サッカーのマッチレポートなどを中心に。その他サッカーのうんちく系ブログ。

2018年FIFAワールドカップ、日本対セネガルのレビュー「完璧な選手なんていません」

はい、皆さん、こんにちは。


本日は先日行われた2018年FIFAワールドカップ、日本対セネガルのレビューをお届けします。結果は皆さんご存じかとは思いますが、2-2での引き分けでした。


この試合内容はセネガルが勝ち越す度に日本が追いつくという本当に面白い試合だった為、海外でも好評だったようですね。試合事態は日本が勝ってても良かった試合なんですが、日本の守護神こと川島大明神が


「相手アタッカーに向かってボールをパンチングする」


という斬新なセービングを編み出した事から追いかける展開になってしまいました。知らない人の為に説明しておくと、日本のサッカー界には「ガヤる」という言葉がありまして、ガンバ大阪GKだった藤ヶ谷陽介さんのドラマチックなプレーの数々を指して使われるようになった単語です。


GKのやらかしというと代表的なのはシュートを前にこぼして相手FWへのアシストをしてしまうとか、飛び出したのにボールに触れる事が出来ず失点とかがあります。どっちもガヤさんの得意技でした。懐かしいですね。飛び出してボールをクリアしようとしたらキック空振りしてしまい大迫に決められた試合とかガヤさんの全盛期でしたね。


ちなみに日本の2点目なんですが、セネガルのGKがクロスをパンチングしようとして前に出て岡崎倒したあげく、飛び出したのに触れる事ができないという失態を犯し、結果が本田のゴールとなりました。この試合、日本はGKのちょんぼで先制され、セネガルはGKのちょんぼで追いつかれるというお互いに優しい事やってました。


先日の試合ではGKのGAYAプレイはお互い様だったので、川島のアレについては許してあげてもいいんじゃないかと思います。てか叩かれすぎです。サッカーを普段見ない人は日本人GKの真のお笑いを知らないんでしょう。



日本人GK ミス集|Funny Japanese Goalkeeper Fails and Mistakes ● Stupid Goalkeepers



この動画を見ればシュートを前にこぼしてしまうとか、飛び出したのにボールにさわることが出来なかったとか、良くある日本のGKのミスなんて笑って許してあげられるようになると思います。(どっかの島国の代表GKが動画の中にいるような気しますが気のせいです)



GKネタはこの辺りにして本題にはいりましょうか。この試合については有り難いことに書くことあります。前回の試合みたいに戦術面で殆ど書くことが無かった試合と違って扱える話題があります。うちみたいなブログでは本当に有り難い話です。




日本対セネガル、前半戦のレビュー

ちょっと前振りが長くなりすぎてしまいましたが、ここからが本題になります。この試合のスタメンですが、


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こうなってました。日本はコロンビア戦からスタメンは変わらず。一方でセネガルは433でセットしてきました。4231と433はマッチアップ的に、サイドと中盤が噛み合います。

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こうなりますが、基本的に誰が誰を見るのかがハッキリとするマッチアップです。その為、日本がボールをポゼッションする場合、一工夫しないといけません。一工夫いれないと香川、柴崎、長谷部、乾、原口はガチムチマッチョの黒人を背負った状態でボール受ける事になりますから何にも出来ずに終わります。この5人はマーク背負ってプレーできる選手じゃありません。今の日本でマーク背負ってプレーできるのは大迫だけです。最終ラインから何の工夫もなく中盤にボール入れられたらボール狩られて終わります。



一方でセネガルなんですが、攻撃面ではフィジカルゴリ押しのサッカーします。アタッカーにはマークついてようが構わずボール入れます。この場合アタッカーはそこからターンして違いを作り出せないといけないんですが・・・・これができる選手が前にそろってるんですよね。恐ろしい話ですが。前半38分にセネガルが作った川島との一対一のシーン、後半25分の日本の失点シーンのいずれもそうでしたがセネガルの選手がマーク背負いながらターン出来た事が引き金になってます。前半のは長谷部がやられ、後半のは柴崎がやられました。あれがセネガルのサッカーなんです。



基本的に、この試合は全く異なるアプローチを取るチーム同士のぶつかり合いでした。セネガルは極めて高いフィジカルを活かしたアタッカーによる単独の局面打開を試み、日本は中盤の選手が前を向いてボールを受ける為に流動的なポジションチェンジを試みることになります。



それでは試合で何がおきたのか、それを時系列で追いながら話を進めていきましょう。



まず試合の方なんですが、開始2分で日本が左サイド突破されかけるという衝撃的な展開からスタートしました。


セネガルのほうですが開始2分で

右サイドからのスローインを受けたCFのニアンが昌子を背負いながらあっさりターン決めて右サイドのサールにはたく


という凄まじいプレーをいきなり成功させてます。


試合を見ていて、「ねーーーーーよ」と思ったプレーです。昌子ってあんなに簡単にやられるCBじゃないんですけどね。W杯期間中でサッカー知らない人の為に言っておくと、「ゴールに背を向けてボールを受けたアタッカーを前向かせてはならない」というのが守備の基本中の基本です。これが出来ないなら守備組織なんて何の意味もありません。ゴールに背を向けてボール受けたアタッカーをあっさりターンさせちゃうようじゃ守れません。


昌子は体寄せてたんですが、本当にあっさりとニアンにターンされました。さらにサールは長友をスピードで上回ってて「やべえ、やべえよ」といきなり不安になる立ち上がりでした。


この後、前半4分にもサイドに流れたニアンにCK取られ、前半6分にはニアンがロングボールおさめてボランチに落とし、そこから左サイドのマネに展開。マネは酒井ゴリ抜いてクロスあげる事に成功しました。


開始6分すぎまで昌子が全くニアンに歯が立たず、ニアンにボールおさめられてサイドにはたかれてクロスあげられるというセネガルの攻撃を止める方法が事実上存在しない状況でした。中央でボールおさめられてしまうと4バックはそれに対応して中に絞らざるを得ません。中央突破を防ぐ為です。しかし中に絞ればサイドが空きます。そして空いたサイド使われるとマネとサールを止めるのは非常に難しい。これを止めるには中央のニアンなんとかしないといけない。まずニアンなんです。ニアンにボール納まってしまうと日本は本当に厳しい。


さらに守備では、この時間帯、セネガルは前から来ていて昌子の所にボール追いこんで取るっていう狙いが明白でした。まあ、このあたりは昌子もわかってたみたいで、


news.livedoor.com


こっちで記事にもなってますがね。


攻撃では昌子狙い、守備でも昌子狙いとセネガルは徹底した昌子狙いなのが開始10分までのゲーム展開です。この時間帯は日本は殆ど良い所なかったです。日本にも狙いはあったんですが、この時間帯は上手くいってませんでした。


そして前半11分、なんでもないクロスを原口が頭でクリアしようとしたんですが、これが中途半端になってセネガルボールになってシュート打たれ、川島がパンチングで前にこぼしたボールがマネの膝に当たって、ボールはそのままゴールへ。日本は前半11分でビハインドという大変有り難くない状況となりました。


正直に告白するとビルドアップも上手くいってねーし、昌子がニアンに勝てないようだとボコられてしまう・・・と思っていたんですが、潮目が変わったのが前半17分です。小さなプレーですが、「およ?」と思ったシーンでした。昌子がニアンに競り勝って日本がセカンドボール拾ったんです。「昌子、ニアンに勝てる?」という感じで希望が湧いてきたんですね。このあたりの時間帯からニアンがボールを納められなくなり、セネガルの攻撃が機能しなくなってきます。前半24分にはセネガルは二回、ニアン狙いのボール入れるんですが日本も慣れてきて逆に奪ってカウンターに持ち込み、セネガルの右サイド破って長友がクロスいれることに成功してます。


NHKでも解説の福西さんは前半23分あたりだと「(昌子がニアンに)苦労してますね・・・」と言ってたんですが、僕が昌子を見直したのがこの後の修正力です。最初はニアンにやられまくったんですけど、徐々に慣れてくるとニアンを逆に抑えこむ事に成功したんです。これは本当に感心しました。というか昌子がニアン抑え込めなかったらあのままボコられてたと思います。


ニアンが昌子に勝てなくなるにつれて、セネガルの攻撃は単発になり機能不全になっていきました。中央さえ使われなければ、マネは酒井が抑え、サールは長友で抑えられます。日本は後ろが安定するにつれて攻撃面も良くなっていきました。


日本のビルドアップと狙い所

さて、ここからは本日のメインディッシュ。


この日の日本のビルドアップについてです。コロンビア戦の場合、開幕3分でコロンビアが一人少なくなったのでビルドアップについてはどうにかなった試合でした。しかし、今回相手は11人揃ってます。相手は昌子の所にボール追いこんで、そこからボール狩ろうという意図でやってます。日本でDF背負ってプレーできるのは大迫だけで、他は背負ってプレーできません。マッチアップは噛み合ってるので足下へのパスだとまず前向かせてもらえません。しかし、日本のストロングポイントは中盤にあります。何とかして中盤の中央の選手、香川、長谷部、柴崎のだれか一人が前向いてボール持てる状況を作らないといけません。



さて、日本が最初にやってたのはオーソドックスなアレです。つまり長谷部最終ラインに落として3バックに変形しSB押し上げるって例の有名すぎるアレです。


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これは試合の最初のほうからやってました。狙いとしては長谷部のマッチアップの相手のボランチ1枚を前に引っ張りだし、空いたスペースを大迫、柴崎、香川に使わせるって感じでしょう。


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ここですな。相手のボランチ一人前に引っ張り出すとアンカーの脇のどっちかが空く事になります。そこを使えればチャンスになります。このシーンだと長谷部がドリブルで持ち上がって相手引きつけてから大迫使ってビルドアップしてました。


そして大体、前半の28分頃から日本のボランチが良い形で前向けるようになります。この形、香川が落ちる形が一番しっくり来るんですが、


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これ。香川ボランチの位置に落として乾絞らせるか、空いたスペースにボランチ一人走り込ませる形。前の選手が降りてきてビルドアップ手伝うようになると俄然ビルドアップがスムーズに行くようになりました。


そんでもって前半33分、日本が先制する流れですが、これはキャプでやっときますかね。

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この形なんですが、香川が降りてきてボランチ二人引っ張ってフリーになった柴崎からセネガルの右SBの裏へロングパス。これに長友が抜け出して、最後は乾が得意な角度からズドン!で日本同点という流れでした。


これ以降も2列目が降りてきてビルドアップ手伝って、空いたスペースを他の選手に使わせるという形で攻撃が機能しはじめました。大体、前半30分前後から日本は中央の3枚のいずれかが前向いてボール持てるようになります。こうなると、このチームはストロングポイントを発揮できるようになります。


この日の日本の狙いですが、まずセネガルのSBの裏。セネガルはラインの裏へのケアが甘く、マークの受け渡しも曖昧になる所がありました。この為、空いたスペースにボランチを飛び込ませるのと、裏へのロングフィードは非常に効果的でした。


日本対セネガル、後半戦。シセの修正と日本の対応


こっからは後半の話になります。日本は同点においつけたし、攻撃も守備も安定してるので特に変更はなく後半に入ってます。一方でセネガルのほうは攻守に不安定な状態になった為かシステムをいじってきてます。


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日本が最終ラインに長谷部落としてきてるって事からかP・アンディアイエを一列前に出して中盤をダブルボランチに変更してきてます。最終ラインへ落ちる長谷部をP・アンディアイエに捕まえさせて中央は横並びにし、アンカーの脇を狙われないようにした形です。


前半28分以降、日本が主導権を握りゲームを進める展開が続いてました。セネガルはポジションチェンジをくり返す日本の中盤を捕まえきれておらず、ここの修正は急務でした。最終ラインの裏へのボールにしろ大迫への楔にしろ、香川、長谷部、柴崎が圧倒的に多いわけですから、セネガルはまずココを何とかしないといけない。日本にとってのニアンは、セネガルにとっては香川、長谷部、柴崎でした。ここを抑え込まないとどうにもならない。


ただ、この修正の後もセネガルは中盤で日本の選手を捕まえきれませんでした。


後半3分の場面だと、セネガルがシステムを修正してきてるのは間違いない場面だったんですが・・・


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このシーン、何回見返しても意味がわからんのですが、この後、大迫はボール失わなかったんです。普通ボール失いますよ、こんなの。マジ半端ねぇ。セネガルの守備は間違ってないです。普通のCFならあそこでボール取れるし、そこからカウンターにいけてます。ところが大迫がボール取られない。意味がわからない。シセが大迫褒めてたのも当然ですわ。狙い通りの守備できてるのに大迫が個人で打開しちまったんだから。


ついでに後半5分のシーンでも大迫はDF背負いながら見事にボールおさめてカウンターの起点になってるし、大迫は背負ってプレーするの上手すぎますわ。


そしてここから後半14分位までは長谷部、昌子が痛んだりして、プレーが中断気味で進んでたんですが、後半14分あたりからセネガルに怪しい所が出始めます。


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ここでは長谷部が長友のところに降りてますけど、あそこだと誰もついてこない。だから長谷部の所から作られてしまうし、何より不味いのは柴崎の攻撃参加の時、マッチアップの相手が完全に柴崎のマーク外してしまってる点です。



更に言えば、この後、後半15分にも柴崎の飛び出しから大迫へのグランダーのクロスで決定機ってシーンがありましたが、あそこでも柴崎のマークの受け渡しにセネガル失敗してます。このあたりなんですよね、アフリカのチームだなあっての。裏のスペースのケアであったり、マークの受け渡しであったりと、細かい所でムラがある。香川が下がってボランチをバイタルに飛び込ませる形が機能しちゃうのは、こーいう所なせいですよね。


さらに後半17分なんですが、Aエンディアイエのマークが一瞬緩んだ隙を逃さず柴崎が左SBの裏へスーパーフィード。これに酒井ゴリが抜け出す事に成功します。この後、ゴール前のシーンになった時、柴崎がゴール前に飛び込んでくるんですが、Aエンディアイエは柴崎にマーク外されてしまい、柴崎がノーマークの状態でゴール前に入ってきてました。


この時間帯ね、もうちょっとチームとしての連携度が上がってたら、柴崎のゴールが生まれていたと思います。攻撃参加すると完全にフリーでしたからね。香川が開けたスペースに柴崎が飛び込んで来るってのを大迫がわかってプレーできてれば・・・という奴です。


この時間帯、柴崎とA・エンディアイエのマッチアップは柴崎が圧勝してる状態でした。この時間帯での柴崎のパフォーマンスは凄まじく、裏へのパスの対応に難があるとみるや裏への長いフィードを通し、マークの受け渡しに難があるとみるや果敢な飛び出しからチャンスメイクと、たった一人で日本の攻撃を引っ張ってる状態でした。



シセとすれば・・・当然交代カードの時間です。(ついでにカウンターから乾の決定機がひとつありました)


後半20分、セネガルはA・エンディアイエにかえてシェイク・クヤテを入れてきます。この交代は極めて妥当です。A・エンディアイエが柴崎のマーク外しすぎてました。


ここまでの時間帯、日本には決定機が二つありました。しかし、 「決めるべきところで決めないと罰を受ける」ってのがサッカーです。


後半25分、PA内でゴールに背を向けてボールを受けたサバリがマークについてた柴崎を見事なルーレットのターンで抜いて、股抜きクロス。これを飛び込んできたワゲが決めてセネガルが2点目。


まさか左SBがルーレットからのターン決めてくるとは思いませんでした。ワールドカップって本当に怖いですね。やばいのしかいねえ。あんましいいたかないですがね、柴崎が欧州でボランチとしては使ってもらえない理由がこのシーンには凝縮されてます。そしてハリルホジッチに冷遇されてた理由もね。ハリル的サッカーやる監督は「あそこでターンさせちゃうようじゃボランチとしては計算できねぇ・・・」となります。一方で西野朗はそこには目をつぶります。目をつぶってボランチで使います。やるサッカーが180度違うからです。


柴崎の良い所も悪い所も凝縮された10分間です。監督によって好き嫌いが大変分かれるタイプの選手です。この試合は柴崎の全てが出た試合でした。

西野朗のギャンブル

さてリードされた瞬間に西野朗が動きます。後半は上手くいってました。上手く行ってたんです。しかし勝ち越しを許してしまった。

後半27分、西野朗は香川に変えて本田投入。さらに後半30分には原口に代えて岡崎を投入し、システムを442に変更します。


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これ見たときの感想としては


「うわあ、ギャンブル始めやがった」


というモンです。後半ね、上手くいってたんですよ。マジで。しかし、ここで本田と岡崎を投入して442にしてしまうと、上手く行ってたバランスが崩れます。具体的には岡崎はビルドアップ助けてくれないし本田の右は中央のスペースに入りすぎる。これだとビルドアップが不安定になるし、柴崎が飛び込むスペースが前になくなる。ここまで上手く行ってたバランスが崩れる。メンバー交代後、チームが機能するかどうかは完全にギャンブルになります。下手すると変更後、チームが全く機能しなくなる恐れすらあった。


ところが何が起きたかというと、後半32分、セネガルのGKからのフィードを昌子が拾った所から岡崎に当てて、岡崎が大迫に流して大迫が得意のターンからクロス。これにGKが飛び出すが触れることが出来ずに岡崎倒して転倒!!!!乾が折り返して本田が同点ゴール叩き込んで同点となったのです。ここでまさかのGKやらかしですよ。GKのやらかし!!



西野朗本田圭佑はもってます。マジでこの二人はもってますわ。


この後は特にそれほど書くことなく試合は引き分けで終了しました。


試合の総評と西野ジャパンについて


試合そのものは本当に面白い試合でした。本当に本当に面白い試合でした。勿論勝てればそれに越したことはなかったのですが、十分に満足度の高い試合でした。


試合内容としては、先にも述べましたが、全く異なるスタイルを持つ二つのチームの戦いでして、セネガルはフィジカルを前面に押し出したスタイル、日本は流動的でテクニカルなスタイルで戦いました。どちらが優れているという話ではありません。セネガルにはそういうサッカーが合う選手が揃っていて、日本にはそういうサッカーに合う選手が揃っていたという話です。(正確にはそういう選手を西野朗が選んだのですがね)


西野朗という監督が就任して、ハリルホジッチの時とサッカーのスタイルを180度変えてしまいました。本番直前にやるサッカー変えちまったんです。ハリルホジッチはより静的でフィジカルなスタイルのリアクションサッカーやってましたから。これの恩恵を受けた選手もいれば、被害を被った選手もいます。恩恵を受けたのは香川、乾、柴崎、大島みたいな選手達。被害を被ったのは山口、井手口ですね。中盤でボール動かさないサッカーから、中盤でボール動かすサッカーに大変更したので必要な選手がまるで変わってしまいました。正直言って最初は「時間なさすぎるし無理なんじゃね?」と思ってました。


そして本番前のガーナ戦とスイス戦で完敗したので日本は葬式ムードでした。


ところがパラグアイに勝った辺りから風向きが変わり始め、グループリーグが始まるとコロンビアに勝ってセネガルと引き分け。チームの調子はどんどん良くなってるし、開幕前の葬式ムードが嘘のようです。選手の雰囲気も明らかに良くなってるし、すでに4ポイント持っててグループ首位で、次は敗退が決まってるポーランド相手なんで、本当に良い風が吹いてます。


現在、その良い風に乗れてないのが慣れない右サイドで窮屈にプレーしてる原口と2試合連続でやらかしてる川島ですけど、スタメンはいじらないでよいと思います。今のままで良いです。特にGK川島には批判が集中してますが、西野朗のチームはボランチとGKにファンタジスタがいないと面白くないのでね。このままで行きましょう。西野朗藤ヶ谷陽介で勝ちましたよ。川島永嗣でも勝つでしょう。


結局ね、完璧な選手なんていません。日本代表の選手はみんな美点もあれば欠点もあります。全部ひっくるめて受け入れてあげてください。


泣いても笑っても次の試合で全てが決まります。次のポーランド戦もレビューはしますんで4649。



書いててもうつかれたので、ではでは。

2018年FIFAワールドカップ、日本対コロンビアのレビュー「大迫半端無いって」

はい、皆さん、お久しぶりです。皆さんハッピーですか?僕はハッピーです。先日の日本の勝利のおかげでな!!!!!


日本代表がコロンビアを下馬評を覆しての勝利をおさめたので、張り切ってレビューでも書くかと思い、書き始めたわけですけど、実にレビューしにくい試合です。ええ、とても書きにくい。理由は?


開始3分のレッドカード+PKで事実上試合が決まったからです。



ええ、もう、あのワンプレーで勝利を確信してtwitterじゃ「よしかったな!」と呟いた程度に決定的でした。西野監督ペケルマン監督も試合開始3分でゲームプランちゃぶ台返し喰らった格好でした。ちなみに逆の立場で日本がアレやってたら「はい解散」と呟いてたと思います。あれで西野監督は勝たないといけない試合になりましたし、ペケルマンはゲームプランも糞もねぇという状態でした。



このブログ、サッカーの戦術解説とかをメインでやってるのですが、先日の試合に関しては、本当に開始3分のプレーで全てが決まったと断言できる訳で細かい話はあんましできません。ですので今回のエントリに関しては試合経過を追いつつ、何がピッチで起きたのかについて解説する形でお送りします。


日本対コロンビア、前半戦で起きた事


両チームのスタメンからはいりましょう。


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まずこうなってました。コロンビアはエースのハメス・ロドリゲスが怪我でベンチスタート。キンテロが代わりにトップ下に入った4231。対する日本も4231で大迫のワントップに2列目は乾香川原口、ボランチは長谷部柴崎。4バックは長友昌子マヤ酒井ゴリの並びでした。前とボランチは予想通り。昌子はちょっとしたサプライズだったかなという感じでした。




さて、試合3分のアレの話になりますけれどキャプで解説する程のモンでもないので文章のみで言わせてもらいますが、


CとDのサンチェスコンビが同時にやらかすという奇跡


に恵まれました。大体あのサンチェス二人が悪い。いわばサンチェスの奇跡です。


具体的にいえばD・サンチェスがクリアボールの処理を誤って大迫に抜け出されてGKとの一対一を作られ、こぼれ球を香川が拾ってシュートしたのをC・サンチェスが手でブロックしてしまい決定機阻止で一発退場+PK。


これで日本の勝利がほぼ確定しました。完。


で終わると身も蓋もないので、もうちょっと書きます。


ペケルマンもコロンビアナインも抗議してましたがねー、枠に飛んだシュートを手でブロックしたら決定機阻止で一発退場+PKです。ルール上そーなります。


てかね、大迫がGKとの一対一決めてたらその後のC・サンチェスの決定機阻止からのレッドカードは無かった訳ですよ。


ほんっっっとうにサッカーってわからないモンですね。結果論ですけど「大迫が一対一外したのが正解だった」という意味不明な出来事でした。日本という国ではFWが外す度に、



決定力不足



と念仏みたいに大合唱されるのですが、FWの決定力不足が試合を決定ずける時もあるわけです。矛盾して聞こえますが、実際にW杯で起きた出来事なのでしょうがない。振り返ってみると本当にポルナレフな出来事でした。


この辺りで日本の最初のゴールの話は終わりにしましょう。香川がPK決めて日本は先制。日本はもう絶対的に有利な状況になりました。


ところがここからコロンビアは攻勢に出て日本は守勢に回ります。


まあリードしてるんだし攻めさせといてカウンターでも良かったんですけど、それやるなら柴崎いらねーだろ山口で良いって話で。


日本はリードした時点で二つのゲームプランが考えられました。コロンビアは追いつかないといけない訳だから攻めてきます。リードされた以上はブロック作って守ってる場合じゃない。点とらないといけない。だから攻めさせといてカウンター狙いってのが一つ。もう一つは数的有利な状態になった訳だからボール持てます。ボール持てるんだから徹底的にボール回してコロンビアを守備で振り回して体力削りながら追加点狙うってプラン。


日本代表のスタメンからみると狙うべきは後者です。トップ下に香川ボランチに長谷部と柴崎がいるんですからね。



ところがリードしてからの日本代表はいわゆる「後ろが重い」サッカーでした。これだけだと意味がわからないから具体的にいうと「ボランチもSBが攻め上がらない」サッカーやってました。攻撃で人数かけないサッカーです。カウンター食らうのが嫌だったんでしょうね。でもそれだとコロンビアは守りやすい。日本のほうは数的有利な状態なのにボランチもSBも攻め上がらないからコロンビアにとっては怖くない。


という訳でtwitterでも「たいくつだぜ!」とか呟いてたんですけど、前半5分~25分くらいは退屈な試合でした。日本はカウンター狙いのサッカーやっててコロンビアがボールもって攻めるみたいな試合でした。15分の日本のカウンターシーン以外、面白い事が何もなくて退屈でした。



大体、前半25分くらいまでは後ろが重いサッカーやってたんですが、26分あたりから日本のSBが高い位置取り始めます。具体的には長友です。



こうなると焦り始めるのがペケルマンです。長友が高い位置取り始めると、それをマークするのはクアドラートになるんですが、守備意識の低いクアドラートでは日本に左サイドを制圧される恐れがあります。前半31分、ペケルマンの修正は早くて、クアドラートを外してボランチバリオスを投入。そしてキンテロをサイドに出して長友とマッチアップさせました。



この辺りの時間帯、すでにコロンビアは日本のボランチ二人に対するプレスがかけられない状態になってました。コロンビア陣内で長谷部と柴崎がフリーで前むいてボールを捌ける状況でした。そこから両サイドに展開されたら、日本に中盤とサイドを制圧されてしまいます。なので中盤の守備力を強化してサイドのマッチアップを明確化させたかったんでしょうが・・・・これが思わぬ副作用を伴いました。



ただ、その副作用が出る前に前半39分コロンビアはファルカオが取ったFKからキンテロが決めて同点に追いついてます。



この後は特に何のドラマもなく前半終了のホイッスルとなりました。



日本対コロンビア、後半で起きた出来事


さて、後半の話に入りましょう。



開始直後から日本代表の狙いは明白で、両SBが高い位置を取り始めました。このあたりは選手のコメントからも伺えますけど、ハーフタイムにテグコーチが修正をいれたそうです。西野監督は「数的有利じゃなくてポジショニングをしっかり」と言ってましたが、


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これが後半3分の日本代表のポジショニングです。両SB張り出させて原口を中にいれるスタイルに変更してます。前半、リードした後のポジショニングとは違う配置になってます。



さて、前半の話のときボランチバリオス追加してキンテロをサイドに出した事で思わぬ副作用がでたって話をしましたが、後半から、割と深刻な状況になってます。


バリオスは香川にかなり厳しくマークについていて香川を試合から消すことには成功してました。ただ、原口が中に入ってきて酒井ゴリが高い位置を取るようになると、これが日本のボランチ二人を完全にフリーにしてしまう事に繋がりました。


一人少ない状況で香川にボランチ一人がマンツー気味でついてて、そこに原口が中に入ってきたらどうなるか?答えは日本のボランチにはだれもプレスにいけない。以上。


日本のボランチに全くプレスがかからない為、コロンビアはラインを上げることができず、ひたすら押し込まれ続けることになります。さら長友とキンテロのマッチアップなんですが、序盤から攻守に走り回ってたキンテロは長友の上下動についていけず、左サイドを日本が制圧しはじめてました。中央で数的不利、サイドでも数的不利な状態になったコロンビアを日本代表が一方的に押し込む展開になります。



そして、この試合での最大の悪手だと思われる采配が起きます。


後半14分、ハメス・ロドリゲスの投入。キンテロはガス欠気味だったから交代を決断したんでしょうが、これが本当に悪手でした。



この時間帯、コロンビアは守備の枚数が絶対的に足りてなかった訳です。中央でもサイドでも人が足りてない。なのにコンディションが良くなく、守備意識が低い選手をいれたら尚更それに拍車がかかってしまう。日本は両SBを高い位置においていたので、その裏を使えばカウンターに持ち込めますけど、キンテロだけでなくコロンビアの選手は殆ど疲弊していて、サイドが走れない状況になってました。サイドの選手が走れない以上、SBの背後をついたカウンターは難しい状態でした。ボール持って前向いても両サイドにアタッカーがいないんですよ。攻め上がるスタミナが残ってない。そして両サイドをコロンビアが使えない以上は日本は中央閉めとけば良いだけでした。


サッカーってのは疲労が伝染するスポーツです。FWが守備で走らないとその分MFが走らねばなりません。そしてMFが疲弊して走れなくなると、次はDFがその分走らないといけなくなり疲弊していきます。コロンビアの場合、疲労の伝染が深刻だったんですが、ハメスを入れた事でさらにそれが加速します。


ハメスは右サイドの守備に回らないといけない状態だったんですが、はっきりいって役にたってませんでした。そして立て続けに日本は左サイドからチャンスを作れるようになってきます。ハメスに関して言えば後半19分の守備はひでーもんで香川にハメスの守っていないといけないスペース使われるし、後半20分の時の乾のシュートに至る流れでも本当に何もしてません。23分にもハメスが守ってないといけないスペースを香川に使われてるしで本当に役に立ってませんでした。


そして後半24分に日本は試合から消え気味だった香川に変えて本田を投入。ペケルマンはすぐさまキエルドに変えてバッカを右に投入してハメスを左に回します。これは日本の左サイド対策でしょう。日本に右サイド制圧されかかってましたから。


ただ、これがねえ・・・ハメスが左にまわった事が日本の右サイドを一気に活性化させました。事実上、コロンビアの左サイドは守備者が一人減ったに等しい。本田も右サイドに流れてましたけど、あれは正解。コロンビアはハメスの守ってる場所が穴になるんですから。



そして後半26分、ハメスが左に回った副作用がモロにでるわけですよ。ここはキャプでやりましょうか。



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これですわ。


酒井ゴリの決定的なシュートに至る流れで、ハメスはただ突っ立って見てただけ。ファルカオですら戻るそぶりみせてたのにね。ずーっとこの調子だったんです。ハメスが埋めるべきスペース埋めてないから、そこを日本代表に使われてる。



そして、この後、CKから大迫が半端無いヘディング決めて日本は待望の追加点を獲得。これが決勝点となって日本は勝ち点3を手にいれましたとさ。



ちなみに、このCKは狙いがはっきりとわかるプレーでした。ゴール前の動きと配置を見る限り、コロンビアはマンツーでセットしてるので、吉田のマーカーに原口がスクリーンかけて吉田をフリーにしてズドンってのが狙いだったんでしょう。ただ、吉田でなく大迫がスーパーヘディング決めてしまいましたけどw



まあ、細かい事はどうでもいいのです。これで勝てたのでめでたしめでたしでございます。





日本対コロンビア、総括


総括・・・といきたいところですが、書くべき事はただ一つ。


前半3分のアレが全てでした。


結経アレがなければコロンビアは一人少なくなることは無かったんです。数的不利に陥ってなければ日本に中盤制圧される事も無かったし、サイドで数的不利に陥ることもなかったでしょう。ハメスを投入しても攻守のバランスは保てたはずでした。あれでペケルマンのゲームプランは全部破壊されてしまった訳で、あとはパッチワークみたいにつぎはぎあててく事しかできてませんでした。


一方でダンディー西野ですが、前半3分の幸運で相手の交代策をみてからカードを切れるという優位性を維持できた上に後半の修正も上手くいき、ペケルマンがハメス投入で自滅してくれたので「この人マジでもってるな」という感じでした。ここまでサッカーの女神に愛されたのはやはりダンディーだからでしょうかね?


最初にも書きましたが、本当にサッカーてな面白いスポーツです。FWが一対一外した事が良い結果を生んだ事例とかねえ・・・・こんなのがW杯で見られるとかねえ・・・・



そして各所で言われてる話ばかりですが、ペケルマンの失敗はハメスを入れた事でした。本当に本当に悪手でした。あそこまで守備が壊滅的ならば試合では使うべきではなかった。それでも使ってしまったのは・・・・4年前、ハメス投入で一気に流れを変えて勝利した記憶があったからなんでしょうね。以前の記憶を引きずってはいけなかった。過去は過去。現在は現在です。




今回の試合のMoMは勿論大迫半端無いです。2得点ともに決定的な役割を果たしているし、ハメスのシュートをブロックしたのも大迫でした。計3点分くらいの働きで勝利を決定づけたのは大迫です。この出来ならだれも文句はないでしょう。



正直いって、パラグアイとコロンビアをニタテにするという信じられない事が現在進行形で起きてます。アジアの代表チームは南米チームに本当に弱くて、日本がW杯で南米チームに勝ったのはこれが初、そしてアジア勢がW杯で南米に勝つのもこれが初という快挙でした。南米に勝ったので僕はもう胸が一杯なのですよ。



次のセネガル戦なんですが、非常に難しい試合になります。単純に強いです。ポーランドに勝ってますからね。今回の試合の場合、相手が早い時間帯で10人になった事でボランチ二人がフリーで前むいてボール捌ける夢のような試合でした。次の試合ではこんな事は起きません。絶対に起こりません。セネガルポーランドの試合を見ましたがセネガルは守備が良いです。ボランチはまず前向かせてもらえないと思った方が良いです。セネガルの守り方はCBとSBがボール持って前むいてもいいがボランチより前の選手は絶対前向かせないって守り方します。日本はボール持てるでしょうが、中央経由のビルドアップをする為にはビルドアップを工夫しないといけません。U字型のビルドアップやったらセネガルの思う壺ですかんね。あれは絶対だめ。



今回の勝利のおかげで後2試合は確実に楽しめます。W杯は四年に一度のお祭りです。存分に楽しみましょう。




ではでは。

2018国際親善試合、日本代表対ウクライナ代表のレビュー「ハリルホジッチのサッカー」

さて皆様こんにちは。


大変お久しぶりですが、本日は先日行われた日本対ウクライナの試合のレビューをお届けします。



ここの所、サッカーのA代表は、全然勝ててないのでハリルホジッチに対する風当たりが強いです。なんで、あまり気乗りはしませんが、今回のエントリはハリルを擁護気味で書いてみることにしました。どうせ、俺が叩かないでもハリルホジッチは袋叩きにされるでしょうからね。この後、ガーナ、スイス、パラグアイとやってW杯本戦ですが、勝てる気しませんし、勝てなけりゃ袋だたきにされるのが代表監督の仕事です。




しかし、内容的に周回遅れ気味のエントリですし、今回の話はどうしたって、


www.footballista.jp


こっちの記事の二番煎じになってしまうのですが。



今回の記事の内容的にはハリルサッカーの特徴です。主なポイントとしては


1,ハリルホジッチは中盤でボール動かす気がない。よく言えば縦に早いサッカー、悪く言えば中盤省略サッカー。


2,守備は中盤においてマンツーマン気味のゾーンを敷いている


の2本立てでお送りします。



試合のレビューの前にハリルホジッチのチーム作りの方向性について


さて、今回の試合の話に入る前にハリルホジッチが作っているチームの話から入ろうと思います。ハリルホジッチは就任以来、攻撃においては「縦に早く」、守備においては「デュエル」という言葉を頻繁に使ってきました。ハリルは非常に明快なコンセプトに基づいてチーム作りを進めており、試合を見ていればほぼコンセプト通りの攻撃、守備が行われているのが見て取れます。



現在の日本代表なんですけど、前回のブラジルW杯で「俺達のサッカー」で惨敗した事の反省があったせいなんでしょうが、本当に全く正反対のチームになってます。前回のチームは攻撃ではポゼッション、守備ではゾーンのチームでしたが、今回のチームは攻撃は速攻とロングボール、守備はマンツーマン気味のゾーンです。



本当に全く正反対のチームになっていて、試合見ながら「これ、韓国とかオージーがやるサッカーだよねえ・・・・」と思う事が多いです。


ここからは図を使って説明しますが、ハリルホジッチは攻撃において


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このように相手が最終ラインまでプレスをかけてきたら、ロングボール蹴らせます。ショートパス繋いでプレスを外していくなんてシステムはチームに落とし込んでません。マリ戦で「中島のサイドに蹴れ」って何度もピッチサイドで叫んでたそうですが、あの試合、マリは最終ラインを高い位置に設定して前からプレスにきてました。相手が前からプレスかけてきたらロングボールで対応する。それがハリルホジッチの基本的なチーム作りです。


基本的にハリルホジッチは守備重視の監督です。前プレ喰らってショートカウンター食らう位ならロングボール蹴った方が良いと考えてる感じですし、カウンター食らわないように攻撃に人数もかけないタイプです。



ここ二試合で、代表選手から「もうちょっとボールもったほうがいいんじゃ~」みたいなコメント、「ゴール前の人数足りてないんじゃ~」みたいなコメントが散見されますけど、W杯は間違いなく守備的に戦う事になるので、ハリルは取り合ってくれないと思います。


さらにいえばハリルは中盤でボール動かす気がありません。



これも図を使って説明しますが、ハリルホジッチの基本的なビルドアップは「縦に早く」です。それを図を使って説明すると


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こんな感じなります。基本的にパス回しは最終ラインの4人によるU字型のパス回し。ここで4人のうち一人がフリーで前向けたら、そこから前の4人の誰かに縦パスかサイドチェンジを入れて、一気に裏のスペースを攻略するというコンセプトです。縦パスが入ってからのバリエーションとしてはポストプレー、ワンツー、スルーを使ったコンビネーション、ドリブル突破などを主軸にしています。



このU字型のパス回しなんですが、ポゼッションサッカーのご本尊、現マンCのグアルディオラ監督が非常に嫌う形です。グアルディオラはU字型のパス回しを「無意味」と切り捨てるタイプです。グアルディオラは必ず中央のルートを使ってビルドアップします。つまり、ボランチがビルドアップに深く関わります。一方で、ハリル・サッカーではボランチはビルドアップに関わりません。


マリ戦では大島がそれなりに頑張ってましたが、大島がいなくなってからはボランチを経由したクリーンなビルドアップは殆ど見られませんでした。



ここまで、日本のビルドアップについて説明してきましたが、最初にハリルのサッカーを「ハリルホジッチは中盤でボール動かす気がない。よく言えば縦に早いサッカー、悪く言えば中盤省略サッカー」と定義した理由は、これでわかって頂けたかと思います。基本的にMFがビルドアップに関わらなくて良いサッカーなんです。ボランチが下がってくることを監督は嫌う」って代表の誰だかが言ってましたが、ハリルのチームではボランチはビルドアップに関わらんでも良いのです。最終ラインから直で前線にボール入れて、そこから一気に裏を狙うビルドアップしかしませんからね。



んじゃあ、ボランチの仕事は何よ?って話になるんですが、ほぼ守備です。ロングボール入れた後にセカンドボール拾う事、最終ラインから前線にボールが入った後、ボールロストからカウンター食らわないように準備しておく事。ボール奪った後に素早く前線にボールつけた後に自身がバイタルエリアに走って行くこと。この3つが重要で、井手口、山口、長谷部、今野みたいなフィジカルバトルで戦える選手がハリルのお気に入りになってるのは当然の話なんです。そして柴崎、大島みたいなタイプが基本的に冷遇されちまうのも同じ理由です。香川や清武もそれほど大事じゃありません。あのサッカーだとね。中盤はボール狩りができてフィジカルバトルが強い選手が必要なサッカーなんです。



中盤では創造性やテクニックよりフィジカル。それがハリルホジッチのサッカーです。だからそういう選手が重用されてます。韓国やオージーが好みそうなサッカーなんですよね。もっとも最近のオージーや韓国はポゼッションに目覚めてますが、日本はフィジカルバトルサッカーに舵を切ってます。アハハー。



次に話を守備にうつしましょう。ハリルホジッチのサッカーは守備でも非常に特徴的なサッカーです。どういう事かと言いますと、「中盤の守備において人につく割合が非常に高い」サッカーやります。基本、中盤は一対一のサッカーでマッチアップの相手を明確に決めて守るタイプです。「デュエル!デュエル!」と連呼するのも当然です。マンツーマン気味に守るんだから。


このタイプの守備には良い所と悪い所があります。中盤をマンツーマン気味に守る以上、中盤で相手チームにスペースを与えてしまう事は避けられません。マンツーマンという守備方法は「相手チームのFWのポジショニングにDFのポジションが支配される」という構造上の欠点を抱えています。まあ、この辺りは実際の試合で何が起こったのか、それを振り返りながらチェックしてみましょう。




日本対ウクライナ、前半戦で起きた出来事


こっからは試合のレビューになります。前振りが長くなりましたので手短に。



まずスタメンですが


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こうなってました。日本は杉本がCF、本田が右WG、ゴートクが右SB、CBのコンビは槇野と植田。植田は高さ対策でしょう。ゴートクはゴリのかわりでしたが・・・・まあ・・・



マリ戦との違いですが、マリがラインを高く上げてハイプレスにきたのとは違い、ウクライナは前から来ませんでした。日本のほうもハイプレスはそんなにしなかったので、双方のチームはボールを持てる試合でした。図にすると


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こうなりますが、日本もウクライナもCBのどっちか一方はノープレッシャーでボール持てる試合でした。なのでボール保持は難しくない試合でした。双方共に。ただ、ウクライナと日本は全く違う攻撃を組み立てる事になります。




試合内容のほうなんですが、これ開始1分から動きました。



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ここ、開始一分で裏取られました。アホかと思いましたが、この試合、日本の右サイドは守備に整合性が無く、マンツーマンなのかゾーンなのかよくわからない守備をくり返し、ゴートクと本田がユニットとして守れていませんでした。その結果がこの日の右サイドズタズタサッカーです。


さて、中盤マンツーマン気味って話をしましたが、それが顕著に出るのが、この後の前半3分のシーンです。



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同じ日本の右サイドの攻防になってますが、このシーン、ゴートク、本田は共にマッチアップに張り付く守備をやってます。ウクライナのほうは、本田が左SBに食いついたので左WGが空いたスペースに降りてきてます。この動きにはゴートクがついてきてますが、空いたSBの裏にCFが走り込む動きを見せてます。人を基準にして守ると、どうしたってバイタルやSBの裏のスペースが空いてしまいます。このシーンはその典型例です。




そして、このマンツーマン気味の守備の欠点がモロに出たのが前半21分の最初の失点シーンなんですが、


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これですね。動画みてもらえばわかりますけど、本田が自分の担当のゾーンから離れてウクライナのSBのほうに動いた結果として、あそこのスペースガラ空きになりました。そこからシュート喰らってゴール。そしてCBのマークにいったのは杉本でした。本来、あのゾーンは本田が守ってないといけないんです。ただ、ハリル方式だと「人を基準にして守る」サッカーなのでこういう状況が絶対生まれます。


つまりね、そういうチームだって事です。フットボリスタでレナート・バルディは日本の守備を「2CB+フリーマンの1アンカー、その他6人は1対1」って評してますが、僕も全く同意見です。ゾーンで守るのはCBとボランチ一人。あとは一対一で守ろうとしてんです。だからハリルは「デュエル!デュエル!」と連呼するんです。ただし、人に基準をおく守備をやる場合、この手のミスが頻繁に起こります。このシーンでいえば、CBがシュートを打ったスペース。あそこは頻繁にスペースガラ空きになります。そこを使って崩せるチーム相手だと問題を抱える事になります。この失点以降は本田も右サイドでスペースのケアやるようになってましたが、右サイドのザルっぷりは変わりませんでした。



ちなみに2失点目は守備のやり方云々でなく、単純にゴートクのやらかしです。あれはもう弁解の余地無くゴートクが悪い。この試合、ゴートクは軽く3回はやらかしをやってるので次呼ばれるかというと・・・・それは本人が一番わかってるでしょう・・・・



あともう一つ、前半31分、「これはひどい」と画面の前で頭抱えたシーンですが



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これな。



マッチアップ気にしすぎて中央開けてCFに縦パスいれられたあげく、その後、簡単にターンされるとか割と救いようがないシーンでした。日本の右サイドは完全な穴、さらに中央使われて簡単にビルドアップされてしまうという二重苦。これで二失点で済んでよかったですよ、本当に。



守備の話はこれくらいにして、攻撃の話をしてみましょうか。ウクライナ戦。この試合で「うわあ・・・・」と思ったパス回しがあったんですが、それが前半27~8分のところ。



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・・・・・もうね。


左SBから左WGに当てて詰まる→左CBにボールが戻って来る→左CBから右CBへ→右CBから右SBへ→右SBから右WGへ。




なんという完璧な各駅停車のU字型ビルドアップ。これ本当に日本のA代表なんですか?



流石に目眩がしました。こんな酷いビルドアップをA代表が見せちゃダメだろ。グアルディオラだったら切れてる。まあ、このシーンではハリルもピッチサイドで切れてましたがね。このビルドアップじゃ何も起きません。起きるわけありません。



恐ろしい事に、この試合ではこの形のビルドアップが何度かくり返されてました。各駅停車でDFがボール回していき、SBがWGに縦パス入れて、何も起きない。この連続。


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この試合、TVの解説でも、この手のビルドアップには苦言が出てましたが、各駅停車のU字型のパス回しからSBがWGに縦にボールつけるのは本当に悪手です。ボール取ってくださいと言ってるようなモンです。


U字型の各駅停車パス回しダメ絶対



ちなみに、ウクライナはきちんと中央経由のビルドアップが出来てました。各駅停車でなく大きなサイドチェンジも上手でした。



一方で日本はサイド経由の各駅停車。攻撃面では差を見せつけられる結果になりましたとさ。



なんというか凄い否定的な意見を書いてしまいましたが、別にね、必ずボランチ経由をしろとはいいません。そういうサッカーする監督じゃないのはわかってます。ただDFによる各駅停車のU字型パスだけはマジでやめろ。DFから直接前3枚にあてて、そこから突破かコンビネーションで崩すサッカーだというなら、それはそれで良いのです。ただし、サイドチェンジ混ぜろ。各駅停車のU字型パス回しやめれ。あれはポゼッションでも速攻でもない。言いたいのはそれだけです。



まあ、前半39分、左サイドの攻めで原口が前向いてFK取ったパス回しは良かったです。そこから柴崎のFKで同点にできましたね。


しかし、その後の43分、44分と立て続けに右サイド破られたときはどうしようかと思いましたよ。ゴートクのやらかしと本田の守備が化学反応を起こしており、本番前に本田、ゴートクの並びはNGだとわかったことだけが収穫です。絶望的に守備が酷い。前半だけで4回は右サイドで裏取られてます。


日本対ウクライナ、後半戦で起きた事


さて後半の話にいきましょうか。


前半でウクライナのほうは日本の守り方がわかってきてます。日本も大分、ウクライナの攻撃方法がわかってきてました。後半はそんなチーム同士の対戦になりました。



前半47分のウクライナのパス回しとか日本の守備の欠点をついた上手いやり方です。

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なかなか良いパス回しですよね。サイドへの展開から、中央の選手の動きで日本のボランチを最終ラインに吸収させ、空いたバイタルのスペースを利用。見事なビルドアップです。



一方で日本としては人に基準をおく守備やってるんだから、どうしたってあーなります。ただ、人に基準をおいてる分、メリットもあります。このシーンの場合、サイドチェンジされてもゾーンほど大火傷にはなりません。人についてる守備ですからね。ここの場面でも本田が相手SBについてたので大火傷せずに済みました。


ある意味じゃ、ウクライナはサイドチェンジに拘りすぎた部分があります。人につく守備やってるチームにはサイドチェンジはゾーン相手ほど有効ではないです。


そして、後半開始から10分くらいまではウクライナペースで進んだんですが、後半10分の時、日本は珍しく良い攻撃みせました。ゴートクから中央への斜めのパス。このパスでスルーを使ったコンビネーションから逆サイドにはたいて長友のクロス。これは良い組み立てでしたね。こういうの増やしてくれたら良いんですけどね。





さて、後半60分あたりから、本当に日本代表の守備が「嗚呼、人につく守備だ・・・」という状況になってきます。どういう事かというと、


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わあ・・・・バイタルガラガラなり・・・・・・・・・・



なんでこんな状況が生まれるかっていうと、人につく守備やってるからです。どーやってもバイタル使われる守備方法です。具体的には


1、サイドに展開した後にオフザボールの動きで日本のボランチを最終ラインに吸収させ
2、空いたバイタルにカットイン、もしくはバイタルに入ってきた選手にパス
3、バイタルからのコンビネーション、ミドルシュート、サイドへの展開からのクロスでフィニッシュ


という展開にもちこまれやすくなります。


このままバイタルスカスカになっていたので中央割られそうだなーと思ってた所だったんですが、後半68分。ゴートクのやらかし発生から日本は失点。バイタルスカスカで失点でなく、DFのやらかしで失点。



まあこれがサッカーですよね。組織の構造上の問題よりDFのやらかしのほうが失点に結びつく可能性が高いスポーツです。



一点ビハインドとなった日本は、ここから攻めの形を変えます。中島が投入された後の83分あたりから日本は攻撃の形を変化させて、


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この日、初めてといっていい形ですが、長友を高い位置に張り出させてWGを中に絞らせてます。これによって中央の人口密度があがりました。ウクライナは中央3名、一方で日本は中央4名。こうなった事で日本は数的有利を活かして中央を経由してビルドアップできるようになります。ここから、日本は中央使えるようなり、サイド経由の各駅停車サッカーが終わります。


その結果として、中央経由のビルドアップが機能しはじめました。これの恩恵を最大に受けたのが途中出場の中島です。前半のサッカーだったら中島は空気だったでしょうけど、このサッカーなら水を得た魚みたいなモンです。



ここから日本は終了まで怒濤の攻めを見せます。ウクライナにカウンターを浴びることはありましたが、中央の数的有利を活かして日本はゴールの臭いがする攻撃が出来てました。追いつけませんでしたけどね。


最後の10分くらいは良い攻撃できてました。ただ、ハリルホジッチがこの手のサッカーやるのはリードされて追いつかないといけない最後の10~15分くらいのもんだと思われます。そうでない限り、あのサッカーをやるでしょう。理由はというと、なんだかんだで、あのサッカーは点取られにくいからです。

日本対ウクライナ総評

では、まとめに入ります。


見返してみたら、ハリルのフォローどころか、全然フォローになってないエントリ書いてしまいました。大草原不可避。特に中央経由しないU字型のパス回しについては厳しい事書きましたが、利点もあるんです。ハリルのサッカーだと、ボールを失った後、ショートカウンター食らう危険性は非常に低いです。最終ラインから前3枚にボールつけた瞬間が一番ボール奪われやすいのですが、そこでボール失ってもボランチ2名とDF4名で即座に守備に移れるんですね。これは結構なメリットです。



ま、自分としては、あのサッカーでW杯戦って良いと思います。ザックがW杯で戦ったスタイルとは真逆といっていいスタイルですが、実験としては悪くありません。日本がフィジカルを前面に押し出すスタイルのサッカーでどこまで戦えるのか、一発やってみるのも悪くないです。



ハリルのサッカーと相性悪い選手は諦めましょう。長友なんかは攻め上がってこその選手なんですが、ハリルサッカーは左右のSBにビルドアップを求めている為、低い位置に留まらざるを得ません。だから長友はあんまり良さでてません。香川とか柴崎みたいなタイプも中盤で居場所を見つけにくいです。中央はパス回しよりフィジカルバトルが優先されるサッカーですしね。岡崎みたいにボール収めるのが苦手なFWはCFでは使いずらいし、WGは最低でも単独突破ができる選手じゃないとダメです。



そういうハリル流「俺のサッカー」に合う選手がW杯にいけるでしょうし、合ってない選手は落選になるでしょう。



俺達のサッカーが終わってハリルのサッカーになりましたが、戦術レベルで柔軟性のあるサッカーではなく、割とガッチガチの逆コンセプトのサッカーでしたとさ。


こういうサッカーでW杯戦ってみるのも良いと思いますよ。どうなるか見てみようじゃないですか。前回はポゼッションでダメだった訳だし。



ではでは。