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最近の欧州における戦術面でのメタの話(3バックポゼ対策)

先日、Jリーグにおける戦術のメタの話をしたんで、本日は欧州の戦術のメタの話をしようかと思う。といっても、僕は欧州の試合全部見てる訳じゃないんっで、「欧州の」というほどのくくりでいっていいのかというアレもあるんだが。


この話をしようと思ったのは、コメント欄で「海外で3421が流行らないのは何で?」という質問もらったからでもである。この話は、前回の話の3421プレッシングとも関わるので、やっといた方が良いと思い、まとめておくことにしたのである。


というわけで、軽く前回の話のおさらいをしつつ話を進めよう。



前回の話で説明したのは、2010年の南アフリカWカップ後のJ1での4231の流行、そして4231をメタしてデザインされた3421フォメの出現という話だった。そして欧州の話になるんだけど、欧州でも南アフリカW杯後、4231はもっともスタンダートなフォメとなった。(もっとも欧州のクラブシーンではW杯前から4231は流行していたが)



現在の欧州のクラブシーンにおいて、イタリアを除く主要なリーグでは、使われているフォメは4231か433がほとんどとなっている。そして、この二つのフォメの特徴となっているのが、ビルドアップ時に3バックに変形するって所である。ザック時代の4231、アギーレ時代の433の日本のフォメを思い出してもらうとわかりやすいんだけど、




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これは4231が3421に変形するやり方で



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こっちは433が343に変形するやり方となる。こっちはアギーレ・ジャパンがやっていた奴だ。



いずれの場合でもビルドアップする時に3バックに変形する所が肝で、このスタイルで戦うチームに対しては442でハイプレスかけても、噛み合わせがミスマッチしているので、それほど効果的にボールを奪えない。



こういった3バックポゼが流行するにつれて、最近の欧州サッカーでは、「442でハイプレスかけても、質の高い3バックポゼもってるチームからはボールは奪えない」というのが認識されるようになってきた。もちろん、2トップに頑張って守備やってもらって、どっちからのサイドにボールを限定するってのは出来るんだけれど、それでも、そのやり方はFWへの守備負担がきつく(二人で3人追っかけ回さないといけなくなる)、やり続けるとFWが守備でヘタッってしまい、ゴール前で違いを作り出せなくなる、という問題に多くの監督が頭を悩ませていた。




J1の場合、そこで出現したのが松本や湘南の3421で、4231にハイプレスをかけていくという方式であり、


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こんな形で相手のビルドアップ部隊をマンツーマン気味に相手を捕まえきってしまうというやり方になる。このやり方に近いプレッシングは、欧州CLで試みられたばかりである。つまり、2015年CL準々決勝のバイエルン対バルセロナの1stレグで、ペップが試みたやり方となる。この話については、



2015UEFAチャンピオンズリーグ準決勝1stレグ 「バルサ対バイエルン」 のレビュー


以前の記事↑でまとめたけれど、



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この形でのプレッシングとなる。バルサの433に対して、3412でシステムを完全に噛み合わせて前プレかけるってやり方だった。まあ、バイエルンは、この試合負けちゃったんだけどね。



こういったプレッシングの肝となっているのが、相手の3バックポゼへのポジションチェンジを織り込んでの前3枚でのプレッシング、最終ラインでの数的同数、となっている。





一方で、このやり方とは別に、実はもう一つ、3バックポゼに対抗するプレッシング方法があって、これについては、アギーレ時代のオージー対日本の試合で、オージーが日本代表に対して行ったやり方になる。




pal-9999.hatenablog.com




↑の記事でまとめた話でもあるけれど、あの頃の日本代表ってのはボールもつと、



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こういう風に変形するシステムを採用していた。433から343に変形するスタイルだ。442で守備をやってくる相手には、これで簡単に噛み合わせをずらす事が可能になる。


ところが、あの試合のオージーは442でなく、433でハイプレスをかけてきた。どういう形かというと、


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こういう形である。これは433でのハイプレスの形なんだけど、コンセプトを箇条書きすると


  • 433の3トップを相手の3バック部分にぶつけて相手にポゼッションする余裕を与えない
  • 3トップは激しくプレスをかけ、どちらかのサイドのSBにボールを出させる
  • SBにボールが出たら、そこで中盤の3枚がボールサイドにスライドをかける。
  • FWのプレスバック、中盤3枚のスライド、高めのDFラインでスペースを圧縮し相手からボールを刈り取る

こうなる。3バックポゼに対して、433でプレッシングをかける事で相手の自由を奪うというやり方は、バイエルン戦やユヴェントス戦でのドルトムントが採用しているし、J1においてはFC東京が採用している。



欧州において、3421が使われない原因の一つとして挙げられるのが、この433プレッシングで、3トップによるハイプレスから、中盤のスライドを利用してボールを刈り取るやり方のほうが、欧州の場合は人気があるんである。



このように、4231や433の3バックポゼに対抗するには、おおよそ二つのやり方あり、


1,4231や433の変形後のシステムに完全に噛み合う形でのマンツーマン気味のハイプレス(3421、3412)

2、3バックポゼに対して、3トップでプレスをかけ、中盤はスライドで守るタイプ(433、4312)



この二つの流派が存在しているという訳だ。



これ、どっちのやり方も一長一短で、前者は最終ラインでの数的同数というリスクを背負わねばならず、後者は中盤に広大なスペースが生じてしまう可能性が非常に高い。なので、どっちが優れいてるのかってーのは、チームのメンバー次第となる。いずれのケースでも、はっきりとしているので、3バックポゼに対しては、3トップによるプレッシングを行った方が良い、という話で、日本でも欧州でも、そいつが最近の流行になってるんだよ、そういう話である。



当たり前のことしがいってないけど、今日はこのあたりでは。ではでは。