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2015CL準決勝 2ndレグ、「レアル対ユヴェントス」のレビュー

さて皆さん、こんにちは。本日は先日行われたCL準決勝2ndレグ、レアル対ユベントスのレビューでもやりたいと思います。試合の方は、1-1の引き分けでした。よって、1stレグを2-1で勝利したユーヴェが決勝に進んでます。


この試合なんですが、それなりに見所がありましたし、レビューで書く内容もある試合だったので、今回取りあげておくことにしました。


こーいうエントリは試合後すぐにアップできりゃいいんですが、時間かかってしまい、こんな時期になっちまいました。先週末にJ1あって、今日、バルサが優勝きめた訳で、こんなエントリ需要あるのかと思う訳ですが、勿体ないのでアップします。


レアル対ユヴェントス、スタメンと両者の守備のやり方

さて、まずはこの試合のスタメンから入りますが、


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こーなってました。ユーヴェはいつもの4312、レアルは433です。ここで、まずレアルの守備時の話から入りますが、レアルは守備時に、この日はフォメ変更するしてまして、


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こうなってました。守備時は442っぽくなり、ベイルが一列下がって中盤の守備に参加してます。こうなっちゃう原因なんですけど、結論からいうとクリロナです。普通、433の場合、引いて守る場合は、4141を採用し、両WGに下がって守備をやらせます。ただ、クリロナは守備やってくれないので、それが出来ません。なんで、クリロナを一列上げた形の442で守備やってました。こうすればサイドに穴はできませんし、クリロナをカウンターの為に高い位置に留め続ける事ができます。


ただし、このシステムのかみ合わせだと中央で数的不利に陥るのと、ベンゼマ+クリロナの2トップの場合、ユーベのビルドアップ部隊にプレスをかけきれないという問題に直面せざるを得ません。


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この白でかこった場所ですが、この部分での守備が常に問題になってきます。この問題は試合始まってすぐに顕在化するんですが、


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こーいう風に中央にパス入れられてからサイドに展開され、レアルはライン下げて守備せざるを得ない状況に追い込まれてます。これ、レアルの伝統といってもいい問題ですが、前線の守備に問題がある為、相手のビルドアップを制限できないという守備上の欠点を常に抱えてます。結果、ラインがずるずると下がってしまう訳です。ただ、レアルの場合、射程の長い高速カウンターを持っているチームの為、これはそれほど問題になっていないってのもあります。少なくとも、リーグ戦レベルでは。



一方で、ユーベも守備では問題抱えているチームです。具体的に言えば、ピルロのアンカーっていうシステムそのものです。アンカーにピルロみたいな守備力がほとんどゼロに近い選手を使うってのは、これリスクと隣あわせになります。ビルドアップはスムーズになりますし、ピルロから一発のパスで得点を狙えるという強みは勿論あるんですが、如何せん、守備は羽毛です。


その結果が、この試合のユーベの4312システムそのものなんですが、ピルロの守備問題を解決するため、ユーベの場合、


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こういう形にしてビダルにバイタルの守備をやらせてます。また、ボランチの前のスペースを2トップに潰させる事で、バイタルの守備問題が顕在化しないように設計されてるわけです。ただし、その結果としてですけど、両SBに対する守備が後手になる傾向があります。中央を3ボランチ+ビダルで固めてる訳で、SBがオーバーラップした時の守備が常に問題になります。


この試合でいえば、前半18分からレアルの両SBが高い位置を取り始め、両SBを使った攻撃をし始めると、ユーベは押し込まれ始めました。そうなると、問題がでてくるんですけど、


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こういう問題です。ユーベの守備の構造上、レアルのSBに対する守備は後手後手に回りやすくなります。この原因がピルロでして、ピルロは守備に問題があるので、通常、ユーベのポグバとマルキージオは中に絞り気味で守り、バイタルを使わせないようにしないといけません。ただ、そうしちゃうと相手のSBに時間と余裕を与えてしまう事になる。そのため、こういった攻撃でやられやすくなるんです。前半18分にもマルセロに簡単に前向かれて、そこから裏へのパスだされてベンゼマにクロス折り返されてます。


ユーベがPK取られたシーンでもそうですけど、


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こうなりました。ここは典型的なピルロ問題が生まれてるんですが、442で守備やったとしても、相手が両SB上げて来ると、ユーベは守備に問題を抱えます。というのも、両SBにインサイドハーフが引っ張られてしまうと、ピルロの脇を使われてしまうし、それがいやで中央固めてると、両SBがフリーになってしまう訳です。基本的にピルロをボランチ、アンカーに使う限りにおいて、この問題は絶対に生まれます。


ただ、相手が両SB上げて攻めてきてくれるなら、攻撃ではSBの裏使ってカウンターしてりゃ良いだけなので、攻撃面では特に頭を悩ませる事はなくなるわけなんですけどね。



という訳なので、双方、「相手の崩しが早いか、カウンターが決まるのが早いか」みたいなチキンレース状態で、このゲームは始まったわけです。





前半の試合展開

ここからは前半の試合展開を追っていきます。まず、ホームで2-1で先勝したユーベは無理に攻める必要がありませんでした。0-0なら勝ち抜けですから当然です。なので最初はお互い様子見でした。レアルは最初は人数かけて攻めてませんし、ユーベも当然、人数かけて攻めませんでした。



最初に仕掛けたのはレアルのアンチェロッティでした。前半18分あたりからレアルの両SBが高い位置を取り始めます。ここ、ユーベとしては、相手が両SB上げてきてる訳だから、ある意味じゃカウンターのチャンスになります。ただ、カウンターが決まる前に、上述したような形で21分にPK。


これで、アウェーゴールがある分、レアルがリードしました。レアルは人数かけて攻める必要がなくなります。一方で、ユーベは前に出ざるを得なくなりました。レアルとしてみれば絶好のカウンターチャンスであり、レアルにとっては願ってもないゲーム展開に。



ただ、ここからがこのゲームの面白い所なんですが、レアルのカウンターが決まらないんです。特に、前半28分、カウンターで3対2の状況が出来るんですが、決めきれず。ここで決めきれなかったのが、全てといっていい位には絶好機でした。


32分には、ベルナベウのボールボーイの



こんなお茶目もありましたが、それはこの話とは関係ありません。



その後、前半は何度かカウンターチャンスがあったが決めきれずに終わってます。


後半の試合展開

ここからは試合後半の展開についてになります。


大体、後半50分あたりからユーヴェが前がかりになってきてました。アッレグリも、ここで勝負に出た訳です。1点取れれば、決勝行きの切符はユーヴェに戻って来るわけですからね。また、前二枚もあんまり守備に戻ってこなくなり、カウンターの為の前残りをし始めます。レアルにとっては、ここ、最大のカウンターチャンスといって良い状況ができたんですが・・・・


51分、レアルのカウンターはやはりきまらず。ユーベはボールより前に5人送りこんできており、後ろに残ってるのは4人だけ。しかもそのうち一人はピルロなんで、非常に危うい賭けをやってる状況でした。



そして、56分、ユーヴェがFKから同点に追いついてます。このセットプレーの前にすでに問題が出てるんですけど、


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これなんですけど、絶対にピルロに前向かせちゃいけない所でレアルは前むかせちゃてるんです。ビルドアップ部隊にプレスかけるのがベンゼマとクリロナじゃ、しょうがないんですけどね。49分にもピルロにフリーで捌かせちゃってますし、相手のビルドアップを制限できないっていうレアルの欠点がここで出てます。




この試合で面白いのは、両者ともにカウンターのチャンスをもちながら、カウンターで決めきれず、相手チームにやられてしまっている点です。試合の最初でいえば、ユーベはレアルが両SBあげてきた所でカウンターで仕留めればいいだけだったんですが、仕留めきれず先制されましたし、レアルの方は前半21分に先制しながら、後半56分まで、カウンターのチャンスがありながら決めきれず追いつかれました。



56分にユーベに追いつかれた事で、アンチェロッティは再び、前に人数をかけ始めます。そして、両SBが高い位置を取り始めると、前半と同じでユーベの守備に問題が出始めます。

  • 61分左サイドでマルセロのクロスからベイルが外し,
  • 62分左サイドでのコンビネーションからマルセロのクロスからベイルが外し、
  • 71分クリロナとマルセロのコンビネーションから左サイドを突破してクロス、ベイルが外し、
  • 74分にはCKでベイルが外し
  • 77分には左サイドをマルセロのパスからクリロナが抉ってクロスをあげるもクリアされました。


こんな感じでレアルに立て続けにチャンス作られてるんですが、ここ、どのシーンでもピルロがひじょ~~に不味い守備やってます。キャプでやるの疲れたんで、やりませんが、ああいう守備やられたら最終ラインはたまりません。



あと、この試合、ベイルが外し杉だったので、



こんなコラも作られてました。




ここにきて「流石にヤバイ、カウンターどころじゃねぇ!!」とアッレグリも思ったのか、77分にピルロアウト、バルザーリが左CBに入り、ユベントスは532に変更。


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完全に逃げ切り型のフォメに。以後、ユーベの右サイドは落ち着きました。そして、その後はユーベがきっちりと守りきって逃げ切りましたとさ。




本日のまとめ

  • この試合は非常に興味深いケース。というのも、両チームとも、カウンターが決まれば試合を決められる、という状況でカウンター決められなかった。
  • 前半の最初でいえば、リードしているユーヴェは、レアルが前にでてきた所をカウンターで決めればいいだけだったがそこで決められずに先制された。
  • そこからはレアルがカウンター決めればいいだけの状況でしたが、やはり決めきれずに追いつかれた。
  • 両チームともに、守備で問題がある選手を抱えているという点で一致している。
  • レアルはクリロナ、ユーヴェはピルロ。
  • 守備組織が、守備に問題がある選手が引き起こす問題をどうカバーするか、という形でデザインされている。
  • 試合を見返して思ったけれど、クリロナのプレースタイルがちょっと変わった気がする。以前よりギャップ受けが多くなってないか。


今日はこのあたりで。ではでは。