サッカーのマッチレポートなどを中心に。その他サッカーのうんちく系ブログ。

2017/8/31ロシアW杯最終予選、日本対オーストラリアのレビュー

はい、皆様、お久しぶりです。


一年以上放置してた訳で、こんなブログはもう忘れ去られているでしょーが、日本代表がロシアW杯への出場を決めたので、本当に久しぶりに試合のレビューをしてみたいと思います。当然ですが、扱う試合は先日の日本対オーストラリアの試合です。ちなみに放置していた理由は単にサボっていたのと(金にもならんし忙しいし)、試合自体レビューする内容がない試合が何試合か続いたりしたからです・・・・・。


ただし、今回の試合については、w杯最終予選の関ヶ原と言って良い試合で、内容的にレビューするだけの価値のある試合でした。非常に興味深い試合だったので、レビューしながら試合の内容を振り返ってみたいと思います。




日本対オーストラリアのマッチアップについて


さて、今回の試合ですが、スタメンは、



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こうなっておりました。日本は433。オージーは3421。日本は中盤のスタメンを大幅にいじっており、井手口、山口、長谷部という中盤3枚を守備的MFで固める陣容になっていました。両サイドも左乾、右浅野となっており、イラク戦とはまるで違うスタメンとなっていました。


元々、ハリルホジッチっていう監督は、アタッカーは海外組を使い、ボランチは守備MFを二枚で固めるのを好む監督だったんですけど、この試合では守備MF三枚というガチ守備スタメンを組んで来てました。


なんで中央に三枚の守備MFが必要だったのか?それは、この試合のマッチアップを理解する必要があります。



433のチームが3421のチームと対戦する場合、問題となるのが、


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この白で囲ったエリアになります。433は3421と対戦する場合、中盤中央で数的不利に陥ります。これがどのような問題を引き起こすかというと、


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こうなるのですが、日本のボランチ二人が相手のボランチを捕まえに前にでてしまうと、アンカーの両脇のスペースを相手チームのシャドーに利用されてしまうんですね。もっとも、ここで「CBが前に出て対応すればいいじゃん?」と思う人もいるでしょうが、それには3421のチームは簡単に対応できる方法があって


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こーなるんですが、CBが前に出てくるなら、CBの後ろのスペースをCFが利用できます。この動きにはもう片方のCBがついてくるでしょうが、そしたら逆サイドのシャドーが斜めに裏に走り込む動きをすればいい。


ようするにですけど、このマッチアップだと、中央突破をされやすいんですね。



それからもう一つ。実はロングボール蹴られても問題を抱えます。



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こーなるんですけど、3バックの両サイドから斜めにCFにロングボール蹴り込みます。そうなると、どーなるかというと、中央の四角で囲ったエリアにボールがこぼれる可能性が高いわけです。そして、そのエリアでは433のチームは数的不利に陥ってるわけです。当然、セカンドボールを拾われる可能性が高い。そしてセカンドボールを拾われたらロングボールが機能してしまう。



つまるところ、マッチアップ的に非常に面倒な組み合わせなんです。繋がれるにしても、蹴られるにしても中盤中央で数的不利に陥っている事が守備上の問題を引き起こすわけです。



この問題に対処するために、ハリルホジッチはいくつかの策をチームに施してます。その一つが中央に3人の守備MFの配置になります。香川や柴崎、小林については3対4のマッチアップに対処できる守備力を持ち合わせてません。だから先発から外される結果になりました。これについては妥当な判断だと思います。元々守備的なサッカーする監督ですからね。井手口、山口、長谷部はカバーできる範囲が広く、二度追い、三度追いが出来る選手です。こういうボランチでないと数的不利の状況では守りきれません。



さて、マッチアップの話はこの辺りにしておいて、実際の試合で何が起きたのか、それを経過を追いつつレビューしていきましょう。



日本対オーストラリア、前半戦のレビュー


ここからは前半戦のレビューです。この試合の入りなんですが、日本代表が最初にやったのはハイプレスでした。試合の入りでハイプレスをやるのはよくある事なんですが、433と3421だと、433のチームがハイプレスやるのは比較的簡単だったりします。つまり、


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こーなるのですがね。相手の3バックに対して3トップをぶつけてしまえば、相手はボールを後ろで落ち着けることが出来ません。ここで相手のパスコースを限定していってサイドに追いこんでスペース圧縮して、そこで取ってしまえばいい。


これは最初、結構上手く行きました。具体的にいえば、前半2分くらいのシーンですが、




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こういう流れでしたが、うまーく前からの守備でボールを取り返す事に成功してます。


日本は大体前半5分くらいまではこれで上手く守れていたんですが、前半6分あたりから怪しい所が出始めてオージーがペースを握り始めます。具体的には、



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これは前半6分の所のシーンですけど、まさに日本が一番避けたい状況がここで生まれてます。ただ、このシーンですが、オージーのシャドーがボールコントロールにもたついてくれたおかげで助かりました。強豪国のシャドーだったら、あそこでフリーでボール受けたら決定機作ります。



さらにこの後すぐに又同じ攻めでやられる事になります。具体的には、




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こうなるんですけどね。これも山口と井手口をボランチに食いつかせて、その裏を狙う狙う攻撃です。日本はシャドーに対してCBの昌子が対応してるんですが、潰しきれずにボランチにボール落とされてしまいました。長友は昌子の裏のスペースをカバーするために中に絞らざるをえず、サイドでオージーのWBがフリーになってます。これも強豪国なら、ここからシュートまで持ち込めるシチュエーションが出来てるんですが・・・オージーがこの後やった攻撃が・・・・



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何故かバックパスしちゃうっていう・・・・何で走り込んで来た逆サイドのWB使わなかったのか、よくわかりません。ちなみに浅野が糞真面目にWBについてきており本当に偉い。



この二つのシーンは、この日のオージーを象徴するシーンなんです。この試合の後、オージーのFWが

「ポゼッションでは我々が上回っていたと思うが、ボールをスピーディーに回せなかったんだ。本来のゲームプランは少ないタッチ数でどんどん回して相手の守備を崩すところが、4回も5回もボールに触っていた。ああなると意図する攻撃はできない。エリア内になかなか侵入できなくて、チャンスを掴めなかった。日本にとっては守るのがイージーだったはずだ」

 さらに、終盤はもっとロングボールを多用すべきだったと述懐する。

「ゲーム終盤、日本は自陣深くに籠っていた。選手交代を活かしながら我々はポゼッションからロングボールを使う攻めに転じるべきだったが、意思の疎通ができていなかったように思う。それが残念でならないよ。そして、不意打ち(2点目)を食らった。フットボールとはそういうものさ」


「日本はイージーに守れたはずだ」豪州代表のベテランFWが大一番を辛辣分析

こんな風に振り返ってますけどね。この二つのシーン、どっちのシーンもそうですがオージーの選手、アタッキングサードに入ってからボールタッチが多すぎます。シンプルにやればいいのに。日本代表が1タッチ、2タッチでボール回していくのに対して、オージーは3タッチ以上しちゃってるので攻撃でリズムがでないんですね。



ついでに言えば、中盤中央は数的有利なエリアなんだから、ロングボール放り込んでセカンドボールの奪い合い勝負でも良かったんです。中盤中央でのフィジカルバトルに持ち込んだほうが日本にとっては嫌だったでしょう。もっとも、これにはハリルホジッチは対策講じてたのですが・・・・・




試合に話を戻しますが、前半6分~12分あたりまで日本は前からの守備が上手くはまらず、自陣に撤退しての守備を強いられます。この時間帯、日本はちょいと混乱してました。



前半12分のシーンを取りあげますが、


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これなんですけども、日本の右サイドでは比較的守備の役割分担が上手く行っていて、このシーンだとシャドーをSBが捕まえて、WBをWGが捕まえる形で対応できてます。これだとオージーは有効なビルドアップできませんから、一回ボールを後ろに戻してます。ここからが問題なんですが、


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ここ、こうなった後、グランダーのクロスをGKとCBの間に入れられました。これはオージーのFWが走り込めてなかったので助かりましたが、逆サイドでオージーのWBにボール拾われてそこから又クロス上げられました。冷やっとしたシーンでした。



ここを取りあげた理由は、これが後半に乾が最初に交代させられた原因だからです。攻撃において乾は間違いなく機能していたんですが、一方で左サイドにおいて、乾の守備はチームに問題を引きおこしていました。この他にも、前向いた選手につっかけてかわされて左サイドを突破される原因になったり、切り替えの時に軽率にスライディングしてかわされてオージーのカウンターのスイッチをいれてしまいったりと。最終的に後半23分、25分と立て続けにオージーに左サイドを突破されると乾が最初に交代させられる事になりました。




この試合なんですが、




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最終的にはこんな感じで圧倒的にオージーがポゼッションする一方で、まーるでPA内に進入できずシュート打てない試合でした。一方で日本代表はポゼッションはできてませんが、オージーのPA内に簡単に進入し、シュートうったりクロスあげたり、CK取れた試合でした。ついでに言えば、日本のサイドはオージーのサイドに一対一で勝てるけど、オージーは日本のサイドに一対一で勝てない試合でもありました。




話を試合に戻しますが、大体前半20分くらいまで日本は我慢の試合でした。押し込まれる展開でしたが我慢強く守れてました。当然、日本も段々とオージーの攻めに慣れてきます。そうなると反撃タイムになります。前半21分に山口のパスカットからショートカウンター。さらに前半22分には大迫が相手のバックパスかっさらって単独でシュートまで持ち込みました。(これ決めてれば大迫がスパーヒーローだったんですが・・・・井手口に全部もってがれてしまいましたね)



この後、前半20~30分あたりまでは日本は守備で落ち着きを取り戻してたんですが、前半31分に不用意に乾が前向いてるオージーのWBに飛び込んで交わされて左サイドを突破されたり、前半36分には長谷部がバックパスかっさらわれてピンチを招いたり、前半38分には吉田に当たって軌道がそれたシュートがポスト直撃したりと、日本もなんだかなあ・・・という時間帯に突入し・・・



前半40分、突然、試合が動きます。



【W杯最終予選】浅野琢磨ゴール - 日本1-0オーストラリア 31/8/2017




長友のクロスから浅野の裏への抜けだしが決まって日本が先制です。この先制点については長友のクロスと浅野の飛び出しだけで点とったのでビックリしました。


もっともゴールのアレについては、オージーのDFも愚痴ってますが、



浅野の殊勲弾は「安っぽいゴール」 ミスから生まれた1失点目に豪州DFが悔しさ爆発



完全に相手の左WBのミスです。日本代表で同じ事やったら当然、糞味噌に叩かれますよねえ。長友のクロスはゴールに向かってくる軌道のクロスで、オージーのDFのスミスは浅野とボールを同時に視界内に収める事は難しくないハズでした。である以上、マーク外すとかありえないシーンなんですが、何故か浅野のマークを外してしまい、日本に先制点をプレゼントしてくれました。





これで非常に日本は楽になりました。一方でオージーはW杯への切符が一気に遠のく事になります。たった一つのミスでとんでもない代償を支払わされる事になるのがサッカーの恐ろしい所です。日本も結構ミスはしてるんですけどね。ただ今回はDFが致命的なミスはしませんでした。オージーはDFがやらかしました。DFやGKのチョンボでの失点ってのは一定確立で起きてしまうので、そこはどうしようもない部分があります。



この後、オージーは前半終了まで、同じような攻撃をくり返し、最後までロングボール使ってきませんでした。なんというか、非常に不思議なオージー戦で、何で蹴ってこないんだろ?ポゼッションではシュートまで持ち込めてないんだから、ロングボール蹴って中盤中央でのセカンドボールの奪い合いのフィジカルバトルにすればいいのにと思ったのは僕だけじゃないと思います。




日本対オーストラリア、後半のレビュー

ここからは後半戦のレビューになります。後半は双方、交代はなし。



キャプではやりませんけど、後半3分、オージーは前半とまるで一緒の攻撃を日本にしかけてきてます。日本の山口と井手口を引っ張りだしてから、シャドーに当ててサイドに展開。この後、サイドからグランダーのクロスがDFとGKの間に入って吉田と川島のお見合いが発生し、あわやイラク戦の再現か!?というシーンが発生しましたが、この日は川島がポロリをせずにセーフでした。日本のサッカーファンの脳内でイラク戦の失点シーンが走馬燈のように再現されたシーンでした。惜しかったですね!(何がだ




さらに後半4分では右サイドの守備で酒井ゴリが「オージーのWBに背中を見せてターンする」というアマチュア全開なミスを披露してサッカーファンを楽しませてくれます。しかし、日本のSBが割と致命的なミスをしてるのにオージーの左WBは違いを作れません。オージーの監督にお悔やみを申し上げます。良い左WBなら日本は失点しててもおかしくなかったシーンでした。後半開始10分くらいの浅野の裏取りまで日本は良い所があんまりないです。面白いシーンはてんこもりなんですけども。



さてオージーの左WB君、後半10分には再び浅野に裏をとられるわけです。本日2回目。このWB、オージーのメディアでは糞味噌に叩かれてるみたいですが、攻守に全く役に立ってません。このWB、代えてない所をみると、そんなに左WBは手薄なんでしょうかオージー。



これで終われば良いのですが、オージーの左WB君のやらかしは続きます。後半10分のシーンですが、


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驚いた事に何とダブルボランチが固めている中央にカットインドリブルを試みるスミス君。メッシやクリロナだって無理目なプレーです。CFとのワンツーを試みますが、ダブルボランチが固めてるんです。日本の守備陣にひっかかってロスト。そこから日本のカウンターが発動し、日本はシュート打ってCK取りました。



この選手のおかげで日本は後半始まってから二回もチャンス作れてるわけで感謝しなきゃいけませんよ皆さん。こんなサービス精神溢れるWBはそういません。普通は前半で交代です。



さらに続きます。後半12分、この左WB君は酒井ゴリのマークを振り切って(単に酒井がマーク外しただけですが)、裏に飛び出すことに成功します。ここでゴールをお膳立てできれば・・・というシーンでしたが、なんだかよくわからないクロスを逆サイドに出して終了でした。



左WBネタはこの辺りにして、後半15分、オージーが動きます。FWのユーリッチを投入。日本のサッカーファンは当然、「放り込み来るぞーーー」と思ったんですが、



そ れ で も 愚 直 に 繋 い で 来 る オ ー ス ト ラ リ ア 代 表





に変わりはありませんでした。本当にどうしちゃったんでしょうねオージーは。



というわけで、日本はやる事変わらず。ショートパス引っかけたら大迫に預けて全体を押し上げて攻撃ってのを続けます。大迫は化け物じみてボール収まるため、後半16分、20分とカウンターの起点になってます。まー、大迫がいる限り、ボール取る場所が低くても問題ないです。大迫にボールが納まる訳だから、大迫にボール預けて全体押し上げれば良い。




さて、試合が動くのは後半23分からです。この日、オージーが初めて決定機らしい決定機を作りました。キャプではやりませんが、日本の左サイドの2対2の状況からオージーが左サイド突破してグランダーのクロスを中央に折り返します。失点ものシーンでしたが、ここは酒井のビッグプレー。ボールをクリアーして事無きを得ました。




さらに日本のピンチが続きます。左サイドで今度は長友が裏取られて突破され、中央にグラウンダーのクロスを折り返されることになりました。ここも再び酒井が体を張って事無きを得ました。



後半になってから、酒井については背中見せてターンしてみたり、裏取られてみたりと自分の担当ゾーンでは良い所がなかったのですが、左サイドが突破された時には本当に良いプレーをしてくれました。日本の失点を二つ防いでます。ここはきちんと評価してあげないといけません。



ここからは後半27~29分の間、オージーは徹底的に日本の左サイドを狙ってきます。そして、二回連続で左サイドが突破されたのを見て、ハリルホジッチは交代を決断。左サイドの守備を安定させる為、後半29分、乾に代えて原口を投入。


後半31分、中盤中央でのセカンドボールの拾い合いになります。最初の所で、ロングボールにはハリルホジッチ対策してたみたいな話しましたが、セカンドボールの拾い合いな状況になると、日本は必ず一枚、WGが中に絞ってセカンドボールの奪い合いに備えてました。日本はここでセカンドボール拾うと、大迫に預けてからカウンターというハリルのお家芸を発動。オージーのお馬鹿なミスもあり、井手口の決定的なシュートがあったんですが、これはオージーのDFに阻まれました。



さて、日本のほうなんですが、この時間あたりから守備ではもうなりふり構わなくなり、


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もう6バックみたいな守備になってました。サイドが突破されはじめたのを見て、WGを最終ラインまで下ろしての守備に切り替えたわけです。ハリルホジッチも逃げ切る為に手段選ばなくなってきてました。



あとは守備でどれだけ耐えられるかだなーと思ってたんですが、後半37分、ここで再びオージーのやらかし。




08/31ワールドカップ予選 日本vsオーストラリア 井手口陽介、2点目追加点ゴールシーン



オージーのバックパスを原口がかっさらって、そこから井手口に繋ぎ、井手口がスーパーミドル突き刺して日本のW杯出場を決定づけたわけです。



この試合、日本も3本ほどバックパスをオージーにカットされてショートカウンター食らってます。しかし、そこでオージーのアタッカーは違いを作れなかった。一方で、日本がオージーのバックパスカットできたのは2本なんですが、その内、1本をモノにした。この差は大きいです。





この後は特に書くことはありませんね。後半37分に2点目とったわけですからね。逆転される恐れは残ってませんでした。




試合を振り返ってみて。


さて、久々にサッカーの試合のレビューをやってみましたが、こうやって試合を振り返ってみると、本当に日本は我慢強く守ったなあと思います。中盤中央の数的不利問題を抱え、サイドを突破される事はあってもシュートまで行かせることはほとんどありませんでした。ハリルホジッチの起用も大当たりでしたし、豪州に完勝できたので、これはチームの自信になります。


レビューでも扱いましたが、この試合の守備上の肝である中盤中央の数的不利問題については、守備MF3枚の起用、シャドーへのCBのチェック、シャドーに裏を取られた場合、諦めずについていくといった形で対応できていました。上手くいってない時間帯もありましたが、サッカーってのはそういうモンです。攻撃面では非常にシンプルでしたが効果的でした。



オージーについては・・・まあ左WBのスミス君は次の試合は外されるでしょう、間違いなく。本当にどうしようもないプレーしてたので。彼だけは本当に場違いでした。一人だけとんでもなく不真面目なプレーをしてました。



今回の試合では本田と香川を使わずにオージーに勝てました。もともと、最終予選になってから、この二人は役にたってなかったのでスタメンから外し、試合で使わなかったたのは妥当です。むしろ遅すぎた位です。



岡崎、本田、香川は選手としてピークを過ぎ、一方で下の世代はピークを迎えました。力関係は逆転し、下の世代が実力でスタメン取ったに過ぎません。サッカーの世界で起こる当たり前の世代交代の時期だったんです。



今回、日本が最終予選を勝ち抜けたのは、下の世代の力です。北京五輪世代のアタッカーはこれっぽっちも役に立ってません。というわけで本田と香川と岡崎については、ロシアまでひっぱる必要は無いと思いますよマジで。まあ、マヤと長友はまだ使えるので残すべきですけど。


久しぶりに長い記事書いて疲れました。今日はこの辺りで。


あとサウジ戦は消化試合なんでレビューはやりませんからねー。



ではでは。

日本代表におけるバイタルの守備のやり方についての話

はい、皆様、こんにちは。超お久しぶりです。またもや間隔空いてしまいましたが、ちょっと気になった事がありまして、本日は現在の日本代表における守備のやり方について取りあげたいと思います。



すでに前回のボスニア・ヘルツェゴビナ戦から一週間以上経ってるので、周回遅れ気味なんですが、2016/6/11 に行われたガンバ対湘南戦や、6/15に行われたガンバ対浦和戦を見て、「バイタルの守備のやり方」について思う事があったので、ちょっと一筆書いておこうと思った次第です。



日本代表対ボスニア・ヘルツェゴビナ代表における失点シーンの話


さて、まずは前回の日本代表の試合の話になります。あの試合、日本は1-2で負けてる訳なんですが、日本の2失点のシーンをキャプで解説しときます。どっちも日本のバイタルでの守備のやり方に問題があります。


https://www.youtube.com/watch?v=UYaF9gRyQtQwww.youtube.com


こっちに動画を張っときますが、キャプでやると、



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こうなんですけどね。


この試合なんですが、はっきり言って日本のCB二人がボスニアのCFに一対一で負けまくっていたので失点はしょうがない部分があります。ただし、日本のバイタルの守備方法は正直感心しないので言わしてもらいますが、このやり方は問題があります。


どう問題があるというと、ボランチの柏木です。あそこでCBがボールもった時、引いてくるボスニアボランチを柏木が捕まえて前にでてしまってるんです。その結果として、バイタルが1ボランチになり、その後のプレーで1ボランチの両脇を使われて、CBを前に引っ張り出され、最終ラインに出来たギャップを使われて失点してます。



このシーンだと、柏木にも勿論問題があります。ボールが頭上を越えた時点で、ボランチは最終ラインとの距離をすぐに詰めないといけないんですが、ハッキリ言って遅いです。ただ、柏木みたいな守備専ボランチじゃない選手にそこまで求めるのは酷かもしれません。



実は、これ2失点目も全く同じ形で失点してます。




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こーでしたがね。




これね、2失点ともそうなんですが、ボールが出る前から、ボランチがチェックに出るもんだから、日本のバイタルが1ボランチになってるんです。その結果として、1ボラの両脇がガラ空きになって、そこを使われて失点してます。



前回の試合で、僕が気になったのはココで、全く同じ形で2失点してるんですわ。バイタルの守備方法に明らかに問題がある。この試合、柏木は前半で交代させられて、後半から遠藤航が入ってきましたが、ぶっちゃけバイタル1ボラ問題は後半も継続してました。その結果が後半の2失点目に繋がる訳です。ボランチの対人の強さの問題じゃねぇんですよ。ボランチがボールが出る前からチェックに出て、バイタルが1ボランチになった所をやられている訳ですからね。



後半でもしょちゅう同じ問題が生まれていたんで、チームとして、2列目の守備のやり方に問題があるといわざるを得ません。



今の日本代表なんですが、2列目に浅野とか宇佐美みたいな実質FWといっていい選手を使う傾向があります。こういった選手は守備面では、対面の選手をみるのに精一杯でバイタルのケアまでは頼めません。そういう選手を使っている以上、バイタルからボランチが引っ張り出されないようにトップ下とCFがボランチの前のスペースを消し続ける必要があるんですが、この辺、今の日本代表の守備は適当と言わざるを得ません。


この試合の前半の場合、ボスニアの方はCFとセカンドトップボランチの前のスペースをきちんと消して引いてくる日本のボランチはFWが捕まえてました。結果としてダブルボランチが常にバイタルを固めてましたから、ボスニアバイタルはかなり硬かったです。一方、相手が中央固めていたので、サイドにはスペースがあり、それが前半の宇佐美無双に繋がったわけですけどね。



正直いって、同じボスニア出身監督でも守り方は随分違うなと思った試合だった訳です。




ガンバ大阪バイタル問題について


次にガンバ大阪の話をしときましゅ。今回、周回遅れでボスニア戦の話題を取りあげたのが、最近見たガンバ大阪の2試合が非常に面白かったからです。



6月11日に行われたガンバ大阪対湘南の試合の方ですが、



www.youtube.com



動画張っときますけど、コレです。



この試合なんですが、湘南の3得点は全部スーパーミドルでした。ただし、全部そうでしたが、この試合のガンバの守備方法って、基本的にバイタルが空くんですね。



どういう事かというと、ガンバってチームはサイドを攻められて4バックにギャップが出来た場合、ガンバのボランチが一人、必ず最終ラインのカバーに入るって形を取ってます。そうなると、必然的に、バイタルが1ボラになりますから、1ボラの両脇にはスペースが生まれます。



ガンバの1失点ですが、湘南にサイドを攻められた時、4バックの中央、CBの間にギャップが生まれました。そのギャップを埋める為にボランチがカバーに入ってます。その結果、バイタルがガラ空きになりました。そして、空いたバイタルから湘南のミドルが決まって失点。


2失点目は、これはアデミウソンの怠慢守備です。このシーンの場合、ガンバの守備ブロックは整っており、これといってスペースは生まれてません。ただ、あの位置に持ち上がった下田にアデミウソンがしっかり寄せてればミドル打たれなかったのに、怠慢な寄せしかしなかったので、スーパーミドル突き刺されました。



そして三失点目。これは興奮しましたが、湘南のサイド攻撃の結果、ガンバのCBがサイドに引っ張り出されたので、ボランチが最終ラインのカバーに入りました。このプレーは特に問題はなかったのですが、クリアしたボールが運悪くバイタルに転がりました。ボランチが最終ラインのカバーに入った訳ですから、バイタルにはスペースが出来ます。このこぼれたボールを湘南の下田が再びスーパーミドル突き刺しました。




現在のガンバさんなんですが、前目の選手の守備意識にちょっと問題があります。ボランチが最終ラインのカバーに入る以上、バイタルのカバーをセカンドトップとWGがやらないといけないのですが、ぶっちゃけ、そこが上手く行ってません。第一節の鹿島戦、第四節の神戸戦なんかでも、その辺が上手く行ってなくて失点してます。



でもって、面白いナーと思ったのが、実はこないだのガンバ大阪対浦和の試合んですよね。


前回の湘南戦でバイタルミドルを三発食らい、僕は「同じ守備のやり方してたら浦和に絶対狙われるぞー」とか思ってた訳ですよ。どういう事かってーと、これは湘南戦でのキャプでやりますが、


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これですけど、こういう守備やってたらガンバは絶対浦和にボコられんだろ・・・って守備でした。あそこで3421の2シャドーをフリーで前向かせちゃうような守備やってたら浦和相手はダメです。


さて、ガンバの長谷川監督。対浦和で何したのかっていうと、スタメンをガラッと変えてきてまして、フットボールラボさんからのキャプですいませんが、


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湘南戦

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浦和戦


となってました。このビッグマッチで井手口使ってきたのには驚きましたが、結果的に、これは当たりでした。後半66分に井手口がミドルシュートのブロックに行ったシーンとか、素晴らしい判断の良さでした。湘南戦で散々やられてた形でしたが、きっちりと対応してましたからね。


浦和戦なんですが、ガンバの方は、442でがっちりブロックを組み、ボランチの前のスペースは遠藤とアデミウソンで完全に潰してました。湘南戦では前の守備が適当でボランチが引っ張り出されるシーンがよくありましたが、浦和戦では遠藤とアデミウソンでがっちり鍵かけてましたので、ボランチが前に釣り出されない。結果、ガンバのバイタルにスペースがないって状況でした。


となると浦和としてはサイドなんですが、ガンバの右サイドは阿部と丹羽ががっちり固めてて難しい。ガンバの左サイドは宇佐美なんで、狙い目になるんですが・・・・今の浦和さんって、右サイドの高い位置で違いを作れる選手ってのが・・・いない。


そんなこんなで、ガンバが前半の1点守りきって勝利という結果でした。ガンバは湘南戦からはスタメンも守備のやり方も随分と変えて、非常に守備的に戦ってました。結果はしっかりついてきた訳ですから、あれはあれで良いと思います。



今回の話はバイタルの守備のお話なんですけど、442でバイタルを完全に封鎖したい場合、両サイドの選手の守備、そしてFW二枚がバイタルのケアを行う事が必要不可欠になります。今の日本代表ですが、その部分で上手く行ってません。ガンバさんもスタメンによってムラがあります。今日はそんなお話でしたとさ。

2018FIFAワールドカップアジア2次予選、日本代表対シリア代表のレビューとハリルホジッチ戦術、そして日本サッカーの病について

さて皆さん、お久しぶりでございます。更新が半年近く止まってましたが、久々に日本代表のレビューでもやってみようかと思います。対象の試合は、直近のアフガニスタン戦とシリア代表戦になります。この2試合なのですが、ハリルが色々と戦術のテストをしてくれたおかげで、うちのブログでも書くことが出来た訳です。本当に有り難い話です。うちみたいなブログは監督が戦術いじってくれないと書くことなくて困るのです。



今回のエントリなんですが、シリア戦のレビューとかいいつつ、アフガニスタン戦の話もします。内容的には、いつかやろうと思っていた話なんですが、「サイドにWG貼るタイプのサッカー」と「サイドにWGが貼らないサッカー」の戦術の違い、選手の動き方の違いなんかを扱います。


実は、日本サッカーの場合、「WGを使ったサッカー」をやるチームがそんなに無く、WGを使ったサッカーの代表格である433系はあんまり人気がありません。そのため、ワイドに張ったWGを使うサッカーってのが過小評価されてると思う事もあるわけです。レーブのドイツが使っていた4231のシステムはSBとWGがサイドに張り付いてるタイプだったんですけどね。まあ433になってからシステムが変わりましたが。



という訳で、本日はまずシリア戦の日本代表のシステムと戦術の話をしてから、アフガニスタンでハリルホジッチが試していたシステムの話をします。二つのフォメを比較すると、色々と面白い事がわかります。



シリア戦における日本代表の戦術とシステムの話、ハリルホジッチジャパンの戦術のおさらい。


まずは、先日のシリア戦の日本代表のシステムの話から入りましょう。随分長い事、日本代表のレビューしてなかったので、簡単にハリルホジッチの戦術のおさらいから入ります。


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フォメはこうでした。4231で、ワントップと2列目はいつもの。ボランチは長谷部と山口蛍、4バックは長友、モリゲ、マヤ、ゴートクの並びです。相手のシリアは4141を採用してました。香川にアンカーを貼り付けたかったんでしょう。


フォメはザック時代と一緒ですが、ハリルホジッチは、ボランチの二人の片方にゲームメーカーでなくて、働き蜂タイプを入れてるところに特徴があります。また、原口を時々ボランチで使ってますが、ボランチに前への攻撃参加が得意な選手を起用している所にも特徴があります。



こういった人選は、通常、サイドにWGを張らせるタイプの4231で使われます。ハリルホジッチの戦術面での狙いとしては、


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こうなりますが、このシステムの肝はSBとWGをサイドに張り出させる事で、相手のブロックのSBとCBの間、SHとボランチの間にギャップを作る事が狙いになります。その上で、このギャップをトップ下、ボランチ、CFが使っていくことになります。具体的には


1、ボランチのSBとCBの間に走り込み
2、トップ下がSHとボランチの間でボールを貰って前を向いて配球する
3,SBとCBの間に流れて来たCFのポストプレーからの展開



といった形を狙いとして持っていました。相手が中央を固めてくるなら、サイドチェンジからサイドに張り付いてるSBとWGのコンビネーションで崩していく、といった形となります。ハリルホジッチの4231の戦術での狙いとしては、こんな所になります。特にボランチの攻撃参加が多いチームに仕上がってます。ザック時代よりボランチが前に走り込むのを本当によく見るようになりました。




上記の三つのやり方を使った攻撃シーンをシリア戦のキャプで説明しますが、



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前半27、これはボランチの走り込みを使った攻撃で、サイドチェンジからSBとCBの間にボランチがフリーランかけるって攻撃。これはハリルホジッチがよくやってる攻撃です。山口と長谷部は前への攻撃参加は得意な方ですから、これは正しい使い方。このシーンだと走り込んだ長谷部はフリーになってますから、あそこにパスが出せればビッグチャンスになります。



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前30、これはCFがSBとCBの間に走りこんだケース。この動きで相手のアンカー引っ張って、宇佐美が中にカットインするコース作ってます。岡崎はこういう動きもサボらずやってくれます。



これらのプレーは、以前にブログで扱ってますので、


pal-9999.hatenablog.com


興味のある方はどうぞ。WGのカットインを使ったコンビネーションプレーです。SBとCBの間に走り込む選手に相手チームのボランチがついてくるならカットイン、ついてこないならそのままパスをつけてサイドを抉ってクロスという形に持ち込むのが多いですね。


お次は


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これはCFのポストプレーからトップ下のギャップ受け、前半41。ここは本田がサイドに張ってる状態なんですけど、あそこにいてくれるとSBとCBの間のスペースをボランチとトップ下が使いやすいんです。SBがどうしてもWGにひっぱられますからね。


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これはワントップのポストプレーから展開です。後31からの奴ですね。ここは本当に絵に描いたようなポストプレーからのコンビネーションが決まってます。SBにはたいた後、WGがサイドに開く動きでSBとCBの間にスペース作って、そこのスペース使ってCFがポストプレーをしてトップ下がラストパス。本当にお手本みたいなコンビネーションが決まってます。




これらの攻撃なんですが、シリアがアレな守備やってるんで通った部分もありますが、ワイドのアタッカーを使って相手を横に広げて攻撃するってコンセプトがきちんと出来てるシーンなんで紹介しました。


ハリルホジッチなんですが、就任当初は速攻速攻言ってましたが、「アジアは日本のホームじゃ極端なドン引きしてくる+アジアは1点リードされても前にでてこない」という現実を目にした結果、最近はあんまし速攻速攻言わなくなった感じです。アジア予選における日本代表というのは「いかにドン引きアジアから点を取るか」という戦いになりますので、しょうがないと思います。これが現実です。先に2点リードしない限り、アジアは前にでてきません。


なので、ハリルさんも引いた相手から点取るために色々とやってる訳です。あの監督、きちんと考えてチーム作ってます。


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得点シーンは、1点目オウンゴール、2点目はシリアのクリアミスから香川の個人技、3点目はカウンター、4点目は相手のクリアミスから、五点目は長友のオーバーラップからクロス、でしたね。



全体として日本代表は攻撃面では良い試合したと思うのですが、問題もありました。やっぱり本田が中に入りすぎる問題がこの試合でも起きていて、


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前18のシーンですが、ここね、本田はワイドに開いて欲しいシーンなんです。この後、本田はワイドに開いてるんですけど、ワンテンポ遅かったです。そのため、SBとCBの間にスペースが無いから、CFやボランチが使いたいスペースを本田が潰しちゃってるんです。


WGがああいうポジショニングを取ると、CFのポストプレー、トップ下のギャップ受け、ボランチの前への走り込み、全部出来なくなります。



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これは前35のシーンですけど、ここもそうなんですが、本田が中に入りすぎてます。本田はこの時、バックステップでサイドに開いていけば、SBがついてきますから、SBとCBの間で香川が使うスペースが出来ます。あそこに香川が動くとアンカーがついてくるでしょうけど、そしたら、バイタルが無人になりますから、そしたら本田にボールつけて、本田がドリブルでカットインすれば良いんです。




こういうプレーですけどね。このシーンの場合、あそこで本田がボール貰った場合、マークがついてる状態でフリックで香川にボールを出すか、マークついた状態からターンするっていう難易度の高いプレーを選択するしかなくなります。わざわざそんな難易度の高いプレーしなくても、サイドに開いて、香川にSBとCBの間のスペース使わせるか、あるいは香川にアンカーがついてくるならバイタルが空きますから、それからサイドでボール受けてカットインしたほうがずーっと攻撃はスムーズに行くんです。



この問題なんですけど、実は、岡田ジャパン時代に俊輔が右サイドやってた頃、ザックジャパン時代に香川が左サイドやってた頃にもよく引き起こされてました。日本代表名物サイドアタッカーがサイドに張っていられない問題。日本のサイドアタッカーって、やたらと中に入りたがる傾向があり、何だかなあ・・・・と思う事が多いです。それやっちゃうと逆足のウィング使う意味ないでしょうと。逆足のWG使うメリットはまさにここで、カットインドリブルを使った攻撃したいから逆足のWGを使うわけです。


この形を取れば、それほど人数かけなくてもフィニッシュまで持ち込めるので攻守のバランスを崩さなくて良いんです。ここがもう一つのメリットです。



この問題はハリルホジッチが就任して以来、ずーっと続いており、「どうするのかなー」と思っていたのですが、ハリルホジッチがアフガニスタン戦で戦術いじっていて「おお、そっち系の戦術の引き出しも持ってるのね!」と、ちょっと感心したので、それについて触れておきます。ハリル先生がアフガニスタン戦で戦術いじってくれてたんで、今回のエントリ書く気になったんですけどもね。



アフガニスタン戦の日本代表の戦術のお話

次はアフガニスタン戦の話になります。試合の順序は変わってしまいますが日本代表の攻撃時の問題と絡めると、この試合の戦術テストの意味がわかりやすくなるので、それについて説明しときます。




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試合なんですが、この試合の日本代表はスタメンとフォメいじってまして、4312となってました。日本代表で2トップみたのは久しぶりです。しかし原口はボランチで使われたりインサイドハーフで使われたりと便利屋の如き扱われ方です。



この試合で、ハリルホジッチは、結構毛色の違う戦術を試してます。図でやると



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こーなります。両SBの位置が超高い。4312はもともとサイドの高い位置にアタッカーがいないシステムなんでサイドはほぼ全部SBのプレーエリアになるんですけど、アフガニスタン戦の両SBの位置取りはとんでもなく高かったです。どれくらい高かったかというと、



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これは、アフガニスタン戦の前17分のシーンですが、両SBが相手アタッキングサードでプレーしてるんですね。正直呆れましたが、ただ、この日の日本代表は、常にサイドの高い位置にアタッカーがいる状態でした。


両SB上げるサッカーってのは、日本代表で見るのは久しぶりです。ザックはこれを絶対やりませんでしたからね。イタリア人監督は「SBはつるべの動きをするものだ」というセオリーに忠実なので両SB上げるサッカーはまずやりません。ハリルホジッチはつるべの動きにはそれほどこだわりはないようです。





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このシーンでもそうなんですけど、とにかく酒井ゴリの位置が高い。シリア戦だと、あの位置にはアタッカーがいない事がよくありました。



で、この高い位置に張り出したアタッカーが常に入るって事は何が起きるかっていうと、


日本代表 [ハリルホジッチ] マッチレポート | 2016年3月24日 日本 vs アフガニスタン | Football LAB ~サッカーをデータで楽しむ~



こっちのサイトで数字に出てますが、クロス47本って数字に繋がる訳です。この日はサイドチェンジがボンボン入ってましたが、あの位置にアタッカーがいないと、ボランチやCBは試合を大きく動かせません。普段の日本代表だと、あの位置にアタッカーが居ないため、サイドチェンジができないって問題が結構起きるんですけど、アフガニスタン戦みたいに両SB上げたり、あるいはインサイドハーフがサイドに張り出したりするなら、そういった問題は起きないわけです。


アフガニスタン戦なんですけど、後半もそうだったんですが、


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常に両サイドの高い位置にアタッカーがいるんです。後半12分の攻撃とかは普通に見事な攻撃で


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清武の得点ですね。これはキレーな攻撃でした。



これ系の「中央3名のアタッカー+両サイドの高い位置に常にアタッカー」がいるシステムってのは、日本だとミシャ式3421サッカーが有名ですが、欧州だとドルトムントがやってます。ドルトムントの場合、433ベースから変形して両WGが中に絞って両SBが上がるってシステムですけどもね。実はドイツ代表なんかも最近はこっち系です。



でもって、このシステムの場合、WGを使わないので「サイドアタッカーがサイドに張っていられない病」という日本代表の特異な病が発症しないんです。日本代表がこのシステムを使う最大のメリットは個人的にはコレです。ハリルホジッチがこのシステムをテストした時に思ったのは、「あらハリルさん、意外と本田の病気を気にしてるのね」という事でした。こっち系のシステム使うんであれば、本田の中に入りたがる病は、さほど問題にはなりません。そもそもサイドで使う事はありませんから。




最後に日本代表の不治の病について


最後に日本代表の不治の病について言及しておきます。日本代表を随分長い事見てますが、このチーム、誰が監督やっても治らない病気ってのがあります。今回のエントリでは、「サイドアタッカーがサイドに張っていられない病」の話をメインにやってきましたが、もう二つほどありまして、



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これは前半27分に日本が数的不利カウンターを受けたシーンのキャプで、



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これはシリア戦40分に数的不利カウンター食らった時のキャプです。どちらのケースでも原因は一緒です。DFとボランチが軽率にスライディングし、それがかわされたせいで数的不利、数的同数カウンターを食らうことになりました。特に前半40分のマヤのスライディングは画面の前で草生やしました。



守備においてはスライディングというのは最後の手段です。ただし、日本代表においては最後の手段を最初にぶっぱなす傾向があります。



日本のサッカー教本でも、ドイツのサッカー教本でも、オランダのサッカー教本でも、イタリアのサッカー教本でも、「スライディングは最後の手段」という点で一致してます。ただ、最後の手段をどの段階でぶっぱなすかは、国によって差異があるようです。



スライディング病」と僕は呼んでいますが、日本代表ってチームではDFが滑ってはいけない場面で滑ってかわされてカウンター食らうってのがホントに多いです。




そして最後が、皆さんお馴染みかとは思いますが、「カミカゼアタック病」です。


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実に麗しい4対5が出来てます。


根本的に前に人数かけ過ぎでして、シリア相手に4対5作られるとか草です草。アジア相手に前に人数かけすぎて、数的同数、数的不利カウンター食らうのは日本代表のお家芸です。





サイドアタッカーがサイドに張っていられない病」、「スライディング病」、「カミカゼアタック病」は日本サッカーの風土病みたいなモンでして、治らない病です。誰が代表の監督やっても発症してますので、僕はもう治らない病だと割切って見てます。よく日本の守備はディレイ中心とか言われますが、攻守の切り替えの時、SBやCB、ボランチがいきなり相手のアタッカーにスライディングするのを何度も何度も何度も見てきました。僕は「日本の守備はディレイとか言う人は、切り替えの時にいきなり滑るDFが沢山いるの見てないんだろうか?」と不思議に思うことが多いです。




これね、皆様も割切って感染観戦なさることオススメいたします。文句言っても治りません。治った試しがありません。もはや日本サッカー文化の一部となっており、不治の病です。



ぶっちゃけた話、後ろ二つは見てるだけなら、スリルがあって非常に面白いですから、エンタメとしては間違ってません。前のに関してはWG使わないシステム使えば問題は起きません。



今日はこのあたりで。ではでは。