遠藤航はクラブだと3バックの右CBですので、この手のミスがでちまうのはしょうがない部分があるんです。元々遠藤航は、チョウさんにもの凄い便利屋的に使われており、湘南でも状況に応じて色んなポジションやらされてるんですが、ボランチ本職でやってる選手じゃないのでミスが出ます。この試合の場合、クラブシーンでは本職じゃないポジで使われる選手があまりに多く、小さなミスについては、多めに見てやる必要があります。もっとも、パス一本で裏取られるのは勘弁してくださいと言いたいですが。



それと、日本が失点したシーンでの話もしときます。


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こーですが、前半9分の日本失点。日本陣内からのスローインから始まる流れです。よくある失点パターンの一つなんですが、壁パスから逆サイドのWGとボランチの間のギャップを取られて、そこから失点という流れでした。本当によくあるタイプの失点の仕方で、これで点取られるのは色んなチームで見られます。ハリルホジッチの日本代表でも、頻繁にあそこのスペースが空くのを見てきたので、この得点については「まあしょうがないか」位で多めに見てやって欲しい所です。



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ぶっちゃけ、現在の守り方、WGの人選では、あそこには絶対スペース出来ます。壁パス使われて、あそこのスペースにボール運ばれた場合、バイタルミドルは覚悟したほうがいいです。あそこのスペースなんですけど、このチーム、マジで空きます。ウズベキスタン戦の時もキャプで解説しましたけど、


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あっこのスペースがぽっかり空いてて、壁パスからあそこのスペースにもちこまれた事がありました。あそこのスペース空けてしまうのは、色んなチームで見られる現象です。後半57分も、あそこのスペースがぽっかりあいてて、あそこのスペースからミドル食らってます。


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このシーンです。ここは宇佐美が中に絞ってないから、あそこのスペースぽっかり空いてしまい、そこからミドル食らいました。ただ、宇佐美が高い位置取っていた分、この後に良いカウンターが出来てるわけで、諸刃の剣的な部分があります。

永井が残念プレーを連発した件なのですが・・・・


最後に永井の話もしときます。永井については、元々サイドの適正は高い選手で、彼にとっては右WGってのはそう悪くないポジション・・・・と言いたい所ですが、今シーズンの名古屋じゃ色々やらされてます........最近は左のシャドーやってたハズです。


この試合、ハリルホジッチの狙いとしては、速攻でも遅攻でも、川又に楔いれて、左の宇佐美かボランチにボールを落とし、右の永井の裏への動きにパスを出す、ってトコだと思います。この人選だと、これ以外に最適解が見あたらないので。


ただ、これがあんまり上手くいかなかったんですね。


ちと名古屋の話しときますが、最近は永井と川又を前に残してのカウンターサッカーみたいな事やってるチームになってます。どういう事かってーと、わかりやすいのがコレ、浦和戦なんですけど、



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この動画の1:30からの森脇がレッドカード食らった時の流れが、今の名古屋のやり方を象徴してるんですが、守備時には永井と川又を前に残して、この二人を使ったカウンターです。この場面だと、ボールを奪ったら、川又が引く動きでCBを釣り出して、空いたスペースに永井が斜めに走り込む。これで森脇ちぎってます。この後、後ろから永井ひっぱった件で森脇にレッドカード。この日は永井が二回スピードで裏にボール持ちだして2点とったといっていい試合でした。ハリルホジッチが永井気に入ってもおかしくないです。速攻には向いてる選手ですから。


現在の名古屋は川又と永井使ったカウンターのチームになってまして、前節はそのキーマン二人がいないので、どーしょもない試合やってました。



話を東アジアカップに戻しますが、大会期間中、「ライン間でボールを受けようとする永井」という全く永井のストロングポイントが全く出ない事を永井がやってまして、それが永井の悪印象に繋がってるんだと思います。勿論、裏を狙って良いプレーした時もあるんですけどね。



ぶっちゃけ、川又の動きでCB引っ張り出して、その裏に永井走り込ませて、そこにパスだすべきなんじゃね?川又にポストさせても何も起きない気がするし、永井引いてボール受けさせても、やっぱり何も起きないと思う。


後半頭にあった川又の残念ポストプレーのキャプやりますけど


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こーいう流れだったんですけど、川又のポストプレーの精度を考えると、


「CBから川又への楔→川又がポストしてボランチに落とす→ボランチからサイドの永井か宇佐美に展開してフィニッシュ」


は、あんまり上手くいきそうにないんです。なんで、もう面倒だから、


「CBがボールもったら、川又が下がって来てボール受けるフリをしてCBを引っ張り出し、そのスペースに永井を特攻させて、そこにパス出す」


で良いんじゃね?って話です。選手の特徴考えると、そっちの攻撃やったほうが生産性高いと思うのですけどもね。この試合なんですけど、選手の特徴と、やってる攻撃のミスマッチが酷くて、「なんでこの選手にこんな事やらせてるの?」と不思議な感じで試合を見ていました。まあ、その分、新鮮で面白い試合だったんですけど。



最後に試合の感想


かなり長くなってしまいましたので、そろそろ感想書いてまとめておきます。



と、その前に、日本の同点ゴールについて、簡単に触れておきますが、前半40分、日本先制。これは見事なゴールでした。槇野の持ち上がりから、宇佐美が中に入ってSBを中に絞らせて、空いたスペースに米倉が突撃。米倉のクロスからニアで武藤が合わせてゴール。ここまで、中国は川又への楔を散々入れられていたので、そっちにDFは気が取られていたっぽいです。その分、サイドが空いちゃった感じです。なので、川又のポストプレー祭りも、あながち無駄じゃなかったのかもしれません。



今回の試合なんですが、僕の感想としては、「選手のストロングポイントが全然出ない攻撃を延々とやってる・・・」というものでした。まあ、その分、川又の面白ポストプレーとか、2ライン間でプレーしようとする永井とか、ゲームメーカー山口蛍とか、左SB米倉とか、SBの位置まで戻ってきて守備やってる宇佐美とか、リーグ戦では滅多に見れないプレーが見られて、新鮮みがあって面白かったです。いや、マジで。試合自体は面白かったです。ストロングポイント出てるか?と言われると、全然出てないよ、と答えますが、見てる分には面白かったです。



この試合、ハリルホジッチにとってのテストだったのか、それともガチだったのかは知りません。収穫があったのは、浦和の武藤(寿司)は使えそうだって事と、湘南の遠藤はどのポジションも無難にやれてた事くらいかと思います。月並ですいませんがね。この試合がテストだったのか、それともハリルホジッチが選手の適正見誤ってるだけなのかは、今後の試合でわかると思います。



最後に。今回のエントリでくり返し述べている事ですが、川又のポストプレーは残念なアレです。川又って選手は癖がある選手でして、ポストプレーはアレだし、テクニックもそれほどありません。ただ、FWに一番必要な「点取る能力」だけはもってます。そういう選手です。FWってのは面白いポジションでして、「決定力」ってのは練習してもあがりません。シュート練習を沢山しても、ゴール数が増えるかというと、増えないんです。そのため、「下手糞だけど点だけは取る」って人種の名FWが歴史的に何人も存在してます。その系譜に連なる選手です。僕はこのタイプ結構好きでしてね。なんで、湘南戦以外だと、川又を応援してるクチです。面白い選手ですよ。



今日はこのあたりで。ではでは。