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ACL大阪ダービー「ガンバ大阪VSセレッソ大阪」プレビュー「マンマーク対ゾーンの巻」

えー、久しぶりの投稿になるわけですが、本日はACLの話です。僕個人はベルマーレのサポなんですが、ガンバとセレッソは好きなチームなんで、今日はマッチプレビューをしてみようかと思います。ちなみに、今日の試合は僕は見れません。その腹いせ的プレビューです。内容は割とマニアックなんで興味ない人は読み飛ばし推奨です。


ガンバ大阪というチーム

まずはガンバ大阪。押しも押されぬ関西のビッグクラブであり、常にリーグ上位に顔をだすクラブ。西野監督率いるパスサッカーのチームです。メンツ的には、A代表不動のゲームメーカー「ヤットさん」こと遠藤保仁が在籍するチームであり、彼をキーマンとするパスサッカーが売りのチームですね。その他にも、無口で有名なファンタジスタ二川さん、絶賛売り出し中のホープ宇佐美貴史君がいます。彼は凄いですよ。19才ながら、左右両足のテクニックは抜群。いずれA代表になるでしょう。


で、なんですが、このチームのサッカーについて。守備方法は、基本的にラインを高めにして中盤をコンパクトにし、激しいプレッシングから前でボールをとろうとします。J1だと守備自体はありふれたケースで代表とさほど変わりません。前からボールを取りに行って、高い位置でボール取ってショートカウンターを見舞う形です。攻撃に5〜6人かけるんで、それしか出来ないとも言えますが。ところが、前線のボール奪取力がさほど高くない上に、最終ラインの脚が速いというわけでもないので、裏を取られてあっさり失点することもあります。サンフレッチェ広島戦なんて酷いもんでした。はっきりいって、ガンバの守備はザルです。J1での失点数がそれを物語ってます。


で攻撃方法はパスサッカーなんですが、特徴はボール運びにあります。フィニッシュ部分は、相手によって変えてくるので、どの相手にも同じやり方をするビルドアップの話をしようと思います。


ガンバは、今シーズン中盤ボックス型の442と、4231を使い分けていますが、基本的なボール運びはどちらも同じです。

こっちは、ガンバの基本的な並びから。中盤がボックス型になるので、ボックス型の4222と呼ばれます。ちなみに、背番号は適当ですが、7が遠藤なのは一緒です。で、ここからが、ガンバの特徴。ポゼッション時には、

こういう形に変形します。特徴なのは、7番のゲームメーカーの遠藤が0.5列前位の位置へ動き、守備ボランチの武井か明神が中央に絞ってくる事。そして、ボールサイドのSBが前進して中盤に加わってパス回しに参加する事です。もし、ここで相手のプレスがきつく前に運べない場合には、逆サイドに残ったSBに戻し、ボールを持ったSBが前進して逆サイドで同じ形を作ります。逆サイドのSBが上がったら、もう片っぽのSBは最終ラインまで下がり、常に最終ラインに3人が残っている形を保ちます。良い形で遠藤が持てるまで、これを繰り返すのが特徴ですね。


で、遠藤からボールが出た時に、ガンバの攻撃のスイッチが入るんですが、ここから先は、相手の守備方法によって、前四枚の動きが変わってくるので、先にセレッソ大阪の守備方法と攻撃方法を解説します。

セレッソ大阪というチーム

こちらは、同じ大阪でも、1年前までA代表でドルトムントで活躍していた香川真司が在籍していたチームです。おじさんファンからするとモリシと西澤のコンビのほうが印象に残っているかな。ガンバと比べると規模では劣りますが、クルピ監督の就任以降、急激に力をつけてきており、去年は大躍進を遂げ、ACL出場権を得ています。今回は、ACLのグループリーグを突破し、ガンバとの大阪ダービーで本日、激突予定です。

で、なんですが、このチーム、攻撃も守備も、相当変わったシステムを使います。

基本的な並びは、4231フォーメーションで、これは珍しくもなんともなく、日本のA代表やドイツ、スペイン、オランダでも使ってるんですが、ポゼッション時には、こいつが変形します。(例によって背番号は適当です)

特徴は、両SBが一気にポジションを上げる事。その上で、左ボランチのマルチネスが左サイドに流れることです。マルチネスがボールを持つと、右ボランチはCBの前に移動し、3シャドーの一枚(ここで4番)が降りてきます。

なぜ、両SBをあげるかというと、相手のディフェンスブロックをワイドに広げるためで、これによって、相手の守備は中央を固める守備から、ワイドに広がらざるを得なくなります。その上で、左SBが空けたポジションにレフティのボランチが入り、そこから組み立てを開始します。ここから、斜めにパスをいれて、3シャドーに繋ぐのがセレッソの基本パターンです。左サイドで優位を持つレフティのボランチの活用、降りてくるシャドー、高い位置を保つ両SB、これがセレッソのビルドアップの特徴となります。

そして、マルチネスがボールを持ったら、下がって来るシャドーの動きに合わせて、急激に前線の3枚がポジションチェンジを行い(最近上手くいってないんですが)、マルチネスからボールを引き出しにかかります。黒のラインで示した方向にポジションをそれぞれが変えたりして(状況によってポジションチェンジは変わってきます)、相手のマークのズレをさそいつつ、中盤の守備で生まれたギャップに入り込んでボールを引き出します。いったん、2ライン間で前を向いてシャドーがボールを持ったら、そこから先には、セレッソには戦術的な制約がありません。個人技とコンビネーションを駆使して一気に攻撃を加速させ、相手のDFラインの裏にボールを入れてフィニッシュに持ち込みます。


理想としては、こんな形を作ることです。2ライン間でシャドーが前むいてボールを持つと、4バックの両SBは、CBのカバーの為、中央に必ず絞ってきます。また、CBが一人、ポジションを空けてシャドーに当たりにくることが多いです。そのため、2ライン間でセレッソのシャドーがボールを持つと、

1、中央のCBが前に釣り出されるので、CBのところにスペースが出来る
2、サイドのSBが中央に絞ってくるのでSBはマークを捨てざるを得ず、サイドのSBかシャドーがフリーになりやすい。

という効果が生まれます。その瞬間を狙って、セレッソのシャドーとFWは一気に、CBの空けたスペースと、SBが空けたスペースに走り込み、ボールを受けて裏へと抜け出します。これが、セレッソの基本パターン。ゾーンの4バックで守っているチームが多いため、セレッソはほとんどの相手に対して、同じ攻撃方法を行います。これがセレッソのフィニッシュの特徴。

こっちの動画から拝借しますが、セレッソの攻撃が綺麗に決まった瞬間です。

動画の一分のところですが、サイドでの攻防から、こぼれたボールを拾った乾が家長にパス。家長がドリブルでタメをつくって、CBを一枚釣り出した所です。この瞬間の右下のアドリアーノと走り込む乾の動きとタイミングに注目してください。まず乾。動画を注意して見て欲しいんですが、家長にパスすると同時に斜めに走り出します。この時点で、前にスペースはありません。ただ、家長が軽いドリブルを入れて、CB一枚を釣り出した事で、ぱっくり中央にスペースが出来ます。乾はこれを読んでるんですね。この判断の速さがセレッソのシャドーの条件です。そして右下のアドリアーノの動きです。SBが中央に絞っている動きをみて、サイドに開くことでSBのマークを引き離してます。また、ボールとアドリアーノを同時に視界にいれれない場所に身を置いてます。最終的に、マークを外すことに成功したアドアーノに絶妙なパスを家長がいれてゴールが決まります。これが、セレッソのやりたい形なんです。この形は、相手が4バックのゾーンで守ってる限りは、ほぼどの相手にも有効です。バルサは、これが特に上手いです。バルサやセレッソみたいなチームは、大抵、どの相手にも同じ攻め方をするんですが、4バック全盛期で、どのチームもゾーンの4バックで守ってるので出来る攻撃です。


4バックのゾーン守備は、3バックのマンマークと違い、CBのカバーにまわるリベロがいません。そのため、2ライン間にボールを入れられた場合、SBが中央に絞り、カバーを行うことに特徴があります。しかし、ここに4バックのゾーンの弱点があります。フラットな4バックで守ろうとすれば、CB一人が抜かれただけで失点してしまう。CBが当たりにでれば致命的なスペースが一瞬、中央に生じる。SBが中央に絞るとき、ウィングやSHのマークが甘くなる。ゾーンの4バックは万能じゃないんです。

さて、一方でセレッソの守備なんですが

セレッソの守備に関しては、極めてイレギュラーです。というのも、中盤での数的優位確保のため、CBがマンマークで対応しているからです。例えば、ガンバみたいに2トップのチーム相手には、CBがマンマークでつくだけです。普通のチームは違います。ガンバの場合、最終ラインで一人余らせるスタンダートな守備を行ってます。SBがつるべの動きをするのも、そのためです。常に2トップに対して3人残ります。これが徹底されてます。ですが、セレッソは、中盤で数的優位を確保するため、最終ラインはCBのマンマークで対応するだけです。


そのため、避けがたい問題が引き起こされます。まず最初に、両SBが高い位置を取り、左サイドに流れたボランチからゲームメークをはじめる以上、ボランチからのボールをカットされると、その瞬間に最終ラインで数的同数の状況に陥ります。どっちかのCBが負けたら、即終了という状況です。そのため、セレッソは、CB二人に対人に強いタイプの選手を起用しています。セレッソのスタメンクラスのCBは、上本、茂庭、藤本の三人なんですが、三人とも尋常じゃなく対人が強いCBです。セレッソの場合、頻繁に最終ラインで数的同数という状況が生まれるため、そこで防ぎきる対人守備能力が求められているわけです。実際、茂庭と上本の鬼神のような対人守備は、それだけでスタジアムに見に行く価値があると思ってます。特に茂庭に関しては、一対一で勝負してボールを狩る能力に関して、日本一じゃないかって位です。


さて、4バックなんですが、実はゾーンでなくマンマークで守っているのがセレッソの特徴です。ところが、マンマークにはマンマークの弱点があるんですね。ゾーンにはゾーンの、マンマークにはマンマークの弱点がある、というわけです。そして、マンマークの弱点とは「FWの動きによってDFの動きが規定されてしまう事」です。


バスケットボールのアイソレーションを知っているでしょうか?スラムダンクで湘北がマンツーマンで守っているのに対して、陵南が、アイソレーションで崩しにかかったエピソードなんか有名ですが。マンツーマンに対する有効な攻撃方法ですね。一対一の強い選手がいる逆サイドに他の選手が移動して、一対一の強さをもつ選手の攻撃能力を活かすやり方です。


アイソレーションという攻撃方法は、マンツーマンDFの「FWの動きによってDFの動きが規定されてしまう事」を利用したやり方です。相手がマンツーマンで来るなら、攻撃側は自由に相手のDFの位置を決めれるわけです。だって、相手は自分についてくるんだから。


そして、この「FWの動きによってDFの動きが規定されてしまう事」がセレッソの第二の避けがたい問題になるわけです。セレッソは、ポゼッション中、絶対に空いてしまうスペースがあります。図で示しますが

ここです。右SBの裏のスペースが絶対空いてるんですね。はい、ここです。赤で囲んだ場所。左サイドは、ボランチが一枚流れているんですが、右サイドには誰もいない。そのため、ここにボールが出されてしまうと、いきなりCBが一枚サイドに釣り出されてしまうんです。


ここで、重要なのが、5番です。セレッソの右ボランチです。セレッソの右ボランチは、CBの前にいて、相手の攻撃の防波堤になるだけでなく、このスペースを埋める仕事も担っています。具体的には、右のスペースに出されそうな時は、右ボランチがカバーに入り、中央のスペースは左サイドのボランチが埋めることになってます。セレッソのボランチには、この能力が必須で、これが上手くいかないと酷いことになります。右ボランチが判断をミスると、相手方は、簡単にセレッソの守備を崩せます。


ここからが、ガンバの攻撃方法です。つまり、セレッソの崩し方。

ガンバはいかにしてセレッソを崩そうとしたか?

えーと、先にも述べた通り、ガンバは、フィニッシュの部分は、相手によって変えてきます。ここは、遠藤にかかってます。相手の守備の弱点にジャストでボールを出せるパサーですからね。この場合は、セレッソの右サイドになります。ここを集中的に狙ってきます。狙いとしては、以下の形です。

ガンバとしては、まず、セレッソのCBにマンマークされているFW二人の動きに注目です。遠藤がボールを持った時、両サイドに開きます(他にも色々とバリエーションがありますが)。FWが両サイドに開くと、CB二人はマンマークなんですから、その動きについてきます。そうするとあら不思議。中央のスペースがぱっくり空いちゃうんですね。そこに、ガンバのSHの二川と宇佐美が走り込んでボールを受ける形です。

第一節の大阪ダービーセレッソがPK献上したシーンなんて、モロにこの形でした。

動画の一分02秒の所からです。セレッソの右サイドに流れたガンバのイ・グノが、茂庭を釣り出して、フォローに入った宇佐美にパス。宇佐美は、ここで、ボランチ二人を引きつける。ここでの注目は、ゴール前にいるアドリアーノのオフザボールの動きです。ボールサイドに動いています。この動きが効いてます。この動きで上本をボールサイドに釣り出して、結果的に二川の走り込むスペース作ってます。まぁ、アドリアーノはこの後、宇佐美のクロスをからぶるんですが、上本が空けたスペースに二川さンが走り込んでいた為、たまらず上本が手で止めてしまいPK。


マンマークの欠点がモロに出たシーンなんですね、これ。セレッソのCBは対人に糞強い。けれども、マンマークである限り、「FWの動きによってDFの動きが規定されてしまう」という欠点を持ってます。FW二人が上手に動いてCB釣り出し、2列目の二川さんとウサミミのスペースを作ってやれば、ゴール前に決定的なスペース作ることが出来るわけです。


現在、セレッソのCBがマンマークで守ってるって事は、ほぼJ1全チームにばれているんで、大概のチームは、セレッソの右サイドにボールを集めて、守備力の高いCBをボールサイド釣り出し、ゴール前に決定的なスペースをつくろうとしてます。


無論、セレッソのクルピ監督だって馬鹿じゃありません。その為に、ボランチの片方がバイタルや右サイドのスペースを埋めて、飛び込んできたSHを捕まえないといけないんですが・・・ぶっちゃけ、ここが上手くいってないんですね。特に、右ボランチに守備専がいないのが痛い。ボギョンと中後は、どっちも守備専のアンカーってタイプじゃなくて、ゲームを作ったりする方で力を発揮したりするタイプですし・・・スペースを守る概念が希薄なんです。なんでアマラウ放出しちゃったんだっていう。

さて、ダービーの結果の予想ですが

基本的に、どちらのチームも非常に攻撃的なチームです。攻撃に人数かけて、ラインを高めに保ちます。個人的な予想としては、1−0はないと思います。ガンバは守備がザルすぎるし、セレッソは、茂庭と守備専ボランチがいないのが痛い。どっちかのチームが二点以上とって終わるでしょう。


セレッソのキーマンとしては、右ボランチにはいる選手とCBの藤本。右ボラは中後かボギョンになると思いますが、ボールを奪われたとき、右ボランチが右サイドをケアし、マルチネスがすぐさまバイタルをカバーする。この動きをどれだけ素早く出来るか、藤本がどれだけアドリアーノを抑えられるかにセレッソはかかってます。点は絶対取れます。だって、ガンバの守備ザルすぎるし。山口も出場停止だし。今のガンバから点とれないようなら、今のゼロトップは諦めた方がいいかと。


ガンバのキーマンは2列目の二川さんと宇佐美。彼らが、どれだけFWが作るスペースを有効に使えるかにかかってます。守備は全く期待できないので、できるだけポゼッション率を高めて、セレッソの攻撃時間を減らす必要もあります。ポゼッションできないようだと、それだけ点を取られる可能性が高まります。そんなわけで遠藤のゲームメイクも重要です。


両チームとも、とにかく戦術的なキーポイントはポゼッションかと。ポゼッションを高く保てばそれだけ沢山攻撃でき、守備機会を減らせるので。


まぁ、僕は都合がって生で見れないんですがね。畜生・・・・


予想がはずれて塩試合になったら謝ります。

お知らせ

「dorj Vol2」頒布のお知らせにサッカーに関する文章を寄稿させて頂きました。

ボードの作成には戦術ボードを使わせて頂きました。