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2015UEFAチャンピオンズリーグ準決勝1stレグ 「バルサ対バイエルン」 のレビュー

さて皆さん、こんにちは。本日は先日行われましたUEFAチャンピオンズリーグ準決勝、バルサ対バイエルンのレビューをお届け致します。試合は3-0でバルサが勝ってます。結論から先に言っちまうと、メッシのメッシによるメッシのためのゲームでした。かつボアテングの公開処刑ショーとなりました。



この試合のメッシの二点目はちょっと凄すぎました。気の毒なのがボアテングで、メッシにコかされてしまった、この場面は、これから延々とネタにされ続けると思います。メッシの伝説と共に・・・アーメン・・・・




ネタはこの辺りにして、試合の内容のレビューにうつりたいと思います。試合内容も興味深いものでした。もっとも、結果は全部メッシが持っていってしまったんですけれどね。







バルサ対バイエルン、前半のレビュー


さて、まずはスタメンからいきましょう。


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これはキャプでやりますが、こーなってました・・・といいたい所ですが、バイヤンはちょっとフォメいじってます。なので、こっからは図でやりますが、



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こーです。これがこの試合の初期配置でした。幾つか、驚いたのは、チアゴがWB、シュバイニーがトップ下。この狙いは割と明白で



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こうなります。ペップは、最初、完全にシステムを噛み合わせてきてました。バルサの433に対して、3412は完璧にシステムを噛み合わせる事ができます。最終ラインでの数的同数というリスクを背負うことになりますが、この形にすれば、バルサのビルドアップ部隊に激しくプレッシャーをかける事ができます。試合後、ペップが「メッシを止める術はない。彼にボールを届かせなくすることが出来るだけ。」云々いってましたが、狙いとしては前プレかけてメッシにボールが届かないようにしたかったんでしょう。


ブログで最近、何度か解説しましたが、最近はこういった形での前プレが流行ってきてます。アンカー+2CBによる2トップのプレスの無効化が流行ってますので、それに対して、3トップ気味にして数的同数プレスをかけて、相手のポゼッションを破壊するって形です。



これ、狙いはわからん事はないのですが、それでは、これが上手くいったかというと、そうでもなかったです。


前半7~8分あたりまでは、バルサは相手の出方がよくわかってなくて苦労してましたが、試合のキャプで解説しますけど(前半6分にメッシが個人技でプレスを突破してますが、あれは個人技の世界なんで)



前半6分のメッシの個人技の突破から、バイヤンの右サイドがおかしな事になるんですが、



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このシーンからです。このシーンの解説しとくと、バルサの右サイドからのスローインからだったんですが、降りてきたメッシがボールうけて、その後ターンして、一人で3人交わして、バイエルンのプレスを突破してました。二人に挟まれてもボール取られないし・・・・


でもって、この後あたりから、バイヤンの右サイドがおかしな事になりはじめるんですけど、次、9分のシーンですけど


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これで中央割られかけちゃうんです。一つ前にメッシの下がってくる動きについていかないと、メッシ一人でプレス無効化されるってのがわかったので、ラフィーニャがメッシについていくのはしょうがないんですけど、ラフィーニャが空けたスペースのケアをボアテングがやると、中央が開いてしまう。で、もっと酷いのが、



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このシーンです。ちょっとありえない酷さでした。ここ、どうみても一点モノです。ノイアーが止めてくれたから助かりましたが、ラフィーニャとボアテングは、ハーフタイムのロッカールームでグアルディオラに怒鳴られてると思います。ラフィーニャは守備軽すぎるし、ボアテングは、そこオフサイドトラップ狙う所じゃないだろっていう。


でもって、これで終わりじゃなくて、もう一つ続きます。


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これ、またしても同じパターンでした。延々と同じパターンで裏取られてます。


えっとですね、これは典型的なマンツーマンの弱みが出てるんですけど、「マンツーマンディフェンスは、FWのポジショニングによってDFのポジショニングが支配される」って事です。図にすると、



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こうなるんですが、相手がシステム噛み合わせてくるなら、相手のDFの位置はメッシ、スアレス、ネイマールのポジショニングで操作可能になります。だから、こういう動きをいれただけで、中央のエリアがガラ空きになるんです。こうなったら、あとは簡単で、開いた中央に人とボールを送り込めばいい。


ペップも、流石にこりゃいかんと思ったのか、この辺りでシステム変更をしてます。3412から4231へ。



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こっちに前半15分で切りかえてます。ここまでで、バルサに3回も右サイドで裏を取られているので、これはしょうがないと思います。


4バックになった事で、


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こういう感じで、ボアテングがサイドに釣り出されても、中央にはCBが一枚残っている訳で、これ以降、右サイドで簡単に裏を取られるという事はなくなりました。ただ、バイヤンが4バックになった事で、16分以降、バルサはハーフウェーラインまでボール運ぶのは簡単にできるようになりました。これ以降、試合はお互いにハーフウェーラインあたりでの攻防になっていきます。どちらも前プレで相手からボールを奪いきれないので、どうしてもそうなります。






ここで、ちょっと寄り道します。




ペップのバイエルンについてなんですが、ペップのバイエルンって、非常にリスクマネジメントがしっかりしたチームです。ココ、よくある守備がダメなポゼッションチームとは違う所なんですけど、「攻撃時にボールより前にいていい選手の数」が、かなり厳密に決まってるんです。通常、3~4人程度です。


この試合でもそうだったんですが、前半を通じて、バイエルンは前がかりの攻撃をしてません。ずーっと人数かけない攻撃に終始してます。PA内に入ってくるのなんて3人が良い所でした。


前半のキャプで例をだすと、前半17分のバイエルンの決定機の時は、



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こんな感じでアタッキングサードに3人しか入ってきてませんでした。バイヤンはずーっとこんな感じでした。一方でバルサは、ってーと、



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これは前半38分のバルサの決定機の前のシーンですけど、アタッキングサードに5人入ってきてます。この後、ダニアウベスが抜け出してシュート打つんですが、ノイアーに又もセーブされました。この日、ノイアーは3点は防いでます。



バルサの方は、ボールより前に5人いてもオッケーなんですが、バイヤンのほうはボールより前にいていいのは4人までなんです。



時々、僕は「グアルディオラは可愛くない」とか愚痴るんですが、この可愛くない理由がリスクマネジメントをきっちりやってくる所なんです。ポゼッションサッカーなんだから、もっと前に人数かけろや!!とか思うんですが、グアルディオラは、この辺り、非常に手堅いんです。陣形が前がかりになってカウンターをされるのを嫌がるタイプなんです。なんで、グアルディオラのチームにカウンターで対抗するってのは、以外と悪手なんです。リスクマネジメントがきっちりしてるんで、点とれないんです。この辺り非常にきっちりしてるので、ノイアー神がいることもあり、リーグ戦の失点数が15とか頭おかしい数字になるんですが。


個人的には、選手がオフザボールの動きをくり返しながらパスを回して攻めるポゼッションサッカーってのは、カウンターで返り討ちにされる光景もあわせて楽しめるから愛しているのですが、グアルディオラの場合、リスクマネジメントがしっかりしてて、ある種のネタ臭さがないチーム作ります。なんで、時々、「グアルディオラのチームは可愛くない」とか、僕はブー垂れるんです。ネタ臭さがないポゼッションサッカーとか、モウリーニョ式のカウンターサッカーと同じくらいタチが悪いハメ技でござる。



又、脱線したので話を戻します。



現在のバルサなんですが、カウンターが強力なチームです。メッシ、ネイマール、スアレスの最強南米トリデンテがいるので、当たり前なんですが、バルサ相手に人数かけた攻撃すると死にます。マジで死にます。人数かけて攻めると、メッシ、スアレス、ネイマールのカウンターで逆に沈められるのがオチです。


なんで、グアルディオラとしては、カウンターのケアのためもあって、人数かけた攻撃は控えさせていたんでしょう。ただ、それも、メッシの輝きによって2点取られてから、おかしくなってしまい、最後、前に人数かけてバルサのカウンター浴びて、致命的な3点目を取られてました・・・・。


あの3失点目はないです。本当にないです。あれさえ無ければ、まだ可能性があったのに・・・勿体ない。



くり返しますが、グアルディオラって、非常にリスクマネジメントがしっかりしてる監督です。ただし、試合で点取ろうとしたら、どこかでリスク取らないといけません。この日、グアルディオラがリスクを犯していたのが、前半の最初でいえば、最終ラインの数的同数の所です。あそこはリスクを取った部分です。バルサのボールポゼッションを止める為に。ただ、キャプで説明したように、最初に前プレがハマらなかった為、15分前後で、布陣の変更を指示してます。4バック、4231へ。


ある意味じゃ、あそこでバイヤンのほうは、「バルサが前がかりになった所をカウンター」位しか手がなくなってきてたハズ・・・なんですが、その後も、何でかポゼッションしたがってました。


個人的には、バルサは前に人数かけてくる訳だし(ボールより前に5人とか出して来る)、後半からカウンターに切りかえても良かったんじゃないかとは思うんですが・・・・



バルサ対バイエルン、後半の展開、メッシ


さて、後半の展開に移りましょう。といっても、この試合の場合、後半の話はさして戦術面で前半から違いはありません。バルサは433のまま、バイエルンは4231を継続してます。バイエルンは後半始まってからも、攻撃では人数かけてません。PAに入るのは3人程度に留めてまして、正直いって「びびりすぎだろ・・・」とか思ってしまうレベルでした。後半53分と、後半55分の攻撃では、人数かけても良さそうなモンですけど、全然前に人数かけてこないです。



その結果としてですが、


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こんなスタッツになっちゃうんですね。ボールポゼッションは同程度なのに、シュート数、枠内シュート数にこれだけ差が出てしまう。



正直いって、この日のグアルディオラのバイヤンの場合、ポゼッションを守備に使ってるような感じの試合でした。メッシにボール持たせると止めらんないから、そもそもボール渡すの止めようみたいな。ただ、メッシはボールもてば10秒で違いを作れるわけで、あんまし意味がない気がしないでもないのですが。



で、後半60分に又オフサイドトラップのかけ損ないから、ネイマールに裏に抜け出されてしまうんですが、このシーンでもノイアーが飛び出してきて事無きを得ました。カンプノウでオフサイドトラップ狙うとか危険すぎると思うのでござる。アリアンツならともかく。



そして、運命の後半79分。試合が動きます。というか、メッシが試合を動かします。



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動画張っときますけど、これねえ、最初のゴールからエグすぎますわ。ノイアーがニア抜かれるなんて、信じられませんですよ。



でも、もっとエグいのが二点目。これは完全にチート。




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こんな感じで糞コラ祭りになってますが、ボアテング生きろ・・・という感じです。この二点目のゴールはエグすぎます。DFにとっては悪夢でしかありません。生き恥晒してプレーしていく事になりますよ。


股抜きされたり、こかされたりするってのは、DFにとって究極の恥と見なされるんですが、今のバルサの3トップは全員それが出来る連中なんで、対戦するDFは震え上がりますよこんなの。下手こいたら大恥かかされるわけで。すでにCLでダビド・ルイスがスアレスに二回股抜きされて世界の笑いものにされたばかりだってのに、今度はボアテングの公開処刑ですよ。バルサと対戦するDFには同情心しかありませんわマジで。





ただね、ここまではメッシの輝きに打ちのめされたってだけで、まあ良いんですが、3失点目。これは良くない。



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これ、バイエルンが失点する直前のシーンですけど、ボールより前に6人出ちゃってるんです。しかも後半の92分にです。ここはリスクを取る場面じゃ絶対ないんです。なのに、何でここでこんなに前がかりになったのか、意味がわかりません。正直いって、この場面では選手達が集団でトチ狂ったとしか言えません。2-0なら、まだ可能性があるけど、3-0になったらノーチャンスです。なのに、ここでほとんど総攻撃にでてしまうんですから。




この試合で、バイエルンの最大のミスは何かって言われたら、この3失点目です。これはホントに余計でした。この3失点目で、バイエルンのCL敗退は事実上決定しちまいました。本当に、何で、あの場面で、人数かけて攻撃にでたのか意味がわかりません。メッシのプレーみて、何かの病魔にとりつかれたんでしょうか。







最後に

今回のレビューは、これで大体終わりです。



この試合で面白かったのは、バイエルンが3バックやってた時でして、3バックで433に対してハイプレスかけてみたり、ミシャ式サッカーみたいなポゼッションやってみたり、攻撃時にチアゴが中にはいってきてミューラーが外に流れてみたり、中央の開いたスペースをWBがカバーするなど、「ほ~~~」と思うシーンが多かったです。ただ、面白かったのは最初の15分だけで、その後はペップがフォメいじってしまい、普通の試合になってしまいましたが。


試合自体は面白かったんですが、もうちょっとバイヤンの3バックをみてみたい気もしました。あれはあれで興味深いやり方です。



最後に、前回、右派のフットボールと左派のフットボールの話をしたんですが、実は、右派のポゼッションと左派のカウンターというのがあります。




例えば、湘南はカウンターメインなんですが、左派寄りのチームです。理由は、前に人数かけてくるので、実はカウンターを受けやすいんです。追い越す動きをどんどん入れるので、チームとして組織的なバランスが崩れやすく、前がかりになりやすいチームです。結果として、カウンターを浴びやすくなってるんです。これはカウンターの時もそうなんですけど、湘南はカウンターの時、5~6人で人数かけてカウンターやります。そのため、カウンターの時に変な失い方すると、逆にカウンター浴びることになります。名古屋戦は、それで先制されました。




逆にポゼッションサッカーの場合、通常、パスを効果的に繋いで相手を崩す為には、オフザボールの動きを受け手がくり返す事が必要になるんですが、それそのものが組織的なバランスを崩し、カウンターに脆い状況をしばしば作り出してしまうんです。ところが、ペップのバイエルンの場合、そこまでポジションバランスを崩すことなくポゼッション出来るし、前に人数もかけてこないので、カウンター浴びにくいチームなんです。あのチームの場合、ポゼッションが守備力に影響を与えてない珍しいチームです。今回はヘマやらかしましたけどね。ただ、リーグ戦での失点の少なさをみれば、簡単にカウンターでやられるようなチームじゃないのは明らかです。それに433に対して、3412でハイプレスってのは、なかなか面白い試みでした。もうちょっと見てみたかったのですが。ただ、結局どのフォメだろうと、最後の部分では人数かけてこないチームなんで、そこで違いを作り出せるロッベン、リベリーがいないと困るンですよバイヤン。




ここまでくると、サッカーにおいて、何が正しい答えなのか、そもそも正しい答えなんてあるのかっていうアレになるので、今日は、この辺りでやめておきます。



それでは。